Trust Ownership Guide

トラストという持ち方

米国では、不動産をトラスト(信託)の名義で保有する設計が広く使われています。狙いは相続手続き(プロベート)の回避と、承継の道筋を生前に固定することです。仕組み、LLCとの使い分け、日本の税制との関係、設計の手順を整理しました。

ホーム  ›  ニューヨーク不動産ガイド  ›  トラストでの保有

このガイドでわかること

  • トラストの第一の狙いは、米国の相続手続き(プロベート)を通さずに承継することです
  • プロベートは数ヶ月から1年以上かかり、その間も管理費の支払いは止まりません
  • トラストとLLCは機能が違います。併用する設計もあります
  • 日本の相続税は消えません。日米両方を見た設計が前提です
Probate

なぜプロベートを避けたいのか

米国では、個人名義の資産は相続の際に裁判所の手続き(プロベート)を通ります。海外に住む相続人にとって、これが最大の負担になります。

時間がかかります

州ごとに運用が異なり、書類の準備と裁判所の日程によって数ヶ月から1年以上かかることがあります。その間、売却も名義変更もできません。

費用が発生し続けます

手続き中も管理費と固定資産税の支払いは止まりません。誰が払い続けるのかを決めていないと、遺族が現地の手続きと支払いを同時に抱えます。

海外からの手続きは重くなります

日本の相続人が米国の裁判手続きを進めるには、現地の弁護士、書類の翻訳と認証、時差を挟んだやり取りが必要です。日本の遺言だけで進めようとすると、さらに時間がかかります。

相続が起きてからでは設計できません

プロベートの回避は、生前の設計でしかできません。買う前、遅くとも保有中に器を作っておく類型です。

Mechanism

トラストの基本の仕組み

よく使われるのは、生前に自分で設定し自分で管理するリビングトラストです。

3つの役割

資産を預ける人(設定者)、管理する人(受託者)、利益を受ける人(受益者)。リビングトラストでは、生前はこの3つを自分が兼ね、亡くなった後の受託者と受益者を文書で指定しておきます。

不動産の名義をトラストに移します

登記上の所有者がトラストになることで、相続が起きても裁判所を通さず、文書の指定に従って承継が進みます。これがプロベート回避の仕組みです。

生前の自由は保たれます

リビングトラストは生前いつでも変更・取り消しができ、売却も賃貸も従来どおり行えます。持ち方の器が変わるだけで、使い方は変わりません。

コンドミニアムの多くはトラスト名義を認めますが、建物ごとの規約で扱いは異なります。コープでは原則使えません。名義の希望が建物選びより先に来る理由です。

Trust vs LLC

LLCとの使い分け

トラストとLLCは並列の選択肢ではなく、目的が違う道具です。

目的トラストLLC
プロベート回避主目的。最も直接的持ち分の承継設計で対応
責任の切り分け限定的主目的。賃貸運用で効く
公表範囲の限定登記にトラスト名登記に法人名
維持の手間比較的軽い年次報告・届け出が毎年
賃貸運用との相性可能運用前提なら本命

自宅・二拠点として持つならトラスト、賃貸運用が中心ならLLC、両方の目的があるなら併用(LLCの持ち分をトラストに入れる)という整理が出発点になります。最終形は個別の事情で変わります。

Japan

日本の税制との関係。ここを飛ばすと危険です

トラストは米国側の道具です。日本の税制はトラストを米国と同じようには扱いません。

日本の相続税は消えません日本にお住まいの方の相続では、米国の資産も日本の相続税の対象です。プロベートの回避と課税の回避は別の話です
信託の設定自体が課税事象になり得ます日本の税制では、信託の設定や受益者の変更が贈与や譲渡として扱われる場合があります。米国の定石をそのまま持ち込むと、日本側で予期しない課税が起きます
日米両方の専門家が要ります米国側の弁護士だけで設計すると日本側が抜け、日本側だけでは米国の器が作れません。両方を見られる体制での設計が前提です

設計の順序

①承継の希望を言葉にする ②日米の税務への影響を確認する ③器(トラスト・LLC・個人)を決める ④物件を探す。この順序を守ると、後戻りがありません。

FAQ

よくある質問

トラストのご相談で実際に多い質問です。

すでに個人名義で持っている物件をトラストに入れられますか
入れられます。リビングトラストへの移転は、ローンや保険、建物の規約との整合を確認しながら進めます。取得時に設計しておくのが最も簡単ですが、保有中でも遅くはありません。
トラストにすると固定資産税や売却時の税は変わりますか
リビングトラストでは、生前の課税は基本的に個人名義と同じ扱いです。変わるのは承継の手続きであって、保有中の税負担ではありません。
費用はどのくらいかかりますか
設計と文書作成は弁護士費用が中心で、内容の複雑さによって変わります。プロベートにかかる時間と費用、遺族の負担と比べて判断する性質のものです。
遺言だけではだめですか
米国側の遺言があってもプロベート自体は通ります。手続きを速くする効果はありますが、裁判所を通さない承継を実現するのはトラストです。米国資産について現地で有効な文書を用意しておくことは、いずれにしても重要です。

まずはご相談ください

誰に、いつ、どう渡したいか。ご希望をお知らせいただければ、日米両方の観点からトラスト・LLC・個人名義の使い分けを整理します。買う前の設計段階からご相談いただけます。

不動産サービスはR New Yorkとしてのサービス提供となります。