ニューヨークで資産を築かれた方が、次の一手として検討されるのがハンプトンズ(The Hamptons)の別荘です。
マンハッタンから東へ約160キロ、ロングアイランド島の東端に位置する一帯で、大西洋に面した砂浜と農地の風景が続きます。
この市場を検討される際、当社が最初にお伝えするのは購入価格以外に発生する費用と、賃貸に出す場合の規制です。ここを知らずに購入すると、想定していた収支が成立しません。
本日はハンプトンズの不動産を、地区、費用、賃貸規制の3点から整理していきます。
1. ハンプトンズを構成する地区

ハンプトンズは行政上の単一の地名ではありません。サフォーク郡の東端、サウスフォークと呼ばれる半島に連なる複数の町と集落の総称です。
西から順に、ウエストハンプトン、ハンプトンベイズ、サウサンプトン、ウォーターミル、ブリッジハンプトン、サガポナック、イーストハンプトン、アマガンセット、そして最東端のモントークが並びます。
北岸にはサグハーバーという港町があり、性格が異なる市場を形成しています。
地区ごとの性格を整理すると、次のようになります。
①サウサンプトン。歴史が古く、商店街が整備された町です。海沿いのエステートから村内の住宅まで幅があります。
②ブリッジハンプトン、サガポナック、ウォーターミル。農地と邸宅が混在する区域で、サガポナックは全米でも屈指の高価格帯として知られています。
③イーストハンプトン。文化的な集積があり、美術館やギャラリーが多い区域です。
④サグハーバー。かつての捕鯨港で、港町の街並みと水辺の物件が中心です。
⑤ハンプトンベイズ、ウエストハンプトン。相対的に価格が抑えられ、実需の比率が高い区域です。
もう一つ理解しておくべきなのが、「サウス・オブ・ザ・ハイウェイ」という概念です。モントーク・ハイウェイ(27号線)より南、つまり海側にあるかどうかで、同じ町でも価格が大きく変わります。
海側は供給が限られ、価格は北側の2倍から数倍になることも珍しくありません。
2. 価格帯と地区ごとの相場

それでは、実際の相場を見ていきます。(2026年8月現在、1ドル=155円換算)
| 地区 | 内陸側の価格帯 | 海側・水辺の価格帯 | 性格 |
|---|---|---|---|
| ハンプトンベイズ | 80万〜150万ドル | 200万〜500万ドル | 通年居住が多い |
| サウサンプトン | 150万〜350万ドル | 600万〜3,000万ドル | 商店街と歴史 |
| ブリッジハンプトン | 200万〜450万ドル | 800万〜4,000万ドル | 農地の景観と邸宅 |
| イーストハンプトン | 180万〜400万ドル | 700万〜3,000万ドル | 文化施設が集積 |
| サグハーバー | 150万〜300万ドル | 400万〜1,500万ドル | 港町。徒歩圏の生活 |
※上記は、2026年現在の当社が現地で把握している市場感に基づく目安であり、個別物件により大きく異なります。
この市場の特徴は、同じ町の中で価格が10倍以上開くことです。海までの距離、敷地の面積、農地の眺望が保全されているかどうかで、評価がまったく変わります。
したがって「ハンプトンズの相場」という言い方には実質的な意味がありません。物件単位で個別に評価する必要があります。
固定資産税は、サフォーク郡の水準として市場価格の年1.0パーセントから1.6パーセント程度です。ナッソー郡より低い水準ですが、物件価格が大きいため絶対額は相応になります。
3. 購入時にかかる保全基金税(CPF)

ここが、ハンプトンズの購入で見落とされやすい費用です。
この地域では、ニューヨーク州の譲渡税とは別に、ピーコニック湾地域保全基金(Community Preservation Fund、通称CPF)への納付が発生します。
これは購入者が負担する税であり、税率は取得価格の2パーセントです。一定額の控除が設けられていますが、高額物件では実質的にほぼ全額に課されます。
さらに2023年以降、複数の町でコミュニティ・ハウジング基金(CHF)が導入され、追加で0.5パーセントが課される場合があります。合計すると取得価格の最大2.5パーセントです。
500万ドルの物件であれば、この費用だけで12万5,000ドル程度(約1,940万円程度)になります。マンハッタンで同額の物件を購入する場合とは、まったく異なるコスト構造です。
加えて、通常の諸費用が発生します。
①ニューヨーク州の不動産譲渡税(売主負担が一般的)。
②100万ドル以上の住宅に対するマンションタックス1パーセント(買主負担)。
③タイトル保険、弁護士費用、抵当権記録税(借入がある場合)。
④住宅検査、測量、井戸水と浄化槽の検査費用。
④は、この地域では特に重要です。ハンプトンズの多くの物件は公共下水に接続しておらず、浄化槽(セプティック)方式です。飲料水も井戸水の物件が相当数あります。
浄化槽の更新には数万ドルを要する場合があり、自治体の補助制度が用意されている地域もあります。契約前の検査で状態を把握しておく必要があります。
取得費用全体の試算方法は、投資シミュレーターでご確認いただけます。
4. 夏季賃貸の規制と収支の考え方

別荘を保有しながら、使わない期間は賃貸に出す。この発想は自然ですが、ハンプトンズでは規制の確認が先です。
イーストハンプトン町およびサウサンプトン町では、住宅を賃貸に出す場合、町への登録(レンタルレジストリ)が必要です。登録番号がなければ広告掲載自体ができません。
加えて、賃貸の頻度と期間にも制限があります。イーストハンプトン町では、6か月の期間内に2回まで、1回あたり最低14泊連続という条件が課されています。
つまり、週末だけを繰り返し短期で貸すという運用は制度上できません。この点を理解せずに購入すると、想定していた賃料収入が実現しません。
規制の内容は町によって異なり、改正もあります。購入前にイーストハンプトン町やサウサンプトン町の公式情報で最新の条件をご確認ください。
その上で、収支の実際です。ハンプトンズの賃貸市場は季節性がきわめて強く、収入はメモリアルデーからレイバーデーまでの夏季に集中します。
物件の規模と立地によりますが、標準的な4ベッドルームの物件で、夏季シーズン(約3か月)を通した賃貸で7万〜20万ドル程度が一つの目安です。海に近い大型物件ではこれを大きく上回ります。
一方で、支出も相応にかかります。固定資産税、保険(沿岸部では風災害の保険料が高くなります)、プールと庭園の維持、暖房と防寒対策、そして管理会社への手数料です。
当社の見方を申し上げると、ハンプトンズの別荘は賃料利回りで回収する資産ではありません。土地の希少性による長期の資産価値と、自身が使用する価値を主軸に据え、賃料収入は保有コストの一部を相殺するものと位置づけるのが実態に即しています。
5. 移動手段と季節による街の変化

ハンプトンズへの移動手段は3つです。
①車。マンハッタンから2時間から2時間半程度ですが、夏の金曜夕方と日曜夕方は大幅に延びます。4時間以上かかることも珍しくありません。
②LIRR(ロングアイランド鉄道。マンハッタンのペンステーションとロングアイランドを結ぶ通勤鉄道です)モントーク支線。ペンステーションから2時間30分から3時間程度です。夏季には直通の臨時列車が運行されます。
③ハンプトン・ジトニー。マンハッタンから運行される長距離バスで、予約制です。定時性は道路状況に左右されます。
いずれの手段でも、現地では車が必須です。地区間の移動、買い物、海への往復に車を使います。
もう一点、実務的に重要な情報があります。多くの海水浴場では、駐車に町が発行する許可証が必要です。
許可証は住民または長期賃借人に発行されるのが原則であり、短期の訪問者は有料の駐車場を使うか、限られた区画を利用することになります。物件を購入される場合は、この点も確認しておくと安心です。
季節による街の変化も、この地域の特徴です。夏季は人口が数倍に膨れ上がり、飲食店は予約が取りにくくなります。一方で冬季は静まり返り、休業する店も出ます。
通年での利用をお考えであれば、冬季に一度現地をご覧になることを推奨いたします。
ハンプトンズで知られている場所

それでは、この地域を代表する場所をご紹介します。
ニック・アンド・トニーズは1988年開業のイーストハンプトンの飲食店で、この地域を代表する一軒として知られています。薪窯の料理と地元農産物を使った献立が特徴です。
ラウンド・スワンプ・ファームは家族経営の農産物直売所で、総菜と焼き菓子も扱います。夏季は朝から行列ができます。
キャンディ・キッチンはブリッジハンプトンの交差点にある食堂で、1925年から営業しています。観光地化が進んだ現在も、地元の日常の店として残っています。
サンタンブロウスはサウサンプトンのメインストリートにあるイタリア料理店で、夏季の社交の場になっています。
海ではクーパーズビーチとメインビーチが代表的です。いずれも全米の海水浴場の評価で上位に挙げられてきた砂浜です。
文化施設では、イーストハンプトンのポロック・クラズナー・ハウスがあります。画家ジャクソン・ポロックが制作したアトリエが、床の絵具の跡を含めてそのまま保存されています。
まとめ

ハンプトンズは、大西洋の砂浜と保全された農地の景観という、供給が絶対に増えない資産を持つ市場です。
その一方で、購入時には取得価格の2パーセントから2.5パーセントに達する保全基金税がかかり、賃貸には町への登録と日数の規制があります。この2点を把握しないまま進めると、収支の前提が崩れます。
賃料で回収する資産ではなく、長期の資産価値と自身の使用価値で判断する市場である。これが当社の一貫した見方です。
当社では、ニューヨーク現地にて、物件のご紹介から購入手続きまで、NY州ライセンスを有するプロフェッショナルを通じてご支援しております。
ハンプトンズの物件にご関心をお持ちの方は、お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。
※当社はR New York としてのサービスとなります。物件の売買・賃貸のご案内は、NY州の不動産ライセンスに基づき行っております。税務については税理士に、賃貸規制については各町の最新の条例をご確認ください。
本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。


















