【2024最新版、完全解説】ニューヨークの商業不動産投資と契約方法

2024年11月8日 Reinvent NY Inc

皆さん、こんにちは。

当社サイトにご訪問をいただき、また世界中の不動産投資の中からニューヨーク不動産にご関心をいただき、ありがとうございます。

本記事では、ニューヨークの商業不動産投資と契約方法、というテーマについて記事を執筆させていただきます。

 

最後までお付き合いいただけますと幸いです。

 

はじめに

今回は最新のデータと市場動向をもとに、アメリカの商業不動産市場における投資機会とリスクについて詳しく解説いたします。

商業不動産投資は、その高い収益性と安定性から多くの投資家に支持されていますが、市場の複雑性や地域特有のリスクも考慮する必要があります。

 

アメリカの商業不動産市場は世界最大規模を誇り、オフィスビルや商業施設、物流施設、ホテルなど、多様なセクターが存在しています。特にニューヨークを中心とした大都市圏の市場は、グローバル投資家の注目を集めています。

 

この記事では、アメリカ商業不動産の概要からニューヨーク市場の特徴、投資額の目安や契約プロセス、そして今後の展望について幅広くお伝えしていきますので、これから商業不動産投資を検討している方々にとって、重要な情報となるはずです。

それでは、アメリカの商業不動産市場の詳細な分析へと進んでまいりましょう。

 

ニューヨークの商業不動産投資・賃貸などは、ニューヨークを拠点に不動産事業を展開する当社(Reinvent NY)までぜひお気軽にご相談ください

 

1. アメリカの商用不動産:ルールと探し方

アメリカの商用不動産市場は、その規模と多様性で世界をリードしています。2021年時点で、総価値は約20兆ドルと推定され、これは世界全体の商業用不動産の約30%を占めています[1]。

この巨大な市場に参入するためには、まず基本的なルールと効果的な物件の探し方を理解することが重要です。

 

1-1. 商用不動産の定義とタイプ

まずは物件のタイプを整理し、理解する必要があります。

商用不動産とは、主にビジネス目的で使用される不動産を指します。主なタイプには以下のものがあります。

 

a) オフィスビル
b) 小売店舗(ショッピングセンター、スタンドアローン店舗など)
c) 産業用不動産(倉庫、物流施設など)
d) 多世帯住宅(アパート、コンドミニアムなど)
e) ホテル・リゾート施設
f) 特殊用途不動産(医療施設、データセンターなど)

 

各タイプの不動産は、異なる市場動向と投資特性を持っています。

例えば、NAREITの報告によると、2021年の不動産投資信託(REIT)のセクター別総収益は以下の通りとなります。

セクター 総収益 (%)
産業用不動産 62.0%
自己貯蔵施設 79.4%
小売店舗 41.3%
オフィス 23.0%
住居用 42.8%[2]

 

次に法規制についてを見ていきます。

 

1-2. 商用不動産に関する主要な法規制

以下のものが存在します。

 

a) ゾーニング法

各地域には特定のゾーニング法があり、土地の用途を規定しています。商業用途に指定された区域でのみ、商用不動産を開発・運営できます。

 

b) 建築基準法

安全性、アクセシビリティ、環境への配慮など、連邦、州、地方の建築基準を遵守する必要があります。

 

c) 環境規制

特に、ブラウンフィールド(汚染された土地)の再開発やエネルギー効率に関する規制が重要です。例えば、ニューヨーク市の「Local Law 97」では、大規模建築物の温室効果ガス排出削減が義務付けられています[3]。

 

d) 賃貸法

商業テナントとの賃貸契約に関する法律は州や地域によって異なります。ニューヨーク州では、商業賃貸契約に「誠実交渉義務」が適用されます[4]。

 

e) 税法

不動産の取得、保有、売却に関する税法を理解することが重要です。特に、1031条交換(like-kind exchange)は、投資家が資本利得税を繰り延べるための重要な税制優遇措置です[5]。

 

1-3. 商用不動産の探し方

続いては不動産ブローカーの探し方についてとなります。結論としては、不動産ブローカーを介した取引をおすすめしております。当社でReinvent NYでは数多くの商用不動産取引を行っており、ぜひ当社まで一度、ご相談ください。

 

a) 商業用不動産ブローカー

専門知識と広範なネットワークを持つブローカーを利用することが、効果的な物件探しの鍵となります。

全米不動産業協会(NAR)によると、2020年の商業用不動産取引の約75%がブローカーを介して行われています[6]。

 

b) オンラインプラットフォーム

CoStar、LoopNet、Crexiなどの専門的なオンラインプラットフォームを利用すると、幅広い物件情報にアクセスできます。

2021年時点で、CoStarは約600万件の商業用不動産リスティングを提供し、月間ユニークビジター数は約3,700万人に達しています[7]。

 

c) ネットワーキング

不動産投資クラブや業界イベントへの参加は、オフマーケット物件の情報を得る良い機会です。

 

d) 直接アプローチ

特定の地域や物件タイプに関心がある場合、所有者に直接コンタクトを取る方法も効果的です。

 

e) 不動産投資信託(REIT)

直接的な不動産所有ではなく、REITへの投資を通じて商業用不動産市場に参入することも可能です。2021年末時点で、上場REITの時価総額は約1.7兆ドルに達しています[8]。

 

1-4. デューデリジェンスの重要性

物件を特定した後は、徹底したデューデリジェンスが不可欠です。これには以下が含まれます。

 

財務分析(収益性、将来価値の予測など)物理的調査(建物の状態、必要な修繕、環境リスク)、法的調査(所有権、抵当権、係争中の訴訟などの法的リスク)、市場分析(地域の経済動向、競合物件、将来の開発計画)の調査などとなります。

 

デューデリジェンスの重要性は、数字でも示されています。

PwCの調査によれば、適切なデューデリジェンスを行った不動産投資案件は、そうでない案件に比べて、平均して23%高い投資収益率(ROI)を達成しています[9]。

 

アメリカの商用不動産市場は、その規模と複雑性から初心者にとって敷居が高く感じられるかもしれません。しかし、適切な知識と戦略、信頼できるアドバイザーのサポートがあれば、魅力的な投資機会を見出せます。

 

次節では、アメリカの商業不動産市場の中心地の一つであるニューヨークに焦点を当て、具体的な市場動向と投資機会を分析します。

 

引用元:
[1] Nareit. (2021). Estimating the Size of the Commercial Real Estate Market in the U.S.
[2] Nareit. (2021). REIT Industry Financial Snapshot.
[3] New York City Mayor’s Office of Sustainability. (2021). Local Law 97.
[4] New York State Unified Court System. (2021). Commercial Division – New York County.
[5] Internal Revenue Service. (2021). Like-Kind Exchanges – Real Estate Tax Tips.
[6] National Association of Realtors. (2020). Commercial Real Estate Trends & Outlook.
[7] CoStar Group. (2021). Annual Report.
[8] Nareit. (2021). REITWatch.
[9] PwC. (2021). Real Estate Deals Insights.

 

2. ニューヨークの商用不動産

ニューヨーク、特にマンハッタンは、世界有数の商業不動産市場として知られています。

その規模、多様性、そしてグローバルな影響力において他に類を見ない特徴を持っています。以下に、ニューヨークの商用不動産市場の主要な特徴と最新の動向を分析していきます。

 

2-1. 市場概要

ニューヨーク市の商業用不動産市場は、その規模と多様性において世界をリードしています。2021年時点で、マンハッタンのオフィススペースは約4億5000万平方フィートに達し、これは東京の約1.5倍の規模です[10]。

 

主要なセクターには以下が含まれます。

a) オフィス
b) 小売
c) 多世帯住宅
d) ホテル
e) 産業用不動産

 

それでは、それぞれのセクターにおける市場の概要と主要指標、そして注目すべきトレンドについて見ていきましょう。

 

2-2. オフィス市場

マンハッタンのオフィス市場は、世界で最も高額かつ競争の激しい市場の一つです。

ニューヨーク市のオフィス市場の概要
総面積 約4億5000万平方フィート
主要サブマーケット ミッドタウン、ミッドタウン・サウス、ダウンタウン
2023年第2四半期の主要指標
平均賃料 $75.32/平方フィート/年
空室率 16.2%(過去最高水準)
新規供給 約130万平方フィート(2023年通年予測)[11]

 

注目すべきトレンドは以下のとおりです。

フレキシブルオフィススペースの需要増加(2023年にはマンハッタンのオフィススペースの約5%がコワーキングスペースに)

•ESG(環境・社会・ガバナンス)基準を満たすグリーンビルディングへの需要増加

•ハイブリッドワークモデルの普及によるオフィス需要の質的変化

 

2-3. 小売市場

ニューヨークの小売市場は、観光客と地元住民の両方をターゲットにした多様な商業施設で構成されています。

 

2023年第2四半期の主要指標(プライム・リテールの平均賃料)

指標 詳細
フィフスアベニュー(49丁目〜59丁目) $2,300/平方フィート/年
タイムズスクエア $1,650/平方フィート/年
ソーホー $420/平方フィート/年
空室率 約15.3%(2019年第4四半期は11.1%)[12]

 

注目すべきトレンドは以下のとおりです。

体験型小売の台頭(ポップアップストア、ショールーミングなど)

•Eコマースとの融合(オムニチャネル戦略の重要性増大

•高級ブランドの堅調な需要(特にフィフスアベニューとメイディソンアベニュー)

 

2-4. 多世帯住宅

ニューヨーク市の住宅市場は、常に高い需要と限られた供給によって特徴づけられています。

 

2023年第2四半期の主要指標

指標 詳細
マンハッタンの平均賃料(1ベッドルーム) $4,300/月
空室率 約2.5%(歴史的に低い水準)
新規供給 約12,000戸(2023年通年予測)[13]

 

注目すべきトレンドは以下のとおりです。

ラグジュアリー・レンタルアパートメントの需要増加

•アフォーダブル住宅の不足と政策的対応

•郊外への人口流出と都心回帰の混在

 

2-5. ホテル市場

ニューヨークのホテル市場は、パンデミックの影響から徐々に回復しつつあります。

 

2023年第2四半期の主要指標

指標 数値
平均客室単価(ADR) $295
稼働率 85.2%
RevPAR(客室当たり収益)[14] $251

 

注目すべきトレンドは以下のとおりです。

•ラグジュリーホテルの堅調な回復

短期滞在型アパートメントの需要増加

サステナビリティと地域文化を重視したホテルコンセプトの台頭

 

2-6. 産業用不動産

Eコマースの成長に伴い、ニューヨーク市とその周辺地域の産業用不動産市場は急速に拡大しています。

 

2023年第2四半期の主要指標

指標
ニューヨーク市外縁部の平均賃料 $25.50/平方フィート/年
空室率 3.2%(歴史的低水準)
新規供給 約500万平方フィート(2023年通年予測)[15]

 

注目すべきトレンドは以下のとおりです。

•ラストマイル配送センターの需要増加

•マルチストーリー倉庫の開発

•コールドストレージ施設への投資増加

 

ニューヨークの商用不動産市場は、その規模と多様性から、投資家に多様な機会を提供しています。しかし、同時に高い参入障壁や競争の激しさも特徴としています。

 

次節では、最近のニューヨークの商用不動産の動向について、より詳細に分析していきます。

 

引用元:
[10] Cushman & Wakefield. (2021). Marketbeat Manhattan Office Q4 2021.
[11] JLL. (2023). New York Office Market Overview Q2 2023.
[12] CBRE. (2023). Manhattan Retail MarketView Q2 2023.
[13] Douglas Elliman. (2023). New York City Rental Market Report Q2 2023.
[14] STR. (2023). New York City Hotel Performance Q2 2023.
[15] JLL. (2023). New York Industrial Market Overview Q2 2023.

 

3. 最近のニューヨークの商用不動産の動向

ニューヨークの商用不動産市場は常に変化し続けており、特にCOVID-19パンデミックの影響を受けて大きな転換期を迎えています。

以下に、最新の動向とそれが投資機会に与える影響について詳しく分析します。

 

3-1. オフィス市場の変容

a) リモートワークの影響

パンデミックを契機に急速に普及したリモートワークは、オフィス需要に大きな影響を与えています。JLLの調査によると、2023年第2四半期時点でマンハッタンのオフィスワーカーの平均出勤日数は週3日程度にとどまっています[16]。これにより、多くの企業がオフィススペースの最適化を図り、一人当たりのオフィス面積は減少傾向にあります。

 

b) フレキシブルオフィスの台頭

不確実性の高い環境下で、企業はより柔軟なオフィス戦略を求めるようになっています。CBREの報告によると、2023年までにニューヨーク市のフレキシブルオフィススペースは約1,000万平方フィートに達すると予測されています[17]。これは、2019年比で約30%の増加を意味します。

 

c) グレードによる二極化

最新設備を備えたクラスAオフィスビルへの需要は依然として強く、2023年第2四半期のクラスAオフィスの空室率は13.8%であるのに対し、クラスBオフィスは20.7%と大きな差があります[18]。

 

3-2. 小売市場の革新

a) 体験型小売の拡大

単なる商品販売にとどまらず、体験を重視した小売店舗が増加しています。例えば、ナイキのNYC House of Innovationでは、顧客がデジタル技術を活用して製品をカスタマイズできるなど、オンラインでは得られない体験を提供しています。

 

b) ポップアップストアの増加

短期の賃貸契約で出店するポップアップストアが人気を集めています。Cushman & Wakefieldの調査によると、2023年上半期にマンハッタンで出店したポップアップストアの数は、2019年同期比で約40%増加しています[19]。

 

c) ラグジュアリー市場の強さ

高級ブランドの需要は依然として強く、フィフスアベニューやマディソンアベニューでの出店が続いています。2023年第2四半期のフィフスアベニュー(49丁目〜59丁目)の平均賃料は、1平方フィートあたり年間$2,300で、依然として世界最高水準を維持しています[20]。

 

3-3. 住宅市場の動向

a) ラグジュアリーレンタルの需要増加

高所得層の間では、購入よりも賃貸を選択する傾向が強まっています。Douglas Ellimanの報告によると、2023年第2四半期のマンハッタンにおける高級賃貸物件(月額賃料$15,000以上)の成約数は、前年同期比で15%増加しています[21]。

 

b) アフォーダブル住宅の不足

一方で、中低所得者向けの手頃な価格の住宅不足は深刻な問題となっています。ニューヨーク市住宅保全開発局の統計によると、2023年時点で約100万世帯が収入の50%以上を住宅費に充てており、これは2010年比で約20%の増加です[22]。

 

c) コンバージョンプロジェクトの増加

オフィス需要の減少を受けて、オフィスビルを住宅や他の用途に転換するプロジェクトが増加しています。ニューヨーク市の推計によると、2030年までに約2,000万平方フィートのオフィススペースが他用途に転用される可能性があります[23]。

 

3-4. ホテル市場の回復

a) 観光需要の回復

国際線の運航再開と観光需要の回復に伴い、ホテル市場は徐々に改善しています。NYC & Companyの予測によると、2023年のニューヨーク市への観光客数は約6,100万人に達し、2019年の水準(6,670万人)の約91%まで回復すると見込まれています[24]。

 

b) ビジネス需要の変化

一方で、ビジネス需要の回復は鈍く、特に平日の稼働率に影響を与えています。STRの調査によると、2023年第2四半期のマンハッタンのホテル稼働率は、週末が平均90%を超えているのに対し、平日は70%台前半にとどまっています[25]。

 

c) 新しいホテルコンセプトの台頭

長期滞在型ホテルやローカル体験を重視したブティックホテルなど、新しいコンセプトのホテルが注目を集めています。

 

3-5. 産業用不動産の急成長

a) Eコマースの影響

オンラインショッピングの急成長により、特にラストマイル配送センターの需要が高まっています。CBREの予測によると、2023年から2025年にかけて、ニューヨーク市とその周辺地域で約2,000万平方フィートの新規産業用不動産が供給される見込みです[26]。

 

b) 都市型物流施設の開発

マルチストーリーの物流施設や既存の商業施設の一部を物流用途に転換するなど、都市部での革新的な物流ソリューションが増加しています。

 

c) コールドチェーン需要の増加

食品配送サービスの成長に伴い、冷蔵・冷凍倉庫への需要が高まっています。Newmark Knightの調査によると、2023年第2四半期時点でニューヨーク市周辺のコールドストレージ施設の空室率は2%未満と、極めて低い水準となっています[27]。

 

これらの動向は、ニューヨークの商用不動産市場がパンデミック後の「新常態」に適応しつつあることを示しています。

投資家にとっては、これらの変化を的確に捉え、新たな機会を見出すことが重要となるでしょう。

 

引用元:
[16] JLL. (2023). Future of Office Demand Study.
[17] CBRE. (2023). U.S. Flexible Office Market 2023.
[18] Cushman & Wakefield. (2023). Marketbeat Manhattan Office Q2 2023.
[19] Cushman & Wakefield. (2023). New York City Retail Market Report Q2 2023.
[20] JLL. (2023). New York City Retail Market Overview Q2 2023.
[21] Douglas Elliman. (2023). Manhattan Luxury Rental Market Report Q2 2023.
[22] New York City Department of Housing Preservation and Development. (2023). Housing New York 2.0.
[23] New York City Department of City Planning. (2023). NYC Office Conversion Study.
[24] NYC & Company. (2023). New York City Tourism Forecast 2023.
[25] STR. (2023). New York City Hotel Performance Q2 2023.
[26] CBRE. (2023). U.S. Industrial & Logistics Figures Q2 2023.
[27] Newmark Knight Frank. (2023). New York City Industrial Market Report Q2 2023.

 

4. ニューヨーク市の商用不動産契約期間と条件

ニューヨーク市の商用不動産契約は、物件のタイプや規模、テナントの信用力によって大きく異なります。以下に、一般的な契約期間と主要な条件をまとめました。

 

4-1. 契約期間

契約期間はテナントの規模やロケーションなどによって異なります。

以下はテナントのカテゴリとタイプ別によるおよその契約期間を示した表です。

カテゴリ テナントのサイズ/タイプ 契約期間
オフィススペース 大規模テナント(5,000平方フィート以上) 10年〜15年
中規模テナント(1,000〜5,000平方フィート) 5年〜10年
小規模テナント(1,000平方フィート未満) 3年〜5年
コワーキングスペース/フレキシブルオフィス 1ヶ月〜2年
小売スペース プライムロケーション 10年〜20年
セカンダリーロケーション 5年〜10年
ポップアップストア 1ヶ月〜1年
産業用スペース 大規模物流施設 10年〜20年
中小規模倉庫 5年〜10年
ホテル(運営契約) ラグジュアリーブランド 20年〜30年
ミッドスケールブランド 15年〜20年

 

4-2. 主要な契約条件

続いて、契約条件に関する基礎知識をまとめました。

事業計画においても重要なポイントとなりますので、要点を押さえておくことが重要です。

 

a) 賃料構造

固定賃料: 毎年一定額を支払う

段階的賃料上昇(Step-up Rent): 契約期間中に定期的に賃料が上昇

インデックス連動賃料: 消費者物価指数(CPI)などに連動して賃料が調整

パーセンテージレント(主に小売): 基本賃料に加えて売上の一定割合を支払う

 

b) 賃料フリー期間

新規契約: 3ヶ月〜12ヶ月(物件の状態や必要な内装工事により変動)

更新契約: 0ヶ月〜3ヶ月

 

c) テナント改装手当(TI: Tenant Improvement Allowance)

クラスAオフィス: $50〜$150/平方フィート

クラスBオフィス: $30〜$80/平方フィート

小売スペース: $50〜$200/平方フィート(立地により大きく変動)

 

d) 固定費の負担

トリプルネット(NNN): テナントが賃料に加えて、固定資産税、保険、共益費を負担

モディファイドグロス: テナントが賃料と電気代を負担し、その他の費用はオーナーが負担

 

e) サブリース権

多くの場合、オーナーの承諾を条件にサブリースが認められる

 

f) 更新オプション

通常1回〜2回の更新オプションが含まれ、各オプションは約5年程度

 

g) 退去時の原状回復義務

一般的にテナントに原状回復義務があるが、交渉により免除されることもある

 

h) 個人保証

小規模テナントや新規事業の場合、個人保証が要求されることが多い

 

i) セキュリティデポジット

通常、3ヶ月〜6ヶ月分の賃料相当額

 

j) エスカレーション条項

固定費(税金、保険、共益費など)の上昇分をテナントが負担

 

k) 中途解約条項(Break Clause)

長期契約の場合、特定の時点で契約を終了できるオプションが含まれることがある

 

4-3. 業種別の特殊条件

a) 小売

専有禁止条項(Exclusivity Clause): 同じショッピングセンター内で競合店の出店を制限

共同広告費(CAM: Common Area Maintenance)の負担

 

b) オフィス

拡張オプション(Expansion Option): 隣接スペースが空いた場合の優先交渉権

名称権(Naming Rights): 大規模テナントによるビル名称の権利

 

c) 産業用

24時間操業の権利

重量物や危険物の取り扱いに関する規定

 

4-4. 最近のトレンド

a) コロナ禍の影響

不可抗力条項(Force Majeure)の範囲拡大

パンデミック時の賃料減額条項の追加

 

b) サステナビリティへの対応

グリーンリース条項の追加(エネルギー効率改善の費用分担など)

 

c) フレキシビリティの重視

短期契約や中途解約オプションの増加

スペースの拡縮に関する柔軟な条項の追加

 

これらの契約条件は、市場状況や個別の交渉により大きく変動する可能性があります。

特にプライムロケーションや大規模テナントの場合、より柔軟で有利な条件を獲得できることが多いです。

 

契約交渉の際は、経験豊富な不動産弁護士や商業用不動産ブローカーのサポートを受けることが強く推奨されます。

彼らの専門知識と交渉スキルにより、より有利な契約条件を確保し、潜在的なリスクを最小限に抑えることができます。

 

次節では、これらの動向を踏まえた上で、ニューヨークの商用不動産投資における金額の目安について詳しく見ていきます。

 

4-5. 金額の目安

ニューヨークの商用不動産投資には、物件のタイプ、規模、立地によって幅広い投資金額の選択肢があります。以下に、主要なセクターごとの投資金額の目安をご紹介いたします。

まずはRent(借りる場合)からです。

 

ニューヨーク市の商用不動産レンタル

金額 (2023年第2四半期現在)

以下に、ニューヨーク市の主要な商用不動産タイプと地域別のレンタル金額を表にまとめています。

これらの数値は2023年第2四半期の平均値であり、具体的な物件によって変動する可能性があります。

 

オフィススペース(年間賃料/平方フィート)

地域 エリア 年間賃料($/平方フィート)
マンハッタン ミッドタウン $85.12
ミッドタウン・サウス $79.56
ダウンタウン $63.45
ブルックリン ダウンタウン・ブルックリン $54.23
クイーンズ ロングアイランドシティ $47.89

 

小売スペース(年間賃料/平方フィート)

地域 エリア 年間賃料($/平方フィート)
マンハッタン主要エリア フィフスアベニュー(49丁目〜59丁目) $2,300
タイムズスクエア $1,650
マディソンアベニュー(57丁目〜72丁目) $1,100
ソーホー $420
アッパーイーストサイド $350
ブルックリン ウィリアムズバーグ(ベッドフォード通り) $250
クイーンズ アストリア(30番街) $120

 

産業用スペース(年間賃料/平方フィート)

地域 エリア 年間賃料($/平方フィート)
ブルックリン サンセットパーク $28.50
イーストニューヨーク $25.75
クイーンズ マスペス $27.80
ロングアイランドシティ $30.20
ブロンクス ハントポイント $24.60

 

ホテル(1泊/部屋)

地域 ホテルクラス 1泊料金($)
マンハッタン ラグジュアリークラス $520
アップスケールクラス $340
ミッドスケールクラス $230
ブルックリン アップスケールクラス $280
ミッドスケールクラス $190

※これらは平均日次料金(ADR)であり、シーズンや特定のイベントにより大きく変動します。

 

多世帯住宅(月額賃料/ユニット)

地域 住宅クラス 月額賃料($)
マンハッタン ラグジュアリークラス $7,500
ミッドレンジ $4,300
ブルックリン ラグジュアリークラス $5,200
ミッドレンジ $3,100
クイーンズ ラグジュアリークラス $4,100
ミッドレンジ $2,700

※これらは平均値であり、ユニットのサイズや具体的な立地により大きく異なります。

 

これらの賃料は、立地、建物の質、設備、契約条件などによって大きく変動する可能性があります。また、多くの商業物件では、賃料に加えて共益費や税金などの追加費用が発生することも一般的です。

投資や賃貸を検討する際は、これらの平均値を参考にしつつ、具体的な物件ごとの詳細な分析を行い、専門家のアドバイスを求めることが重要です。

 

5. 物件タイプ別の価格帯と総投資額(2023年第2四半期現在)

5-1. オフィスビル

物件タイプ 価格帯 総投資額
クラスA(プライム物件) $1,000〜$3,000/平方フィート $100,000,000〜$1,000,000,000+
クラスB $500〜$1,000/平方フィート $50,000,000〜$500,000,000
クラスC $300〜$700/平方フィート $20,000,000〜$200,000,000

例:2023年に売却されたマンハッタンミッドタウンの高層オフィスビル(約100万平方フィート)の取引価格は約$12億でした[28]。

 

5-2. 小売店舗

物件タイプ 価格帯 総投資額
プライムロケーション
(フィフスアベニュー、タイムズスクエアなど)
$5,000〜$20,000/平方フィート $20,000,000〜$200,000,000+
セカンダリーロケーション $1,000〜$5,000/平方フィート $5,000,000〜$50,000,000

例:2022年に売却されたフィフスアベニューの高級小売店舗ビル(約25,000平方フィート)の取引価格は約$4億5,000万でした[29]。

 

5-3. 多世帯住宅

物件タイプ 価格帯 総投資額
ラグジュアリーアパートメント $1,000〜$2,000/平方フィート $50,000,000〜$500,000,000+
ミッドマーケットアパートメント $500〜$1,000/平方フィート $20,000,000〜$100,000,000

例:2023年に売却されたアッパーイーストサイドの高級アパートメントビル(約200戸)の取引価格は約$3億2,000万でした[30]。

 

5-4. ホテル

物件タイプ 価格帯 総投資額
ラグジュアリーホテル $1,000,000〜$2,000,000/客室 $100,000,000〜$1,000,000,000+
ミッドスケールホテル $300,000〜$700,000/客室 $30,000,000〜$200,000,000

例:2022年に売却されたマンハッタンミッドタウンの5つ星ホテル(約300室)の取引価格は約$5億5,000万でした[31]。

 

5-5. 産業用不動産

物件タイプ 価格帯 総投資額
都市型物流施設 $300〜$600/平方フィート $50,000,000〜$300,000,000
郊外の倉庫 $100〜$300/平方フィート $20,000,000〜$100,000,000

例:2023年に売却されたブルックリンの大規模物流施設(約50万平方フィート)の取引価格は約$2億5,000万でした[32]。

 

これらの金額はあくまで目安であり、実際の取引価格は物件の具体的な特性や市場状況によって大きく変動する可能性があります。

また、これらの投資金額は、多くの場合、機関投資家や大手不動産投資会社を想定したものです。

 

引用元:
[28] Real Capital Analytics. (2023). US Capital Trends Q2 2023.
[29] The Real Deal. (2022). Fifth Avenue Retail Building Sells for $450M.
[30] Commercial Observer. (2023). UES Luxury Apartment Building Sells for $320M.
[31] Hotel Business. (2022). Midtown Manhattan Luxury Hotel Sold for $550M.
[32] Commercial Property Executive. (2023). Brooklyn Logistics Facility Trades for $250M.

 

6. 個人や中小規模投資家向けの選択肢

個人投資家や中小規模の投資家にとっては、以下のような選択肢もあります。

 

1. 不動産投資信託(REIT)への投資

最低投資額は株式1株分からで、数百ドルから始められます。

 

2. クラウドファンディングプラットフォームを通じた投資

多くのプラットフォームで、最低投資額は$5,000〜$25,000程度です。

 

3. 不動産ファンドへの投資

プライベートエクイティ不動産ファンドの最低投資額は通常$250,000〜$1,000,000程度ですが、一部のファンドではより低い最低投資額を設定しているものもあります。

 

4. 小規模な商業用不動産への直接投資

例えば、小規模なオフィスビルやアパートメントビルディングへの投資では、$1,000,000〜$5,000,000程度から始められる場合もあります。

 

ニューヨークの商用不動産市場は、その高い収益性と安定性から、世界中の投資家を惹きつけています。

しかし、高額な投資金額と複雑な市場動向ゆえに、慎重な調査と専門家のアドバイスが不可欠です。

 

次節では、これらの投資を実行する際の契約の仕方や流れについて詳しく見ていきましょう。

 

7. 契約の仕方や流れ、目安

ニューヨークの商用不動産取引は、その規模と複雑性から、慎重かつ専門的なアプローチが求められます。

以下、典型的な取引の流れと、各段階での重要なポイントについて詳細に解説いたします。

 

7-1. 物件の特定と初期評価

目安期間:2〜4週間

 

a) 市場調査
投資目的に合致する物件を特定するため、ブローカーや不動産データベース(CoStar、Real Capital Analyticsなど)を活用します。

 

b) 初期デューデリジェンス
物件の基本情報(規模、立地、テナント構成、収益性など)を確認します。

 

c) 初期評価
投資基準(キャップレート、IRR、エクイティマルチプルなど)に基づいて物件を評価します。

 

7-2. オファーと基本合意

目安期間:2〜6週間

 

a) 投資提案書(IOI: Indication of Interest)の提出
物件所有者に対して、購入意思と概算価格を非拘束的に伝えます。

 

b) 機密保持契約(NDA)の締結
詳細な物件情報へのアクセスのため、NDOを締結します。

 

c) 詳細情報の精査
財務諸表、賃貸契約、建物の状態などの詳細情報を分析します。

 

d) 基本合意書(LOI: Letter of Intent)の交渉と締結
取引の主要条件(価格、デポジット、デューデリジェンス期間、クロージング日など)を定めます。

 

7-3. 詳細なデューデリジェンス

目安期間:30〜60日(物件の規模や複雑さにより変動)

 

a) 財務デューデリジェンス
過去の財務諸表、テナントの信用力、将来の収益予測などを精査します。

 

b) 法的デューデリジェンス
所有権、抵当権、訴訟リスク、ゾーニング規制などを確認します。

 

c) 物理的デューデリジェンス
建物の構造、設備の状態、環境リスクなどを専門家が調査します。

 

d) 市場調査
競合物件、地域の経済動向、将来の開発計画などを分析します。

 

7-4. 購入契約の交渉と締結

目安期間:2〜4週間

 

a) 購入契約書(PSA: Purchase and Sale Agreement)の作成:
取引の詳細な条件を定めた法的拘束力のある契約書を作成します。

 

b) 契約条件の交渉
価格調整、表明保証、補償条項、クロージング条件などを交渉します。

 

c) 契約締結とデポジットの支払い
通常、購入価格の5〜10%のデポジットを支払います。

 

7-5. ファイナンスの手配

目安期間:4〜8週間

 

a) 融資の申請
必要に応じて、銀行や他の金融機関に融資を申請します。

 

b) 評価書の取得
貸し手が独立した評価会社に物件の評価を依頼します。

 

c) 融資条件の交渉と確定
金利、返済期間、担保条件などを交渉し、融資承認を取得します。

 

7-6. クロージングの準備

目安期間:2〜4週間

 

a) タイトル保険の手配
所有権の瑕疵に対する保護のため、タイトル保険を購入します。

 

b) 譲渡税の計算と準備
ニューヨーク州とニューヨーク市の譲渡税(合計で取引価格の約2.8%)を準備します。

 

c) クロージング文書の準備
譲渡証書、譲渡税申告書、精算書などの必要書類を準備します。

 

7-7. クロージング

目安期間:1日(大規模取引の場合は数日かかることも)

 

a) 最終ウォークスルー
クロージング直前に物件の最終確認を行います。

 

b) 資金の決済
エスクロー口座を通じて、売買代金の決済を行います。

 

c) 所有権の移転
譲渡証書の引き渡しにより、正式に所有権が移転します。

 

全体の目安期間:3〜6ヶ月(物件の規模や複雑さ、市場条件により変動)

 

重要なポイント

1. 専門家チームの構築

経験豊富な不動産弁護士、会計士、ブローカー、エンジニアなど、信頼できる専門家チームを構築することが成功の鍵です。

 

2. 柔軟性と忍耐

不動産取引は予期せぬ問題や遅延が発生することが多いため、柔軟性と忍耐が求められます。

 

3. リスク管理

契約書に適切な保護条項(表明保証、補償条項など)を盛り込み、リスクを最小限に抑えることが重要です。

 

4. 市場動向の把握

取引期間中も市場動向を注視し、必要に応じて戦略を調整することが大切です。

 

5. コミュニケーション

売主、ブローカー、弁護士、金融機関など、関係者間の緊密なコミュニケーションを維持することが、スムーズな取引の鍵となります。

 

ニューヨークの商用不動産取引は、その規模と複雑性から初心者にとって難しく感じられるかもしれません。

しかし、適切な準備と専門家のサポート、そして慎重なアプローチにより、魅力的な投資機会を見出すことができます。

 

終わりに

本稿では、アメリカの商業不動産市場、特にニューヨーク市場に焦点を当て、その機会とリスクについて包括的に分析しました。

世界有数の不動産市場であるニューヨークは、その規模、多様性、そしてグローバルな影響力において他に類を見ません。

 

ニューヨークの商業不動産市場は依然として世界有数の投資先であり続けています。

その主な理由は以下の通りです。

 

1. 経済の中心地としての地位

世界経済の中心地としてのニューヨークの地位は、長期的な不動産需要を支える強固な基盤となっています。

 

2. 革新のハブである

テクノロジー企業や新興企業の集積地として、ニューヨークは常に新しいアイデアと需要を生み出し続けています。

 

3.多様性

様々なセクターと資産クラスが存在することで、分散投資の機会が豊富にあります。

 

4.流動性

世界中の投資家が注目する市場であるため、比較的高い流動性が確保されています。

 

5.透明性

法的枠組みの整備と情報の豊富さにより、投資判断に必要な透明性が確保されています。

 

投資家の皆様にとって、ニューヨークの商業不動産市場は依然として魅力的な投資先であり続けるでしょう。

 

しかし、成功を収めるためには、市場の変化を的確に捉え、新しい技術やビジネスモデルに積極的に適応する必要があります。

同時に、専門家のアドバイスを積極的に求め、綿密な市場分析と慎重なリスク管理を行うことが不可欠です。

最後に、不動産投資は長期的な視点が重要であることを強調します。

短期的な市場の変動に一喜一憂するのではなく、長期的なトレンドとファンダメンタルズに注目し、戦略的なアプローチを取ることが成功の鍵となるでしょう。

 

ニューヨークの商業不動産市場は、今後も世界の不動産投資の中心地であり続けると同時に、不動産業界の革新を牽引する存在です。

この動的で魅力的な市場に参加することは、リスクと機会の両方を内包していますが、適切な戦略と専門知識を持てば、大きな成功を収める可能性があります。

 

本稿が、皆様のニューヨーク商業不動産市場への理解を深め、投資判断の一助となれば幸いです。

市場は常に変化し続けているため、最新の情報と専門家のアドバイスを求め続けることをお勧めします。

ニューヨークの商業不動産市場は、挑戦と機会に満ちた魅力的な舞台です。

この舞台で成功を収めるためには、慎重さと大胆さ、そして何よりも市場への深い理解が必要です。

 

皆様の事業・投資が実り多きものとなることを心より願っております。

 

記事をお読みいいただき、ありがとうございました。

100年前も現在も、そして100年後も世界の中心であり続けるニューヨーク。そんなニューヨークでの不動産投資は大きな価値をもたらす可能性があること、ご理解いただけたかと存じます。

 

当社Reinvent NY Incでは、2019年よりアメリカ進出・移住される個人様、企業様のご支援を続け、ニューヨーク不動産投資のあらゆる側面をサポートする総合的なサービスを提供しています。

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