2026年4月23日 Satoshi Onodera

アメリカの贈与税はいくらから。税率と年間非課税枠と申告義務を整理する

アメリカでは2026年4月現在、日本とは大きく異なる贈与税制度が運用されています。アメリカに居住する日本人、アメリカ人と結婚した方、アメリカで事業を展開する企業オーナーの方々にとって、この制度の正確な理解は税務トラブルを避けるために必要不可欠な知識といえます。

特に注目すべきは、アメリカの贈与税は贈与者が負担するという点です。日本では受贈者(もらう側)が贈与税を支払うのが原則ですが、アメリカでは正反対の仕組みとなっています。また、生涯贈与税控除額が1,500万ドル(約23億円)という高額に設定されているのも大きな特徴です。

 

本日はアメリカの贈与税制度について、税率体系から申告手続きまで詳しく見ていきましょう。

 

1. アメリカ贈与税制度の基本構造

1. アメリカ贈与税制度の基本構造

 

贈与税の基本的な仕組み

アメリカの贈与税制度は、IRS(米国内国歳入庁)が管轄する連邦税制の一部として運営されています。この制度の最も重要な特徴は、贈与を行った者(贈与者)が税金を負担する義務を負うことです。

 

2026年の年間贈与税非課税枠は、1人当たり19,000ドル(約295万円)に設定されています。この金額は物価上昇率に連動して毎年調整されます。

 

生涯贈与税控除額の概要

年間非課税枠を超える贈与を行った場合でも、即座に贈与税が課税されるわけではありません。生涯贈与税控除額という制度があり、2026年現在は15,000,000ドル(約23億円)という高額な控除枠が設けられています。

この生涯控除額は、相続税の基礎控除額と統合されており、贈与と相続を通じて合計15,000,000ドルまでは連邦税が課税されない仕組みとなっています。2025年までは2026年に半減する予定でしたが、2025年成立の税制法によりこの縮小は撤回され、2026年からは15,000,000ドルの水準が恒久化されています。

 

対象となる贈与の範囲

アメリカの贈与税制度では、現金だけでなく以下のような様々な財産の移転が贈与として扱われます。

 

現金の直接贈与
不動産の名義変更
株式や債券の譲渡
生命保険の受益者変更
信託への財産移転

結局のところ、アメリカの贈与税制度は全体的な財産移転を対象としており、単純な現金贈与以外にも幅広い取引が該当します。

 

2. 税率体系と計算方法

2. 税率体系と計算方法

 

累進税率の構造

アメリカの贈与税は累進税率制度を採用しており、贈与額が大きくなるほど税率も高くなります。Form 709の説明書によると、2026年の税率体系は以下のように設定されています。

 

贈与額(ドル) 税率 円換算額
0〜10,000 18% 0〜155万円
10,001〜20,000 20% 155万円〜310万円
500,001〜750,000 37% 7,750万円〜1億1,625万円
750,001〜1,000,000 39% 1億1,625万円〜1億5,500万円
1,000,001以上 40% 1億5,500万円以上

 

※上記は2026年4月現在の税率表(2026年4月現在、1ドル=155円換算)

 

具体的な税額計算例

実際の計算例を見てみましょう。2026年に100,000ドル(約1,550万円)を贈与した場合の計算過程は以下のようになります。

まず年間非課税枠の19,000ドルを控除し、課税対象額は81,000ドル(約1,256万円)となります。この金額に対して累進税率を適用すると、最初の10,000ドルに18%、次の10,000ドルに20%、残りの62,000ドルに22%が課税されます。

 

ただし、実際には生涯控除額が適用されるため、この贈与税額は生涯控除額から差し引かれ、現金での納税は発生しません。

 

配偶者間贈与の特例

アメリカ市民同士の配偶者間贈与には無制限の控除が適用されます。一方、一方が非市民の場合は年間175,000ドル(約2,712万円)の特別控除枠が設けられています。

 

3. 申告手続きと必要書類

3. 申告手続きと必要書類

 

Form 709の提出義務

年間19,000ドルを超える贈与を行った場合、Form 709(贈与税申告書)の提出が義務付けられています。この申告書は贈与が行われた年の翌年4月15日までに提出する必要があります。

 

Form 709には以下の情報を詳細に記載する必要があります。

贈与者と受贈者の個人情報
贈与財産の詳細な内容と評価額
贈与日と贈与方法
過去の贈与履歴
生涯控除額の使用状況

 

財産評価の方法

贈与財産の評価は贈与時の公正市場価格で行います。現金以外の財産については、専門的な評価が必要になることがあります。

 

不動産の場合は不動産鑑定士による評価書、株式の場合は贈与日の市場価格、非上場株式の場合は会社の財務状況に基づく評価が求められます。評価額が500,000ドル(約7,750万円)を超える非現金資産については、適格な鑑定士による評価書の添付が義務付けられています。

 

申告期限と延長制度

Form 709の標準的な提出期限は翌年の4月15日ですが、Form 8892を提出することで6か月間の延長が可能です。ただし、延長申請をしても納税義務がある場合の支払い期限は延長されないため注意が必要です。

ここまでを整理すると、申告手続きは複雑であり、特に高額な贈与や複雑な財産構成の場合は、税務専門家のサポートを受けることを強くご推奨いたします。

 

4. 日本人が注意すべき特殊な論点

4. 日本人が注意すべき特殊な論点

 

日米租税条約の適用関係

日本とアメリカの間には租税条約が締結されていますが、贈与税に関しては完全な二重課税回避措置が整備されていないのが現状です。このため、同一の贈与行為に対して日米両国で課税される可能性があります。

特に、日本の居住者がアメリカの不動産を子どもに贈与する場合や、アメリカ居住者が日本の親から財産を受け取る場合には、複雑な税務処理が必要になります。

 

外国銀行口座報告義務(FBAR)との関係

アメリカの税務居住者が外国の銀行口座に10,000ドル以上の残高を保有している場合、FBAR(外国銀行口座報告書)の提出が義務付けられています。

 

贈与により外国口座の残高が増加した場合、この報告義務も発生するため、贈与税申告と併せてFBARの提出も検討する必要があります。

 

信託を活用した税務戦略

一方で、アメリカの税制には信託を活用した節税戦略も用意されています。適格な信託制度を利用することで、贈与税の負担を軽減しながら資産承継を行うことが可能です。

しかし、これらの制度は非常に複雑であり、適切な設計と運営が行われない場合、予期しない課税が発生するリスクもあります。信託の設立を検討される場合は、税務と法務の両面から専門家の助言を得ることが不可欠です。

 

要点をまとめると、日本人特有の論点は多岐にわたり、個別の状況に応じた詳細な検討が必要になります。

 

非居住者がアメリカの不動産を生前贈与するとどうなるのか

非居住者が米国の不動産を贈与すると、米国の贈与税がかかります。2026年時点の連邦税法では、非居住者に認められる生涯贈与控除はゼロで、年間の非課税枠19,000ドルを超えた分に最高40%の税率が適用されます。米国居住者に認められる1,500万ドルの生涯控除は、非居住者には使えません。

 

米国株を贈与した場合はどう違うのか

非居住者が米国株式を贈与した場合、米国の贈与税はかかりません。米国の贈与税が対象とするのは米国内にある有形資産で、不動産と現金がそれにあたります。株式や債券などの無形資産は、発行体が米国企業であっても贈与税の対象外です。同じ米国資産でも、不動産か株式かで扱いが正反対になります。

 

贈与する資産 米国贈与税 米国遺産税(相続の場合)
米国の不動産 対象(控除は年間19,000ドルのみ) 対象(基礎控除6万ドル)
米国内の現金 対象 預金口座は原則対象外
米国株式 対象外 対象(基礎控除6万ドル)

 

贈与で移すと相続より有利になるのか

不動産を生前贈与すると、贈与税を払ったうえに受贈者の取得費が贈与者の取得費を引き継ぎます。相続の場合は取得費が相続時の時価に洗い替えられるため、含み益が大きい物件ほど相続の方が所得税で有利になります。一方で相続では非居住者の基礎控除が6万ドルしかないため、遺産税は重くなります。所得税と遺産税のどちらを取るかという綱引きになり、含み益の大きさで答えが変わります。

 

なお日米間には相続税に関する条約があり、条件を満たす場合に基礎控除を按分して増やせる余地があります。適用の可否は資産構成で変わるため、必ず個別に確認してください。

 

一般論はここまでです。個別のご事情に応じた設計はお問い合わせフォームよりご相談ください。

 

贈与ではなく相続で渡す場合の実額は非居住者の遺産税の記事で計算しています。

 

相続時の資産種類ごとの扱いは資産の種類で変わるアメリカの相続の記事にまとめています。

 

まとめ

まとめ

アメリカの贈与税制度は、日本の制度と比較して多くの相違点があります。最も重要なポイントは、贈与者が税負担するという基本構造と、15,000,000ドルという高額な生涯控除額の存在です。

2026年現在、年間19,000ドルの非課税枠と生涯控除額により、多くの一般的な贈与では実際の納税は発生しません。しかし、高額な財産移転や国際的な要素が含まれる場合には、複雑な税務処理が必要になります。

 

特に日本との二重課税の問題、FBAR報告義務、信託制度の活用など、専門的な知識が必要な領域も多く存在します。アメリカでの贈与を検討されている方は、事前に税務専門家にご相談いただくことをご推奨いたします。

 

アメリカの税務に関するご質問や具体的なご相談がございましたら、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。

 

よくある質問

非居住者が米国の不動産を贈与すると、いくらまで非課税ですか。

年間19,000ドルまでです。米国居住者に認められる1,500万ドルの生涯贈与控除は、非居住者には適用されません。超えた分に最高40%の税率がかかります。

米国株を贈与した場合も米国の贈与税がかかりますか。

かかりません。米国の贈与税が対象とするのは米国内にある有形資産で、不動産と現金が該当します。株式や債券などの無形資産は、発行体が米国企業であっても対象外です。

贈与と相続では、どちらが有利ですか。

含み益の大きさで変わります。相続では取得費が相続時の時価に洗い替えられるため、含み益が大きい物件ほど所得税で有利になります。一方で非居住者の遺産税の基礎控除は6万ドルしかないため、遺産税は重くなります。

日米の相続税条約で控除を増やせますか。

条件を満たす場合、基礎控除を按分して増やせる余地があります。適用の可否は資産構成で変わるため、必ず個別に確認してください。

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