ロングアイランドの住宅地の多くは、20世紀半ばに農地が切り売りされて生まれました。その中で、ガーデンシティ(Garden City)だけは成り立ちが違います。
この街は1869年、一人の実業家が土地をまとめて買い上げ、街路、上下水道、鉄道駅、教会、ホテルまでを一体で設計して造った計画都市です。
150年以上を経た現在も、広い街路、揃った街路樹、区画の整然とした配置がそのまま残っています。ナッソー郡を車で走ると、この街に入った瞬間に景観が変わることが分かります。
本日はガーデンシティの街と不動産事情を見ていきましょう。
1. 一人の実業家が設計した街

ガーデンシティはナッソー郡のほぼ中央、ヘムステッド・タウンの中に独立したビレッジとして位置します。
街の創始者は、19世紀ニューヨークで百貨店業を成功させたアレクサンダー・ターニー・スチュワートです。1869年、彼はヘムステッド平原の約7,000エーカーを取得し、理想の住宅都市の建設に着手しました。
特徴的だったのは、当初すべての住宅が賃貸として運営されたことです。スチュワートは土地を売らず、建物を貸すという方式を採りました。分譲が始まったのは彼の没後です。
この経緯により、街全体の設計思想が分断されずに実現されました。
街のランドマークは1885年に完成した受肉大聖堂(Cathedral of the Incarnation)です。スチュワートの妻が夫の霊廟として建設したもので、尖塔は現在も街のどこからでも見えます。
もう一つの象徴がガーデンシティ・ホテルです。初代は1874年に開業し、その後の建物はスタンフォード・ホワイトが設計しました。現在の建物は1983年の再建ですが、街の社交の中心という位置づけは変わっていません。
航空史においても、この街は重要な場所です。1927年にチャールズ・リンドバーグが大西洋横断飛行に飛び立ったルーズベルト飛行場は、現在のルーズベルトフィールド・モールの敷地にありました。
2. 4つの地区と物件のタイプ

ガーデンシティは、歴史的に4つの区域(セクション)に分けて開発されました。
①セントラルセクション。7番街の商店街と大聖堂を含む中心区域です。歩いて生活できる範囲が広く、駅にも近い区域です。
②エステーツセクション。20世紀初頭に開発された大型住宅の区域で、敷地が広く価格帯も上位です。
③ウエストセクション。比較的コンパクトな戸建てが中心で、価格は相対的に抑えられます。
④イースタンセクション。戦後開発の区域で、区画が整然と並びます。
住宅の様式は、コロニアル、チューダー、コテージが中心です。マンションと呼べる規模の集合住宅は限られており、街の大部分が戸建てで構成されています。
ここで実務上重要なのが、ビレッジ独自の建築規制です。ガーデンシティは景観の維持に厳格で、外壁の色、フェンス、増築、樹木の伐採に至るまで、ビレッジの審査を要する項目があります。
購入後にリフォームや増築をお考えの場合は、契約前にビレッジの条例をご確認ください。この規制があるからこそ街並みが保たれている、という関係にあります。
賃貸については、戸建ての賃貸が中心となります。3ベッドルームから4ベッドルームで月6,000〜9,000ドル程度が目安です。集合住宅の賃貸は数が限られます。
3. 価格と保有コスト

それでは、実際の相場を見ていきます。(2026年8月現在、1ドル=155円換算)
戸建ての中心価格帯は、ウエストセクションで110万〜160万ドル程度、セントラルセクションで140万〜220万ドル程度、エステーツセクションで200万〜400万ドル程度です。
固定資産税は市場価格の年2.0パーセントから2.4パーセント程度で、150万ドルの住宅であれば年間3万〜3万6,000ドル程度となります。
| 区域 | 戸建て価格帯 | 年間固定資産税の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ウエストセクション | 110万〜160万ドル | 2.2万〜3.2万ドル | 入りやすい価格帯 |
| セントラルセクション | 140万〜220万ドル | 2.8万〜4.4万ドル | 7番街と駅が徒歩圏 |
| エステーツセクション | 200万〜400万ドル | 4.0万〜8.0万ドル | 敷地が広い大型住宅 |
| 戸建て賃貸 | 月6,000〜9,000ドル | 貸主負担 | 駐在の方向け |
※上記は、2026年現在の当社が現地で把握している市場感に基づく目安であり、個別物件により大きく異なります。税額は物件ごとに実額をご確認ください。
ガーデンシティの価格を考える際に押さえておくべき点があります。この街は供給が構造的に増えません。
ビレッジの区域は確定しており、区画は1869年の設計のまま維持されています。分割による戸数増加も規制されています。
需要が高まっても供給で吸収されないため、価格は下支えされやすい構造です。ナッソー郡の税制についてはナッソー郡のガイドをご参照ください。
4. 通勤と生活環境

続いて、通勤と生活を見ていきます。
ガーデンシティの利点の一つが、ビレッジの区域内および周辺で4つのLIRR(ロングアイランド鉄道。マンハッタンのペンステーションとロングアイランドを結ぶ通勤鉄道です)駅が使えることです。
ガーデンシティ駅、ナッソー・ブルバード駅、カントリーライフプレス駅がヘムステッド支線に、メリロン・アベニュー駅が本線に位置します。
ヘムステッド支線でペンステーションまで40分から50分程度、本線のメリロン・アベニュー駅からは35分から45分程度が目安です。お住まいの区域によって最適な駅が変わります。
車では、メドウブルック・パークウェイとサザンステート・パークウェイに近く、島内および空港方面への移動が容易です。JFK国際空港まで35分前後です。
買い物と外食の中心は7番街(Seventh Street)です。個人経営の店と全国チェーンが並ぶ商店街で、徒歩で用が足りる区域が形成されています。
加えて、街の北側には全米有数の規模を持つルーズベルトフィールドがあります。主要百貨店とブランド店が一か所に揃い、日常から専門的な買い物まで完結します。
教育面では、ガーデンシティ学区が独自の学区として運営されています。加えて、街の中にアデルファイ大学のキャンパスがあり、隣接地にはナッソー・コミュニティ・カレッジも位置します。
公共施設については、ビレッジがプール、テニスコート、ゴルフコース、レクリエーション施設を運営しています。これらはビレッジ居住者向けの制度であり、利用資格は住所によって決まります。
5. 購入時の注意点

ガーデンシティで購入をご検討される際の確認事項です。
①ビレッジの建築・景観規制を事前に確認すること。増改築、外構、樹木に関する制限があります。
②固定資産税は購入後に評価替えが行われる場合があるため、現所有者の税額をそのまま前提にしないこと。
③築100年前後の住宅では、暖房方式、配管、電気容量、鉛塗料やアスベストの履歴を検査で確認すること。
④増改築の履歴について、ビレッジの建築許可が取得済みかを確認すること。
⑤ビレッジ運営施設の利用資格が住所によって決まるため、物件単位で確認すること。
①については、ガーデンシティはナッソー郡の中でもとくに規制が厳格な部類に入ります。日本の感覚で「自分の家だから自由に直せる」と考えていると、着工前に止まります。
リフォーム前提で古い物件を安く取得するという戦略は、この街では計画通りに進まない可能性があります。
資産価値の面では、ガーデンシティはナッソー郡の中でももっとも安定した市場の一つです。
供給が増えず、景観が制度で守られ、鉄道4駅と大型商業施設を持ち、大学が街の中にある。この組み合わせは他に代替が効きません。
短期の値上がりを狙う市場ではありませんが、長期保有で価値が崩れにくい市場です。
地元で通われている店と名所

それでは、この街で使われている場所をご紹介します。
ウォーターズーイはフランクリンアベニューのベルギー料理店です。ムール貝の鍋とベルギービールの品揃えで知られ、地域の会食に使われています。
レッドソルト・ルームはガーデンシティ・ホテル内のレストランで、料理人デイビッド・バークが手がけています。街の社交の場としての役割を引き継いでいます。
アクバルは長年営業を続けるインド料理店で、昼のビュッフェが地元で知られています。
買い物では7番街の商店街が中心です。花屋、書店、菓子店、衣料品店が並び、週末は歩く人で賑わいます。
名所としては受肉大聖堂が第一に挙がります。1885年完成のゴシック復興様式の建物で、街の象徴です。
クレイドル・オブ・アビエーション博物館は、リンドバーグの飛行を含むロングアイランドの航空史を展示する施設です。実機の展示が充実しており、お子様連れで訪れる方が多い場所です。
ロングアイランドの他のエリアはロングアイランドのエリアガイド一覧からご覧いただけます。
まとめ

ガーデンシティは、1869年の設計思想が現在まで維持されている、アメリカでも数少ない計画都市です。
広い街路、歩ける商店街、4つの鉄道駅、大型商業施設、大学。これらが一つの街に収まっている点は、ロングアイランドの他のエリアにはない特徴です。
一方で、建築規制は厳格で、固定資産税も郡内の上位水準です。街並みの価値と引き換えに一定の制約を受け入れる、という構造をご理解いただいた上でご検討ください。
当社では、ニューヨーク現地にて、物件のご紹介から購入手続き、賃貸のお住まい探しまで、NY州ライセンスを有するプロフェッショナルを通じてご支援しております。
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※当社はR New York としてのサービスとなります。物件の売買・賃貸のご案内は、NY州の不動産ライセンスに基づき行っております。
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よくある質問
ガーデンシティはどのようにして計画都市として誕生しましたか。
1869年、実業家のアレクサンダー・ターニー・スチュワートがヘムステッド平原の約7,000エーカーを取得し、街路や上下水道、鉄道駅などを一体で設計して建設しました。当初は土地を売らず建物を貸す方式で運営され、創始者の没後に分譲が始まりました。
ガーデンシティにはどのような住宅区域が4つ存在しますか。
セントラルセクション、エステーツセクション、ウエストセクション、イースタンセクションの4つがあります。セントラルセクションは商店街と大聖堂を含む中心区域で駅に近く、エステーツセクションは敷地が広い大型住宅区域です。
ガーデンシティの戸建て住宅の価格帯と固定資産税はいくらですか。
ウエストセクションで110万〜160万ドル、セントラルセクションで140万〜220万ドル、エステーツセクションで200万〜400万ドルです。固定資産税は市場価格の年2.0パーセントから2.4パーセント程度で、150万ドルの住宅なら年間3万〜3万6,000ドルです。
ガーデンシティで購入を検討する際に注意すべき点は何か。
ビレッジ独自の建築規制を事前に確認し、増改築や外構の制限に留意する必要があります。また固定資産税は購入後に評価替えされる場合があり、築100年前後の住宅では配管や鉛塗料の履歴を検査で確認することが重要です。
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