Commercial Leasing Guide

ニューヨークで店舗とオフィスを借りる

ニューヨークの商業不動産は、住宅の賃貸とは契約の考え方がまったく違います。賃料は年額を平方フィートで割った数字で示され、面積は実際に使える広さより大きく書かれ、内装の費用と原状回復の責任は借主側に寄ります。オフィスと店舗と飲食店で、それぞれ何を確認し、どう契約し、いくらかかるのかを実務の順番でまとめました。

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このガイドでわかること

  • 賃料は年額を平方フィートで割った数字で示されます
  • 契約書に書かれた面積は、実際に使える広さより2割から3割大きいことがあります
  • 内装費と原状回復の責任がどちらにあるかで、総額が数十万ドル変わります
  • マンハッタンでは年間賃料が一定額を超えると商業賃料税がかかります
Types

ニューヨークで借りられる物件の種類

同じ「商業物件」でも、契約の重さと初期費用がまったく違います。まずどの種類を借りるのかを決めるところから始まります。

オフィスを直接借りる

貸主と直接契約します。期間は5年から10年が中心で、内装は借主が作るか、貸主が費用の一部を負担します。自由度は高い代わりに、初期費用と手続きが最も重くなります。

サブリースで借りる

既にオフィスを借りている企業から、残っている期間だけ借ります。内装が既にある状態で入れるため初期費用が抑えられます。ただし元の契約の残存期間しか借りられません。

サービスオフィスと共用オフィス

月単位で契約でき、家具と回線が揃っています。人数が固まっていない段階や、法人設立の直後に向きます。1人あたりの単価は直接借りるより高くなります。

路面店を借りる

1階の店舗区画です。賃料は同じ建物の上階の数倍になります。用途の証明と内装工事の許可が取れるかどうかが、契約の前提条件になります。

飲食店として借りる

厨房の排気、グリーストラップ、電気容量が使えるかで可否が決まります。前の借主が飲食店だった区画(既存の設備が残る区画)を探すのが実務の定石です。

倉庫と作業場を借りる

クイーンズやブルックリン、ニュージャージーが中心になります。天井高、搬入口の数、トラックの寄り付き、床の耐荷重が条件になります。

初めてニューヨークで拠点を持たれる場合、サービスオフィスで法人と信用の実績を作り、2年目以降に直接契約へ移るという順番が、審査の面でも費用の面でも通りやすくなります。

Office

オフィスを借りるときに見る数字

オフィスの賃料は、住宅のように「月いくら」では示されません。ここを読み違えると、想定と実際の負担が大きくずれます。

マンハッタンのオフィスビル群
オフィスの賃料は年額を平方フィートで割った数字で示されます。契約面積と実際に使える面積の差は2割から3割です。

賃料は年額を平方フィートで割った数字です

「$85」と書かれていれば、1平方フィートあたり年間85ドルという意味です。3,000平方フィートなら年間25万5,000ドル、月あたり2万1,250ドル、日本円で約319万円になります。表示を月額と読み違えないでください。

面積は実際に使える広さより大きく書かれます

契約面積(レンタブル面積)には、共用部の一部が按分で含まれます。実際に使える面積との差はマンハッタンで2割から3割が一般的です。人数から必要面積を出すときは、この差を先に引いてください。

クラスで賃料帯が分かれます

築年数と設備、立地でクラスAからCに分かれます。同じ地区でもクラスが1つ違えば賃料は3割前後変わります。設備の新しさより、必要な電気容量と空調の運転時間が要件に合うかを先に確認してください。

サブリースは相場より安く出ます

在宅勤務の定着で、契約期間が残ったまま使わなくなった区画が市場に出ています。内装付きで直接契約より安く借りられる一方、残存期間が短いという制約が付きます。

仲介手数料は通常貸主負担です

オフィスの賃貸では、借主側の仲介の報酬も貸主から支払われるのが一般的です。借主が別に手数料を負担する必要はない取引が中心です。

3,000平方フィートは3,000平方フィート使えません

契約面積が3,000平方フィートでも、実際に使えるのは2,100から2,400平方フィート程度です。人数と机の数から逆算するときは、契約面積ではなく使用可能面積で計算してください。

Retail

店舗と飲食店を借りるときの前提条件

店舗は物件を決める前に、その用途で営業できるかどうかを確かめる必要があります。契約してから使えないと分かる事故が最も多い領域です。

小売店舗の内装
店舗は契約の前に、その住所でその業種の営業ができるかを書面で確認します。

建物の用途証明を確認します

建物には用途を定めた証明書(Certificate of Occupancy)があります。古い建物では証明書自体が存在せず、代わりに市の建築局が用途に異議がないことを示す書面を出す扱いになります。飲食や物販が認められているかを、契約前に書面で確認してください。

前の借主の業種を見ます

飲食店の場合、厨房の排気ダクト、グリーストラップ、給排水、電気容量が既にある区画かどうかで初期費用が数十万ドル変わります。ゼロから排気を通す工事は、上階の同意と工事許可が必要で、期間も費用も読みにくくなります。

許認可の順番を確認します

飲食店は市の保健当局の許可が必要で、酒類を出す場合は州の酒類管理局の免許が別に必要です。免許の審査では地域の委員会への通知と、近隣の学校や礼拝所からの距離の制限が関わります。物件を決める前に、その住所で免許が取れるかを確認してください。

工事の期間を賃料の交渉に入れます

内装工事の期間は営業できません。この期間の賃料を免除してもらう交渉(フリーレント)が実務の中心になります。工事期間の見積もりが甘いと、開業前に賃料の支払いが始まります。

バリアフリーの基準を満たすか見ます

入口の段差、通路幅、トイレの寸法に基準があります。既存の区画では改修が必要になる場合があり、その費用と責任がどちらにあるかを契約で決めます。

契約してから使えないと分かる事故が最も多い領域です

用途の証明、排気の経路、酒類免許の可否。この3つは物件を押さえる前に確認してください。契約書に署名したあとでは、条件を変える交渉の余地がほとんどありません。

Terms

契約条件の読み方

商業の契約書は借主に不利な条項が標準で入っています。すべてを消すことはできませんが、どこが交渉できるかは決まっています。

商業契約書の署名
商業の契約書は借主に不利な条項が標準で入っています。どこが交渉できるかは決まっています。
条項内容見るべき点
グロス(Gross)賃料に建物の運営費が含まれる形式です。オフィスで一般的です含まれる範囲を確認します。電気代が別のことが多くあります
NNN(トリプルネット)賃料に加えて固定資産税、保険、共用部の維持費を借主が負担します。店舗と倉庫で一般的です過去3年の実額を出してもらいます。見積もりではなく実績で見ます
エスカレーション毎年賃料が自動的に上がる条項です。定率のものと、固定資産税や人件費の上昇分を転嫁するものがあります10年で総額いくらになるかを計算します。定率3%なら10年後は1.34倍です
保証金商業では3か月から12か月分が一般的です。信用が薄い借主ほど多く求められます一定期間の支払い実績で減額される条項を入れられるか交渉します
グッドガイ保証ニューヨーク特有の個人保証です。契約期間の残りではなく、きちんと明け渡すまでの責任を個人が負う形式です無限定の個人保証を求められた場合、この形式に置き換える交渉をします
フリーレント内装工事の期間などの賃料を免除する条項です工事期間の見積もりに余裕を持たせて交渉します
内装費の負担(TI)貸主が内装費の一部を負担する条項です。平方フィートあたりの金額で示されます支払いの時期と条件を確認します。完成後の精算が一般的です
譲渡と転貸契約を第三者に引き継ぐ、または転貸する権利です事業を売却する可能性があるなら、貸主の同意の基準を書面で決めます
解体条項貸主が建替えを決めた場合に契約を終了できる条項ですこの条項があると内装への投資が回収できません。予告期間と補償を交渉します
更新の選択権期間満了時に借主側が更新を選べる権利です更新時の賃料の決め方を先に書き込みます。市場価格とだけ書くと交渉になります

契約書のレビューは、ニューヨーク州の商業不動産を扱う弁護士に依頼してください。当社は物件の選定と条件交渉、貸主との調整を担当し、法的な助言と契約書面の作成は弁護士が行います。

Process

契約までの流れ

物件を見てから営業を始めるまで、オフィスで3か月から6か月、内装を伴う飲食店で6か月から12か月が目安です。

オフィスでの打ち合わせ
オフィスで3か月から6か月、内装を伴う飲食店で6か月から12か月が目安です。

条件を数字に落とします

必要な使用可能面積、上限の月額、入居希望日、電気容量、営業時間。この5つを先に決めます。ここが決まっていないと物件を絞れません。

候補を絞って内見します

同じ地区で複数の区画を比較します。飲食店の場合は、この段階で用途の証明と排気の経路を確認します。

条件提示書(LOI)を出します

賃料、期間、フリーレント、内装費の負担、保証の形式を書面で提示します。法的な拘束力は限定的ですが、以降の交渉の土台になります。

貸主の審査を受けます

法人の決算書、銀行の残高証明、事業計画を提出します。設立直後の法人では、個人保証か保証金の増額を求められるのが通常です。

契約書のレビューを受けます

弁護士が条項を確認し、修正案を出します。ここで解体条項、エスカレーション、原状回復の範囲を確定させます。

署名と保証金の支払いをします

署名と同時に保証金と初月分の賃料を支払います。着金の確認後に鍵の引き渡しになります。

内装工事と許認可を進めます

工事の許可を取り、施工します。飲食店は並行して保健当局と酒類の手続きを進めます。開業日は許認可の完了に左右されます。

Cost

初期費用と毎月の費用の内訳

月額賃料のほかにかかる費用です。金額は物件と業種で大きく変わるため、考え方と確認先を示します。1ドル150円で換算しています。

電卓と書類
月額賃料のほかに、保証金、内装費、弁護士費用、保険、税が加わります。
費用目安確認するところ
保証金月額賃料の3か月から12か月分信用の状況で変わります。減額の条項を交渉できます
初月分の賃料月額賃料の1か月分フリーレントの起算日を確認します
内装工事費オフィスで1平方フィートあたり50ドルから150ドル程度、飲食店は設備の有無で大きく変動貸主の負担分(TI)を差し引いた実負担で見ます
弁護士費用5,000ドルから1万5,000ドル程度(約75万円から225万円)契約書のレビューと交渉の範囲で変わります
保険賠償責任保険と什器の保険。年間数千ドル契約書が求める補償額と貸主の追加被保険者の指定を確認します
共用部の維持費と固定資産税の転嫁NNNの場合に別途発生過去3年の実額を出してもらいます
商業賃料税マンハッタンの96丁目より南で、年間賃料が一定額を超える場合に課税対象になるかを事前に確認します。小規模事業者向けの控除があります
電気と通信オフィスで別料金のことが多くあります既存の回線容量と引き込みの可否を確認します

商業賃料税はマンハッタンの96丁目より南の区画にのみ関わる市の税で、年間賃料が一定額を超えると課税され、金額に応じた控除があります。対象かどうかで年間の負担が変わるため、住所と年間賃料が決まった段階で確認してください。

Check

借りる前に必ず確認すること

契約後には変えられない項目です。この6つを押さえてから署名してください。

その住所でその業種が営業できるか

用途の証明書と、必要な許認可が取れる立地かどうかを書面で確認します。口頭の確認だけで進めないでください。

内装の責任範囲がどこまでか

どこまでを貸主が用意し、どこからを借主が作るのかを図面で確定させます。空調と電気の容量は特に争点になります。

退去時に元へ戻す範囲

原状回復の範囲が広いと、退去時に想定外の費用が出ます。造作を残せる条項を交渉できるかを確認します。

10年間の賃料の総額

エスカレーションを積み上げた総額で判断します。初年度の賃料だけを見て決めると、後半で収支が合わなくなります。

個人保証の範囲

無限定の個人保証は避け、明け渡しまでの責任に限定する形式に置き換える交渉をします。

サブリースの残存期間

安く借りられる代わりに期間が短いことがあります。設備投資を回収できる期間が残っているかを確認します。

解体条項が入っている物件で内装に大きく投資すると、回収前に契約が終わる可能性があります。投資額が大きい業態では、この条項の有無を物件選定の条件に入れてください。

FAQ

よくある質問

設立したばかりの法人でも借りられますか
借りられます。ただし決算の実績がないため、保証金の増額か個人保証を求められるのが通常です。サービスオフィスや共用オフィスで支払いの実績を作り、2年目以降に直接契約へ移る順番が現実的です。
賃料の交渉はどこまでできますか
表示賃料そのものより、フリーレントの期間、内装費の負担、保証金の額、更新時の条件のほうが動きます。空室期間が長い区画では表示賃料も動きますが、貸主は賃料の水準を建物の評価に影響させたくないため、実質的な優遇で調整する傾向があります。
飲食店の物件はどう探すのが早いですか
前の借主が飲食店だった区画を探すのが定石です。排気、グリーストラップ、給排水、電気容量が残っていれば、初期費用と工期が大きく縮みます。設備がない区画で一から通す場合は、上階の同意と工事許可の見通しを先に確認してください。
契約期間は短くできますか
サービスオフィスと共用オフィスは月単位です。サブリースは元の契約の残存期間になります。直接契約では5年未満を受ける貸主は限られ、受ける場合は保証金か賃料の条件が厳しくなります。
日本の法人名義で契約できますか
貸主によります。米国内に法人がない場合、審査で不利になるか、より重い保証を求められます。米国法人を設立し、銀行口座と信用の実績を作ってから交渉するほうが条件は通りやすくなります。
契約書は誰が確認しますか
ニューヨーク州の商業不動産を扱う弁護士です。当社は物件の選定、条件の交渉、貸主との調整を担当します。法的な助言と契約書面の作成は弁護士が行います。

まずはご相談ください

ご予算、必要な面積、業種、入居希望日をお知らせいただければ、条件に合う区画と、契約までにかかる実費をまとめてお出しします。用途の証明と許認可の可否は、物件を押さえる前に確認します。

不動産サービスはR New Yorkとしてのサービス提供となります。