マンハッタンの家賃に折り合いがつかず、それでも通勤時間は削りたくない。ニューヨークで住まいを探される方から、もっとも多くいただくご相談です。
その条件に対して、当社が最初にご案内する候補地の一つが、クイーンズ北西部のアストリア(Astoria)です。
イーストリバーを挟んでミッドタウンの真向かいに位置し、地下鉄N・W系統でタイムズスクエアまで20分前後という距離にありながら、家賃はマンハッタンの主要エリアの6割から7割程度に収まります。
一方で、アストリアは高層タワーが林立するエリアではありません。街の大半は低層の街並みであり、物件の性格もマンハッタンとは大きく異なります。本日はアストリアの街と不動産事情を見ていきましょう。
1. アストリアとはどのようなエリアか

アストリアはクイーンズの北西端に位置し、西はイーストリバー、南はロングアイランドシティ(LIC)、東はジャクソンハイツ方面へと続きます。
行政上の区分では、おおむね北はディットマース・ブルバード、南は36丁目あたりまでが中心域とされ、南側の一部はLICと連続しています。
街の成り立ちを決めたのは、20世紀初頭の橋と鉄道です。1917年に高架線が開通し、1936年にはトライボロ橋(現RFK橋)が完成しました。マンハッタンとの距離が一気に縮まり、低層の集合住宅と2世帯住宅が大量に建てられます。
現在も街の景観を支えているのが、この時代に建てられた2階建てから6階建ての煉瓦造りです。歩いていて空が広く感じられるのは、この建物の高さが揃っているためです。
もう一つアストリアを特徴づけるのが、産業と文化の蓄積です。ピアノメーカーのスタインウェイは19世紀からこの地に工場を構え、街路名にもその名が残っています。
映画産業では、ムービング・イメージ博物館が併設されたカウフマン・アストリア・スタジオが現役で稼働しており、撮影のために通りが封鎖される光景は日常の一部です。
水辺にはアストリアパークがあり、屋外プールとヘルゲート橋を望む芝生が、この街の生活の中心になっています。
2. 物件のタイプと代表的なレジデンス

アストリアで物件をお探しになる場合、選択肢は大きく4つに分かれます。それぞれ性格が違いますので、順に見ていきます。
①プレウォーの賃貸アパートメント。1920年代から1940年代に建てられた5、6階建てで、エレベーターのない建物も多く残ります。部屋の面積は同じ家賃帯のマンハッタン物件より一回り広いことが一般的です。
②2世帯・3世帯住宅。アストリアの住宅街の主役です。オーナーが1階に住み、上階を賃貸に出す形が伝統的で、投資目的でこの形態を取得される方もいらっしゃいます。
③築浅のコンドミニアム。30丁目周辺やブロードウェイ沿いに、10戸から40戸程度の中規模物件が点在します。
④水辺の大規模レンタル。ハレッツポイント(Halletts Point)とアストリアコーブの再開発区域に、アメニティを備えた高層賃貸が竣工しています。
駐在で来られる方には④または③、長期保有をお考えの方には②をご案内することが多くなります。
とくに②の2世帯住宅は、賃料収入で保有コストの相当部分をまかなえる構造になりやすく、マンハッタンのコンドミニアムとはまったく異なる収支の組み立てが可能です。
3. 物件価格と賃貸相場

それでは、実際の相場を見ていきます。
2026年現在、アストリアの賃貸は1ベッドルームで月2,600〜3,300ドル程度(約40万〜51万円程度)が中心帯です。水辺の新築レンタルではこれより500ドルから900ドル高くなります。(2026年8月現在、1ドル=155円換算)
売買では、コンドミニアムの1ベッドルームが60万〜85万ドル程度、2世帯住宅が130万〜190万ドル程度が目安となります。
以下は、アストリアと近隣エリアを比較した表です。
| エリア | 家賃(1BR) | コンド価格(1BR) | ミッドタウンまで |
|---|---|---|---|
| アストリア | 2,600〜3,300ドル | 60万〜85万ドル | 20〜25分 |
| ロングアイランドシティ | 3,800〜4,600ドル | 95万〜150万ドル | 10〜15分 |
| グリーンポイント | 3,800〜4,500ドル | 90万〜150万ドル | 25〜35分 |
| アッパーイーストサイド | 4,000〜5,200ドル | 85万〜140万ドル | 10〜20分 |
※上記は、2026年現在の当社が現地で把握している市場感に基づく目安であり、個別物件により大きく異なります。
この表で注目していただきたいのは、LICとの差です。両エリアは地下鉄で2駅から3駅しか離れていませんが、1ベッドルームの家賃で月1,000ドル以上、価格で3割から4割の開きがあります。
理由は建物の性格の違いです。LICは新築タワーが中心で、ドアマン、ジム、ラウンジが標準装備となります。アストリアはプレウォーと低層が中心で、これらの共用施設を持たない物件が主流です。
設備を優先されるならLIC、面積と価格を優先されるならアストリア、という整理になります。ロングアイランドシティの解説記事もあわせてご覧ください。
4. 交通アクセスと日常の利便性

続いて、通勤と生活の利便性を見ていきます。
地下鉄はN・W系統が街の背骨です。ディットマース・ブルバード駅を起点に、アストリア・ブルバード、30番街、ブロードウェイ、36番街と続き、いずれの駅からもミッドタウン方面へ乗り換えなしで到達します。
タイムズスクエア42丁目まで20分から25分、ヘラルドスクエア34丁目まで25分前後が目安です。東側のスタインウェイストリート周辺はM・R系統の利用となり、こちらはミッドタウン東側やロックフェラーセンター方面へ直行します。
水辺のハレッツポイント地区は最寄り駅から距離があるため、NYCフェリーのアストリア発着便が実質的な足になります。イースト34丁目やウォール街方面へ、乗り換えなしで結ばれています。
物件を選ばれる際は、駅から徒歩何分かを必ず確認してください。アストリアは南北に長い街であり、同じ「アストリア」でも駅近と内陸部では通勤の体感が10分以上変わります。
買い物は、ブロードウェイと30番街が中心です。スーパーマーケット、薬局、青果店、精肉店が徒歩圏に揃い、車がなくても生活が完結します。
ラガーディア空港までは車で15分前後、JFK国際空港までは40分前後です。日本との往復が多い方にとっては、この距離が実務上の利点になります。ニューヨークでの賃貸手続きや必要書類については、ニューヨーク賃貸完全ガイドで詳しく解説しています。
5. 購入時の注意点と資産価値の考え方

アストリアで購入をご検討される際、確認しておくべき論点があります。
ポイントは以下の通りです。
①2世帯・3世帯住宅は、賃貸中の入居者ごと引き継ぐ取引が多く、既存の賃貸借契約の内容確認が必須であること。
②古い建物が多いため、屋根、給排水、暖房設備の更新履歴を確認する必要があること。
③高架線沿いの物件は騒音の影響を受けるため、内見は必ず日中の走行時間帯に行うこと。
④水辺の再開発区域は供給が続いており、竣工時期によって賃料の競合が生じること。
とくに①は、日本の不動産取引にはあまりない論点です。ニューヨーク市には賃料規制の対象となる住戸が一定数存在し、対象物件では家主側が賃料を自由に改定できません。
取得後の収支計画に直結しますので、契約前にレントロールと規制区分を確認することを強く推奨いたします。
資産価値の面では、アストリアは供給余地が限られた低層街区である点が長期的な支えとなります。街の大半が低層住宅で埋まっており、大規模な新規供給は水辺の再開発区域に限られます。
通勤20分圏という立地条件は今後も動きません。当社の実感としても、マンハッタンの賃料が上がる局面では、その受け皿としてアストリアの需要が確実に厚くなります。
ニューヨーク不動産投資の全体戦略については、ニューヨーク不動産投資ガイドをご参照ください。
地元で通われている店と公共空間

それでは、この街で日常的に使われている場所をご紹介します。
タベルナ・キクラデスはディットマース・ブルバード沿いのシーフード店です。1990年代から続く店で、予約を取らない方針のため夕方には行列ができます。
ボヘミアン・ホール・ビアガーデンは1910年代から続く屋外ビアガーデンです。市内でも数少ない大規模な屋外席を持ち、春から秋にかけて近隣の住民が集まります。
タイタン・フーズは地中海料理の食材を扱う大型食料品店で、チーズ、オリーブ、乾物の品揃えはマンハッタンの専門店を上回ります。
アストリア・ブックショップは独立系書店で、朗読会や地域のイベントの会場としても使われています。
公共空間の中心はアストリアパークです。1936年開設の屋外プールは市内最大級で、夏季は無料開放されます。イーストリバー沿いの遊歩道からは、ヘルゲート橋とマンハッタンのスカイラインが同時に視界に入ります。
水辺ではもう一つ、ソクラテス・スカルプチャー・パークが知られています。かつての不法投棄場を彫刻公園として再生した場所で、隣接するイサム・ノグチ庭園美術館とあわせて訪れる方が多い一帯です。
まとめ

アストリアは、マンハッタンまで20分という距離、低層で落ち着いた街並み、そして面積あたりの価格の優位性を併せ持つエリアです。
高層タワーの設備を求める方には物足りない一方で、同じ予算で一回り広い住まいを確保したい方、2世帯住宅による賃料収入を組み込んだ投資をお考えの方には、有力な選択肢となります。
当社では、ニューヨーク現地にて、物件のご紹介から購入手続き、賃貸のお住まい探しまで、NY州ライセンスを有するプロフェッショナルを通じてご支援しております。
アストリアのエリアにご関心をお持ちの方は、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
※当社はR New York としてのサービスとなります。物件の売買・賃貸のご案内は、NY州の不動産ライセンスに基づき行っております。
本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。


















