
アメリカの不動産の名義を後から変えると、買い直しに近い費用が発生することがあります。個人名義で買った物件を法人(LLC)に移すだけで、譲渡税、モーゲージ記録税、タイトル保険の再取得、そしてローンの一括返済請求という4つの問題が同時に起きえます。名義は購入前に決めるほど安く、後から変えるほど高くつきます。
名義を移すと、何にいくらかかるのか
米国の不動産の名義変更は、デード(Deed)と呼ばれる証書を作成して郡の記録所に登録する手続きです。書類上は単純ですが、税務上は「譲渡」として扱われるため、売買と同じ費用が生じます。
| 起きること | 内容 | 回避できるか |
|---|---|---|
| 譲渡税 | ニューヨークは市と州の両方に譲渡税がある。無償の移転でも対価とみなされる場合がある | 同一の実質所有者への移転は免除の対象になりうる。事前確認が必要 |
| モーゲージ記録税 | ローンを組み直すと借入額の約2%(ニューヨーク) | CEMAで既存元本分は避けられる。ただし貸し手の協力と2〜3ヶ月が要る |
| タイトル保険 | 名義が変わると保障が及ばなくなる場合がある | 再取得が必要。再発行割引を申請できることがある |
| ローンの一括返済請求 | 多くの住宅ローン契約に、所有者が変わったら残債の全額返済を求められる条項がある | 事前に貸し手の書面同意を取る。無断で移すと最も重い問題になる |
4つのうち、実務で最も見落とされるのがローンの一括返済請求です。ローンが残ったまま名義をLLCに移すと、契約上は全額返済を求められる立場になります。実際に請求されるかは貸し手次第ですが、権利があるのは相手側で、こちらに主張できる材料はありません。移す前に書面で同意を取ってください。
それでも移す価値があるのはどんな場合か
費用をかけてでも移す判断になるのは、次のような場合です。
ローンが残っていない物件で、賃貸に出していて責任の切り分けが必要な場合。物件で事故が起きたときに個人の資産まで届かないようにする目的です。複数物件を持っていて、1つの問題が他へ波及しないよう分けたい場合も同じです。
非居住者が相続を見据えて設計する場合も理由になります。ただしこちらは注意が必要で、単純なLLC名義にしても米国の遺産税は消えません。パススルー課税のLLCは、遺産税の計算上その中の不動産を保有しているのと同じに扱われるためです。遺産税を外す構成にするには外国法人を挟むなどの設計が要り、その場合は毎年の所得税の扱いが不利になります。
移さない方がよい場合
自宅として使う予定がある物件は、法人名義にすると売却時の非課税枠(夫婦で最大50万ドル)を失います。セクション121の非課税枠は個人にしか適用されません。節税のつもりで移した結果、出口で50万ドル分の枠を捨てることになります。
物件が1つだけで、ローンが残っていて、自分で住むか将来住む可能性がある。この条件に当てはまるなら、移す理由はほとんどありません。
共有名義にする場合は何が変わるのか
夫婦や親子で共有にする形も名義の選択肢です。共有の持ち方には種類があり、どちらを選ぶかで相続時の扱いが変わります。一方が亡くなったときに自動的に他方へ移る形(ジョイント・テナンシー)と、持分が相続財産になる形(テナンシー・イン・コモン)があります。
自動的に移る形はプロベートを回避できますが、非居住者の場合は遺産税の計算で不利に働くことがあります。夫婦間の無制限控除は、受け取る側が米国市民でない場合に使えないためです。日本人夫婦が共有名義にする際は、プロベート回避と遺産税を分けて検討してください。
一般論はここまでです。名義は購入前に決めるほど選択肢が広く、後から変えるほど費用がかかります。個別のご事情に応じた設計はお問い合わせフォームよりご相談ください。実際にお手伝いした取引は取引実績に掲載しています。
法人名義にするかどうかの損益分岐は法人名義で買うべきかの記事に、自宅の非課税枠は住んでから貸すか貸してから住むかの記事に、相続時の資産種類ごとの扱いは資産の種類で変わるアメリカの相続の記事にまとめています。
よくある質問
個人名義からLLC名義に変えるといくらかかりますか。
譲渡税、タイトル保険の再取得、ローンを組み直す場合のモーゲージ記録税(ニューヨークで借入額の約2%)がかかります。書類の作成自体は簡単でも、税務上は譲渡として扱われます。
ローンが残っていても名義を変えられますか。
契約上は問題が生じます。多くの住宅ローンに、所有者が変わったら残債の全額返済を求められる条項があります。移す前に貸し手の書面同意を取ってください。
LLC名義にすれば米国の遺産税は避けられますか。
避けられません。パススルー課税のLLCは、遺産税の計算上その中の不動産を直接保有しているのと同じに扱われます。遺産税を外すには別の構成が必要で、その場合は毎年の所得税が不利になります。
自宅を法人名義にしても大丈夫ですか。
おすすめしません。売却時の非課税枠(夫婦で最大50万ドル)は個人にしか適用されないため、法人名義にすると出口でその枠を失います。
夫婦の共有名義はどう選べばよいですか。
一方が亡くなったとき自動的に他方へ移る形と、持分が相続財産になる形があります。前者はプロベートを避けられますが、受け取る側が米国市民でない場合は夫婦間の無制限控除が使えず遺産税で不利になることがあります。
本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。

















