トラストという持ち方
米国では、不動産をトラスト(信託)の名義で保有する設計が広く使われています。狙いは相続手続き(プロベート)の回避と、承継の道筋を生前に固定することです。仕組み、LLCとの使い分け、日本の税制との関係、設計の手順を整理しました。
このガイドでわかること
- トラストの第一の狙いは、米国の相続手続き(プロベート)を通さずに承継することです
- プロベートは数ヶ月から1年以上かかり、その間も管理費の支払いは止まりません
- トラストとLLCは機能が違います。併用する設計もあります
- 日本の相続税は消えません。日米両方を見た設計が前提です
なぜプロベートを避けたいのか
米国では、個人名義の資産は相続の際に裁判所の手続き(プロベート)を通ります。海外に住む相続人にとって、これが最大の負担になります。
時間がかかります
州ごとに運用が異なり、書類の準備と裁判所の日程によって数ヶ月から1年以上かかることがあります。その間、売却も名義変更もできません。
費用が発生し続けます
手続き中も管理費と固定資産税の支払いは止まりません。誰が払い続けるのかを決めていないと、遺族が現地の手続きと支払いを同時に抱えます。
海外からの手続きは重くなります
日本の相続人が米国の裁判手続きを進めるには、現地の弁護士、書類の翻訳と認証、時差を挟んだやり取りが必要です。日本の遺言だけで進めようとすると、さらに時間がかかります。
相続が起きてからでは設計できません
プロベートの回避は、生前の設計でしかできません。買う前、遅くとも保有中に器を作っておく類型です。
トラストの基本の仕組み
よく使われるのは、生前に自分で設定し自分で管理するリビングトラストです。
3つの役割
資産を預ける人(設定者)、管理する人(受託者)、利益を受ける人(受益者)。リビングトラストでは、生前はこの3つを自分が兼ね、亡くなった後の受託者と受益者を文書で指定しておきます。
不動産の名義をトラストに移します
登記上の所有者がトラストになることで、相続が起きても裁判所を通さず、文書の指定に従って承継が進みます。これがプロベート回避の仕組みです。
生前の自由は保たれます
リビングトラストは生前いつでも変更・取り消しができ、売却も賃貸も従来どおり行えます。持ち方の器が変わるだけで、使い方は変わりません。
コンドミニアムの多くはトラスト名義を認めますが、建物ごとの規約で扱いは異なります。コープでは原則使えません。名義の希望が建物選びより先に来る理由です。
LLCとの使い分け
トラストとLLCは並列の選択肢ではなく、目的が違う道具です。
| 目的 | トラスト | LLC |
|---|---|---|
| プロベート回避 | 主目的。最も直接的 | 持ち分の承継設計で対応 |
| 責任の切り分け | 限定的 | 主目的。賃貸運用で効く |
| 公表範囲の限定 | 登記にトラスト名 | 登記に法人名 |
| 維持の手間 | 比較的軽い | 年次報告・届け出が毎年 |
| 賃貸運用との相性 | 可能 | 運用前提なら本命 |
自宅・二拠点として持つならトラスト、賃貸運用が中心ならLLC、両方の目的があるなら併用(LLCの持ち分をトラストに入れる)という整理が出発点になります。最終形は個別の事情で変わります。
日本の税制との関係。ここを飛ばすと危険です
トラストは米国側の道具です。日本の税制はトラストを米国と同じようには扱いません。
設計の順序
①承継の希望を言葉にする ②日米の税務への影響を確認する ③器(トラスト・LLC・個人)を決める ④物件を探す。この順序を守ると、後戻りがありません。
よくある質問
トラストのご相談で実際に多い質問です。
すでに個人名義で持っている物件をトラストに入れられますか
トラストにすると固定資産税や売却時の税は変わりますか
費用はどのくらいかかりますか
遺言だけではだめですか
まずはご相談ください
誰に、いつ、どう渡したいか。ご希望をお知らせいただければ、日米両方の観点からトラスト・LLC・個人名義の使い分けを整理します。買う前の設計段階からご相談いただけます。
不動産サービスはR New Yorkとしてのサービス提供となります。