アメリカで初めて物件を購入される方が、費用の一覧を見て必ず質問されるのが「タイトル保険」です。
日本には対応する制度がありません。そのため、何のための費用なのかが分かりにくい項目になっています。
結論から申し上げると、これはその物件を売る権利が売主に本当にあったのかを保証するための保険です。日本の登記制度が国の責任で担っている部分を、アメリカでは民間の保険が担っています。
本日は、この仕組みについて見ていきましょう。
1. 日本の登記制度との違い

日本では、法務局が管理する登記簿に所有者が記録されます。売買の際は、この記録を確認して取引を進めます。
アメリカにも記録の制度はありますが、性格が異なります。郡の書記局に届け出られた書類が時系列で積み上がっているだけで、誰が正当な所有者かを国が判定しているわけではありません。
つまり、記録をさかのぼって権利のつながりを確かめる作業が、取引のたびに必要になります。この作業が権原調査(タイトルサーチ)です。
そして、調査は完璧にはなりません。記録に残っていない権利や、書類の不備が後から出てくる可能性があります。その残ったリスクを引き受けるのが、タイトル保険です。
2. 権原調査で何を調べるのか

調査では、過去にさかのぼって次の点を確認します。
①所有権の移転の連続性。売買、相続、贈与が途切れなくつながっているかを見ます。
②未解除の抵当権。過去の融資が完済されていても、解除の届け出が残っていない場合があります。
③先取特権。未払いの工事代金や税金が、物件に対する請求権として残っていることがあります。
④地役権や制限。通行権や利用の制限が設定されていないかを確認します。
⑤判決や係争。過去の所有者に対する判決が物件に及んでいないかを見ます。
以上を踏まえると、調査の対象は現在の売主だけではありません。何代も前の所有者の段階で生じた問題が、いまの取引に影響します。
問題が見つかった場合は、決済までに解消するのが通常の流れです。解消できなければ、そこで取引が止まります。
3. 保険が守る範囲と守らない範囲

それでは、この保険の性格を整理します。
| 項目 | タイトル保険 | 火災保険など |
|---|---|---|
| 守る対象 | 過去に起きたこと | これから起きること |
| 保険料 | 決済時に一度だけ | 毎年払う |
| 期間 | 所有している間ずっと | 契約期間のみ |
| 対象外 | 購入後に生じた権利関係 | 経年劣化など |
| 融資時の扱い | 貸手用が別に必要 | 加入が条件になる |
※上記は制度の性格を比較したものです。契約内容は保険会社により異なります。
1行目が最も重要な違いです。タイトル保険は、購入した時点ですでに存在していた問題に備えるものです。購入後にご自身が設定した抵当権や、新たに生じた争いは対象になりません。
5行目も実務では効きます。融資を使う場合、貸手が自分の債権を守るための保険を別に求めます。買主自身を守る保険とは別建てで、費用も別に発生します。
融資の実務はアメリカ住宅ローンのガイド(駐在と非居住者向け)にまとめています。
4. ニューヨークでの費用の考え方

ニューヨーク州では、この保険の料率が州の監督下にあり、保険会社を変えても料率そのものは大きく変わりません。物件価格に応じて算出されます。
費用として発生するのは、次の要素です。
・買主自身を守る保険の保険料(物件価格に連動)
・融資を使う場合、貸手用の保険料
・権原調査そのものの費用
・書類の記録手数料と関連する事務費
・調査で問題が見つかった場合の解消にかかる費用
結局のところ、金額は物件によって変わるため、見積もりを取って確認します。決済費用の全体像はクロージングコストの記事にまとめています。
手配は通常、買主側の弁護士が進めます。ご自身で保険会社を探す必要はありません。弁護士の役割はアトーニーの記事をご覧ください。
なお、コープの購入では建物の株式を取得する形になるため、この保険の扱いが異なります。形式の違いはコンドとコープの記事にまとめています。
まとめ

タイトル保険は、日本の登記制度が担っている「国が権利を確定させる」機能の代わりにあるものです。制度の違いから生まれた費用であり、省ける項目ではありません。
逆に言えば、この調査と保険を通すことで、過去の権利関係については一度整理されることになります。決済までに何が確認されたかは、報告書で受け取れます。
アメリカの取引実務は動画でもご紹介しています。
YouTubeチャンネルとInstagramで、現地から継続して発信しております。
決済費用の内訳と、弁護士のご紹介を承っております。
保険の仕組みと費用の内訳はタイトルインシュランスの仕組みと費用の記事にまとめています。
よくある質問
タイトル保険は何を保証するものですか。
タイトル保険は、その物件を売る権利が売主に本当にあったのかを保証するためのものです。日本の登記制度が国の責任で担っている部分を、アメリカでは民間の保険が担っています。記録に残っていない権利や書類の不備が後から出てくるリスクを引き受ける役割を果たします。
権原調査では具体的に何を調べるのですか。
権原調査では所有権の移転の連続性、未解除の抵当権、先取特権、地役権や制限、判決や係争を確認します。調査の対象は現在の売主だけでなく、何代も前の所有者の段階で生じた問題が今の取引に影響する可能性を調べる作業です。
タイトル保険は何を守り何を守らないのですか。
タイトル保険は購入した時点ですでに存在していた過去の問題に備えるもので、所有している間ずっと対象となります。購入後に生じた権利関係や経年劣化などは対象外です。融資を使う場合は貸手が自分の債権を守るための保険を別に求めます。
ニューヨーク州での費用はどう決まるのですか。
ニューヨーク州ではこの保険の料率が州の監督下にあり、物件価格に応じて算出されます。買主自身を守る保険料や貸手用の保険料、権原調査費用、書類の記録手数料などが発生します。金額は物件によって変わるため見積もりを取って確認します。
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