マンハッタンの物件をご検討される方から、コンドミニアムをひと通り見た後にいただくご相談があります。
「建物ごと買うことはできないのですか」。
できます。タウンハウスと呼ばれる低層の建物で、間口の狭い敷地に4階から5階建ての住居が並ぶ形式です。マンハッタンの住宅地では、いまも街並みの中心を占めています。
ただし、コンドミニアムとは所有の性格がまったく異なります。管理組合がなく、判断も費用もすべて所有者に集まります。
本日は、タウンハウスを一棟で持つということについて見ていきましょう。
1. 管理組合がないという意味

コンドミニアムでは、建物の維持は管理組合が担います。屋根の修繕も外壁の点検も、組合が決めて費用を按分します。タウンハウスにはその仕組みがありません。
屋根、外壁、給排水、暖房設備。すべてご自身の判断で、ご自身の費用で維持することになります。
これは負担であると同時に、自由でもあります。管理費を毎月払う必要がなく、理事会の承認を待つ必要もありません。リノベーションの記事で触れた組合の承認手続きは、タウンハウスでは発生しません。
一方、維持費は毎月一定額ではなく、まとまった形で不定期に発生します。屋根の葺き替えや暖房設備の更新は、数年に一度、大きな金額としてやってきます。
年間の平準化した維持費を先に見積もっておくことが、この形式では欠かせません。
2. 歴史地区という制約

マンハッタンでタウンハウスが集まる地域の多くは、歴史地区(Historic District)に指定されています。アッパーウエストサイド、グリニッチビレッジ、ハーレムの一部などが該当します。
指定を受けた地域では、外観に関わる工事に市の景観保存委員会の審査が必要です。
審査の対象になるのは、次のような工事です。
①窓の交換。断熱性能を上げたい場合でも、様式に合う仕様が求められます。
②正面の意匠変更。扉、階段、手すり、外壁の素材や色が対象です。
③増築や屋上の増床。通りから見える範囲かどうかで判断が変わります。
④空調の室外機の設置。設置場所に制限がかかります。
要点をまとめると、制約は主に外側に集中し、内部の改修は比較的自由です。指定の有無は、ニューヨーク市景観保存委員会で地番から確認できます。
審査には時間がかかります。改修を前提に購入されるなら、工期は余裕を持ってお考えください。
3. 賃貸を組み合わせるという使い方

タウンハウスには、コンドミニアムにない使い方があります。一部を自分で使い、残りを貸すという組み合わせです。
建物が複数戸に分かれている場合、上階を賃貸に出し、下階に住むという構成が取れます。
ここで確認が必要なのが、その建物が法律上いくつの住戸として登録されているかです。市の記録に残る戸数と、実際の使われ方が一致していない建物があります。
そして、戸数によって適用される規制が変わります。6戸以上の建物では賃料規制の対象になる可能性があり、既存の入居者の権利も引き継ぐことになります。
この点は賃料規制物件の記事で詳しく整理しています。入居者がいる状態で購入される場合は、必ず先にご確認ください。
4. コンドミニアムとの違いを整理する

それでは、費用と自由度の両面から、両者の違いを表で整理します。
| 項目 | タウンハウス | コンドミニアム |
|---|---|---|
| 毎月の管理費 | なし | 毎月発生する |
| 修繕の負担 | 全額を所有者が負担 | 組合が積立から支出 |
| 改修の自由度 | 内部は高い。外観は規制あり | 組合の承認が必要 |
| 賃貸の可否 | 戸数の登録による | 規約による |
| 日常の管理 | 自分で手配する | 管理会社が行う |
| 売却時の買主 | 限られる | 比較的広い |
※上記は一般的な比較です。個別の物件では条件が異なります。
最終行は見落とされがちです。タウンハウスを買える方は、コンドミニアムを買える方より数が限られます。売却に時間がかかる前提でお考えいただくのが確実です。
購入前にご確認いただきたい書類は次の通りです。
・登録戸数と用途(市の記録と実態の一致)
・歴史地区の指定の有無と、過去の審査履歴
・違反記録(無許可の改修が残っていないか。インスペクションの記事参照)
・暖房、給排水、電気設備の更新時期
・入居者がいる場合はその契約内容と権利
・固定資産税の評価区分(固定資産税の記事参照)
購入手順の全体像はニューヨーク不動産の購入ガイドにまとめています。外国籍・非居住のまま購入でき、法人名義での保有も可能です(法人名義の記事参照)。
まとめ

タウンハウスは、判断も費用も自分に集まる代わりに、建物そのものを持てる形式です。管理組合の制約から離れたい方には、これ以上の選択肢がありません。
一方で、維持を自分で回す前提が必要です。年間の維持費を平準化して見積もり、それを受け入れられるか。判断はそこから始まります。
マンハッタンの住宅街は動画でもご紹介しています。
YouTubeチャンネルとInstagramで、現地から継続して発信しております。
建物の記録の確認から、ご内覧の手配まで承っております。
よくある質問
マンハッタンのタウンハウスは建物ごと購入できるのですか。
マンハッタンの物件でコンドミニアムを見た後に建物ごと買うことは可能で、低層の建物で間口の狭い敷地に4階から5階建ての住居が並ぶ形式です。このタウンハウスは街並みの中心を占めていますが、管理組合がなく判断も費用もすべて所有者に集まるため、コンドミニアムとは所有の性格が異なります。
タウンハウスの維持費はどのように発生するのですか。
タウンハウスには管理組合がないため屋根や外壁、給排水、暖房設備の維持はすべて所有者の判断と費用で行います。毎月一定額ではなくまとまった形で不定期に発生し、数年に一度大きな金額としてやってきますので、年間の平準化した維持費を先に見積もっておくことが欠かせません。
歴史地区指定のタウンハウスで外観工事に制限はありますか。
マンハッタンのタウンハウスが集まる地域の多くは歴史地区に指定されており、窓の交換や正面の意匠変更、増築や屋上の増床、空調の室外機の設置など外観に関わる工事には市の景観保存委員会の審査が必要です。内部の改修は比較的自由ですが、審査には時間がかかります。
タウンハウスを一部賃貸する際に注意すべき点はありますか。
タウンハウスでは上階を賃貸に出し下階に住む使い方が可能ですが、建物が法律上いくつの住戸として登録されているか確認が必要です。6戸以上の建物では賃料規制の対象になる可能性があり、既存の入居者の権利も引き継ぐことになりますので、入居者がいる状態で購入する場合は必ず先にご確認ください。
English guides on reinventny.com
PRACTICE取得・保有・出口の実務(55件)
買うとき
- 物件の探し方 — 情報の仕組みと在庫の実際
- 日本から買う — 内見から送金までの実務
- 米国のローン — LTVとレバレッジの考え方
- 住宅ローンの組み方 — 駐在・非居住者でも借りられる条件と金利
- コンドミニアムの購入 — 価格相場と手順、費用と名義の決め方
- DSCRローン — 収入証明なしで組む条件
- 法人名義で買うか — 個人所有との損益分岐
- タイトル保険 — 日本の登記制度との違い
- 不動産会社の選び方 — 確認すべき5点
- 失敗は5つに集まる — 契約前に確認できる項目
- 海外不動産のデメリット4つ — 対処できるものとできないものを分ける
- 新築と中古 — 価格・交渉・維持費で比べる
- プレコンストラクション — 竣工前に買う判断
- タウンハウス一棟(この記事)
- 借りるか買うか — 高金利下の損益分岐
- 住みながら買う — 賃貸を続ける場合との比較
持っているあいだ
- 管理費は月いくらか — 区別の実額と安い建物の落とし穴
- 不動産にかける保険 — 所有形式で必要な補償が変わる
- 買った後の管理 — 海外に住みながら所有を続ける
- 管理会社の選び方 — 費用と契約前の確認事項
- テナント管理 — 賃料回収と契約更新の実務
- 収益改善の手法 — プロパティマネジメントの実際
- アメリカの固定資産税は年いくらか — 州別の実効税率と物件価格別の年額
- 減価償却で税を前倒しする — 建物比率と、個人名義・法人名義の違い
- 4年償却は使えるのか — 2020年改正後の正しい姿
- 改正後に残った節税の道 — 個人の損益通算と法人名義の分かれ目
- 土地の権利とゾーニング — 何が建てられるかの規制
- 保証人と保証会社 — 収入40倍の壁を越える
- 賃貸収入の税務 — 非居住者の源泉徴収と純額課税の選択
- 非居住者の確定申告 — オーナーの年間カレンダー
- 価格の推移 — 10年・5年・直近1年を都市別に見る
- 駐在員の確定申告 — 日米どちらに出すか、FBARの1万ドルの線
出すときと税務
- 売るときの流れ — 海外にいながら決済まで
- 売却の手続きと税金 — 必要書類まで
- 売却の戦略 — 市場を見て出口を決める
- 非居住者のキャピタルゲイン税 — 1040NRの申告手順
- 1031エクスチェンジ — 譲渡益を繰り延べる仕組み
- 出口の使い分け — 源泉徴収・1031・セクション121
- QOF(適格機会基金) — 譲渡益の課税を繰り延べる
- オポチュニティゾーン — 繰延制度の中身
- FIRPTAの源泉徴収 — 売却代金の15%と還付の手続き
- 贈与税はいくらから — 非居住者は生涯控除ゼロ
- アメリカの相続税 — 連邦と州、非居住者の場合分け
- 非居住者の遺産税 — 基礎控除6万ドルの壁
- 不動産をトラスト名義にする — プロベートは避けられるが遺産税は消えない
- 信託(トラスト) — 種類・税務・債権者保護
- 複数人で持つ — 共有の形式で相続の結果が変わる
- 遺言書 — 手続きと費用、税務上の注意
- FBAR・FATCA — 海外金融口座の報告義務
- 駐在員の確定申告 — 日米の税金と控除
- 日米の税制の要点 — 法人設立の前に押さえる
- 日米租税条約 — 軽減されるもの、されないもの
- 富裕層の節税の型 — 実際に使われている7つ
- 資産をどこに置くか — 富裕層の配分と、不動産が選ばれる理由
- C-Corp と LLC — 形態ごとの課税の違い
全体の流れ
本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。

















