駐在の部屋探しは、着任前に日本から始めることが多くなりました。写真と間取りを見て候補を絞り、現地の内見は着任後の数日に詰め込む。この進め方は時間の節約になりますが、実物を見ないまま連絡を取る段階で、偽物件に当たる可能性が生まれます。
偽物件は、実在する部屋の写真を使い、相場より安い家賃で借主を集め、内見前に敷金や申込料を送金させる手口が中心です。送金してしまうと取り戻すのはほぼ不可能です。この記事では、遠隔で探すときにどこを見れば本物と偽物を分けられるかを整理します。
1. 偽物件の典型的な手口

偽物件には決まった型があります。実在する募集の写真と文章をそのまま使い、家賃だけを相場の3割から5割安く書き換えて掲載します。問い合わせると「海外出張中で内見に立ち会えない」「希望者が多いので先に敷金を送った人に決める」と言われ、送金を急がされます。
もうひとつの型は、実在する貸主や管理会社の名前を名乗り、偽のメールアドレスから連絡してくるものです。会社名は本物なので検索すると実在し、安心してしまいます。見分けるにはメールのドメインが会社の公式サイトと一致しているかを確認します。
共通しているのは、内見の前に送金を求める点です。ニューヨークでは、貸主が申込の段階で受け取れる金額は法律で申込料20ドルまでと決まっています。敷金や初月家賃は契約書に署名した後に払うものです。この順番が逆になっている募集は、その時点で疑ってください。
2. 遠隔でも確認できる5つの点

日本にいても、次の5つは確認できます。ひとつでも引っかかれば、その募集には進まないでください。
| 確認する点 | 確認の方法 | 疑うべきサイン |
|---|---|---|
| 家賃の水準 | 同じエリア・同じ間取りの募集を複数見る | 相場より3割以上安い |
| 写真の出どころ | 画像を検索にかける | 別の住所や別の家賃で同じ写真が出る |
| 建物の所有者 | ニューヨーク市の不動産記録(ACRIS)で住所を検索 | 名乗っている貸主と記録の所有者が一致しない |
| 連絡先 | 管理会社の公式サイトの電話番号にかける | 公式サイトに載っていないメールアドレスや番号 |
| 内見の可否 | 現地の代理人か動画通話での内見を求める | 理由をつけて内見を断る |
ACRISはマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスの不動産の所有者と抵当権を無料で検索できます。住所を入れれば所有者の名前が出ます。個人が所有する物件で、名乗っている貸主の名前が記録と違えば、その人に貸す権利がない可能性があります。法人名義の場合は、その法人の管理会社を検索して直接連絡します。
相場の見方はニューヨークの家賃相場ガイドにまとめています。内見で見るべき点は内見チェックリストをご覧ください。
3. 送金してよいタイミング

ニューヨークの賃貸で、お金を払う順番は法律と慣習で決まっています。この順番を知っていれば、いつ払うべきでないかが分かります。
最初に払うのは申込料で、上限は20ドルです。信用調査の実費として貸主が受け取ります。次に、審査が通り契約書の内容に合意した段階で、契約書に署名します。敷金(家賃1か月分が上限)と初月の家賃は、署名と同時か署名の直後に払います。署名した契約書を受け取る前に、敷金や家賃を送ることはありません。
支払いの手段も見分けの材料になります。正規の貸主や管理会社は、小切手、銀行振込、または管理会社の決済システムで受け取ります。個人間送金アプリ、ギフトカード、暗号資産での支払いを求められたら、その時点で止めてください。支払い手段の詳しい話は家賃の支払い方法に書いています。
保証人や保証会社が必要な場合も、保証会社への支払いは契約が決まってからです。契約前に保証会社の費用だけ先に求められる例があります。保証の仕組みは保証人と保証会社のガイドをご覧ください。
4. 遠隔で安全に探す手順
着任前に日本から探すときは、次の順番で進めると偽物件を避けられます。
まず、候補を集める段階では、管理会社が直接掲載している募集か、実在するエージェントが扱う募集に絞ります。個人が掲示板に出している募集は、遠隔では確認が難しいため候補から外します。次に、問い合わせは公式サイトに載っている連絡先から行います。募集ページのメールアドレスに直接返信しません。
そのうえで、現地の代理人に内見を頼みます。会社の先任者、現地のエージェント、知人のいずれかが実際に部屋に入り、募集の写真と一致するかを確認します。動画通話での内見も有効ですが、その動画が本当にその住所で撮られているかは、代理人でなければ確認できません。
最後に、契約書を受け取り、内容を確認してから署名し、署名後に敷金と初月家賃を払います。必要書類は賃貸申込の必要書類に、着任までの全体の流れは駐在の部屋探しの時間軸にまとめています。
5. まとめ
偽物件の手口は、相場より安い家賃で集め、内見前に送金させる、という2点に集約されます。逆に言えば、相場を知り、送金の順番を守れば避けられます。遠隔でも、家賃の水準、写真の出どころ、ACRISでの所有者、公式の連絡先、内見の可否の5つは確認できます。
お金を払う順番は、申込料20ドル、署名、敷金と初月家賃の順です。署名前に敷金を求める募集、個人間送金やギフトカードを指定する募集には進まないでください。遠隔で探す場合は、管理会社かエージェントが扱う募集に絞り、現地の代理人に内見を頼む。この2つで大半の偽物件は排除できます。賃貸全体の流れはニューヨークの賃貸ガイドをご覧ください。
日本からの部屋探しは、現地で内見を代行し、契約書の確認と支払いの順番まで含めてご案内しています。着任前からご相談ください。
よくある質問
内見の前に敷金を送るよう言われました。正規の募集でもありますか。
ありません。ニューヨークでは申込の段階で貸主が受け取れるのは申込料20ドルまでで、敷金と初月家賃は契約書に署名した後に払います。署名前に敷金を求める募集は、その時点で候補から外してください。
貸主が本物かどうかを日本から確認する方法はありますか。
ニューヨーク市財務局の不動産記録ACRISで住所を検索すると、所有者の名前が無料で分かります。個人所有なら名乗っている貸主と一致するか、法人所有ならその法人の管理会社を検索して公式の連絡先から確認します。
動画通話での内見だけで契約しても大丈夫ですか。
動画がその住所で撮られているかは動画だけでは確認できません。会社の先任者や現地のエージェントなど、実際に部屋に入れる代理人に確認を頼んでください。代理人が立てられない場合は、着任後に内見してから契約する時間軸に組み直すことをお勧めします。
すでに送金してしまった場合はどうすればよいですか。
送金した銀行やサービスにすぐ連絡し、取消や返金の手続きを確認してください。あわせてニューヨーク市の消費者保護局や連邦取引委員会に届け出ます。掲載していたサイトにも通報し、同じ募集で他の人が被害に遭うのを防ぎます。
申込から入居、退去までを一通りまとめたものはニューヨークの賃貸契約ガイドにあります。個々の手続きはそこから辿れます。
RENTALニューヨークで部屋を借りる。駐在の実務(16件)
探す前に決めること
- いつ動き出すか — 着任日から逆算した部屋探しの順番
- 家賃の相場 — エリア別の実額と建物の種類
- 家賃はいくらか — 審査の年収40倍という壁
- No Fee物件とは — 仲介手数料の仕組みと使いどころ
- 家具付きと家具レンタル — 着任直後をどう乗り切るか
- ペットと住む — 建物の規則と渡航時の手続き
申し込みと契約
- 申込に要る書類 — 渡米前に日本で用意しておくもの
- 保証人と保証会社 — 収入40倍に届かないとき
- 内見で見るところ — 1日で回って部屋を決める
- 偽物件の見分け方(この記事)
- 初期費用の払い方 — 米国の口座がない状態から
- 賃貸契約の読み方 — 条項ごとの意味と交渉できる点
入居してから、出るまで
- 入居後の手続き — 電気、ネット、保険、搬入の予約
- 更新通知のルール — 30日・60日・90日の期限と家賃交渉
- 退去と保証金 — 返してもらうための手順と14日ルール
- 又貸しと転貸 — 建物の規則と法律の線引き
エリアの全体像と購入の実務
本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。

















