2026年3月31日 Reinvent NY Inc

アメリカの富裕層はどこに資産を置いているか。税制優遇と不動産の使い方

アメリカの富裕層は、株式に次ぐ柱として不動産を持っています。FRBの分配勘定(2026年4〜6月期)では、資産上位1%の世帯の資産のうち、自宅などの不動産が10.8%、貸し出す不動産を含む非上場の事業が14.4%です。不動産を持つ理由は値上がりへの期待だけではなく、減価償却で課税所得を圧縮し、売却時には1031エクスチェンジで課税を繰り延べ、最終的に相続で取得費を引き上げるという、保有から出口までの一連の扱いが制度として用意されているためです。

 

この扱いのうち、どこまでが日本に住んだまま使えるのかが問題になります。減価償却による赤字を他の所得と通算する部分は、個人名義では2021年分の申告から使えなくなりました。法人名義であれば従来どおり損金に算入できます。同じ物件でも、名義で残る効果が変わります。日本に住んだままアメリカに資産を置く場合は、国外財産調書と財産債務調書の提出義務も確かめておく必要があります。

 

富裕層が資産をどこに置いているか、どの税制優遇を実際に使っているか、そして日本から持つ場合に個人名義と法人名義のどちらを選ぶかを順に見ていきます。

 

1. アメリカ富裕層の現状と分布

1. アメリカ富裕層の現状と分布

アメリカにおける富裕層の定義は、一般的に純資産100万ドル以上の「ミリオネア」層を指します。アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の消費者金融調査は、世帯の純資産の分布を3年ごとに調べています。四半期ごとの分配勘定では、2026年4〜6月期に資産上位1%の世帯が、家計の純資産全体(185兆6,510億ドル)の32.5%を持っています。

地域別富裕層分布

富裕層の地域分布を見ると、明確な傾向が見えてきます。IRSの州別の所得統計(2023年分の申告)では、調整後総所得が100万ドル以上の申告は全米で79万9,320件あり、カリフォルニア州が13万2,720件で最も多く、フロリダ州、ニューヨーク州、テキサス州が7万件前後で続きます。

州名 総所得100万ドル以上の申告件数 1件あたりの平均総所得 主要産業
カリフォルニア州 13万2,720件 約302万ドル テクノロジー・不動産
ニューヨーク州 7万1,680件 約355万ドル 金融・不動産
テキサス州 6万9,410件 約329万ドル エネルギー・テクノロジー
フロリダ州 7万2,950件 約399万ドル 不動産・観光

※上記は、IRSの州別所得統計(Historic Table 2、2023年分)の件数と総所得から当社が計算した値です。所得の統計で、資産(純資産)の数字ではありません。夫婦の合算申告は1件と数えます。

富裕層の資産構成

FRBの分配勘定(2026年4〜6月期)によると、資産上位1%の世帯は資産の53.5%を株式と投資信託、14.4%を貸し出す不動産を含む非上場の事業、10.8%を自宅などの不動産、5.3%を年金に置き、残りは預金や債券などです。上位1%に続く9%の層では、不動産が21.0%、株式と投資信託が33.4%と、不動産の比重が上がります。この多角的な資産配分こそが、長期的な資産成長を実現する重要な要因となっています。

 

2. 富裕層が活用する税制優遇制度

2. 富裕層が活用する税制優遇制度

アメリカの富裕層が資産を効率的に増やすために最も重要視しているのが、税制優遇制度の戦略的活用です。特に注目すべきは、キャピタルゲイン税の優遇措置と不動産投資による減価償却制度です。

キャピタルゲイン税の優遇

IRS公式サイトによると、長期保有(1年超)の株式や不動産売却益に対するキャピタルゲイン税率は、通常の所得税率より大幅に低く設定されています。高所得者でも最大20%の税率が適用され、これは最高所得税率37%と比較して大きなメリットとなります。

長期と短期の境目は保有1年で、売却の日を1日ずらすだけで税率の区分が変わることがあります。売却の時期は、物件を買う段階から決めておく項目です。

1031エクスチェンジ制度

不動産投資において富裕層が頻繁に活用するのが、1031エクスチェンジ制度です。これは投資用不動産を同種の投資用不動産に交換する際、キャピタルゲイン税の支払いを繰り延べできる制度です。

IRS Section 1031の規定では、以下の条件を満たす必要があります。

①同種の不動産への交換であること
②45日以内に交換候補物件を特定すること
③180日以内に交換を完了すること

この制度により、富裕層は税負担を抑制しながら不動産ポートフォリオの効率化を図っています。

 

3. 不動産投資戦略の実態

3. 不動産投資戦略の実態

アメリカの富裕層にとって不動産投資は、単なる資産保全ではなく積極的な収益源として位置付けられています。FRBの分配勘定では、貸し出す不動産を含む非上場の事業が資産上位1%の資産の14.4%を占め、自宅などの不動産(10.8%)を上回ります。住宅市場の動きは、全米不動産協会(NAR)の統計でも確かめられます。

主要投資対象エリア

富裕層が注目する不動産投資エリアには明確な傾向があります。特に人口増加が見込まれる地域や、テクノロジー企業の集積地域が人気を集めています。

オースティン(テキサス州)は、AppleやGoogleなどが大きな拠点を置き、企業の進出で注目されてきました。ただ、Zillowの住宅価値指数(都市圏、2026年9月)は41万4,273ドルで、5年前(2021年9月、48万2,954ドル)より14.2%低く、2022年6月の頂点からは26.7%下がっています。企業の進出が続いても、価格は金利と供給で大きく動きます。

REITsを活用した分散投資

直接的な不動産投資に加えて、富裕層はREITs(不動産投資信託)を活用した分散投資も積極的に行っています。米国証券取引委員会(SEC)によると、REITsは法律(内国歳入法857条)で課税所得の90%以上を配当として分配する決まりがあり、安定的なキャッシュフローを求める富裕層にとって魅力的な投資手段となっています。

REITの配当利回りは日々動き、業界団体のNareitが毎月公表しています。比べる相手の10年国債の利回りは、2026年10月16日に5.09%でした(米財務省)。

 

4. 投資家ビザとグリーンカード戦略

4. 投資家ビザとグリーンカード戦略

アメリカの富裕層制度の中で、海外の富裕層にとって特に注目すべきなのが投資家ビザとグリーンカード取得戦略です。これらの制度は、単なる居住権の取得を超えて、税制上のメリットや事業拡大の機会を提供しています。

E2投資家ビザの活用

E2投資家ビザは、最低投資額20万ドル(約3,100万円)からアメリカでの事業投資とビザ取得が可能な制度です。発給の件数は、米国国務省の発給統計で国籍別・年度別に確かめられます。

EB-5投資永住権プログラム

より長期的な戦略として、EB-5投資永住権プログラムがあります。このプログラムでは、80万ドル(約1億2,400万円)の投資により、永住権(グリーンカード)の取得が可能です。

承認の件数は、米国移民局(USCIS)の公表資料で年度ごとに確かめられます。投資額は大きいものの、永住権取得により税制上の優遇や子どもの教育機会など、長期的なメリットは計り知れません。

税制面でのメリット

一方で注意すべき点もあります。アメリカの税制は全世界所得課税を採用しており、居住者となった場合は全世界の所得に対して課税義務が発生します。しかし、適切な税務戦略により、日米租税条約の活用や外国税額控除制度を通じて、二重課税を回避することが可能です。

実際には、日本とアメリカのどちらで、どの所得を、どの年に申告するかを税理士と先に決めておくことで、外国税額控除の使い方が定まります。

 

まとめ

まとめ

アメリカの富裕層は、単なる資産蓄積ではなく、戦略的な税制活用と多角的投資により持続的な資産成長を実現しています。FRBの分配勘定では、2026年4〜6月期に資産上位1%の世帯が家計の純資産の32.5%を持ち、その資産の半分以上を株式と投資信託に置いています。

特に注目すべきは、キャピタルゲイン税の優遇措置、1031エクスチェンジ制度、そして投資家ビザやグリーンカード制度の活用です。これらの制度を適切に組み合わせることで、日本の経営者や投資家の皆様も、アメリカ富裕層と同様の戦略を実行することが可能です。

ただし、これらの制度は複雑で専門的な知識が必要となります。特に税制面での影響や、ビザ申請における要件など、個別のケースに応じた綿密な計画が不可欠です。

当社では、これまで数多くのお客様のアメリカ投資戦略をサポートしてまいりました。皆様の資産状況や投資目標に応じて、最適な戦略をご提案いたします。アメリカでの資産形成や事業展開をご検討の方は、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。

よくある質問

アメリカの富裕層は資産をどう配分していますか。

FRBの分配勘定(2026年4〜6月期)では、資産上位1%の世帯は株式と投資信託が53.5%、貸し出す不動産を含む非上場の事業が14.4%、自宅などの不動産が10.8%、年金が5.3%です。上位1%に続く9%の層では、不動産が21.0%、株式と投資信託が33.4%です。

なぜ株式に加えて不動産を持つのですか。

減価償却や1031交換など、不動産にしかない税制優遇があるためです。収益と節税の両方を担う資産として扱われています。

日本の富裕層と何が違いますか。

税制優遇を前提に資産の置き場所を設計する点です。日本の家計は、日本銀行の資金循環統計で見ると現金・預金の比率が高く、資産の置き場所の考え方が違います。

同じ配分を日本からでも作れますか。

米国不動産を組み込むことは可能です。ただし非居住者には源泉徴収や遺産税の扱いなど固有の論点があるため、名義の設計を先に決めるのが順序です。

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