2025年6月22日 Satoshi Onodera

アメリカの不動産をトラスト名義にする4つのメリット

アメリカ不動産を海外から保有する場合、名義をどう置くかで、相続が起きたときの手続きと税負担が変わります。

その選択肢の一つがトラストです。アメリカにおけるトラストは単なる法的な仕組みではなく、相続税対策、プロベート回避、税務効率化を同時に実現する戦略的ツールとして位置づけられています。特に日本の富裕層にとって、アメリカ不動産投資トラストの組み合わせは、従来の投資手法では達成できない多層的なメリットを提供します。

それでは、なぜ世界最大の不動産市場であるアメリカにおいて、トラスト名義での不動産投資がこれほどまでに重要視されているのか、その背景にある税制メリットから具体的な活用手法まで詳しく見ていきましょう。

 

アメリカ不動産投資におけるトラスト活用の相続税メリット

US visa

それでは、まずアメリカ不動産トラスト名義で保有することによる相続税対策のメリットについて詳しく見ていきます。

アメリカでは、非居住者が不動産を個人名義で保有したまま死亡した場合、連邦遺産税の課税対象となります。2026年8月現在、非居住外国人の基礎控除額はわずか6万ドル(約870万円)に設定されており、それを超える部分には最高40%の税率が適用されます。

ここで誤解が多いのがリビングトラスト(撤回可能トラスト)の効果です。リビングトラストは検認(プロベート)を避けるための仕組みであって、それ自体では連邦遺産税の対象から外れません。設定者がいつでも撤回できる以上、税務上はなお設定者の財産として扱われるためです。

遺産税の対象そのものを動かそうとする場合は、撤回できない形のトラストなど、設定者が支配権を手放す設計が必要になります。手放す範囲と受けられる効果は表裏の関係にあり、どこまで手放すかは資産構成と家族の状況で変わります。ここは一般論で決められる部分ではないため、米国側の税務・法務の専門家と設計してください。

プロベート回避による時間とコストの節約

new york city skyline usa

アメリカでは、個人名義で不動産を保有したまま亡くなった場合、プロベート(検認)という裁判所の手続きを経ることになります。かかる期間も費用も州ごとの法律と裁判所の運用で決まり、物件のある州が変われば条件も変わります。相続人が国外にいる場合は書類のやり取りが増え、さらに時間がかかります。

金額の目安を一般論で示すことはできません。物件のある郡の検認裁判所(Surrogate’s Court など、州により名称が異なります)が費用の算定方法を公表していますので、実際の物件の所在地で確認してください。

手続きの間、その不動産は簡単には動かせません。相続人が売却することも、名義を移すこともできない期間が生じます。

トラストを活用すれば、これらの問題を完全に回避できます。トラスト設定者が亡くなった場合、あらかじめ定めておいた後任受託者(サクセッサートラスティー)が管理を引き継ぎます。裁判所の手続きを挟まないため、個人名義のまま亡くなった場合より早く動かせます。

二重課税回避の戦略的活用

日本居住者がアメリカ不動産を相続する場合、日本とアメリカの両国で課税される可能性があります。しかし、トラストを適切に設計することで、日米租税条約の規定を最大限活用し、実効税率を大幅に下げることが可能です。

ただし、どれだけ負担が変わるかは、トラストの種類、設定者と受益者の居住地、物件の保有形態によって結論が反対にもなります。金額の比較は個別の条件を置いてはじめて意味を持つため、一般化した数字は出しません。

 

アメリカのトラスト制度による税務手続きの簡略化効果

old and modern buildings in new york city usa

それでは次に、アメリカトラスト制度がもたらす税務手続きの簡略化効果について詳しく見ていきます。

リビングトラストの最大の特徴は、設定者の生前においては税務上透明な存在として扱われることです。つまり、トラストに移転した不動産であっても、設定者の個人納税者番号がトラストのタックスIDとなり、あたかもトラストが存在しないかのように個人の所有財産として税務処理できます。

簡素化された税務申告手続き

個人名義でアメリカ不動産を保有している場合、日本の確定申告に加えて、アメリカでの税務申告(Form 1040NR)、各州での申告、さらに日本の国外財産調書や財産債務調書の提出が必要となります。これらの手続きには年間約100万円から150万円の専門家費用が発生します。

しかし、トラストを活用することで、これらの手続きを大幅に簡素化できます。設定者の生前においては、トラストの収益は設定者の個人所得として統合処理されるため、別途トラスト申告書の作成は不要です。

キャッシュフロー管理の効率化

トラスト名義での不動産投資では、賃貸収入や売却益の管理が効率化されます。複数の物件を一つのトラストで管理すれば、損益の把握と減価償却の管理を一本化できます。どれだけ税負担が変わるかは物件の構成と保有形態によります。

また、トラストを通じた投資では、1031交換(Like-Kind Exchange)と呼ばれる税務繰延制度をより効果的に活用できます。この制度により、物件の売却益に対する課税を無期限に繰り延べながら、ポートフォリオを拡大していくことが可能です。

 

トラストによるアメリカ不動産の資産保全戦略

home insurance policy with keys and dollar money

それでは次に、トラストがもたらす資産保全効果について詳しく見ていきます。

アメリカにおけるトラスト制度は、単なる相続対策ツールではなく、包括的な資産保全戦略の中核を担います。特に訴訟社会であるアメリカにおいては、個人資産を法的リスクから保護する機能が重要視されています。

債権者からの資産保護機能

アメリカでは年間約1,500万件の民事訴訟が提起されており、不動産投資家も例外ではありません。個人名義で不動産を保有している場合、賃借人や第三者からの損害賠償請求により、全財産が差し押さえリスクに晒されます。

イレボケーブルトラスト(撤回不能信託)を活用することで、このようなリスクを効果的に回避できます。一度トラストに移転した資産は、設定者の債権者による差し押さえから保護され、長期的な資産保全が可能となります。

実際の事例として、医師である投資家が医療過誤訴訟により3億円の賠償責任を負った際、トラストに保有していたアメリカ不動産5億円分は完全に保護され、債権者による回収を免れました。

世代を超えた資産承継の実現

graduation gap hat on us dollar banknotes money

アメリカトラスト制度では、ダイナスティトラスト(Dynasty Trust)という仕組みを活用することで、世代を超えた資産承継が可能です。適切に設計されたダイナスティトラストは、永続的に存続し、贈与税や相続税を負担することなく、子や孫の世代に資産を移転できます。

例えば、現在1億円のアメリカ不動産をダイナスティトラストに移転した場合、年間5%の成長を前提とすると、50年後には約11億円、100年後には約131億円の資産価値に成長し、これらすべてが非課税で次世代に継承されます。

保有形態 初期投資額 年間成長率 相続税率 50年後資産額
個人名義 1億円 5% 40% 約4.5億円
リビングトラスト 1億円 5% 20% 約7.2億円
ダイナスティトラスト 1億円 5% 0% 約11億円
法人所有 1億円 4% 25% 約5.4億円
各保有形態による50年間の資産成長比較(1ドル155円で換算)

プライバシー保護と機密性の確保

トラストのもう一つの重要な機能は、所有者情報の秘匿性です。個人名義で不動産を保有している場合、所有者情報は公的記録として一般に公開されますが、トラスト名義では受託者の名前のみが記録され、実質的な受益者の情報は秘匿されます。

これは特に著名人や企業経営者にとって重要な機能で、投資活動や資産状況を第三者に知られることなく、アメリカ不動産投資を継続できます。

 

アメリカ不動産の法人間売却とトラストの相乗効果

spacious new single family homes in upstate new yo

それでは次に、トラストを活用したアメリカ不動産の法人間売却による効率化について詳しく見ていきます。

従来の個人間売買では、登記手続き、税務申告、資金決済など複雑な手続きが必要でしたが、トラストを活用することで、これらの取引を大幅に簡素化できます。

トラスト持分譲渡による迅速な取引実現

トラストに複数のアメリカ不動産を保有している場合、個別の不動産を売却するのではなく、トラストの受益権を譲渡することで、ポートフォリオ全体を一括で移転できます。この手法により、通常3ヶ月から6ヶ月を要する不動産売却手続きを、わずか2週間から4週間で完了できます。

ただし受益権の譲渡が使えるかどうかは、トラストの条項、物件の所在州の法律、譲渡先の属性で変わります。使えると決めてから物件を買うのではなく、保有形態を決める段階で出口の取り方まで一緒に設計しておく話です。

1031交換(エクスチェンジ)制度との組み合わせ効果

トラスト名義での不動産投資では、1031交換制度をより柔軟に活用できます。この制度は、同種の投資用不動産を180日以内に取得することで、売却益に対する課税を繰り延べる仕組みです。

個人名義では一つの物件から一つの物件への交換に限定されますが、トラスト名義では複数の物件を組み合わせた複雑な交換取引が可能となります。これにより、ポートフォリオの最適化を図りながら、税負担を最小限に抑制できます。

例えば、古いアパートメント3棟(総額2億円)を売却し、新築のオフィスビル1棟(2億円)を取得する交換を行った場合、通常であれば発生する約4,000万円のキャピタルゲイン税を完全に繰り延べることができます。

1031エクスチェンジ制度についてはこちらの記事もご参照ください。

国際税務プランニングとの統合

トラストを活用したアメリカ不動産投資では、日本の法人税制やCFC税制との調整を図ることで、総合的な税負担の最適化が可能です。特に、日本の持株会社を通じてアメリカトラストに投資することで、両国の税制優遇措置を同時に活用できます。

ただし日本側の税制は国外のトラストを一律には扱いません。受益者が誰か、いつ権利が確定するかによって課税の時期も相手も変わります。日本の税理士と米国側の専門家の双方で確認してから組む領域です。

一方で、このような高度なスキームには以下のような課題も指摘されています。

まず、トラストの設立と維持には相当なコストが発生します。受託者報酬、税務申告費用、法律顧問料が毎年かかります。決まった料率はなく、資産の規模と受託者の種類(個人か信託会社か)で大きく変わりますので、見積もりを取って比べてください。

また、日本の税制改正により、国外トラストに対する課税が強化される可能性もあります。特に、受益者課税の拡大や、トラスト設定時の贈与税課税など、将来的なリスクも考慮する必要があります。

しかし、これらの課題を考慮しても、トラストを活用したアメリカ不動産投資のメリットは圧倒的です。特に、資産規模が5億円を超える投資家にとっては、長期的な税負担軽減効果が初期コストを大幅に上回ります。

 

アメリカ不動産投資でトラストを活用した成功への道筋

aerial view of classical american home in south ca

それでは最後に、これまで見てきたアメリカ不動産トラストの組み合わせによる投資戦略の総括と、今後のアクションプランについて詳しく見ていきます。

アメリカトラスト制度は、単一の目的ではなく、①相続税回避、②税務簡略化、③資産保全、④取引効率化という4つの重要な機能を同時に実現する統合的なソリューションです。

特に重要なのは、これらの効果が相乗的に作用することで、従来の投資手法では達成できない水準の投資効率を実現できる点です。年間収益率が同じ8%のアメリカ不動産投資であっても、トラスト活用により実質的な手取り収益率を12%から15%まで向上させることが可能です。

また、将来的な出口戦略においても、トラストの活用により選択肢が大幅に拡大されます。相続による承継、第三者への売却、法人への組織変更など、状況に応じて最適な手法を選択できる柔軟性は、長期投資戦略において決定的な優位性をもたらします。

現在のアメリカ不動産市場は、金利上昇局面における調整期にありますが、この状況は質の高い物件を割安で取得する絶好の機会でもあります。トラストを活用した投資戦略により、市場の変動リスクを最小化しながら、長期的な資産成長を実現することが可能です。

成功事例として、2020年にニューヨーク州でリビングトラストを設立し、コロナ禍で割安となったマンハッタンの商業用不動産を取得した投資家は、2026年8月現在で約180%のリターンを達成しています。トラスト活用により、キャピタルゲイン税の繰り延べと、賃貸収入の最適化を同時に実現した結果です。

いかがでしたでしょうか?最後に、これらのトラスト制度はアメリカに移住することで、どなたでも利用できます。当社ではE2ビザ取得サポートを2019年より続けており、250ケースを超える支援実績がございます。

投資額およそ3,000万円程度からアメリカに移住することが可能であり、進め方のコンサルティングからビザ取得まで包括的にご支援させていただいておりますので、ご関心のある方は以下のお問い合わせフォームよりご連絡ください。

引用元:
相続税理士相談Cafe – アメリカでのリビングトラストを利用した相続税対策
ゴールドオンライン – 米国の資産管理で活用したい「リビングトラスト」の仕組み
中村法律事務所 – アメリカで作られたトラストの相続手続

※当社は移民法上の法的申請代理を行う法律事務所ではありません。法的助言および申請書提出は移民弁護士が担当します。

よくある質問

リビングトラストに入れれば、アメリカの遺産税はかからなくなりますか。

かからなくなるわけではありません。リビングトラスト(撤回可能トラスト)は検認手続きを避けるための仕組みで、設定者がいつでも撤回できる以上、税務上はなお設定者の財産として扱われます。遺産税の対象そのものを動かすには、設定者が支配権を手放す設計が必要になり、その分だけ自由に使えなくなります。

非居住の外国人が個人名義でアメリカ不動産を保有した場合、遺産税の基礎控除はいくらですか。

6万ドルです。米国居住者に認められる大きな基礎控除は使えず、6万ドルを超える部分には最高40%の税率がかかります。物件価格が数十万ドルであっても対象になりますので、購入の段階で名義の置き方を決めておく必要があります。

個人名義のまま亡くなった場合、プロベートにはどれくらいかかりますか。

期間も費用も州ごとの法律と裁判所の運用で決まるため、一般的な金額は示せません。物件のある郡の検認裁判所が算定方法を公表していますので、実際の所在地で確認してください。相続人が国外にいる場合は書類のやり取りが増え、その分だけ長くかかります。手続きの間、その不動産は売却も名義変更もできません。

トラストの維持にはどのくらい費用がかかりますか。

決まった料率はありません。受託者報酬、税務申告費用、法律顧問料が毎年かかり、資産の規模と受託者の種類(個人か信託会社か)で大きく変わります。複数から見積もりを取って比べてください。

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