アメリカでは2026年4月現在、日本とは大きく異なる贈与税制度が運用されています。アメリカに居住する日本人、アメリカ人と結婚した方、アメリカで事業を展開する企業オーナーの方々にとって、この制度の正確な理解は税務トラブルを避けるために必要不可欠な知識といえます。
特に注目すべきは、アメリカの贈与税は贈与者が負担するという点です。日本では受贈者(もらう側)が贈与税を支払うのが原則ですが、アメリカでは正反対の仕組みとなっています。また、生涯贈与税控除額が1,361万ドル(約21億円)という高額に設定されているのも大きな特徴です。
本日はアメリカの贈与税制度について、税率体系から申告手続きまで詳しく見ていきましょう。
1. アメリカ贈与税制度の基本構造

贈与税の基本的な仕組み
アメリカの贈与税制度は、IRS(米国内国歳入庁)が管轄する連邦税制の一部として運営されています。この制度の最も重要な特徴は、贈与を行った者(贈与者)が税金を負担する義務を負うことです。
2026年の年間贈与税非課税枠は、1人当たり18,000ドル(約279万円)に設定されています。この金額は物価上昇率に連動して毎年調整され、2026年の17,000ドルから1,000ドル増額されました。
生涯贈与税控除額の概要
年間非課税枠を超える贈与を行った場合でも、即座に贈与税が課税されるわけではありません。生涯贈与税控除額という制度があり、2026年現在は13,610,000ドル(約21億円)という高額な控除枠が設けられています。
この生涯控除額は、相続税の基礎控除額と統合されており、贈与と相続を通じて合計13,610,000ドルまでは連邦税が課税されない仕組みとなっています。ただし、この控除額は2026年末に期限切れを迎える予定でしたが、現在の法制度下では延長が検討されています。
対象となる贈与の範囲
アメリカの贈与税制度では、現金だけでなく以下のような様々な財産の移転が贈与として扱われます。
①現金の直接贈与
②不動産の名義変更
③株式や債券の譲渡
④生命保険の受益者変更
⑤信託への財産移転
以上で見てきたように、アメリカの贈与税制度は全体的な財産移転を対象としており、単純な現金贈与以外にも幅広い取引が該当します。
2. 税率体系と計算方法

累進税率の構造
アメリカの贈与税は累進税率制度を採用しており、贈与額が大きくなるほど税率も高くなります。Form 709の説明書によると、2026年の税率体系は以下のように設定されています。
| 贈与額(ドル) | 税率 | 円換算額 |
|---|---|---|
| 0〜10,000 | 18% | 0〜155万円 |
| 10,001〜20,000 | 20% | 155万円〜310万円 |
| 500,001〜750,000 | 37% | 7,750万円〜1億1,625万円 |
| 750,001〜1,000,000 | 39% | 1億1,625万円〜1億5,500万円 |
| 1,000,001以上 | 40% | 1億5,500万円以上 |
※上記は2026年4月現在の税率表(2026年4月現在、1ドル=155円換算)
具体的な税額計算例
実際の計算例を見てみましょう。2026年に100,000ドル(約1,550万円)を贈与した場合の計算過程は以下のようになります。
まず年間非課税枠の18,000ドルを控除し、課税対象額は82,000ドル(約1,271万円)となります。この金額に対して累進税率を適用すると、最初の10,000ドルに18%、次の10,000ドルに20%、残りの62,000ドルに22%が課税されます。
ただし、実際には生涯控除額が適用されるため、この贈与税額は生涯控除額から差し引かれ、現金での納税は発生しません。
配偶者間贈与の特例
アメリカ市民同士の配偶者間贈与には無制限の控除が適用されます。一方、一方が非市民の場合は年間175,000ドル(約2,712万円)の特別控除枠が設けられています。
3. 申告手続きと必要書類

Form 709の提出義務
年間18,000ドルを超える贈与を行った場合、Form 709(贈与税申告書)の提出が義務付けられています。この申告書は贈与が行われた年の翌年4月15日までに提出する必要があります。
Form 709には以下の情報を詳細に記載する必要があります。
①贈与者と受贈者の個人情報
②贈与財産の詳細な内容と評価額
③贈与日と贈与方法
④過去の贈与履歴
⑤生涯控除額の使用状況
財産評価の方法
贈与財産の評価は贈与時の公正市場価格で行います。現金以外の財産については、専門的な評価が必要になることがあります。
不動産の場合は不動産鑑定士による評価書、株式の場合は贈与日の市場価格、非上場株式の場合は会社の財務状況に基づく評価が求められます。評価額が500,000ドル(約7,750万円)を超える非現金資産については、適格な鑑定士による評価書の添付が義務付けられています。
申告期限と延長制度
Form 709の標準的な提出期限は翌年の4月15日ですが、Form 8892を提出することで6か月間の延長が可能です。ただし、延長申請をしても納税義務がある場合の支払い期限は延長されないため注意が必要です。
以上で見てきたように、申告手続きは複雑であり、特に高額な贈与や複雑な財産構成の場合は、税務専門家のサポートを受けることを強くご推奨いたします。
4. 日本人が注意すべき特殊な論点

日米租税条約の適用関係
日本とアメリカの間には租税条約が締結されていますが、贈与税に関しては完全な二重課税回避措置が整備されていないのが現状です。このため、同一の贈与行為に対して日米両国で課税される可能性があります。
特に、日本の居住者がアメリカの不動産を子どもに贈与する場合や、アメリカ居住者が日本の親から財産を受け取る場合には、複雑な税務処理が必要になります。
外国銀行口座報告義務(FBAR)との関係
アメリカの税務居住者が外国の銀行口座に10,000ドル以上の残高を保有している場合、FBAR(外国銀行口座報告書)の提出が義務付けられています。
贈与により外国口座の残高が増加した場合、この報告義務も発生するため、贈与税申告と併せてFBARの提出も検討する必要があります。
信託を活用した税務戦略
一方で、アメリカの税制には信託を活用した節税戦略も用意されています。適格な信託制度を利用することで、贈与税の負担を軽減しながら資産承継を行うことが可能です。
しかし、これらの制度は非常に複雑であり、適切な設計と運営が行われない場合、予期しない課税が発生するリスクもあります。信託の設立を検討される場合は、税務と法務の両面から専門家の助言を得ることが不可欠です。
以上で見てきたように、日本人特有の論点は多岐にわたり、個別の状況に応じた詳細な検討が必要になります。
まとめ

アメリカの贈与税制度は、日本の制度と比較して多くの相違点があります。最も重要なポイントは、贈与者が税負担するという基本構造と、13,610,000ドルという高額な生涯控除額の存在です。
2026年現在、年間18,000ドルの非課税枠と生涯控除額により、多くの一般的な贈与では実際の納税は発生しません。しかし、高額な財産移転や国際的な要素が含まれる場合には、複雑な税務処理が必要になります。
特に日本との二重課税の問題、FBAR報告義務、信託制度の活用など、専門的な知識が必要な領域も多く存在します。アメリカでの贈与を検討されている方は、事前に税務専門家にご相談いただくことをご推奨いたします。
アメリカの税務に関するご質問や具体的なご相談がございましたら、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。


















