マイアミでコンドミニアムを買う場合、ニューヨークと違うのは価格よりも、税と保険と建物の法律です。フロリダ州には州の個人所得税も遺産税もありません。
一方で、2021年の建物崩落事故のあとに州法が改正され、築30年を迎えるコンドミニアムには構造の点検と修繕積立金の積立が義務になりました。古い建物では管理費の引き上げや一時金の徴収が続いています。
日本にお住まいの方にとって、連邦の税は場所を問わず同じです。売却時の源泉徴収15%(FIRPTA)と、非居住者の遺産税の基礎控除6万ドル(約930万円、2026年現在、1ドル=155円換算)は、マイアミでもニューヨークでも変わりません。
税、建物の法律、保険、名義の順に、ニューヨークとの違いを見ていきます。
1. 税金はニューヨークとどこが違うか

違いが大きいのは、州の所得税、州の遺産税、売買時の税の3点です。固定資産税は税率よりも、評価額の上がり方に上限がある点が異なります。
連邦の累進税率と州ごとの税率は、アメリカの所得税率の記事に一覧でまとめています。
以下は、マイアミとニューヨーク市の主な税を並べた表です。
| 項目 | マイアミ(フロリダ州) | ニューヨーク市 |
|---|---|---|
| 州の個人所得税 | なし | 州は最高10.9%。市の居住者は市税が最高3.876% |
| 州の遺産税 | なし | あり |
| 購入時の買主の税 | ローンを組む場合のみ、借入額の0.35%と0.2% | 100万ドル以上でマンションタックス1%から3.9% |
| 売却時の譲渡税 | 価格の0.6%(マイアミ・デイド郡) | 市1%から1.425%、州0.4%から0.65% |
| 固定資産税の評価額 | 上昇は年10%まで(学区分を除く)。主たる住居は年3%まで | 物件の区分ごとに段階的に反映 |
※上記は、2026年現在の法定の税率をもとに整理したものです。譲渡税はどちらの州も売主が負担するのが通例です。
固定資産税は買った翌年に変わります
フロリダ州では、名義が変わった翌年の1月1日時点で、評価額が時価に引き直されます。前の所有者が長く持っていた物件ほど、売り出し資料の税額と、ご自身に届く請求額の差が大きくなります。
主たる住居の軽減(ホームステッド)は、フロリダ州に住所を置いて実際に住む方の制度です。詳しくはフロリダ州歳入局の案内に記載があります。日本にお住まいの方、別荘や賃貸用として持つ方は対象になりません。
2. 2021年の崩落事故のあと、建物の法律が変わりました

2021年6月、マイアミ近郊のサーフサイドで12階建てのコンドミニアムが崩落し、98名が亡くなりました。築40年の建物で、修繕の先送りが続いていたことが背景にありました。
これを受けてフロリダ州は2022年と2023年に法律を改正し、3階建て以上のコンドミニアムに次の2つを義務づけました。
①構造の点検(マイルストーン・インスペクション)。築30年に達した時点と、その後10年ごとに、技術者による点検を受けます。沿岸部などは自治体の判断で築25年からになります。
②修繕積立金の調査と積立。屋根、構造体、防水、配管、電気設備などについて10年ごとに調査を行い、必要額を積み立てます。2024年末以降の予算からは、所有者の投票で積立を見送ることができなくなりました。
以上で見てきたように、これまで積立を見送ってきた建物ほど、一度に負担が表に出ます。築30年前後の海沿いのコンドミニアムでは、月々の管理費の引き上げと、数万ドル単位の一時金の徴収が同時に起きることがあります。
価格が周辺より低い住戸は、この負担が織り込まれた結果であることが少なくありません。
契約前に取り寄せる書類
確認する書類は、点検報告書の要約、積立金の調査報告書、積立金の残高、過去と予定の一時金の4点です。中古の住戸では、書類を受け取ってから3営業日は契約を取り消すことができます。
点検や積立が済んでいない建物は、ローンが付きにくくなる点にもご注意ください。買うときだけでなく、将来売るときの買主の層にも影響します。
借り入れを前提にする場合、駐在の方や非居住者がどの条件で借りられるかはアメリカの住宅ローンのガイドで説明しています。
3. 保険は風と水で別に考えます

マイアミの保険は、ハリケーンの風による損害と、洪水による損害が別の契約になります。洪水は通常の住宅保険の対象外で、連邦の洪水保険か民間の洪水保険に別途加入します。
物件が洪水区域に入っているかどうかは、連邦緊急事態管理庁(FEMA)の洪水マップに住所を入れると確認できます。
コンドミニアムの場合、建物全体の保険は管理組合が契約し、保険料は管理費を通じて各戸が負担します。所有者が自分で入るのは、室内の内装と家財、賠償責任を対象とする保険です。
民間の保険会社が引き受けない物件のために、州が設立したシチズンズ・プロパティ・インシュアランスという受け皿があります。建物の保険料が上がれば管理費が上がるため、管理組合の予算書で保険料の推移を見ておくことをご推奨いたします。
一方で、ニューヨークにも水のリスクはあります。2012年のハリケーン・サンディではマンハッタン南部やブルックリンの水辺が浸水しました。違いはリスクの有無ではなく、マイアミでは保険料と積立金が毎年の保有コストの中心になるという点です。
4. 名義と居住区分で変わること

州の所得税がないという利点は、誰の名義で、どこに住んで持つかで効き方が変わります。場合を分けて整理します。
①日本にお住まいの個人。賃料と売却益に州の所得税はかかりません。連邦の所得税、売却時の15%の源泉徴収(FIRPTA)、遺産税の基礎控除6万ドルはニューヨークと同じです。
②法人名義。フロリダ州には法人所得税があり、税率は5.5%です。州所得税がないのは個人の話であり、法人で持つ場合は別の計算になります。出資者が1人のLLCは税務上ないものとして扱われるため、源泉徴収と遺産税は個人名義と同じです。
③フロリダ州に移り住む方。主たる住居の軽減と、評価額の上昇を年3%までに抑える仕組みを使えます。ニューヨークに住居を残す場合は、年183日以上の滞在でニューヨーク州の居住者と判定されるルールがあり、滞在日数の記録が必要になります。
このほか、2023年に施行された州法により、中国など州が指定する国に関わる買主の不動産取得が制限されています。日本は指定されていませんが、決済の際に、対象に当たらない旨の宣誓書への署名を求められます。
短期の貸し出しは、建物の規約と市の用途規制の両方で可否が決まります。マイアミビーチ市は住宅地域の大半で短期賃貸を禁じています。ニューヨーク市は住戸全体を30日未満で貸すことを禁じており、どちらの都市でも、短期賃貸の収入を前提にした購入はお勧めしておりません。
まとめ

マイアミは、州の所得税と遺産税がない代わりに、保険料と修繕積立金が保有コストを左右する市場です。ニューヨークは、税の負担が重い代わりに、買主と売主の層が厚く、売りたいときに売りやすい市場です。
どちらが合うかは、住むのか置いておくのか、個人か法人か、相続まで見据えるのかで変わります。
ここまでは一般的な整理です。建物ごとの積立金の状況と、ご自身の居住区分に合わせた名義の設計は、個別にご相談ください。ニューヨークとの比較はニューヨークとマイアミの不動産比較に、州所得税のない州で持つ場合の考え方は所得税ゼロの州で買えば節税になるのかにまとめています。
ニューヨーク、ドバイ、シンガポール、ロンドン、東京の価格・税・外国人規制を並べた一覧は世界主要都市の不動産比較にまとめています。
よくある質問
フロリダ州に州所得税がないことは、日本に住んだままマイアミの物件を持つ場合にも関係しますか。
関係します。フロリダ州は個人の賃料収入や売却益に州の所得税を課しません。ただし連邦の所得税、売却時の15%の源泉徴収、非居住者の遺産税の基礎控除6万ドルは、どの州で持っても同じです。法人名義で持つ場合は、フロリダ州の法人所得税5.5%の対象になります。
マイアミの築年数の古いコンドミニアムで管理費が上がっているのはなぜですか。
2021年のサーフサイドの崩落事故を受けてフロリダ州法が改正され、3階建て以上のコンドミニアムに築30年時点の構造点検と、修繕積立金の調査および積立が義務づけられたためです。2024年末以降の予算からは積立を見送ることができなくなり、積立が不足していた建物で管理費の引き上げや一時金の徴収が起きています。
日本在住の所有者はフロリダ州のホームステッドの軽減を受けられますか。
受けられません。ホームステッドは、フロリダ州に住所を置いて実際に住む方の主たる住居を対象とする固定資産税の軽減制度です。日本にお住まいの方が別荘や賃貸用として持つ物件は対象外で、評価額の上昇の上限も年3%ではなく年10%が適用されます。
日本国籍の人はフロリダ州の外国人による不動産購入の規制の対象になりますか。
2023年に施行されたフロリダ州法が取得を制限しているのは、中国など州が指定する国に関わる買主です。日本は指定されていません。ただし決済の際には、買主が規制の対象に当たらない旨の宣誓書に署名することが求められます。
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