2026年10月1日 Satoshi Onodera

1031交換でアメリカの税を繰り延べても、日本では課税される。使える条件の線引き

アメリカの不動産を売って次の物件に買い替えるとき、1031交換を使えば米国の譲渡所得税を繰り延べられます。売却代金に手を触れず、45日以内に次の物件を特定し、180日以内に取得する。これが条件です。

 

ここで見落とされるのが日本側です。日本の所得税には、1031のような繰延べの仕組みがありません。米国で課税されなくても、日本にお住まいの方はその年に譲渡所得として申告し、納税します。現金は次の物件に入っているのに、納税だけが手元に残ります。

 

どこまで使えて、どこから使えないのか。居住者と非居住者で何が変わるのかを整理します。

 

 

1. 1031は米国の中だけで完結する制度

ニューヨークの不動産と書類

 

 

 

期限は45日と180日

売却の決済日から45日以内に次の物件を書面で特定し、180日以内に取得を終える。この2つの期限は延長できません。売却代金は適格仲介者(QI)の口座に入れ、自分の口座を通しません。一度でも受け取ると、その時点で繰延べは認められなくなります。

 

対象は事業用または投資用の不動産です。自宅は使えません。内国歳入庁の解説のとおり、2018年以降は不動産だけが対象で、米国内の不動産と国外の不動産は同種として扱われません。ニューヨークの物件を売って東京の物件を買う形では成立しません。

 

 

2. 日本側では、売った年に課税される

ニューヨークの不動産と書類

 

 

 

長期か短期かで税率が変わる

日本の居住者は全世界の所得に課税されます。米国で繰り延べたかどうかは関係ありません。売却した年の譲渡所得として、翌年3月15日までに申告します。

 

税率は所有期間で変わります。

 

区分 売った年の1月1日時点の所有期間 税率(所得税・住民税)
長期譲渡 5年超 20.315%
短期譲渡 5年以下 39.63%

 

計算は円建てです。取得したときのレートで取得費を、売ったときのレートで収入を円に直します。ドルで横ばいでも、円安が進んでいれば円では利益が出ます。1ドル110円で買い、155円で売れば、ドルの値動きがゼロでも4割の為替差益が課税対象に乗ります。

 

 

3. 外国税額控除がかみ合わない

ニューヨークの不動産と書類

 

 

 

課税の年が両国でずれる

二重課税を調整する仕組みが外国税額控除です。ただし控除できるのは、その年に外国で納めた税だけです。1031で米国の課税を繰り延べると、売った年に米国で納める税がありません。日本で課税され、控除する相手がない状態になります。

 

将来、買い替えた物件を売って米国で課税されたとき、日本ではすでに課税が済んでいます。その年の日本の譲渡所得は、繰り延べた分を含みません。税が出る年が両国でずれるため、控除で取り戻せない部分が残ります。

 

 

4. 非居住者はFIRPTAの源泉が先に来る

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Form 8288-Bは売り出す前に

日本にお住まいの方が米国の不動産を売ると、買主は売却代金の15%を源泉徴収して国庫に納めます。1031交換でも、この源泉徴収は自動では止まりません。繰延べが成立していても、決済の場で15%が引かれれば、その現金は次の物件に使えません。

 

止めるには、決済日までにForm 8288-Bで源泉徴収証明書を申請します。審査には数か月かかります。物件を市場に出す前に動き始める書類です。決済が決まってからでは間に合いません。

 

 

5. それでも使う場合の条件

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判断に必要な3つの数字

1031が効くのは、米国側の課税が重く、日本側の課税が軽いか、生じない場合です。具体的には、売主が米国の居住者であるか、法人を通じて米国で課税され続ける構造のときです。日本に住んだまま個人名義で使うと、米国の税だけが消え、日本の税は残ります。

 

判断に必要なのは3つの数字です。日本で出る譲渡所得と税額、米国で繰り延べられる税額、そして納税資金をどこから出すか。この3つを並べてから、QIを手配するかどうかを決めてください。

 

 

まとめ

 

 

繰り延びるのは米国の税だけ

1031交換は米国の制度で、日本の税を止める力はありません。日本にお住まいのまま使うと、繰り延べた年に日本で納税が生じ、控除する相手もない状態になります。名義を誰にするか、どちらの国で課税を受け続けるかを決めてから、買い替えの設計に入ってください。

 

よくある質問

日本に住んでいても1031交換は使えますか。

米国の手続きとしては使えます。ただし日本の所得税には繰延べの仕組みがないため、売った年に日本で譲渡所得として申告し、納税します。米国で課税が止まっても、日本の課税は止まりません。

45日と180日の期限は延長できますか。

できません。売却の決済日から45日以内に次の物件を書面で特定し、180日以内に取得を終える必要があります。売却代金は適格仲介者の口座に入れ、自分の口座を通した時点で繰延べは認められなくなります。

ニューヨークの物件を売って日本の物件を買う形でも使えますか。

使えません。2018年以降、同種とみなされるのは米国内の不動産同士です。国外の不動産との交換は対象外です。

非居住者の場合、FIRPTAの15%源泉はどうなりますか。

1031交換でも自動では止まりません。決済日までにForm 8288-Bで源泉徴収証明書を申請し、認められて初めて止まります。審査に数か月かかるため、物件を市場に出す前に動き始める書類です。

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買い替えの前に、日本で出る税額と米国で繰り延べられる税額を並べる必要があります。名義と資金の設計からご相談ください。

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