「ニューヨークに拠点を持ちたい。どうやって法人を作ればいいのか」というご質問は、アメリカ進出を検討している経営者の方から多くいただきます。
2026年現在、日本人がニューヨークで法人を設立することは決して難しくありません。しかし、会社形態の選択・Publication要件・Registered Agentの確保など、日本の法人設立とは異なる独自のルールがあり、事前の知識なしに進めると想定外のコストや手続きが発生することがあります。
当社代表がニューヨークで法人を設立・運営してきた経験と、多くの方の設立支援を通じて蓄積したノウハウをもとに、ニューヨーク法人登記の全体像を解説します。
1. ニューヨーク州で選べる会社形態の比較

ニューヨーク州で法人を設立する際、主に選択できる会社形態は3種類です。それぞれの特徴を理解した上で、事業の目的・規模・将来計画に合った形態を選ぶことが重要です。
LLC(Limited Liability Company。有限責任会社)
LLCは設立・維持のコストが低く、税務面の柔軟性が高いことから、中小規模のビジネスや個人事業の法人化に最も多く選ばれる形態です。パス・スルー課税(法人税がかからず、収益が出資者の個人所得として課税される)が標準で、税務申告が比較的シンプルです。
ニューヨーク州でのLLC設立費用は200ドル(約30,000円)です。ただし、ニューヨーク州特有のPublication要件(後述)により、追加費用が発生します。
C-Corporation(株式会社)
C-Corporationは将来的なVC(ベンチャーキャピタル)からの資金調達や株式上場(IPO)を見据える場合、あるいはE2ビザ申請の事業体として使用する場合に選ばれます。株主・取締役・役員を分離できる点が特徴で、複雑な資本構成にも対応できます。
法人税(Corporate Tax)が別途かかるため、小規模事業の場合はLLCに比べて税負担が大きくなることがあります。
S-Corporation
S-Corporationはアメリカ市民または永住権者のみが株主になれる制限があるため、日本人(外国人)が主体となる法人設立には通常使用されません。ニューヨーク進出の場合はLLCまたはC-Corporationが現実的な選択肢となります。
2. ニューヨーク州での法人登記手続きの流れ


ニューヨーク州でLLCを設立する場合の手続きを、ステップごとに解説します。
| ステップ | 手続き内容 | 所要期間 | 費用目安 |
|---|---|---|---|
| ① | 会社名の確認・予約(NY Department of State) | 即日〜数日 | 無料 |
| ② | Articles of Organization(定款)の作成・提出 | 通常1〜2週間(Expedited: 1〜2日) | $200(通常)/ $50追加でExpedited |
| ③ | Registered Agentの確保 | 設立前に手配 | $100〜$300/年 |
| ④ | Publication要件(地元紙2紙に6週間公告) | 6週間 | $1,000〜$2,000 |
| ⑤ | Certificate of Publication提出 | 公告完了後速やかに | $50 |
| ⑥ | EIN取得(IRS) | オンライン即日〜数週間 | 無料 |
| ⑦ | 法人銀行口座開設 | 1〜4週間 | 手数料は銀行による |
合計すると、すべての完了までは1-1.5ヶ月かかることを見込んでおく必要があります。
特に注意が必要なのがPublication要件です。ニューヨーク州固有のルールで、LLC設立後120日以内に、郡内で発行されている2つの新聞に設立通知を6週間連続で掲載する義務があります。この費用がマンハッタンや近郊では1,000〜2,000ドル(約15万〜30万円)と高額になることがあります。コスト削減を目的として、デラウェア州で設立してニューヨーク州に外国法人登録する方法を選ぶ企業も少なくありません。
3. 日本人がニューヨークで法人を作る際の注意点

日本人がニューヨーク州で法人を設立する際には、アメリカ在住者と異なるいくつかの注意点があります。
Registered Agentの確保
ニューヨーク州では、法人がニューヨーク州内に登録代理人(Registered Agent)を置くことが義務付けられています。Registered Agentは、公式書類の受け取りや政府からの通知を受ける役割を担います。
日本在住で設立する場合、ニューヨーク州内にAgentを持つサービス会社(100〜300ドル/年程度)を活用することが一般的です。
物理的なオフィスの必要性
法人設立自体に物理的なオフィスは必須ではありませんが、銀行口座開設・ビジネスの実態証明においてニューヨーク内の住所が強く求められることがあります。バーチャルオフィスサービス(月額100〜300ドル程度)を活用して住所を確保するケースが多くあります。
なお、E2ビザ申請と組み合わせる場合は、実態のある事業拠点が必要とされるため、バーチャルオフィスだけでは不十分なケースがあります。
Operating Agreement(LLC運営契約書)の重要性
LLCの場合、Operating Agreement(LLC内部の運営ルールを定める契約書)の作成は法律上義務ではないニューヨーク州もありますが、強く推奨されます。出資比率・利益分配・意思決定プロセスを明文化しておくことで、将来的なトラブルを防ぐことができます。
ニューヨークでのビジネス開業については、ニューヨークでのビジネス開業ガイドもあわせてご参照ください。会社設立費用の全体像はアメリカ会社設立費用まとめでご確認いただけます。
4. デラウェア設立 vs ニューヨーク設立 どちらを選ぶべきか

「デラウェア設立」か「ニューヨーク設立」かは、多くのアメリカ進出を検討している方が悩む選択です。両者の判断基準を整理します。
デラウェア設立が有利なケース
将来的なVC投資・株式公開を目指す場合、複雑な資本構成が必要な場合、法人の柔軟性・株主保護を重視する場合はデラウェアが有利です。また、フランチャイズタックスの計算方法によっては、デラウェア設立がコスト的に有利になることもあります。
ただし、ニューヨークで事業を行う場合は外国法人登録(Foreign Registration)が必要となり、ニューヨーク州の要件(Publication含む)も適用されます。つまり、実質的にはデラウェアとニューヨーク両州の維持費が発生する点に注意が必要です。
ニューヨーク直接設立が有利なケース
ニューヨーク州内のみで事業を行う小規模ビジネス、または将来的な資金調達を予定していない場合は、ニューヨーク直接設立のほうがシンプルで管理しやすくなります。Publication要件のコストを除けば、維持費を一本化できます。
デラウェア州法人設立の詳細については、デラウェア州法人設立ガイドをご参照ください。海外進出の全体戦略については海外進出サポートサービスもご覧ください。
まとめ。ニューヨーク法人登記で最初に決めること

ニューヨークで法人登記を進める前に、まず決めるべきことは①会社形態(LLCかC-Corpか)、②設立州(ニューヨーク直接かデラウェア経由か)、③Registered Agentの確保の3点です。
登記手続き自体はそれほど複雑ではありませんが、Publication要件・銀行口座開設・EIN取得・税務登録など、設立後の手続きが連続して発生します。全体の流れを把握した上で、移民弁護士や会計士と早めに連携することが、スムーズな事業スタートへの最短ルートです。
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