アメリカでの生活が3年目に入り、家賃の明細を見ながら「これを払い続けるくらいなら」と考え始める。ご相談をいただくきっかけとして、最も多いパターンです。
ニューヨークで月4,000ドルの家賃を払っていれば、年間で4万8,000ドル(約744万円、2026年8月現在、1ドル=155円換算)。5年で3,720万円が手元から消えます。
ただし、買えば必ず得というわけではありません。判断を分けるのは、あと何年そこに住むかです。
本日は、在住の方が買うか借り続けるかを判断する材料を整理します。
1. 損益分岐は「何年住むか」で決まる

購入には、家賃にはない一時費用がかかります。クロージングコストが物件価格の3〜6パーセント、そして売却時にも仲介手数料と譲渡税で5〜8パーセント程度が出ていきます。
合わせて1割前後が、買って売るだけで消えるということです。
この費用を家賃との差額で回収するには時間が要ります。ニューヨークの一般的な条件では、おおむね5年から7年住むと、購入が有利に転じるのが目安です。
逆に言えば、2〜3年で移動する可能性があるなら、賃貸を続けるほうが合理的です。値上がりに賭ける形になり、読み違えたときの損失が大きくなります。
2. 手元にいくら必要か

次に資金です。実際に用意すべき金額を整理します。
| 項目 | 目安 | 100万ドルの物件の場合 |
|---|---|---|
| 頭金 | 価格の20〜25% | 20〜25万ドル |
| クロージングコスト | 価格の3〜6% | 3〜6万ドル |
| 管理組合が求める余剰資金 | 住居費の数ヶ月〜2年分 | 建物により大きく異なる |
| 引越しと家具 | 個別 | 数千〜数万ドル |
※上記は2026年時点のニューヨーク市の一般的な水準です。コープは要求される余剰資金が特に大きくなります。
在住の方には有利な点があります。米国内での収入とクレジットヒストリーがあれば、住宅ローンは居住用の条件で組めます。金利も頭金の要件も、非居住者向けより有利です。
ローンの実務はアメリカ住宅ローンの組み方ガイドにまとめています。
3. 税制で変わる実質負担

アメリカでは、住宅ローンの利息と固定資産税を、確定申告で所得から差し引ける仕組みがあります。項目別控除を選択した場合に限られ、上限もありますが、所得の高い方ほど実質負担が下がります。
賃貸にはこの仕組みがありません。同じ住居費でも、税引き後で見ると差が出ます。
もう一つ、売却時の扱いがあります。自宅として一定期間住んだ物件を売る場合、譲渡益の一部が非課税になる制度があります。適用には居住期間などの条件がありますが、これは投資用物件では使えません。
この2つがあるため、自分で住むなら個人名義が有利です。法人名義との比較は法人名義で買うべきかの記事にまとめています。
4. 帰国が決まったらどうするか

在住の方が購入をためらわれる最大の理由が、これです。「もし帰国することになったら」。
選べる道は3つあります。
①売却する。5年以上住んでいれば、費用を回収できている可能性があります。
②賃貸に出して保有を続ける。ドル建て資産として持ち続ける形です。ただし帰国後は非居住者となり、賃料に30パーセントの源泉徴収がかかる点にご注意ください。申告での対応が必要になります。
③売らずに、いずれ戻る前提で空けておく。管理費と固定資産税は払い続けることになります。
以上で見てきたように、帰国は「売らなければならない」理由にはなりません。むしろ賃貸に出す前提で物件を選んでおけば、選択肢が残ります。賃貸に出しやすいのはコンドミニアムで、コープには転貸制限があります。
賃貸に出す実務は買った物件を貸す場合の記事を、コンドとコープの違いはこちらの記事をご参照ください。
投資の観点も含めた賃貸と購入の比較は賃貸と購入の投資判断の記事で扱っています。
まとめ

あと5年以上住む見込みがあり、頭金と諸費用を用意でき、米国内での収入があるなら、購入は現実的な選択です。2〜3年で動く可能性が高いなら、賃貸を続けるほうが無難です。
そして帰国の可能性があるなら、貸せる物件を選んでおくこと。これが在住の方にとって最も実務的な備えになります。
ご滞在の見込みと資金からご事情に合う判断をご一緒に整理いたします。買わないほうがよい場合は、その旨も率直にお伝えします。
※本記事は一般的な情報提供であり、税務の助言ではありません。控除の適用条件は改正されます。実行の前に、必ず会計士にご確認ください。
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本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。

















