ニューヨークでご家族と暮らす住まいを探される場合、多くの方が最後に突き当たるのが面積の問題です。マンハッタンで3ベッドルームを確保しようとすると、予算が一段跳ね上がります。
その解として当社がご案内することが多いのが、クイーンズ中央部のフォレストヒルズ(Forest Hills)です。
このエリアの特徴を一言で申し上げると、市内に居ながら郊外の住環境が手に入るという点に尽きます。地下鉄でミッドタウンまで30分、LIRR(ロングアイランド鉄道)を使えばペンステーションまで15分前後です。
それでいて街の中心部には1909年に計画されたチューダー様式の邸宅街が残り、通りには樹木が並びます。本日はフォレストヒルズの街と不動産事情を見ていきましょう。
1. フォレストヒルズという街の成り立ち

フォレストヒルズはクイーンズのほぼ中央、フラッシング・メドウズ公園の西側に位置します。北はレゴパーク、南はケウ・ガーデンズと接しています。
街の性格を決定づけたのは、1909年に始まったフォレストヒルズ・ガーデンズの開発です。ラッセル・セージ財団の資金により、英国の田園都市構想を手本とした住宅地が計画されました。
設計を担当したのは、セントラルパークを手がけたオルムステッドの息子であるフレデリック・ロー・オルムステッド・ジュニアです。曲線を描く街路、統一されたチューダー様式の外観、駅前の広場を中心とした構成が、100年以上たった現在もそのまま維持されています。
この区域の街路は私道であり、維持管理はフォレストヒルズ・ガーデンズ・コーポレーションという住民組織が担っています。市の管轄ではないため、外壁や樹木の扱いに独自の規約がある点は、購入前に必ず確認すべき事項です。
もう一つ、この街の名を世界に知らしめたのがテニスです。ウエストサイド・テニスクラブは1915年から全米オープンの会場であり、1978年にフラッシング・メドウズへ移転するまで、この街が全米テニスの中心地でした。
クラブに残るフォレストヒルズ・スタジアムは現在、屋外音楽会場として再生され、夏季には大規模な公演が開催されています。
2. 物件のタイプ別に見る選択肢

フォレストヒルズの住宅は、大きく3つの層に分かれます。予算とご希望によって、検討すべき層が変わります。
①フォレストヒルズ・ガーデンズの戸建て。チューダー様式を中心とした邸宅で、価格帯は180万〜400万ドル程度です。敷地に余裕があり、市内で庭付きの生活を求める方の最上位の選択肢となります。
②クイーンズ大通り沿いのコープ(協同組合住宅)。1930年代から1960年代に建てられた中高層で、ドアマンとエレベーターを備えた物件が多く、フォレストヒルズの住宅供給の中心です。
③築浅のコンドミニアム。棟数は限られますが、オースティンストリート周辺や大通り沿いに点在します。
ここで実務上重要になるのが、②のコープです。ニューヨークのコープは、住戸そのものではなく建物を保有する法人の持分を買う仕組みであり、購入には理事会(ボード)の承認審査があります。
審査では収入、資産、負債比率などが精査され、物件価格の相当額を現金で保有していることを求められることも珍しくありません。転貸(サブレット)の可否や条件も建物ごとに異なります。
コンドミニアムとコープの違いについては、コンドミニアムとコープの違いガイドで詳しく解説しています。
3. 価格と家賃の相場

それでは、実際の相場を見ていきます。
2026年現在、フォレストヒルズのコープは1ベッドルームで28万〜42万ドル程度(約4,300万〜6,500万円程度)、2ベッドルームで45万〜70万ドル程度が中心帯です。(2026年8月現在、1ドル=155円換算)
賃貸では1ベッドルームで月2,300〜2,900ドル程度、2ベッドルームで月3,000〜3,900ドル程度が目安となります。
コープは価格が低い代わりに、毎月の管理費(メンテナンス)が高めに設定されます。2ベッドルームで月1,200〜1,900ドル程度を見込む必要があり、この点は購入判断に大きく影響します。
| 物件タイプ | 価格帯 | 月額コスト | 主な検討層 |
|---|---|---|---|
| ガーデンズの戸建て | 180万〜400万ドル | 固定資産税+私道維持費 | 長期居住のご家族 |
| コープ2BR | 45万〜70万ドル | 管理費1,200〜1,900ドル | 実需・自己居住 |
| コンドミニアム2BR | 75万〜110万ドル | 共益費+固定資産税 | 投資・外国籍の方 |
| 賃貸2BR | 月3,000〜3,900ドル | — | 駐在の方 |
※上記は、2026年現在の当社が現地で把握している市場感に基づく目安であり、個別物件により大きく異なります。
投資目的でご検討される方に申し上げたいのは、フォレストヒルズではコンドミニアムを選ぶ実務上の理由があるという点です。
コープは理事会の承認と転貸規約という二重の制約があり、外国籍の方の取得や賃貸運用には向きません。価格の安さだけで判断すると、取得後に運用できないという事態が起こり得ます。
4. 交通アクセスと生活環境

続いて、通勤と日々の生活を見ていきます。
地下鉄はE・F・M・R系統が乗り入れる71番街・フォレストヒルズ駅が中心です。E系統とF系統は急行運転を行っており、ミッドタウンの53丁目まで25分から30分程度で到達します。
もう一つの選択肢がLIRR(ロングアイランド鉄道)のフォレストヒルズ駅です。ペンステーションまで15分前後、グランドセントラル方面へもイーストサイドアクセス経由で接続します。運賃は地下鉄より高くなりますが、着席通勤が可能です。
この地下鉄とLIRRの二重アクセスは、クイーンズでも限られたエリアだけが持つ条件です。
買い物と外食の中心はオースティンストリートです。全国チェーンから個人経営の店まで、およそ10ブロックにわたって商店が連なり、週末は近隣から人が集まります。
教育環境については、クイーンズ学区28(District 28)に属します。学区の評価や個別校の指標は年度ごとに変動しますので、ニューヨーク市教育局の公開情報をご自身でご確認いただくことを推奨いたします。学校選びの考え方は、ニューヨークの学校ガイドにまとめています。
緑地では、東側に広がるフラッシング・メドウズ・コロナ・パークが徒歩圏です。1939年と1964年の万国博覧会の会場であり、ユニスフィアと呼ばれる巨大な地球儀のモニュメントが今も立っています。
5. 購入時の注意点

フォレストヒルズで購入をご検討される際の確認事項を整理します。
①コープの場合、理事会審査の要件(自己資金比率、資産要件、面接)を事前に確認すること。
②ガーデンズ区域の戸建ては私道であり、住民組織の規約と年会費が発生すること。
③プレウォーのコープは、建物全体の修繕積立の状況と直近の一時金徴収(アセスメント)の履歴を確認すること。
④クイーンズ大通りに面した住戸は交通量の影響を受けるため、内見は平日の日中に行うこと。
とくに③は見落とされがちです。築80年を超える建物では、屋根や配管の更新、ファサード検査(Local Law 11)への対応で、住戸ごとに数千ドルから数万ドルの一時金が課されることがあります。
直近数年の議事録と財務諸表を確認すれば、この点はかなりの精度で把握できます。当社では購入前にこれらの書類を取り寄せ、内容をご説明しております。
資産価値の観点では、フォレストヒルズは景観と街路構成が制度的に守られている点が強みです。ガーデンズ区域は私道であり、大通り沿いを除けば新規の高層開発余地がほとんどありません。
供給が増えにくい住宅地で、鉄道二重アクセスと商店街が揃っている。この構造は市場が荒れた局面でも下値を支える要素になります。
地元で通われている店と名所

それでは、この街で長く続いている店をご紹介します。
エディーズ・スイートショップは1920年代から続くアイスクリームパーラーです。大理石のカウンター、回転式のスツール、手作りのシロップまで当時のまま残されており、市内でも数少ない現役の内装として知られています。
ニックス・ピザは薄焼きのコールオーブンで知られる店で、週末は近隣のご家族連れで席が埋まります。
マーサズ・カントリー・ベーカリーはオースティンストリートの菓子店で、夜遅くまで営業しているため食後に立ち寄る方が多い店です。
ハンバーガーチェーンのベアバーガーは、このアスカンアベニューの店舗が1号店です。現在は各地に展開していますが、出発点はこの街でした。
名所としては、ステーション・スクエアを挙げないわけにはいきません。LIRR駅前の広場で、チューダー様式の建物に三方を囲まれた空間は、ニューヨーク市内とは思えない景観です。
ウエストサイド・テニスクラブとスタジアムも徒歩圏にあり、夏の公演の日は街全体が賑わいます。
まとめ

フォレストヒルズは、市内でありながら郊外の住環境を持ち、地下鉄とLIRRの二重アクセスを備えた、クイーンズでも独特の位置を占めるエリアです。
ご家族でお住まいを探される方、面積を重視される方にとって、マンハッタンでは実現しにくい条件が現実的な予算で成立します。
一方で、住宅供給の主力がコープであることから、購入には理事会審査という固有の関門があります。ここを理解せずに動くと、時間だけを失うことになります。
当社では、ニューヨーク現地にて、物件のご紹介から購入手続き、賃貸のお住まい探しまで、NY州ライセンスを有するプロフェッショナルを通じてご支援しております。
フォレストヒルズのエリアにご関心をお持ちの方は、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
※当社はR New York としてのサービスとなります。物件の売買・賃貸のご案内は、NY州の不動産ライセンスに基づき行っております。
本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。


















