2026年3月11日 Reinvent NY Inc

アメリカの固定資産税は年いくらか。州別の実効税率と物件価格別の目安

アメリカの固定資産税は、全米の実効税率が0.91%です(Tax Foundationが米国国勢調査局の2023年の調査から算出)。50万ドル(約7,750万円)の物件に当てはめると、年間4,550ドル(約71万円)が目安になります。

 

ただし、この平均値を予算に使うことはできません。税率を決めるのは州と郡と学区であり、ハワイ州の0.32%からイリノイ州の1.83%まで約6倍の開きがあるためです。ニューヨーク州は1.26%、テキサス州は1.36%、カリフォルニア州は0.70%です。

 

もう一点、日本と大きく違うところがあります。売り出し資料に載っている税額は前の所有者の税額だという点です。名義が変わった時点で評価をやり直す州があり、翌年の請求額が資料の数字と一致しないことがあります。

 

州別の実効税率と物件価格別の年間税額、評価額(Assessed Value)の決まり方、評価額に異議を申し立てる手順、そして購入後に税額が動く仕組みまで順に見ていきます。

 

1. アメリカの固定資産税システムの基礎知識

1. アメリカの固定資産税システムの基礎知識

アメリカの固定資産税は、日本の固定資産税とは根本的に異なるシステムを採用しています。まず理解していただきたいのは、固定資産税は連邦税ではなく地方税であるという点です。

 

課税主体と税収の使途

固定資産税は主に郡(County)、市(City)、学区(School District)によって課税されます。郡や市、学区にとって、固定資産税は主な財源です。仕組みの解説はTax Policy Centerにまとまっています。

 

税収は主に以下の用途に充てられます。

・公立学校の運営費

・消防・警察などの公共安全サービス

・道路・公園などのインフラ整備

・図書館・病院などの公共施設運営

 

評価額(Assessed Value)の決定方法

固定資産税の計算基準となる評価額は、各自治体の税務査定官(Tax Assessor)によって決定されます。評価方法は主に3つのアプローチが採用されています。

 

比較法(Sales Comparison Approach)では、近隣の類似物件の売買実績を基に評価額を算出します。

収益法(Income Approach)では、賃貸収入から必要経費を差し引いた純収益を基に算定されます。

そして原価法(Cost Approach)では、建物の再建築費用から減価償却を考慮して評価されます。

 

2. 州別固定資産税率の比較分析

2. 州別固定資産税率の比較分析

アメリカの固定資産税率は州によって大きく異なります。Tax Foundationが米国国勢調査局の米国コミュニティ調査(2023年)から算出した値では、全米の実効税率は0.91%です。実効税率は、持ち家にかかった固定資産税の総額を、住宅の価値の総額で割ったものです。

 

高税率州と低税率州の特徴

以下の表は、主要州の固定資産税率と投資家に人気の都市を含めた比較です。

 

州名 実効税率(2023年) 主要都市 50万ドルの物件に当てはめた年額 円換算(税額)
イリノイ州 1.83% シカゴ 9,150ドル 約142万円
ニュージャージー州 1.77% ニューアーク 8,850ドル 約137万円
テキサス州 1.36% ヒューストン 6,800ドル 約105万円
ニューヨーク州 1.26% ニューヨーク市 6,300ドル 約98万円
フロリダ州 0.74% マイアミ 3,700ドル 約57万円
カリフォルニア州 0.70% ロサンゼルス 3,500ドル 約54万円
ハワイ州 0.32% ホノルル 1,600ドル 約25万円

 

※実効税率はTax Foundation「Facts & Figures 2025」の表33(2023年、米国国勢調査局の米国コミュニティ調査から算出)による州全体の値で、表の都市の税率ではありません。年額は50万ドルの物件に当てはめた試算です(1ドル=155円換算)。

 

注目すべきは、ハワイ州の税率が全米で最も低い0.32%である一方、イリノイ州は1.83%と約6倍の開きがあることです。この差は、州や自治体の税制の組み立て方の違いによるものです。

 

税率変動の要因と将来予測

固定資産税率は、自治体が毎年の予算に合わせて見直します。経済情勢や財政の状況によって変わるため、購入時の税率がそのまま続くとは限りません。

 

投資計画では、税率と評価額の両方が動く前提で、中長期の税負担を見込んでおく必要があります。

 

ニューヨーク市では2026/27年度から、主たる住居ではない高額の住宅に、通常の固定資産税とは別の追加税がかかります。コンドミニアムとコープは、市の財務局の評価上の市場価値が100万ドル以上で、市場価値の4.0%からです。日本に住む方が滞在用に持つ住戸が対象になるかはニューヨークのピエダテール税(別荘税)にまとめています。

3. 投資家が直面する特有の課題

3. 投資家が直面する特有の課題

投資家がアメリカの固定資産税において直面する課題は、単純な税率の違いにとどまりません。当社がこれまで支援してきたお客様からは、以下のような困惑の声を数多くいただいています。

 

評価額の異議申し立てプロセス

アメリカでは、税務査定官が決定した評価額に対して異議申し立て(Tax Appeal)を行うことが一般的です。評価額が実態より高いと認められれば、評価額が下がり、税額も下がります。

 

しかし、投資家の多くはこのシステムを知らず、過大な税金を支払い続けているケースが見受けられます。異議申し立ての期限は自治体ごとに決まっており、ニューヨーク市では毎年1月の評価通知のあと、コンドミニアムなどは3月1日、1〜3世帯の住宅は3月15日が税務委員会への申立ての期限です。期限を逃すと翌年まで待たなければなりません。

 

減税制度(Tax Exemption)の活用不足

各州には様々な固定資産税の減税制度が存在します。例えば、Homestead Exemptionでは自己居住用物件に対して一定額の評価額控除が適用されます。フロリダ州では、2026年の控除は最大51,411ドルです(最初の25,000ドルはすべての税に、残りの最大26,411ドルは学区税以外に適用。フロリダ州歳入局)。

 

ただしホームステッド控除は、その州に住む人の主たる住居だけが対象です。日本にお住まいの方の物件や、貸している物件には使えません。

 

自己居住と投資用で評価が変わる

同じ物件でも、自分で住むか貸すかで課税標準が変わります。自己居住用に適用されるホームステッド免税(Homestead Exemption)は、テキサス州では学区税に対して140,000ドル(約2,170万円)の控除があり(2025年11月の住民投票で100,000ドルから引き上げ。テキサス州会計検査官)、農道や治水の税を課す郡では郡税に3,000ドルの控除もあります。フロリダ州では最初の25,000ドルに、学区税以外を対象とする追加の控除が重なります。

 

投資用として貸す場合、これらの控除は使えません。多くの州で、自己居住用には評価や税額を抑える扱いがあり、投資用の物件にはそれがありません。日本にお住まいのまま貸す前提で持つ場合、居住者向けの軽減はいずれも対象外になるとお考えください。名義を法人に置く場合も同様です。

 

支払い方法と延滞ペナルティ

アメリカの固定資産税は通常、年4回の分割払いまたは年1回の一括払いで納付します。支払い期限は自治体により異なり、ニューヨーク市では評価額25万ドル以下の物件が年4回(7月1日、10月1日、1月1日、4月1日)、25万ドルを超える物件が年2回(7月1日、1月1日)です(ニューヨーク市財務局)。

 

延滞した場合のペナルティは厳格で、延滞利息は日割りの複利でかかります。ニューヨーク市では、利率は評価額の区分ごとに毎年決められます。さらに、長期間の滞納により物件が差し押さえられ、Tax Lien Saleにかけられるリスクもあります。

 

4. 投資収益への影響と対策方法

4. 投資収益への影響と対策方法

固定資産税は不動産投資の収益性に直接影響する重要な要素です。固定資産税が想定より高く、年間の収益率が数ポイント下がる例は珍しくありません。購入前に実額の確認が必要です。

 

キャッシュフローへの影響分析

具体的な例を挙げて説明します。ニューヨーク市マンハッタンで100万ドル(約1億5,500万円)のコンドミニアムを購入し、月額5,000ドル(約77万5,000円)で賃貸する場合を想定します。

 

年間賃料収入は60,000ドル(約930万円)です。ここで州の実効税率を売買価格に掛けて固定資産税を見積もると、実額と大きくずれます。ニューヨーク市のコンドミニアムは、市の財務局が賃貸建物に見立てて算定した市場価値に課税されるため、売買価格とは別の数字が課税の基準になります。実額は、物件ごとの評価通知(Notice of Property Value)と過去の納税記録で確認します。

 

さらに、StreetEasyの解説にもあるとおり、評価額は毎年見直されます。長期保有では、税負担が増える前提で見ておく必要があります。

 

税負担軽減のための実践的戦略

効果的な税負担軽減策として、以下の方法が挙げられます。

 

①物件選択時の税務デューデリジェンスでは、購入前に過去5年間の税務評価額推移と近隣物件との比較を必ず実施します。評価額が市場価格から大幅に乖離している物件は避けるべきです。

②プロフェッショナルによる税務査定では、資格を持つ不動産鑑定士に評価額の妥当性をチェックしてもらいます。費用は依頼先と物件によって変わるため、見積もりを取ってから依頼します。

③タックス・アピール・サービスの活用では、異議申し立て専門業者に依頼することで、成功報酬制で税額削減を図れます。成功報酬に決まった料率はありません。すべて当事者間の交渉で決まります。金額と支払い条件は、契約前に書面でご確認ください。

 

売却時にかかる源泉徴収はFIRPTAの源泉徴収の記事で、非居住者の遺産税は非居住者の遺産税の記事で扱っています。

 

ニューヨークで購入を検討中の方は、買った翌年に固定資産税がどう変わるかの記事もあわせてご覧ください。募集資料の税額は前の所有者の税額です。

 

所得税ゼロの州と固定資産税の関係は所得税ゼロ州の境界線の記事で、誰に効いて誰に効かないかまで整理しています。

 

まとめ

まとめ

アメリカの固定資産税は、日本とは根本的に異なる複雑なシステムを採用しています。州により税率が大きく異なり、ハワイ州の0.32%からイリノイ州の1.83%まで約6倍の開きがあることを確認いたしました。

 

投資家が成功するためには、事前の税務調査と継続的な評価額監視が不可欠です。評価額の異議申し立て制度や、使える減税制度を確認することで、税負担を抑えられる場合があります。

 

また、固定資産税は賃料収入に対して大きな割合を占めるコストであり、投資判断において必ず考慮すべき要素です。税率の将来的な上昇トレンドも踏まえ、中長期的な収益予測を立てることが重要となります。

 

アメリカの不動産投資をご検討されている方、また既に投資を始められている方で固定資産税についてご相談されたい場合は、アメリカ不動産投資ガイドまでお気軽にお問い合わせください。現地での豊富な経験を活かし、皆様の投資成功をサポートさせていただきます。

 

税務面での最新情報については、アメリカの所得税率の記事でも詳しく解説しておりますので、併せてご参照いただければ幸いです。

 

アメリカでの不動産投資や移住をお考えの方は、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。

売買にかかる費用のうち、エスクローの仕組みはエスクローの解説記事に、タイトル保険はタイトルインシュランスの記事にまとめています。

この記事の数字を引用される方へ

ブログや記事、資料でのご引用に許可は要りません。出典として次の1行を添えてください。

出典 Reinvent NY「アメリカの固定資産税は年いくらか。州別の実効税率と物件価格別の目安」https://reinvent.co.jp/propertytax/

数字の前提の確認や、取材・コメントのご依頼は取材・メディア出演のご依頼のページから承っております。

よくある質問

アメリカの固定資産税は州でどれくらい違いますか。

実効税率で数倍違います。Tax Foundationが米国国勢調査局の調査から算出した2023年の値では、イリノイ州が1.83%、ニュージャージー州が1.77%、ハワイ州が0.32%です。同じ100万ドルの物件に当てはめると、年間の負担に1万5,000ドル前後の差が出ます。

評価額はどう決まりますか。

各自治体の税務査定官が決めます。市場価格そのものではなく、自治体ごとの評価方法に基づく評価額に税率を掛けて税額が決まります。

支払いはいつですか。

自治体により異なります。ニューヨーク市は評価額25万ドルを超える物件が7月1日と1月1日の年2回、25万ドル以下は年4回です。延滞には日割りの複利で利息がかかります。

買った後に税額は変わりますか。

変わります。売買が起きると市が評価額を見直すため、募集資料に載っている前所有者の税額のままにはなりません。減免の残存年数によっても大きく変わります。

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ニューヨーク市の評価の仕組みと月額の読み方はニューヨークの固定資産税ガイドにまとめています。

 

 

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