
日本在住のまま米国の不動産を持って亡くなると、米国の遺産税がかかります。非居住者の基礎控除は6万ドルしかありません。2026年時点の連邦税法の定めで、米国居住者に認められる1,500万ドルとは250倍の差があります。100万ドルの物件なら、概算で33万ドル前後の遺産税になります。
非居住者の遺産税は、いくらかかるのか
数字で見ます。100万ドルの物件を非居住者のまま持って亡くなった場合、課税ベースは基礎控除6万ドルを引いた94万ドルです。累進税率18%から40%を適用すると、概算で33万ドル前後になります。物件の3分の1が税金で消える計算です。
なお日米間には相続税に関する条約があり、米国内資産が全世界資産に占める割合に応じて控除を按分して増やせる余地があります。全世界の資産構成によって結果が変わるため、6万ドルという数字だけで諦める前に、条約の適用可否を必ず確認してください。
| 立場 | 遺産税の基礎控除(2026年・連邦) | 100万ドルの物件での概算 |
|---|---|---|
| 米国居住者・市民 | 1,500万ドル | 課税なし |
| 非居住者(条約適用なし) | 6万ドル | 約33万ドル |
| 非居住者(日米条約の按分適用) | 資産構成に応じて按分 | 全世界資産の構成で変わる |
生前に売っておく方が得なのか
単純ではありません。遺産税を避けるために生前に売却すると、今度は譲渡益への所得税がかかります。持ったまま相続させると、相続人の取得費が相続時の時価に洗い替えられるため、含み益への所得税は消えます。含み益の大きい物件では、所得税で47万6,000ドル浮く代わりに遺産税で113万ドル取られる、という綱引きになります(譲渡益の規模による計算例で、実額は物件ごとに変わります)。
結論はどちらか一方に決まっているのではなく、含み益の大きさと資産全体の規模で逆転します。含み益が小さければ生前売却が有利に働きやすく、含み益が大きく資産全体が条約の按分でカバーできる規模なら、持ち切る選択に分があります。
税金のほかに、何が相続人を待っているのか
米国の不動産は、相続の際に原則としてプロベート(裁判所の検認手続き)を通ります。日本在住の相続人にとっては、米国の裁判手続きを海外から進めることになり、完了まで1年以上かかることも珍しくありません。手続き中は売却も賃貸の変更もできず、弁護士費用もかかります。
遺産税は原則9ヶ月以内の現金納付です。プロベートで物件が動かせないまま納税期限が来る、という時間差が実務上の急所になります。リビング・トラストなどでプロベートを避ける設計は、税金とは別に、この時間の問題への備えとして機能します。
名義を工夫すれば避けられるのか
外国法人を経由して保有すると、米国の遺産税の対象から外れる構成があります。ただし弊害があります。法人経由の保有は、賃料や売却益への所得税の扱いが個人より不利になる場合があり、遺産税を消した代わりに毎年の所得税で払い続けることになりかねません。設立と維持の費用もかかります。
もう1つの現実的な備えは生命保険です。遺産税は物件を相続してから原則9ヶ月以内に現金で納める必要があり、納税資金が用意できないと物件を急いで売ることになります。税額そのものは消えませんが、急な売却という二次被害を防げます。
一般論はここまでです。持ち切るか、売るか、法人を挟むかは、含み益と資産全体の構成で答えが変わります。個別のご事情に応じた設計はお問い合わせフォームよりご相談ください。実際にお手伝いした取引は取引実績に掲載しています。
米国相続税の制度全体はアメリカ相続税の記事に、生前贈与との比較はアメリカの贈与税の記事にまとめています。プロベートの流れと回避策はプロベートの記事をご覧ください。
不動産以外のドル資産の扱いは資産の種類で変わるアメリカの相続の記事で比較しています。米国債と預金は原則、遺産税の対象外です。
よくある質問
非居住者の遺産税の基礎控除はいくらですか。
6万ドルです。2026年時点の連邦税法の定めで、米国居住者に認められる1,500万ドルとは大きな差があります。100万ドルの物件なら概算で33万ドル前後の遺産税になります。
日米の相続税条約で控除は増えますか。
増える余地があります。米国内資産が全世界資産に占める割合に応じて控除を按分できる場合があります。資産構成によって結果が変わるため、個別の確認が必要です。
遺産税を避けるために生前に売るべきですか。
含み益の大きさで変わります。持ったまま相続させると取得費が時価に洗い替えられ所得税が消えますが、遺産税がかかります。生前に売ると遺産税は消えますが譲渡益への所得税がかかります。
遺産税のほかに相続人が直面するものはありますか。
プロベートです。米国の裁判所の検認手続きを日本から進めることになり、1年以上かかることがあります。遺産税の納付期限は原則9ヶ月なので、時間差が実務上の急所になります。
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