アメリカで不動産を買う手続きは、日本と順序も費用も違います。契約から決済(クロージング)までは通常60日から90日で、買主側の諸費用はニューヨークの場合、100万ドル以上の物件にかかるマンションタックス1%から、ローンを組めば記録税1.925%、タイトル保険およそ0.45%、弁護士費用が乗ります。
日本と決定的に違うのは、買主に弁護士が付き、登記ではなくタイトル保険で権利を守る点と、売主の情報開示が限られるため買主が自分で調査する点です。仲介手数料に決まった料率はなく、当事者間の交渉で決まります。
物件の探し方と内見、オファーと契約、ローンと審査、決済までの流れと、その各段階でかかる費用、そして日本に住んだまま買う場合と法人名義で買う場合の違いを順に見ていきます(2026年3月現在、1ドル=155円換算)。
1. アメリカ不動産市場の特徴(日本との違い)

アメリカの不動産市場は、日本と比較していくつかの大きな構造的違いがあります。まず、不動産取引におけるエージェント制度です。アメリカでは売主側と買主側にそれぞれ専属のエージェント(不動産仲介業者)が付き、取引を進めます。日本のように一つの不動産会社が両者の間に入る「両手仲介」は、アメリカでは一般的ではありません。
次に、中古物件の価値が下がりにくい点が挙げられます。日本では築年数が上がると資産価値が大幅に低下しますが、アメリカでは適切にメンテナンスされた物件は築50年以上でも高値で取引されます。特にニューヨークのマンハッタンでは、戦前に建てられたプレウォー建築がプレミアム価格で売買されることも珍しくありません。
さらに、外国人でも不動産を購入できるという点は、投資家にとって大きな魅力です。ビザや永住権がなくても、アメリカの不動産を所有することが法律上認められています。ただし、ローンの審査や税務処理において、非居住者特有の条件が課されることがあります。
2. 日本人がアメリカで不動産を購入する手順

アメリカでの不動産購入は、日本とは異なるステップを踏みます。以下の表に全体の流れを整理しました。
| ステップ | 内容 | 所要期間の目安 |
|---|---|---|
| ①エージェント選定 | 買主側エージェントを選び、専属契約を結ぶ | 1〜2週間 |
| ②ローン事前承認 | 銀行からPre-Approval Letterを取得 | 1〜3週間 |
| ③物件見学・選定 | エージェントと物件を内覧し、候補を絞り込む | 2〜8週間 |
| ④オファー提出 | 購入価格・条件を提示し、売主と交渉 | 数日〜2週間 |
| ⑤契約締結 | 弁護士がContract of Saleを作成・レビュー | 1〜2週間 |
| ⑥インスペクション | 専門業者による物件調査(構造・配管・電気等) | 1〜2週間 |
| ⑦タイトル調査・保険 | 所有権の法的確認とタイトル保険の手配 | 2〜4週間 |
| ⑧クロージング | 最終決済。資金移転と鍵の引き渡し | 1日 |
全体として、オファーからクロージングまで約60〜90日が一般的です。キャッシュ購入の場合は30日程度に短縮されることもあります。
日本人のお客様の場合、ステップ②のローン事前承認が最初のハードルとなることが多いです。米国に信用履歴(クレジットヒストリー)がない場合、現地の銀行からのローン取得は難しいケースがあります。その場合、非居住者向けローンプログラム(Foreign National Loan)を提供する銀行や、キャッシュでの購入を検討されることをご推奨いたします。
また、ニューヨークの場合はコーポラティブ(Co-op)という特殊な物件形態があり、外国人の購入に制限がかかることがあります。コンドミニアム(Condo)であれば基本的に外国人でも購入可能です。
3. 購入にかかる費用と税金

アメリカで不動産を購入する際には、物件価格以外にもクロージングコストと呼ばれる諸費用が発生します。
買主側のクロージングコストは、物件価格の約2〜5%が目安です。内訳としては、弁護士費用が2,000〜5,000ドル(約30万〜75万円)程度、タイトル保険が物件価格の0.5〜1%程度、銀行関連費用(ローン利用の場合)が物件価格の1〜2%程度です。ニューヨーク州の場合、100万ドル以上の物件にはマンション税(Mansion Tax)が1〜3.9%課されます。
購入後の固定資産税(Property Tax)は州やエリアによって大きく異なります。ニューヨーク市の場合、実効税率は物件評価額の約1.0〜1.5%程度です。テキサス州やニュージャージー州では2〜3%に達することもあります。
日本人非居住者が注意すべきなのは、FIRPTA(外国人不動産投資税法)です。非居住外国人が米国不動産を売却する際、買主は売却価格の15%を源泉徴収してIRSに納付する義務があります。確定申告によって過払い分は還付されますが、売却時のキャッシュフローに大きな影響を与えるため、事前の計画が不可欠です。
4. エリア別の相場と特徴

アメリカは広大な国土を持ち、不動産の相場はエリアによって大きく異なります。日本からの購入が多い4つのエリアの特徴をご紹介いたします。
ニューヨークは、マンハッタンの1ベッドルームコンドミニアムの中央値が約100万〜150万ドル(約1.5億〜2.25億円)です。世界の金融・文化の中心地であり、資産価値の安定性は随一ですが、物件価格・維持費ともに全米最高水準です。当社の拠点でもあり、不動産サービスページで詳細をご案内しております。
ロサンゼルスは、一戸建ての中央値が約90万〜120万ドル(約1.35億〜1.8億円)です。温暖な気候と生活インフラの充実が魅力ですが、山火事リスクや交通渋滞といった課題もあります。
ハワイは、日本からの認知度が最も高いエリアです。ワイキキのコンドミニアムは50万〜100万ドル(約7,500万〜1.5億円)程度です。日本語が通じる場面も多く、円建て管理の物件もありますが、利回りは他エリアに比べて低い傾向にあります。
テキサス(ダラス・ヒューストン)は、一戸建ての中央値が30万〜50万ドル(約4,500万〜7,500万円)と比較的手頃です。人口増加と企業の流入が続いており、賃貸利回りが高いエリアとして注目されています。ただし、固定資産税率が高い(約2〜3%)点には注意が必要です。
物件の具体的な事例としては、セントラルパークタワーやロングアイランドシティのページもご参照ください。
5. アメリカ不動産購入をご検討の方へ

アメリカでの不動産購入は、日本の慣習とは異なる点が多くあります。しかし、信頼できるエージェントと弁護士のチームがあれば、外国人であっても安全かつスムーズに取引を進めることが可能です。
当社Reinvent NY Inc.では、ニューヨークを拠点に、物件選定からオファー交渉、クロージングまで一貫したサポートを日本語で提供しております。投資目的の方、実需(ご自身やご家族の居住用)の方、いずれのケースにも対応しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
なお、アメリカ不動産を投資の観点からご検討される方には、利回りや税制メリットも含めた詳細な分析が重要です。加速度償却による節税効果など、日本の税制と組み合わせた戦略については、お打ち合わせの中で個別にご説明させていただきます。
アメリカ不動産に関するお問い合わせは、お問い合わせフォームよりお待ちしております。
Read this article in English
※当社は移民法上の法的申請代理を行う法律事務所ではありません。法的助言および申請書提出は移民弁護士が担当します。
TRACK RECORD
実際にご支援した取引と、お客様の声
記事の内容がご自身のケースに当てはまるかどうかは、実際の事例をご覧いただくのが早いと思います。
アメリカ不動産投資がなぜ値下がりしにくいのかという構造の話はアメリカ不動産投資ガイドで、ニューヨークのコンドミニアムの実勢価格はニューヨークシティのコンドミニアム購入のガイド(価格相場と手順、費用)で解説しています。
よくある質問
外国人でもアメリカの不動産を購入できるのでしょうか。
ビザや永住権がなくてもアメリカの不動産を所有することは法律上認められています。ただし、ローンの審査や税務処理において非居住者特有の条件が課されることがありますので注意が必要です。
アメリカで不動産を購入する際に発生する買主側の諸費用はどれくらいですか。
買主側のクロージングコストは物件価格の約2%から5%が目安です。内訳には弁護士費用やタイトル保険、銀行関連費用が含まれ、ニューヨーク州では100万ドル以上の物件にマンション税も課されます。
非居住外国人が米国不動産を売却する際に税金で注意すべき点はありますか。
FIRPTAにより買主は売却価格の15%を源泉徴収してIRSに納付する義務があります。確定申告によって過払い分は還付されますが、売却時のキャッシュフローに大きな影響を与えるため事前計画が必要です。
English guides on reinventny.com
同じところでつまずいた事例のまとめはアメリカ不動産投資の失敗は5つに集まるに、海外不動産そのものの弱点は海外不動産投資のデメリットは4つにまとめています。
PRACTICE取得・保有・出口の実務(117件)
買うとき
- 物件の探し方 — 情報の仕組みと在庫の実際
- 日本から買う — 内見から送金までの実務
- 米国のローン — LTVとレバレッジの考え方
- アメリカの住宅ローン — 駐在・非居住者でも借りられる条件と金利
- ニューヨークシティのコンドミニアム購入 — 価格相場と手順、費用と名義の決め方
- DSCRローン — 収入証明なしで組む条件
- 法人名義で買うか — 個人所有との損益分岐
- タイトル保険 — 日本の登記制度との違い
- 不動産会社の選び方 — 確認すべき5点
- 失敗は5つに集まる — 契約前に確認できる項目
- 海外不動産のデメリット4つ — 対処できるものとできないものを分ける
- 新築と中古 — 価格・交渉・維持費で比べる
- プレコンストラクション — 竣工前に買う判断
- タウンハウス一棟 — 管理組合のない所有
- 借りるか買うか — 高金利下の損益分岐
- オファーの条件をどこまで外すか — 手付金10%を賭ける判断
- 住みながら買う — 賃貸を続ける場合との比較
- 買付前に揃える資金証明 — 海外資産をどう示すか
- 購入資金を日本から動かす — 送金の手順と証跡の残し方
- 価格を交渉する — 売主が実際に見ている条件
- 新築か中古か — 費用構造から比べる
- ペントハウスとは何か — 名称の実態と価値の見極め方
- Airbnb前提で買わない — 30日ルールの実際
- アメリカ不動産の買い方(この記事)
- アメリカで家を買うときにつまずきやすい点 — 準備の順序で結果が変わる
- 利回りか、資産の置き場所か — ニューヨークを選ぶ理由の分かれ目
- コンドとコープの違い — 審査・費用・売りやすさ
- 賃貸と購入の総費用 — 税制とリスクまで含めて比べる
- オフマーケット物件 — 情報が回る経路と紹介を受ける準備
- バイヤーエージェント — 買主側につく担当の役割
- アトーニー(弁護士) — 契約と決済で担う役割
- 購入前のデューデリジェンス — 確認すべき書類と手順
- インスペクション — 何を見て、いくらかかるか
- 価格はどう決まるか — 鑑定と成約事例の読み方
- 買うのに何ヶ月かかるか — オファーから鍵の受け取りまで
- クロージング費用 — 内訳と節約できる項目
- マンションタックスと譲渡税 — 100万ドルを超えると変わること
- エスクロー — 仕組みと流れ、日本との違い
- タイトル保険の費用 — 必要な理由と保険料の決まり方
- 新築コンドのスポンサーユニット — 仕組みと交渉
- SSNなしで組むローン — 3つの方法を比べる
- 学区と価格の関係 — コンドミニアム相場の読み方
持っているあいだ
- 管理費は月いくらか — 区別の実額と安い建物の落とし穴
- 不動産にかける保険 — 所有形式で必要な補償が変わる
- 買った後の管理 — 海外に住みながら所有を続ける
- 管理会社の選び方 — 費用と契約前の確認事項
- テナント管理 — 賃料回収と契約更新の実務
- 収益改善の手法 — プロパティマネジメントの実際
- アメリカの固定資産税は年いくらか — 州別の実効税率と物件価格別の年額
- 減価償却で税を前倒しする — 建物比率と、個人名義・法人名義の違い
- 4年償却は使えるのか — 2020年改正後の正しい姿
- 改正後に残った節税の道 — 個人の損益通算と法人名義の分かれ目
- 土地の権利とゾーニング — 何が建てられるかの規制
- 保証人と保証会社 — 収入40倍の壁を越える
- 賃貸収入の税務 — 非居住者の源泉徴収と純額課税の選択
- 非居住者の確定申告 — オーナーの年間カレンダー
- 価格の推移 — 10年・5年・直近1年を都市別に見る
- 駐在員の確定申告 — 日米どちらに出すか、FBARの1万ドルの線
- 賃料の日本での申告 — 円換算のレート、償却の制限、外国税額控除
- 国外財産調書と財産債務調書 — 5,000万円と3億円の線
- 法人名義と日本の合算課税 — LLCは日本では外国法人。20%と27%の線
- 日本にいながら賃貸を回す — 管理会社の選び方と契約で決めること
- 家賃を払わない入居者 — 貸主にできることと、できないこと
- 買った翌年に税額が変わる — 減免の残存年数で年2万ドルの差
- 固定資産税の不服申立 — 3月1日と3月15日という期限
- 州を固定資産税で選ぶ前に — 同じ州でも郡と学区で倍変わる
- マルチファミリー投資 — 収益構造と融資、見落としやすいリスク
- 賃料規制物件を買うと — レントスタビライゼーションの実際
- リノベーション — 管理組合の承認と工事の実際
- コストセグリゲーション — 償却を前倒しする調査の中身
- 不動産プロフェッショナル(REPS) — 給与所得の課税を下げる仕組み
- IRSの税務調査 — 備えておく書類
- 売らずに積み上げる — 担保に次を買い、課税を繰り延べる
- 商業不動産への投資 — 住宅との違いと市場の特徴
出すときと税務
- 売るときの流れ — 海外にいながら決済まで
- 売却の手続きと税金 — 必要書類まで
- 売却の戦略 — 市場を見て出口を決める
- 非居住者のキャピタルゲイン税 — 1040NRの申告手順
- 1031エクスチェンジ — 譲渡益を繰り延べる仕組み
- 出口の使い分け — 源泉徴収・1031・セクション121
- QOF(適格機会基金) — 譲渡益の課税を繰り延べる
- オポチュニティゾーン — 繰延制度の中身
- FIRPTAの源泉徴収 — 売却代金の15%と還付の手続き
- 贈与税はいくらから — 非居住者は生涯控除ゼロ
- アメリカの相続税 — 連邦と州、非居住者の場合分け
- 非居住者の遺産税 — 基礎控除6万ドルの壁
- 不動産をトラスト名義にする — プロベートは避けられるが遺産税は消えない
- 日本の相続税評価 — 鑑定評価、TTB換算、小規模宅地の特例
- FIRPTAと外国税額控除 — 対象は確定税額。控除の年がずれる
- 売却の為替差益 — 取得日と売却日のTTMで譲渡所得が変わる
- ニューヨーク州の遺産税 — 控除を5%超えると全部消える
- 持分を毎年贈与するか — 取得費が引き継がれるか、時価に置き換わるか
- 信託(トラスト) — 種類・税務・債権者保護
- 複数人で持つ — 共有の形式で相続の結果が変わる
- 遺言書 — 手続きと費用、税務上の注意
- FBAR・FATCA — 海外金融口座の報告義務
- 駐在員の確定申告 — 日米の税金と控除
- 日米の税制の要点 — 法人設立の前に押さえる
- 日米租税条約 — 軽減されるもの、されないもの
- 富裕層の節税の型 — 実際に使われている7つ
- 資産をどこに置くか — 富裕層の配分と、不動産が選ばれる理由
- C-Corp と LLC — 形態ごとの課税の違い
- 1031と日本の課税 — 米国で繰り延べても日本では課税される
- 相続したときの名義の移り方 — 検認と納税証明の順番
- プロベートの費用と期間 — 回避する方法
- 資産の種類で変わる相続 — 米国株・米国債・預金・不動産
- 日本の遺言書は使えるか — 現地で別に作る場合の線引き
- 名義変更でかかる費用 — 買った後に器を変える代償
- 住んでから貸すか、貸してから住むか — 順番だけで7万1,400ドル変わる
- 所得税ゼロの州で買う — 効く人と効かない人の境界線
市場を読む
- 今後10年の市場予測 — 投資家が見ておく5つの流れ
- 住宅不足はなぜ解消しないか — 供給ギャップと価格への影響
- 2026年のアメリカ不動産市場 — 金利と為替、地域差
- ニューヨーク住宅市場の現在地 — 価格動向とエリア別の需給
- なぜニューヨーク不動産なのか — 価値が残る7つの理由
- 利回りが高い州と都市 — 全米の順位と読み方
- アメリカ不動産投資の始め方 — 利回りと税制の基本
全体の流れ
本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。

















