償却は前借りである。だから設計が要る
米国の賃貸物件では、建物部分を毎年償却して課税所得を圧縮できます。コストセグリゲーションで前倒しもできます。ただし償却は税の免除ではなく繰り延べであり、売却時に取り戻し課税が待っています。仕組みと日本側の制限、出口までの設計をまとめました。
このガイドでわかること
- 住宅用の建物は27.5年の定額で償却します。土地は償却できません
- コストセグリゲーションは償却の前倒しであり、総額は増えません
- 売却時には償却分の取り戻し課税(リキャプチャ)が生じます
- 日本側は2020年度改正で、国外中古建物の償却損失の扱いに制限があります
償却の基本の仕組み
賃貸に供した物件では、建物部分の取得価額を耐用年数にわたって費用化できます。
土地と建物を按分します
償却できるのは建物部分だけです。取得価額を土地と建物に分ける根拠には、市の評価の比率や鑑定が使われます。按分の根拠資料は申告と将来の売却まで保管します。
住宅用は27.5年の定額です
毎年ほぼ同額を費用計上します。賃料収入から管理費・税・利息とともに差し引くことで、手元の現金は減らないまま課税所得が圧縮されます。
純額課税の選択が前提です
非居住者が償却の恩恵を受けるには、総額源泉ではなく純額課税を選択して申告している必要があります。申告の設計が先という原則はここでも同じです。
コストセグリゲーション。前倒しの仕組みと向き不向き
建物の中の設備・造作を分解して短い耐用年数に振り分け、初期の償却を厚くする調査手法です。
何をするのか
専門業者が物件を調査し、建物一式ではなく、5年・7年・15年で償却できる構成部分(設備、造作、外構等)を工学的に切り出します。初年度からの償却が大きくなります。
効果は繰り延べです
償却の総額は変わりません。早く取るか、平らに取るかの違いです。初期に厚く取った分、後年の償却は薄くなり、売却時の取り戻しも大きくなります。
向くのは、初期の所得圧縮に価値がある場合
他の米国所得と通算したい、保有初期の資金繰りを厚くしたい、といった目的がある場合に効きます。調査には費用がかかるため、物件規模との見合いで判断します。
節税話の定番なので冷静に
コストセグリゲーションは合法で確立した手法ですが、免税ではなく前倒しです。出口の課税まで並べた通算の絵で判断してください。初期の数字だけを見せる提案には距離を置くべきです。
売却時に何が起きるか
償却で圧縮した分は、売却時に精算されます。
取り戻し課税(リキャプチャ)
売却益のうち、過去に取った償却に対応する部分は、通常の譲渡益とは別枠で課税されます。保有中に軽くした分が出口で戻ってくる構造です。
FIRPTAの源泉と申告
非居住者の売却では、まず売却総額に対する源泉徴収が入り、申告で実際の税額(リキャプチャ含む)と精算します。
繰り延べを続ける道もあります
1031エクスチェンジで次の投資用物件に組み替えれば、譲渡益とリキャプチャの課税を繰り延べられます。米国側の制度であり、日本側の扱いは別に確認が必要です。
日本側の制限。2020年度改正を前提に
かつて使われた「米国中古の短期償却で日本の所得と通算する」設計は、制度改正で大きく制限されています。
よくある質問
償却のご相談で実際に多い質問です。
自宅として使う物件でも償却できますか
償却しないという選択はできますか
コストセグリゲーションの費用対効果の目安は
ニューヨークのコンドでも効果はありますか
まずはご相談ください
物件の規模と保有計画をお知らせいただければ、償却の按分、コストセグリゲーションの費用対効果、出口の取り戻しまで並べた通算の試算を整理します。申告の実務は提携する日米の税務専門家と連携します。
不動産サービスはR New Yorkとしてのサービス提供となります。