ニューヨークで住まいを探される方に、当社が費用対効果の観点から必ずご紹介するエリアがあります。マレーヒル(Murray Hill)です。
グランドセントラル駅から徒歩圏という立地にありながら、周辺エリアと比べて価格が明確に抑えられている、実務的な選択肢として知られています。
当社は2019年からニューヨークを拠点に、アメリカ進出支援とリロケーションのご支援を行っておりますが、このエリアは通勤利便性と価格のバランスがマンハッタンで最も取れているエリアの一つです。単身で赴任される方やご夫婦からのご相談が中心となっています。
一方で、街としての華やかさを求められる方には物足りない側面もあります。本日はマレーヒルの住環境と不動産事情について見ていきましょう。
1. マレーヒルとはどのようなエリアか

マレーヒルは、おおよそ34丁目から42丁目、マディソンアベニューから3番街に挟まれたエリアを指します。名称は18世紀にこの一帯に農地を所有していた家系に由来します。
このエリアの特徴は、幹線道路から一本入った通りに、19世紀のブラウンストーン住宅がまとまって残っていることです。ミッドタウンに隣接しながら、住宅街としての落ち着きが保たれています。
文化施設としては、モーガン・ライブラリー・アンド・ミュージアムが立地しています。実業家が収集した写本や古書を収蔵する施設で、建物自体も歴史的建造物として価値の高いものです。
スニッフェン・コートと呼ばれる、19世紀の馬車庫を住宅化した小さな路地も残されており、市の歴史地区に指定されています。
東側の1番街と2番街沿いには、1960年代から70年代に建てられた大型の集合住宅が並びます。これらは戸数が多く、賃貸物件の主要な供給源となっています。
建物の年代と種類の幅が広いため、予算に応じた選択肢が確保しやすい点が、このエリアの実務的な利点と言えます。
2. 代表的な新築・築浅レジデンス

この10年で、イーストリバー寄りの区画を中心に新築の供給が進みました。それでは代表的な物件を見ていきます。
①American Copper Buildings(626 First Avenue)。建築事務所ショップ・アーキテクツが設計し、2017年に竣工した2棟構成の賃貸レジデンスです。互いに傾いた 2棟を空中の連絡橋で結ぶ構造が特徴で、銅板の外装が経年で色を変えていきます。
②685 First Avenue。建築家リチャード・マイヤーが手がけた2019年竣工の物件です。ガラス張りの外観で、イーストリバーの眺望が確保されています。分譲と賃貸の双方が含まれます。
③The Corinthian。1988年竣工の大規模レジデンスで、円弧を連ねた外観が特徴です。戸数が多く、市場に出る住戸を見つけやすい物件です。
④ブラウンストーンの改装物件。19世紀のタウンハウスを住戸に分割した物件が街区内に点在し、規模は小さいものの街並みと調和した選択肢となります。
以上で見てきたように、マレーヒルでは川沿いの大型新築と、内陸のブラウンストーンという二つの選択肢が明確に分かれています。
設備と眺望を優先されるか、街並みと静けさを優先されるかで、選ぶべき区画が変わります。
3. 物件価格と賃貸相場

それでは、実際の相場を見ていきます。
2026年現在、マレーヒルの売買物件の中央値はおおよそ85万ドル前後で推移しており、ミッドタウン周辺では手の届きやすい水準です。賃貸は1ベッドルームで月3,600〜4,300ドル程度が目安です。(2026年3月現在、1ドル=155円換算)
以下は物件タイプ別の価格帯の目安をまとめた表です。
| 物件タイプ | 価格帯の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 既存コープ(1BR) | 55万〜85万ドル程度 | 市内でも割安な水準 |
| 既存コンド(1BR) | 80万〜120万ドル程度 | 海外購入者に実務上有利 |
| 新築コンド(1BR) | 120万〜180万ドル程度 | 川沿いに集中 |
| 賃貸(1BR) | 月3,600〜4,300ドル程度 | 大型物件が多く在庫が豊富 |
※上記は、2026年現在の当社が現地で把握している市場感に基づく目安であり、個別物件により大きく異なります。
この相場を読む上での要点は、グランドセントラルまで徒歩圏という条件で、この水準の物件が確保できるエリアは市内でも限られるという点です。同じ通勤時間でアッパーイーストサイドと比較すると、価格差は明確です。
駐在員の方のお住まい探しの流れや必要書類については、ニューヨーク賃貸完全ガイドで詳しく解説しています。
4. 住環境と交通アクセス

続いて、日々の生活に直結する交通と住環境を見ていきます。
地下鉄は6系統の33rd St駅が最寄りで、グランドセントラル駅までは徒歩圏です。同駅では4・5・6・7・S系統と郊外への鉄道が利用できます。
ペンステーションも徒歩圏にあり、鉄道アクセスの選択肢は市内でも上位に入ります。空港へのアクセスも良好です。
ただし、東側の1番街と2番街沿いは最寄駅まで徒歩10分以上を要する区画があります。この立地差が価格にも反映されている点にご留意ください。
生活面では、3番街とレキシントンアベニュー沿いにスーパーマーケットと飲食店が揃っており、日常の買い物に不自由はありません。
総合病院が複数立地している点も、実務面での利点です。
5. 購入時の注意点と資産価値の考え方

マレーヒルの購入をご検討される際、事前に確認すべき論点があります。
ポイントは以下の通りです。
①1960年代から70年代に建てられた大型集合住宅が多く、設備更新の履歴と修繕計画の確認が必要であること。
②供給の一定割合がコープであり、理事会審査を経る必要があること。
③東側の区画は最寄駅から距離があり、同じエリア内でも利便性に差が生じること。
以上で見てきたように、街としての個性の薄さから「投資対象として魅力に欠けるのではないか」というご意見をいただくことがあります。確かに、他エリアのような明確な話題性はありません。
しかし、当社が現地で見てきた実感として、賃貸需要の安定性という観点では市内でも堅い部類に入ります。グランドセントラル至近という条件は、勤務地を問わず一定の借り手を確保できることを意味します。
話題性のあるエリアは価格の変動も大きくなりますが、実需に支えられたエリアは景気局面を問わず稼働率が安定する傾向があります。堅実な運用をお考えの場合、合理的な選択肢と考えられます。
ニューヨーク不動産投資の全体戦略については、ニューヨーク不動産投資ガイドで詳しく解説しています。
図書館と香辛料店が並ぶ落ち着いた界隈

それでは、この界隈の性格を表している施設と店をご紹介します。
モーガン・ライブラリー・アンド・ミュージアムは、実業家J・P・モーガンの書斎と収蔵品をそのまま公開している施設です。三層の書棚に囲まれた部屋は市内でも屈指の内装として知られ、企画展も定期的に開かれます。
食材では1944年創業のカルスティアンズが特筆されます。世界各地の香辛料と乾物を扱う専門店で、数千種類の在庫を持つとされ、料理に関心のある方が遠方から訪れます。
この周辺のレキシントンアベニュー沿いには南アジア料理の店が集まり、手頃な価格で食事ができる区画となっています。
1959年開業のエル・パラドール・カフェは、界隈で最も長く続くメキシコ料理店の一つです。
徒歩圏にはエンパイア・ステート・ビルがあり、展望台への行列を避けたい場合は平日の早朝か夜間が現実的です。
緑地は限られますが、セント・ヴァータン・パークに運動場と遊具が整備されており、東側の住民に利用されています。落ち着いた住宅街という性格上、派手な施設は少ない代わりに、生活に必要なものが静かに揃っている界隈と言えます。
まとめ

マレーヒルは、グランドセントラル至近という交通利便性、ブラウンストーンが残る落ち着いた街並み、そして周辺エリアと比べた明確な価格の優位性を併せ持つエリアです。
その一方で、建物の年代差と区画ごとの利便性の差が大きく、物件選びの精度が結果を左右するエリアでもあります。
当社では、ニューヨーク現地にて、物件のご紹介から購入手続き、賃貸のお住まい探しまで、NY州ライセンスを有するプロフェッショナルを通じてご支援しております。
マレーヒルのエリアにご関心をお持ちの方は、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。不動産サービスはR New Yorkとしてのサービス提供となります。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。


















