物件をご案内していると、必ずいただくご質問があります。「これはいくらまで下がりますか」。
答えは物件によって大きく異なります。そして、下がるかどうかを決めるのは買主の希望額ではなく、その物件が置かれている状況です。
ニューヨークの取引では、金額だけが評価されるわけでもありません。売主は複数の条件を並べて比べています。
本日は、交渉の場で実際に何が見られているのかについて見ていきましょう。
1. 売主が金額以外に見ているもの

同じ金額のオファーが二つ並んだとき、売主が選ぶのは確実に決済まで進む方です。ここが日本の取引と感覚の異なる点かもしれません。
具体的には、次の条件が比較されます。
①資金の裏付け。現金購入か、融資を使うか。融資であれば事前承認の有無を見ます。
②融資条件の有無。融資が下りなかった場合に契約を解除できる条項を付けるかどうかです。
③決済までの期間。売主の都合に合わせられるかどうかが効きます。
④審査を通る見込み。コープの場合、理事会の審査で落ちる買主は売主にとって時間の損失になります。
ここまでを整理すると、現金購入で期間の柔軟な買主は、金額で少し譲っても選ばれることがあります。
コープの審査についてはボード審査の記事に詳しくまとめています。
2. 売出期間と値下げ履歴を読む

交渉の余地は、公開されている情報からある程度読み取れます。
まず見るのが市場に出てからの日数です。ニューヨークの市場では、売出から最初の数週間に最も多くの内見が入ります。その期間を過ぎても決まっていない物件には、何らかの理由があります。
次に見るのが値下げの履歴です。一度も下げていない物件と、何度か下げている物件では、売主の姿勢が異なります。
ただし、いったん取り下げて再度出し直すと、表示上の日数が戻ります。同じ住戸の過去の掲載履歴まで確認することで、実際の期間が分かります。
あわせて、周辺の成約事例と比べます。売出価格ではなく、成約価格が判断の基準です。この読み方は鑑定と成約事例の記事にまとめています。
3. 交渉が効く物件と効かない物件

それでは、状況ごとの傾向を表で整理します。
| 状況 | 交渉の余地 | 理由 |
|---|---|---|
| 売出直後の人気物件 | 小さい | 複数の買主が競合する |
| 長期間売れ残っている | 相応にある | 売主が期間を負担している |
| 新築の分譲住戸 | 価格以外で動く | 売主が費用の負担で調整する |
| 相続や転居が理由 | 期間の条件が効く | 時期の希望が明確 |
| 戸数の少ない建物 | 小さい | 代替となる住戸がない |
※上記は一般的な傾向です。個別の事情により異なります。
3行目は覚えておく価値があります。新築の分譲では、表示価格を下げない代わりに費用の一部を売主が負担するという調整が行われることがあります。
表示価格は建物全体の評価に影響するため、売主は下げたがりません。金額以外の形で条件を作れないかを確認する余地があります。新築の仕組みは新築コンドミニアムの記事にまとめています。
4. 競合したときの進み方

人気の物件では、複数の買主から同時にオファーが入ります。この場合、売主側から最終条件の提示を求められることがあります。
ここで重要なのは、金額を上げること以外に手段があるという点です。
・融資条件を外す(資金の目処が確実な場合のみ)
・決済までの期間を売主の希望に合わせる
・手付金の割合を上げる
・売主が引き渡し後も一定期間滞在できる条件を認める
要点をまとめると、条件で差をつけられる場面があります。ただし融資条件を外すのは、資金が確実な場合に限ります。外した後に融資が下りなければ、手付金を失う可能性があります。
ご自身の資金構成でどこまで踏み込めるかは、事前に弁護士とご確認ください。弁護士の役割はアトーニーの記事、購入までの期間はクロージングまでの流れの記事にまとめています。
まとめ

交渉で効くのは、希望額ではなくその物件の状況と、こちらが出せる条件です。売出期間、値下げ履歴、成約事例。この三つを先に調べておけば、無理のない線が見えてきます。
そして、金額以外にも動かせる部分があります。資金の裏付けと期間の柔軟性は、金額と同じ重みで評価されます。
ニューヨークの取引の実際は動画でもご紹介しています。
YouTubeチャンネルとInstagramで、現地から継続して発信しております。
ご関心の物件について、売出履歴と成約事例をお調べいたします。
よくある質問
物件の価格が下がるかどうかは買主の希望額で決まりますか。
物件の価格が下がるかどうかを決めるのは買主の希望額ではなく、その物件が置かれている状況です。ニューヨークの取引では金額だけが評価されるわけでもなく、売主は複数の条件を並べて比べています。資金の裏付けや融資条件の有無、決済までの期間、審査を通る見込みなどが比較され、現金購入で期間の柔軟な買主は金額で少し譲っても選ばれることがあります。
売主が金額以外に見ている具体的な条件にはどのようなものがありますか。
売主は確実に決済まで進む方を選ぶため、資金の裏付けとして現金購入か融資を使うか、事前承認の有無を見ます。また、融資が下りなかった場合に契約を解除できる条項を付けるかどうかという融資条件の有無も比較されます。さらに、売主の都合に合わせられるかどうかが効く決済までの期間や、コープの場合理事会の審査で落ちる買主は時間の損失になるため審査を通る見込みも確認されます。
交渉の余地を公開されている情報から読み取るには何を調べればよいですか。
まず市場に出てからの日数を見ます。売出から最初の数週間に最も多くの内見が入り、その期間を過ぎても決まっていない物件には何らかの理由があります。次に値下げの履歴を確認し、一度も下げていない物件と何度か下げている物件で売主の姿勢の違いを判断します。ただし取り下げて再度出し直すと表示上の日数が戻るため、同じ住戸の過去の掲載履歴まで確認することで実際の期間が分かります。
新築の分譲住戸では価格交渉ではなくどのような調整が行われることがありますか。
新築の分譲では表示価格を下げない代わりに費用の一部を売主が負担するという調整が行われることがあります。表示価格は建物全体の評価に影響するため、売主は下げたがりません。そのため金額以外の形で条件を作れないかを確認する余地があり、価格以外で動く傾向があります。これは個別の事情により異なりますが、新築の仕組みを理解することで交渉に役立ちます。
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