ニューヨークで部屋を借りると、20ページから40ページの英文リースが出てきます。署名の期限は短く、日本の会社の法務に回している時間はありません。
全部を訳す必要はありません。読むべき条項は決まっています。ここでは、駐在で3年前後住む方が実際に困る箇所だけを取り上げます。
1. 契約書の構成と、読む順番

ニューヨークの賃貸契約書は、本体のリースに複数の別紙が付く形になっています。本体には期間、家賃、デポジット、使用目的が書かれ、別紙にはビルの規則、鉛塗料の告知、火災時の避難情報、窓の安全装置に関する書面などが並びます。
読む順番は、まず本体の第1条から第5条あたりに集まる金額と期間、次に途中解約と又貸しの条項、最後に退去時の原状回復です。ビル規則の別紙は分量が多いのですが、実際に効くのは搬入出の時間帯、ペット、楽器、洗濯機の設置可否といった数項目です。
| 条項 | 英語での見出し | 確認すること |
|---|---|---|
| 期間と家賃 | Term / Rent | 開始日、終了日、月額、支払期日と遅延損害金の発生日 |
| 保証金 | Security Deposit | 金額と、返還までの期限。ニューヨーク州は退去後14日以内 |
| 途中解約 | Early Termination | 条項があるか。ない場合は残期間の家賃が原則として残る |
| 又貸し | Sublet / Assignment | 家主の承諾が要るか、承諾なしで可能か |
| 修繕 | Repairs / Services | 家主の負担範囲と、入居者の負担になるもの |
| 更新 | Renewal | 通知の期限と、更新しない場合の連絡方法 |
部屋探しから契約までの全体の流れはニューヨークの賃貸ガイドに、審査の基準は保証人と保証会社の記事にまとめてあります。
2. 途中で帰任するときの条項

駐在で最も効くのがここです。ニューヨークの標準的なリースには、入居者から途中で解約できる条項が入っていません。期間の途中で出る場合、残りの期間の家賃を払う義務が原則として残ります。2年契約の1年目で帰任が決まれば、残り12か月ぶんが理屈のうえでは残ります。
実務では、家主に次の入居者を探す義務があるため、部屋が埋まった時点で支払義務は止まります。ただし埋まるまでの期間と、募集にかかる費用は入居者側の負担になることがあります。決まるまで何か月かかるかは読めません。
そこで署名前に交渉するのが、途中解約の条項を入れることです。60日または90日前の通知と、家賃1〜2か月分の違約金で出られるようにする形が一般的です。すべての家主が受けるわけではありませんが、空室が長い部屋や、募集の時期が閑散期にあたる部屋では通ることがあります。駐在で入る場合は、必ずこの交渉を試してください。
3. 修繕と又貸しの条項

修繕は、どこまでが家主の負担かを見ます。暖房、給湯、水回りの配管、建物の設備は家主の負担が原則です。一方で、電球、消耗品、入居者の過失による破損は入居者の負担になります。食洗機や洗濯機が備え付けの場合、その修理をどちらが持つかは契約書に書かれていることが多いので、そこを確認します。
又貸しの条項は、帰任と一時帰国のどちらでも効きます。ニューヨーク州の法律では、6戸以上の建物では、入居者は家主の承諾を得て又貸しできることになっており、家主は合理的な理由なく拒めません。ただし承諾を求める手続きと期限が決まっているため、契約書に書かれた手順どおりに進める必要があります。
コンドミニアムやコープの住戸を借りている場合は、家主の承諾に加えて管理組合や理事会の承認が要ることがあります。ここで止まる例が多いので、又貸しを前提にするなら、契約前に建物側の規則まで確認してください。転貸の規制については転貸規約と30日未満の禁止規制にまとめてあります。
4. 更新と退去の条項
更新は、通知の期限が決まっています。家主が更新の条件を提示する時期、入居者が更新しないと伝える時期のどちらもです。この通知を出し忘れると、月ごとの契約に自動で切り替わり、家賃が上がる条項が入っていることがあります。カレンダーに入れておいてください。
退去時は、保証金の返還が焦点になります。ニューヨーク州では、退去から14日以内に、返還するか、差し引く項目を明細で示すかのどちらかを家主が行う義務があります。差し引けるのは未払い家賃と、通常の使用を超える損傷の修理です。年数相応の摩耗は差し引けません。
実務では、入居時と退去時の両方で部屋の写真を撮っておくことが最も効きます。日付の残る形で壁、床、水回り、窓を撮り、入居前の傷は書面で家主に伝えておきます。この一手間があるかどうかで、返還される金額が変わります。
5. まとめ
読むべきは、途中解約、又貸し、修繕の負担、更新の通知期限、退去時の原状回復の5か所です。とくに駐在の方は、途中解約の条項を入れる交渉を署名前に必ず試してください。部屋探しの流れはニューヨークの賃貸ガイドに、エリア別の家賃は駐在はどこに住むかにまとめてあります。
契約書の確認と条件の交渉も、お部屋探しと合わせて承っております。着任前のご相談も受け付けています。
よくある質問
契約書は日本語に訳してもらえますか。
署名するのは英語の原本です。翻訳は参考にはなりますが、法的に効力を持つのは英文のほうです。要点を日本語で確認したうえで、英文に署名する形になります。分量が多いため、金額、期間、途中解約、又貸し、退去の5か所に絞って確認するのが現実的です。
途中で帰任が決まったらどうなりますか。
途中解約の条項がなければ、残り期間の家賃を払う義務が原則として残ります。家主には次の入居者を探す義務があるため、部屋が埋まれば支払いは止まりますが、それまでの期間は読めません。署名前に、通知期間と違約金で出られる条項を入れる交渉をしてください。
保証金はいつ返ってきますか。
ニューヨーク州では、退去から14日以内に、返還するか差し引く項目を明細で示すかのどちらかを家主が行う義務があります。差し引けるのは未払い家賃と、通常の使用を超える損傷です。年数相応の摩耗は差し引けません。
一時帰国の間、部屋を人に貸せますか。
6戸以上の建物では、家主の承諾を得て又貸しできることになっており、家主は合理的な理由なく拒めません。ただし契約書に書かれた手順で承諾を求める必要があります。コンドミニアムやコープでは、これに加えて建物側の承認が要ることがあります。
申込から入居、退去までを一通りまとめたものはニューヨークの賃貸契約ガイドにあります。個々の手続きはそこから辿れます。
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