売却時のFIRPTA源泉徴収ガイド
外国人がアメリカの不動産を売ると、売却価格の一定割合が先に差し引かれます。税率の決まり方、免除と軽減の条件、手続きの流れ、還付までの資金繰り。売る前に知っておく制度です。
このガイドでわかること
- 誰が対象になり、誰が源泉徴収するのか
- 税率が15%か10%か0%かの分かれ目
- 免除規定と軽減申請の使い方
- 還付までの資金繰り
FIRPTAとは何か
外国人による米国不動産の売却時に、税金を確実に徴収するための制度です。1980年に制定され、源泉徴収の義務は買主側が負います。
誰が対象になるか
米国の税務上の非居住者です。市民権も永住権も持たない個人、外国法人、外国パートナーシップ、外国信託が該当します。
居住者かどうかの判定
滞在日数に基づく判定基準があります。米国に住んでいても、基準を満たさなければ非居住者として扱われます。
誰が源泉徴収するか
買主です。徴収と納付の義務は買主にあり、怠れば買主が責任を負います。
納付の期限
決済完了から15日以内に、所定の様式で税務当局へ納付します。
源泉徴収は仮の納付です。最終的な税額は翌年の確定申告で精算され、過納分は還付されます。
税率の決まり方
原則は売却価格の15%です。買主が自己居住目的で購入する場合にかぎり、価格帯に応じて軽減または免除されます。

| 条件 | 源泉徴収率 | 適用の要件 |
|---|---|---|
| 原則 | 15% | 自己居住の要件を満たさないすべての取引 |
| 30万ドル以下 | 0%(免除) | 買主が個人で、購入後2年間の過半を自己居住に使う予定であること |
| 30万ドル超100万ドル以下 | 10% | 同じく買主の自己居住要件を満たす場合 |
| 100万ドル超 | 15% | 自己居住であっても軽減はありません |
免除と軽減は買主の使用目的が要件です。売主の側で選べるものではありません。買主が虚偽の申告をした場合、買主に納付義務が生じます。
免除規定と軽減申請
実際の税負担が源泉徴収額を大きく下回る見込みなら、徴収率そのものを引き下げる申請ができます。手取りの資金繰りに直結します。
自己居住による免除を確認する
売却価格が30万ドル以下で、買主が個人として自己居住に使う場合、源泉徴収は免除されます。買主が所定の様式に宣誓書を添えて提出します。
軽減申請が使える場面を見極める
売却で損失が出る場合、取得価格が高くキャピタルゲイン率が低い場合、減価償却の影響で税額が圧縮される場合が対象になります。
決済前に申請する
申請は売却の完了前に提出する必要があります。決済後では間に合いません。
審査期間を見込む
審査に90日程度かかります。売却を決めた段階で準備を始めてください。
根拠資料を揃える
取得時の契約書、改良工事の証明、減価償却の計算書など、詳細な計算資料の添付が求められます。
軽減申請は決済前にしか出せません
審査に90日程度かかります。売却を決めた段階で準備を始めないと、使えるはずの軽減が使えなくなります。
手続きの流れと必要書類
実務ではエスクロー会社か不動産弁護士が代行しますが、最終的な責任は買主にあります。進行状況の確認は売主側でも行ってください。
| 段階 | 誰が | 内容 |
|---|---|---|
| 売主の税務ステータス確認 | 買主 | 非居住者かどうかを確認します。宣誓書の提出を受けることもあります |
| 源泉徴収額の計算 | 買主・エスクロー | 売却価格と使用目的から税率を確定します |
| 決済時の控除 | エスクロー | 売却代金から源泉徴収分を差し引きます |
| 15日以内の納付 | 買主 | 所定の申告書と明細書を提出し、税を納付します |
| 源泉徴収票の交付 | 買主 | 売主へ明細書の写しが交付されます。確定申告で使います |
| 翌年の確定申告 | 売主 | 非居住者用の申告書で最終精算し、過納分の還付を受けます |
売主側で用意する主な書類は、身分証明、取得時の契約書一式、改良工事の証明、投資用物件の場合は減価償却の計算書です。
実務上の注意点

源泉徴収額は最終税額ではない
最も多い誤解です。仮納付であり、翌年の申告で精算されます。過納なら還付されます。
資金繰りへの影響
手取りが一時的に大きく減ります。次の投資予定がある場合、還付まで数か月から1年かかることを前提に組んでください。
共有名義の扱い
外国人の持分にのみ適用されるのが原則ですが、実務では全体に徴収して後で調整するケースがあります。
法人名義の場合
設立地と株主構成で適用が決まります。登記上の本店所在地とは判定が異なることがあります。
取得原価の記録を残す
購入価格だけでなく、改良工事費、仲介手数料、登記費用、融資手数料も取得原価に含められます。
売却時期の調整
年をまたぐと源泉徴収と申告のタイミングがずれます。還付までの期間が延びます。
よくある質問
源泉徴収された分は戻ってきますか
いつ準備を始めるべきですか
グリーンカードを持っていれば対象外ですか
日本でも課税されますか
誰に依頼すればよいですか
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