マンハッタンのダウンタウンに毎日通う前提で、同じ広さの住まいを2割から3割安く手に入れたい。この条件で最初に検討していただくのが、ハドソン川を挟んで対岸にあるニュージャージー州ジャージーシティ(Jersey City)です。
PATHという地下鉄でワールドトレードセンターまで10分前後という距離にあり、通勤時間で見ればブルックリンやクイーンズの大半のエリアより近い場所です。
ただし、ジャージーシティは一つの街として語れる規模ではありません。人口は約29万人でニュージャージー州第2の都市であり、川沿いのタワー街から内陸の戸建て街まで、性格の違うエリアが同じ市域に並んでいます。
ここでは投資と実需の両方の観点から、どのエリアがどういう性格を持つのかを整理します。
1. ジャージーシティとはどのようなエリアか

ジャージーシティはニュージャージー州ハドソン郡の中心都市です。対岸はマンハッタンのロウアーマンハッタンにあたり、川沿いからは金融街の高層ビル群が正面に見えます。
市内は大きく4つの性格に分かれます。
ひとつめはウォーターフロントです。エクスチェンジプレイス、ポーラスフック、ニューポートといった地区に高層のコンドミニアムと賃貸タワーが集まり、金融機関のバックオフィスも立地しています。市内で最も価格が高いエリアです。
ふたつめはジャーナルスクエアです。PATHの主要駅を中心とした内陸の中心地で、近年は高層物件の建設が続いています。ウォーターフロントより1割から2割安い水準です。
みっつめはザ・ハイツです。パリセーズの崖の上にあり、2世帯や3世帯のマルチファミリーが中心です。
よっつめは市の南部です。価格は最も抑えられていますが、通勤はライトレールとバスが中心になります。
同じ市名でも、どの地区かで価格と通勤手段がまったく変わるという点が、ジャージーシティを検討するときの出発点です。
2. 物件のタイプと代表的なレジデンス

ウォーターフロントの物件は、2000年代以降に建った高層のコンドミニアムと賃貸タワーが中心です。コンシェルジュ、ジム、屋上テラス、駐車場が揃い、設備の水準はマンハッタンの新築と大きく変わりません。
管理費は月600ドルから1,100ドル、日本円で約9万円から16万5,000円という水準が中心です。
ジャーナルスクエア周辺には、近年竣工した高層物件と、戦前築の低層集合住宅が混在します。同じ駅から歩ける距離でも、築年数によって管理の水準に差が出ます。
ザ・ハイツと南部はマルチファミリーが中心です。1戸に住みながら残りを貸すという持ち方が成立する価格帯で、投資として検討される方の入口になります。
コープはニューヨーク市内ほど多くありません。理事会の面接という手続きが購入の壁になりにくい点は、渡米されて間もない方には実務上の利点です。
3. 物件価格と賃貸相場

Zillowの住宅価格指数(ZHVI)と観測家賃指数(ZORI)で見た2026年6月時点の水準です。ハドソン川沿いの近隣都市と並べます。
| 都市 | 中位住宅価格 | 過去5年の上昇率 | 月額家賃の目安 | 表面利回り |
|---|---|---|---|---|
| ジャージーシティ | 665,140ドル(約9,977万円) | 14.1% | 3,182ドル(約48万円) | 5.74% |
| ホーボーケン | 883,215ドル(約1億3,248万円) | 4.8% | 3,941ドル(約59万円) | 5.35% |
| ウィーホーケン | 883,170ドル(約1億3,248万円) | 22.9% | 3,793ドル(約57万円) | 5.15% |
| ユニオンシティ | 569,523ドル(約8,543万円) | 40.1% | 2,421ドル(約36万円) | 5.10% |
| ベイヨン | 600,724ドル(約9,011万円) | 29.0% | 2,353ドル(約35万円) | 4.70% |
1ドル150円で換算しています。表面利回りは年間家賃を物件価格で割ったグロスの数字で、固定資産税、管理費、保険は含みません。
読み取っていただきたいのは2点です。
ひとつは、ジャージーシティの表面利回り5.74%が近隣で最も高いことです。ホーボーケンより価格が2割安く、家賃の差は2割弱にとどまるため、収益面では有利に出ます。
もうひとつは、過去5年の上昇率が14.1%と近隣より小さいことです。ユニオンシティの40.1%やベイヨンの29.0%に対して伸びが小さいのは、5年前の時点ですでにタワーの供給と価格上昇が進んでいたためです。新築の供給が続いている市場では、家賃も価格も一方向には動きません。
4. 交通アクセスと日常の利便性

通勤手段は4系統あります。
PATHはエクスチェンジプレイス駅とグローブストリート駅からワールドトレードセンターまで10分前後です。ジャーナルスクエア駅からは33丁目方面にも直通します。
フェリーはポーラスフックとニューポートからミッドタウンとダウンタウンへ出ます。所要時間は10分前後で、混雑と遅延の影響を受けにくい手段です。
ハドソン・バーゲン・ライトレールは市内の南北を結び、ホーボーケンやベイヨンとつながります。
NJトランジットのバスと鉄道もあり、ニューアーク空港方面へのアクセスが取れます。
生活面では、グローブストリート周辺に飲食店が集まり、ニューポートには大型のショッピングセンターがあります。ウォーターフロントは徒歩で生活が完結しますが、内陸と南部では車があるほうが行動範囲が広がります。
リバティステートパークは市の南端にあり、自由の女神を正面に見る大きな公園です。
5. 購入時の注意点と資産価値の考え方

ジャージーシティで検討される場合、確認しておくべき点が3つあります。
ひとつめは固定資産税の優遇(PILOT)です。ジャージーシティでは、再開発として建てられた多くのタワーに税の優遇が適用されており、通常の固定資産税ではなく、あらかじめ決められた額を納める仕組みになっています。優遇には期限があり、期限が切れると通常の課税に切り替わって負担が跳ね上がることがあります。検討中の物件に優遇が付いているか、付いている場合は残り年数がいつまでかを、契約前に必ず確認してください。これを見落とすと、想定していた利回りが数年後に崩れます。
ふたつめは供給の量です。ウォーターフロントとジャーナルスクエアでは高層物件の建設が続いています。同じ間取りの競合が一度に市場に出るため、募集家賃が想定を下回ることがあります。空室期間を長めに見た計算をおすすめします。
みっつめは洪水リスクです。川沿いの低地は2012年のハリケーン・サンディで浸水しました。1階と地下の住戸、駐車場が地下にある建物では、洪水保険の見積もりを購入判断の前に取ってください。
資産価値の考え方としては、PATHの駅からの距離がそのまま価格に表れる市場です。徒歩10分を超えると価格も家賃も明確に下がるため、駅からの距離を最優先の条件に置くことをおすすめします。
地元で通われている店と公共空間

グローブストリート駅の周辺には、個人経営の飲食店とカフェが集まっています。週末には広場でファーマーズマーケットが開かれます。
公共空間としては、川沿いのハドソンリバー・ウォーターフロント・ウォークウェイが南北につながっており、対岸の金融街を正面に見ながら歩けます。
リバティステートパークには広い芝生と遊歩道があり、エリス島とリバティ島へのフェリーもここから出ます。実際にご覧いただく際は、平日の朝の通勤時間帯と週末の両方で街の様子を見比べていただくことをおすすめしています。
まとめ
ジャージーシティは、ダウンタウンへの通勤時間を10分前後に収めながら、ホーボーケンより2割安く、表面利回りでは近隣最高の水準が取れるエリアです。
一方で、過去5年の上昇率は14.1%と近隣より小さく、高層物件の供給も続いています。値上がりを前提にするより、家賃収入で回る数字になっているかで判断する市場です。
最大の確認事項は固定資産税の優遇の残り年数です。ここを見落とすと、数年後に利回りが崩れます。
ジャージーシティの物件をご検討されている方は、ご予算と通勤先、自己居住か投資かをお知らせいただければ、条件に合う物件と、契約までにかかる実費をまとめてお出しします。
本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。不動産サービスはR New Yorkとしてのサービス提供となります。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。


















