収支は満室想定で組まない
物件の善し悪しは、正しく組んだ収支の上でしか比べられません。表面利回りの罠、キャップレートとDSCRの使いどころ、空室と費用の織り込み方、為替をどう扱うか。ニューヨークの物件を数字で評価する手順をまとめました。
このガイドでわかること
- 表面利回りは比較の入口にすぎません。実質は費用を引いた後の数字です
- キャップレートは物件の値段の妥当性、DSCRは借入の安全度を測ります
- 空室・原状回復・管理委託・保険を引いた手取りで判断します
- 最後は税引き後・円建てに直します。日本から見た本当の数字です
表面利回りの罠
年間賃料を価格で割っただけの数字は、市場間の比較でほぼ確実に判断を誤らせます。
費用構造が市場で違います
ニューヨークは管理費と税が重く、表面と実質の差が大きい市場です。表面の高い他州の物件と表面のまま比べると、実質の差は数字の見かけほど開いていないことがよくあります。
空室と回転の速さも市場で違います
空室期間が短い市場は、表面が低くても実質の稼働が高い。表面利回りには稼働の質が入っていません。
出口の流動性は利回りに写りません
売りたいときに売れる市場かどうか。利回りの高い市場は、出口の流動性が薄い市場でもあり得ます。収益の数字と出口の数字は別々に評価します。
指標の使い分け
それぞれの指標には答えられる問いが決まっています。
| 指標 | 計算 | 答えられる問い |
|---|---|---|
| 表面利回り | 年間賃料 ÷ 価格 | 入口のふるい分けだけ |
| 実質利回り(NOI利回り) | 純営業収益 ÷ 価格 | この値段は収益に対して妥当か |
| キャップレート | NOI ÷ 価格(市場比較で使う) | 同じ市場の他物件と比べて割高か |
| DSCR | NOI ÷ 年間返済額 | 借入は安全圏か(1.2以上が一つの目安) |
| キャッシュオンキャッシュ | 税引前CF ÷ 自己資金 | 入れた現金に対する回り |
NOI(純営業収益)は、賃料から空室損と運営費(管理費・税・保険・委託・修繕)を引いた数字です。ローン返済と減価償却は含めません。指標の土台はすべてこのNOIです。
収支の組み立て。引くべきものを全部引く
満室想定の収支は計画ではなく願望です。実務の織り込みを並べます。
感応度で見る
空室1ヶ月、金利1パーセント、賃料5パーセント減。前提を1つずつ揺らして手取りがどう動くかを見ると、その物件の弱点が数字で分かります。1つの前提が崩れただけで赤字に落ちる計画は、レバレッジか価格に無理があります。
税引き後・円建てまで下ろす
日本から持つなら、最後の数字は税引き後の円建てです。
米国の税を引きます
純額課税を前提に、減価償却まで織り込んだ課税所得と税額を見積もります。州の税も忘れずに。
日本側の扱いを重ねます
日本の不動産所得としての申告、外国税額控除、国外中古建物の損失制限。日米を通算した後の手取りが実際の数字です。
為替は幅で持ちます
円建ての手取りはレートで動きます。1本のレートではなくレンジで持ち、円高側でも計画が壊れないかを確認します。ドル資産を持つこと自体の分散価値は、利回りとは別の効用として評価します。
よくある質問
収支分析のご相談で実際に多い質問です。
ニューヨークの実質利回りはどのくらいですか
利回りが低いのに買う理由はありますか
中古と新築で収支の組み方は変わりますか
シミュレーションはお願いできますか
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まずはご相談ください
候補物件の実データで、空室・費用・税・為替まで織り込んだ収支表を作成します。前提を1つずつ揺らした感応度まで見て、数字で決められる状態にします。
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