LLC Ownership Guide

LLCで持つか、個人で持つか

ニューヨークの不動産は、個人名義のほかLLC(合同会社に相当)やトラストの名義で持てます。責任の切り分け、承継の設計、公表範囲の限定という利点と、設立・維持の費用と手間という負担。どこで損益が分岐するのか、開示規制の現在も含めて整理しました。

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このガイドでわかること

  • LLCの機能は責任の切り分け、承継の設計、公表範囲の限定の3つです
  • 当局と金融機関には実質的所有者を開示します。秘匿の道具ではありません
  • 1戸を自宅として持つだけなら、個人名義の簡便さが勝つ場面が多くあります
  • コープではLLC名義は原則使えません。コンドミニアムが前提です
Why

LLC名義の3つの機能

高額帯の取引でLLCが使われてきた理由は3つに整理できます。

責任の切り分け

賃貸に出した物件で事故や紛争が起きた場合の責任範囲を、他の資産と分離します。賃貸運用を前提にするほど、この機能の意味が大きくなります。

承継の設計

不動産の登記ではなく法人の持ち分という形で、持ち分の分割や生前の移転を設計できます。複数の相続人がいる場合や、段階的に渡したい場合に効きます。

公表範囲の限定

ニューヨークの不動産取引は公的記録として公開され、個人名義では住所と氏名が紐づきます。LLC名義では登記に法人名だけが載ります。防犯と生活の平穏の観点で実在する需要です。

Disclosure

匿名で買える時代は終わっています

法人の背後にいる実質的所有者(ベネフィシャル・オーナー)の開示を求める仕組みが、連邦・州の両方で整備されてきました。前提を誤解したまま進めると、取引の途中で開示を求められて驚くことになります。

相手個人名義LLC名義
登記を見る第三者氏名が見える法人名のみ
連邦・州の当局氏名を把握実質的所有者の届け出が必要
金融機関本人確認実質的所有者まで確認される
税務当局申告で把握申告で把握(匿名性なし)

LLCは秘匿の道具ではなく、一般公開の範囲を法人名にとどめる道具です。当局への透明性と、公衆に対する慎重さは両立します。開示すべきものは最初から開示する前提で書類を整えるのが実務です。

Cost

設立と維持にかかるもの

機能には対価が付きます。費用と手間を先に見積もってから判断します。

設立

州への登録、運営契約書の作成、EIN(納税者番号)の取得。弁護士を通じて数週間かかります。物件が決まってから作り始めると契約に間に合わないため、購入活動より先に済ませます。

毎年の維持

州への年次報告と手数料、実質的所有者情報の届け出の更新、申告書の作成。法人を持つこと自体に、毎年の固定費と事務が発生します。

金融機関の対応

LLC名義の口座開設と送金体制、ローンを使う場合は法人向けの審査枠組み。個人より確認事項が増え、時間もかかります。

時間も費用です

設立から口座と送金体制まで含めて、動き出しから1〜2ヶ月を見ておきます。良い物件は待ってくれないため、器を先に作っておくことが実質的な競争力になります。

Tax

税務の扱い。名義で変わるもの、変わらないもの

名義を変えれば税金が消えるわけではありません。何が変わり、何が変わらないかを分けて理解します。

固定資産税は変わりません建物と住戸に課されるため、名義が個人でも法人でも同じです
賃料の課税方式は選択できます非居住者の賃料収入は、総額への源泉徴収か、経費控除後の純額課税かを選べます。これは名義よりも申告の設計の問題です
売却時の源泉徴収は入ります非居住者の売却にはFIRPTAの源泉徴収が適用されます。構造によって扱いが変わるため、出口の形は取得前に設計します
相続の扱いが変わり得ます米国の遺産税(非居住者の基礎控除は6万ドル)と日本の相続税の二重構造の中で、保有構造は承継の結果に直結します。ここは専門家との個別設計が前提です
Decision

損益分岐。どちらを選ぶか

判断は匿名性ではなく、保有の目的から行います。

個人名義が勝つ場合

1戸を自宅または二拠点として持ち、賃貸に出さず、承継も単純な場合。設立・維持の費用と事務が丸ごと不要になり、取引も速く進みます。

LLCが効いてくる場合

賃貸運用を前提にする場合、複数物件へ広げる計画がある場合、承継を段階的に設計したい場合、公表範囲を限定したい場合。機能への対価として費用が正当化されます。

そもそも選べない場合

コープは原則として個人名義のみです。法人やトラストで持ちたい時点で、対象はコンドミニアムに絞られます。名義の希望が建物選びより先に来る理由です。

FAQ

よくある質問

法人名義のご相談で実際に多い質問です。

日本の法人名義で直接買えますか
可能な場合もありますが、米国側の申告・源泉・登記の扱いが複雑になり、金融機関の対応も限られます。実務では米国内にLLCを設立して保有する形が標準的です。どちらが合うかは日米両方の税務を見て判断します。
LLCにすれば相続税を避けられますか
避けられません。保有構造によって扱いは変わりますが、構造だけで課税が消えることはなく、誤った設計はかえって二重課税を招きます。日米両方の専門家を交えた個別設計が前提です。
すでに個人名義で持っている物件をLLCに移せますか
移せますが、移転が譲渡として扱われ、譲渡税やローンの期限の利益喪失条項に触れる場合があります。取得の時点で名義を決めておくのが最も安く済みます。
設立はどの州でやるべきですか
物件がニューヨークにある場合、ニューヨーク州での設立または登録が実務の基本です。他州設立の節約話には、結局ニューヨークでの登録が必要になる等の見落としが多くあります。

まずはご相談ください

保有の目的、賃貸の有無、承継の計画をお知らせいただければ、個人名義とLLCのどちらが合うか、費用の見積もりと合わせて整理します。物件を探し始める前の設計段階からご相談いただけます。

不動産サービスはR New Yorkとしてのサービス提供となります。