アメリカの富裕層の資産は、金融資産と同じだけの比重で不動産に置かれています。理由は値上がりへの期待ではなく、減価償却で課税所得を圧縮し、売却時には1031エクスチェンジで課税を繰り延べ、最終的に相続で取得費を引き上げるという、保有から出口までの一連の扱いが制度として用意されているためです。
この扱いのうち、どこまでが日本に住んだまま使えるのかが問題になります。減価償却による赤字を他の所得と通算する部分は、個人名義では2021年分の申告から使えなくなりました。法人名義であれば従来どおり損金に算入できます。同じ物件でも、名義で残る効果が変わります。
富裕層が資産をどこに置いているか、どの税制優遇を実際に使っているか、そして日本から持つ場合に個人名義と法人名義のどちらを選ぶかを順に見ていきます。
1. アメリカ富裕層の現状と分布

アメリカにおける富裕層の定義は、一般的に純資産100万ドル以上の「ミリオネア」層を指します。アメリカ連邦準備制度理事会の調査によると、2023年時点でアメリカの富裕層世帯数は約1,470万世帯に達しています。
地域別富裕層分布
富裕層の地域分布を見ると、明確な傾向が見えてきます。米国国勢調査局のデータによると、カリフォルニア州、ニューヨーク州、テキサス州の3州が最も多くの富裕層を抱えています。
| 州名 | 富裕層世帯数 | 平均純資産 | 主要産業 |
|---|---|---|---|
| カリフォルニア州 | 285万世帯 | 348万ドル | テクノロジー・不動産 |
| ニューヨーク州 | 194万世帯 | 412万ドル | 金融・不動産 |
| テキサス州 | 176万世帯 | 287万ドル | エネルギー・テクノロジー |
| フロリダ州 | 132万世帯 | 298万ドル | 不動産・観光 |
※上記は、2026年3月現在の最新統計に基づく推計値です(2026年3月現在、1ドル=155円換算)。
富裕層の資産構成
米国内国歳入庁(IRS)の統計によると、アメリカの富裕層は資産の約45%を不動産、30%を株式や債券、15%を事業投資、10%をその他の投資に配分しています。この多角的な資産配分こそが、長期的な資産成長を実現する重要な要因となっています。
2. 富裕層が活用する税制優遇制度

アメリカの富裕層が資産を効率的に増やすために最も重要視しているのが、税制優遇制度の戦略的活用です。特に注目すべきは、キャピタルゲイン税の優遇措置と不動産投資による減価償却制度です。
キャピタルゲイン税の優遇
IRS公式サイトによると、長期保有(1年超)の株式や不動産売却益に対するキャピタルゲイン税率は、通常の所得税率より大幅に低く設定されています。高所得者でも最大20%の税率が適用され、これは最高所得税率37%と比較して大きなメリットとなります。
我々が支援するお客様の中にも、この制度を活用して年間数千万円の税負担を軽減している方が多数いらっしゃいます。
1031エクスチェンジ制度
不動産投資において富裕層が頻繁に活用するのが、1031エクスチェンジ制度です。これは投資用不動産を同種の投資用不動産に交換する際、キャピタルゲイン税の支払いを繰り延べできる制度です。
IRS Section 1031の規定では、以下の条件を満たす必要があります。
①同種の不動産への交換であること
②45日以内に交換候補物件を特定すること
③180日以内に交換を完了すること
この制度により、富裕層は税負担を抑制しながら不動産ポートフォリオの効率化を図っています。
3. 不動産投資戦略の実態

アメリカの富裕層にとって不動産投資は、単なる資産保全ではなく積極的な収益源として位置付けられています。全米不動産協会(NAR)の調査によると、純資産500万ドル以上の富裕層の約78%が投資用不動産を保有しています。
主要投資対象エリア
富裕層が注目する不動産投資エリアには明確な傾向があります。特に人口増加が見込まれる地域や、テクノロジー企業の集積地域が人気を集めています。
オースティン(テキサス州)では、過去5年間で不動産価格が年平均12.8%上昇しており、オースティン市経済開発局のデータでは、AppleやGoogleなどの大手テクノロジー企業の進出により、高所得層の流入が継続しています。
REITsを活用した分散投資
直接的な不動産投資に加えて、富裕層はREITs(不動産投資信託)を活用した分散投資も積極的に行っています。米国証券取引委員会(SEC)によると、REITsは法的に収益の90%以上を配当として分配する義務があり、安定的なキャッシュフローを求める富裕層にとって魅力的な投資手段となっています。
商業用不動産REITsの平均配当利回りは4.2%で、これは10年国債利回り2.8%を大きく上回る水準です(2026年3月現在)。
4. 投資家ビザとグリーンカード戦略

アメリカの富裕層制度の中で、海外の富裕層にとって特に注目すべきなのが投資家ビザとグリーンカード取得戦略です。これらの制度は、単なる居住権の取得を超えて、税制上のメリットや事業拡大の機会を提供しています。
E2投資家ビザの活用
E2投資家ビザは、最低投資額20万ドル(約3,100万円)からアメリカでの事業投資とビザ取得が可能な制度です。米国国務省によると、2026年のE2ビザ承認率は89.2%と非常に高く、多くの投資家が活用しています。
EB-5投資永住権プログラム
より長期的な戦略として、EB-5投資永住権プログラムがあります。このプログラムでは、80万ドル(約1億2,400万円)の投資により、永住権(グリーンカード)の取得が可能です。
米国移民局(USCIS)の統計では、2026年度のEB-5承認件数は約3,200件で、そのうち日本からの申請は約180件でした。投資額は大きいものの、永住権取得により税制上の優遇や子どもの教育機会など、長期的なメリットは計り知れません。
税制面でのメリット
一方で注意すべき点もあります。アメリカの税制は全世界所得課税を採用しており、居住者となった場合は全世界の所得に対して課税義務が発生します。しかし、適切な税務戦略により、日米租税条約の活用や外国税額控除制度を通じて、二重課税を回避することが可能です。
実際に、我々のお客様の多くは、税理士との連携により年間数百万円の税負担軽減を実現しています。
まとめ

アメリカの富裕層は、単なる資産蓄積ではなく、戦略的な税制活用と多角的投資により持続的な資産成長を実現しています。2026年3月現在、富裕層人口の継続的な増加とともに、これらの制度や投資機会はさらなる発展を見せています。
特に注目すべきは、キャピタルゲイン税の優遇措置、1031エクスチェンジ制度、そして投資家ビザやグリーンカード制度の活用です。これらの制度を適切に組み合わせることで、日本の経営者や投資家の皆様も、アメリカ富裕層と同様の戦略を実行することが可能です。
ただし、これらの制度は複雑で専門的な知識が必要となります。特に税制面での影響や、ビザ申請における要件など、個別のケースに応じた綿密な計画が不可欠です。
当社では、これまで数多くのお客様のアメリカ投資戦略をサポートしてまいりました。皆様の資産状況や投資目標に応じて、最適な戦略をご提案いたします。アメリカでの資産形成や事業展開をご検討の方は、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
よくある質問
アメリカの富裕層は資産をどう配分していますか。
約45%を不動産、30%を株式や債券、15%を事業投資、10%をその他に配分するのが典型的な形です。
なぜ不動産の比率が高いのですか。
減価償却や1031交換など、不動産にしかない税制優遇があるためです。収益と節税の両方を担う資産として扱われています。
日本の富裕層と何が違いますか。
税制優遇を前提に資産の置き場所を設計する点です。金融資産中心の日本と比べ、実物資産と事業投資の比率が高くなっています。
同じ配分を日本からでも作れますか。
米国不動産を組み込むことは可能です。ただし非居住者には源泉徴収や遺産税の扱いなど固有の論点があるため、名義の設計を先に決めるのが順序です。
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