レノックスヒルは、マンハッタン東側の60丁目から77丁目あたり、五番街からイーストリバーまでの区域です。アッパーイーストサイドの中でも中心にあたり、パークアベニューとマディソンアベニューの戦前建築が並びます。
この地区を取り上げるのは、同じ「アッパーイースト」という言葉でくくられていても、通りが1本違うだけで価格も買える名義も変わるからです。エリアの紹介だけでなく、名義と税務の設計まで書きます。
1. 概要と住宅の種類

レノックスヒルの住宅は、大きく三つに分かれます。パークアベニューとマディソンアベニュー沿いに並ぶ1920年代から1930年代の戦前コープ、レキシントンアベニューから東の戦後の中層建築、そしてセカンドアベニューと東側に建った2000年代以降のコンドミニアムです。
戦前コープは天井が高く、部屋の区切りがはっきりしています。間取りには使用人用の小部屋や配膳室が残っていることがあり、同じ面積でも実際に使える広さが現代の設計とは違います。一方でコンドミニアムは全体の一割に届かないほどしかなく、選べる住戸の数はかぎられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 位置 | マンハッタン東側、60丁目から77丁目、五番街からイーストリバーまで |
| 主な住宅形態 | 戦前コープ、戦後コープ、少数のコンドミニアム |
| 価格帯の目安 | コンドミニアムは1平方フィートあたり1,800ドルから3,000ドル、コープは900ドルから1,800ドル |
| 通勤 | 4・5・6号線とQ線、ミッドタウンまで約10分 |
| 代表的な建物 | 740パークアベニュー、マンハッタンハウス、20イースト65丁目 |
同じアッパーイーストの中での位置づけは、アッパーイーストサイドの記事や、北側のカーネギーヒル、東側のヨークビルと並べて見ると分かりやすくなります。個別の建物では740パークアベニューとマンハッタンハウスが代表格です。
2. 価格の位置づけ

コンドミニアムの実勢は、1平方フィートあたり1,800ドルから3,000ドルの幅です。2ベッドルームのおおむね1,300平方フィートで、250万ドルから380万ドルあたりに集まります。セントラルパークが見える上層階や、新築のフルサービス建築ではこれを超えます。
コープはこれよりはっきり安く、1平方フィートあたり900ドルから1,800ドルです。同じ2ベッドルームでも150万ドルから230万ドルで買えることがあり、価格だけを見れば割安に映ります。ただし後で書くとおり、外国籍・非居住の方が買える対象からはほとんど外れます。
この地区の価格は、五番街とパークアベニューに近いほど上がり、東に向かうほど下がります。同じ通り沿いでも、戦前建築の角部屋と、1960年代の白レンガの建物では、面積あたりの単価が倍近く違うことがあります。地区の平均値ではなく、建物ごとに見る必要があります。
3. 賃料と維持費の釣り合い

賃貸に出した場合、1ベッドルームで月4,500ドルから6,000ドル、2ベッドルームで月7,000ドルから10,000ドルが目安です。年間の賃料収入を購入価格で割った表面利回りは、コンドミニアムでおおむね3%前後になります。マンハッタンの中心部としては標準的な水準です。
ここから共益費と固定資産税が引かれます。コンドミニアムの共益費は1平方フィートあたり月1.5ドルから2.5ドル、固定資産税は1平方フィートあたり年20ドルから35ドルが目安です。2ベッドルームなら合わせて月に4,000ドル前後になり、手取りの利回りは1%台まで落ちます。
つまりこの地区は、家賃収入で回収する場所ではありません。買う理由は、ドル建ての資産をマンハッタンの中心部に置くこと、そして自分や家族が使うことです。共益費の中身と、そこに何が含まれているかはコモンチャージと管理費の考え方にまとめてあります。
4. 購入の実務と名義の設計
コンドミニアムは外国籍でも非居住でも購入できます。理事会の面接はなく、書類の届け出だけで進みます。名義は個人、LLC、信託のいずれも選べます。これに対してコープは理事会の審査があり、米国内の収入と資産の証明を求められるため、非居住の方はほとんど通りません。この地区でコープが安く見えるのはそのためで、実際の検討対象はコンドミニアムに絞られます。判断の前提はコープの審査と外国籍の壁で確認できます。
賃料を得る場合、非居住者は賃料総額の30%の源泉徴収が原則で、確定申告を選ぶと経費を引いた純額への課税に切り替えられます。LLC名義で保有する場合の税務はLLC名義での保有と税務で、売却時のFIRPTAの源泉徴収も同じ流れで確認できます。
個人名義のまま非居住者が亡くなると、米国の遺産税は基礎控除が6万ドルしかなく、最高税率40%が超過分にかかります。名義の設計は、購入後に変えると譲渡税がかかるため、契約前に決めます。取引の際には、その時点の最新の税務を、契約書と書面で確認してください。
5. まとめ
レノックスヒルは、通りが1本違うだけで単価と買える名義が変わる地区です。コープの安さに引かれる前に、自分がその審査を通る立場かどうかを先に確かめてください。購入の全体の流れはニューヨーク不動産の購入ガイドに、日本にいながら進める手順は日本からの遠隔購入にまとめてあります。
売り出し状況と、非公開で動いている住戸のご案内も承っております。
よくある質問
レノックスヒルの物件は外国籍でも購入できますか。
コンドミニアムであれば、外国籍でも米国に住んでいなくても購入できます。理事会の面接はなく、名義は個人、LLC、信託から選べます。コープは理事会の審査で米国内の収入と資産の証明を求められるため、非居住の方が承認を得るのは難しいのが実情です。
コープのほうが安いのに、なぜコンドミニアムを勧めるのですか。
価格だけを比べればコープが安く見えますが、非居住者は理事会の承認をほとんど得られません。買えない物件の価格は判断材料になりません。加えてコープは賃貸に出すことにも制限があり、貸す予定があるならコンドミニアムを選ぶことになります。
ミッドタウンまでの通勤時間はどのくらいですか。
レキシントンアベニューの4・5・6号線でグランドセントラルまで約10分、セカンドアベニューのQ線で57丁目まで約8分です。徒歩でも五番街のオフィス街まで20分から30分の範囲に収まります。
賃貸に出した場合、手元にはどのくらい残りますか。
2ベッドルームで月7,000ドルから10,000ドルの賃料に対し、共益費と固定資産税で月4,000ドル前後が出ていきます。表面利回りは3%前後、これらを引いた手取りは1%台になります。管理費と修繕の積立を別に見込んでください。
NEIGHBOURHOODSニューヨークの街と、他都市との比較(97件)
マンハッタンの街
- アッパーウエストサイド — 戦前の名建築と子育て環境
- カーネギーヒル — 美術館の並びに住む
- ヨークビル — 地下鉄新線が変えた買い場
- タートルベイ — 国連の街の静かな買い場
- グラマシー — 鍵のある公園に面した街
- フラットアイアン — ロフトの広さと価格
- ノマド — マンハッタン中央部の相場
- チェルシー — ハイライン沿いのレジデンス
- ウエストヴィレッジ — 石畳の歴史地区
- グリニッチビレッジ — 低層の街と戦前コープ
- ノーホー — 数ブロックのロフト一等地
- ソーホー — ロフト市場の実態
- ロウアーイーストサイド — 変わり続ける街の値段
- 金融地区 — ウォール街に暮らす
- ハーレム — ブラウンストーン1棟と賃料規制
- リンカーンスクエア — 公園と劇場に挟まれた一角
- レノックスヒル(この記事)
- キップスベイ — 価格を抑えて名義を設計する
- マレーヒル — ミッドタウン東の住み替え先
- サットンプレイス — イーストリバー沿いの静かな一角
- モーニングサイドハイツ — 大学に囲まれた区域で持つ
- アッパーイーストサイド — 学区とコープ審査、物件価格
- トライベッカ — 最高価格帯のロフトと新築
- ノリータ — 小さな街区と低層の街並み
- イーストビレッジ — ダウンタウンで家賃を抑える
- ヘルズキッチン — ミッドタウン至近の家賃
- ハドソンヤーズ — ゼロから生まれた街の価格
- ミッドタウンイースト — 通勤10分圏の家賃と物件選び
- バッテリーパークシティ — 借地権という落とし穴
ブルックリンの街
- ブルックリンハイツ — 全米初の歴史保存地区
- コブルヒル — ランドマーク地区のブラウンストーン
- キャロルガーデンズ — 住みながら貸す二戸建て
- ボーラムヒル — 学区の境界は住所ごとに違う
- フォートグリーン — コープが多い地区で海外から買う
- プロスペクトハイツ — 固定資産税の減税が切れる日
- ダウンタウンブルックリン — 供給が集中した地区の出口
- ダンボ — 倉庫街から高級住宅地へ
- グリーンポイント — 水辺エリアの家賃相場
- ウィリアムズバーグ — 水辺の新築と倉庫改装
- ブッシュウィック — 倉庫街から住宅地へ
- クラウンハイツ — ブラウンストーンと大型コープ
- ベッドフォードスタイベサント — ブラウンストーン1棟の持ち方
- レッドフック — 洪水リスクと保険で見る水辺
- パークスロープ — 公園沿いの街並みと学校、物件
クイーンズとブロンクスの街
- ロングアイランドシティ — 水辺のタワーと1駅の距離
- アストリア — 低層の街と二世帯住宅
- フォレストヒルズ — 戦前コープとガーデン地区
- ジャクソンハイツ — 歴史地区に残るコープ
- レゴパーク — 大型コープと戸建てが混ざる
- フラッシング — 7号線の終点に建つ新築コンド
- サニーサイド — 地下鉄一本で出られる低層の街
- ウッドサイド — 二世帯住宅を持つという選択
- キューガーデンズ — 戦前コープと戸建てが混ざる
- リバーデール — ハドソン川を見下ろす戸建て
ウエストチェスターの街
- スカーズデール — 村の税と戸建ての価格帯
- ブロンクスビル — 1平方マイルの村に建つコープ
- ライ — 湾に面した戸建ての価格帯
- ホワイトプレーンズ — 郡庁所在地の高層コンド
- ハリソン — 駅前と丘側で異なる区域
- イーストチェスター — 町の中の2村で税が変わる
- ママロネック — 町と村にまたがる住所
- ラーチモント — 湾に面した戸建てと通勤
- ペラム — 二つの村に分かれた町の税負担
- ニューロシェル — 再開発の高層コンドと湾岸の戸建て
ロングアイランドの街
- ナッソー郡 — 郡全体の価格と固定資産税
- グレートネック — LIRRの3駅と戸建ての価格帯
- ポートワシントン — 港と商店街、支線の終点
- ロズリン — 池のある村と周辺の戸建て
- ジェリコ — 区画の広い住宅地の持ち方
- ガーデンシティ — 計画された街区と街路樹
- ベイサイド — クイーンズ東端の戸建て
- リトルネック — 湾沿いの低層住宅地
- ハンプトンズ — 別荘市場の価格帯と季節賃貸
- モントーク — 半島の先端で持つ
ニュージャージーの対岸
- ホーボーケン — 家賃相場・通勤・洪水リスク
- ジャージーシティ — PATHで10分の対岸とタワー
- フォートリー — 高層コンドと通勤
- エッジウォーター — フェリーで15分の川沿い
- ユニオンシティ — マルチファミリーの街
- ニュージャージーの物件15選 — 対岸で選ばれている建物
ニューヨークを他の都市と比べる
- 東京 — 価格・価値観・法規制の違い
- ロサンゼルス — 戸建ての街と縦の街
- マイアミ — 税金ゼロの魅力と流動性
- ハワイ — 持ちたい場所として比べる
- トロント・バンクーバー — 外国人購入禁止の国と開かれた市場
- パリ — 石の街の資産と縦の街の資産
- 香港 — アジアの富の置き場所
- シドニー — 外国人規制の壁
- ロンドン — 英米の不動産投資の違い
- 世界の主要都市 — ドバイ・シンガポール・ロンドン・東京
- 全米の主要都市 — 価格・家賃・利回り・値上がり率
- 米国内の他都市 — ニューヨークだけが違う7点
- 日米の投資比較 — 利回り・税制・リスク
- 他州の築古戸建て — 同じ2億円を5年持った場合
- ドバイ・シンガポール — 買うならどこか
- マイアミ・ボストン — 家を買う都市の違い
- マイアミの高級コンド — ニューヨークとの違いと購入の実務
エリアの全体像と購入の実務
本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。

















