日本の方がアメリカで不動産を持とうと考えたとき、最初に候補に挙がるのはハワイです。渡航のしやすさ、日本語が通じる環境、そして何より「いつか住みたい場所」としての強さがあります。実際に、ハワイの不動産を扱う日本企業は複数あり、市場として長く成立してきました。
当社はニューヨークで不動産を扱っておりますが、ハワイを否定するつもりは全くありません。むしろ、ハワイが成立している理由を正確に理解することが、ニューヨークを検討する上でも役に立ちます。
結論を先に申し上げますと、ハワイが選ばれてきた理由は投資利回りではなく持ちたい場所であることです。そして同じ理屈は、マンハッタンにもそのまま当てはまります。本日は、両者を公開データで並べながら見ていきましょう。
1. 数字で見ると、ハワイは投資として強くない

最初に申し上げにくい数字から入ります。以下はZillowが公開する住宅価格指数と賃料指数から算出した、2026年7月時点の実数です。
| 市・州 | 価格中央値 | 表面利回り | 5年上昇率 | 10年上昇率 |
|---|---|---|---|---|
| ホノルル | 76万5,367ドル | 4.2パーセント | 8.3パーセント | 26.1パーセント |
| カイルア | 153万2,217ドル | 3.1パーセント | 22.6パーセント | 60.3パーセント |
| ニューヨーク市 | 83万2,934ドル | 6.0パーセント | 9.2パーセント | 38.2パーセント |
| ハワイ州全体 | 83万3,877ドル | 参考値 | 16.8パーセント | 53.8パーセント |
| ニューヨーク州全体 | 52万7,312ドル | 参考値 | 29.5パーセント | 80.0パーセント |
※上記はZillowのZHVIとZORIから当社が算出した目安です。将来の価格や利回りを保証するものではありません。
ホノルルの10年上昇率は26.1パーセントで、ニューヨーク市の38.2パーセントを下回ります。州全体で比べても、ハワイ州の10年53.8パーセントに対しニューヨーク州は80.0パーセントです。表面利回りもホノルル4.2パーセントに対しニューヨーク市は6.0パーセントとなっています。
価格の伸びでも利回りでも、数字の上ではニューヨークが上回っています。それでもハワイが選ばれ続けてきたのはなぜか、というのが次の論点です。
2. それでもハワイが成立している理由

答えははっきりしています。ハワイを買う方は、利回りを比べて買っていないからです。年に何度か滞在し、いずれ長く住むかもしれない場所を、資産として持っている。使用価値と資産価値を同時に買っているわけです。
この構造は非常に強く、価格が数年停滞しても売却されにくくなります。売り物が出にくいため、市場全体の下値も堅くなります。ハワイの市場が長く成立してきたのは、この持ち手の質によるところが大きいと当社は見ております。
そして重要なのは、この理屈がハワイ固有のものではないという点です。持ちたい場所であること、売り急がない持ち手が多いこと、世界中に買い手がいること。この三つが揃う市場であれば、同じ構造が成立します。
それでは次に、ニューヨークがこの三条件をどう満たすのかを見ていきます。
3. マンハッタンに同じ理屈が効く理由

マンハッタンのコンドミニアムは、ハワイとは異なる形で三条件を満たします。
①持ちたい場所であること。仕事、文化、教育のいずれの軸でも訪れる理由があり、滞在日数が読めます。②売り急がない持ち手。全米住宅最高額の取引が生まれる市場であり、価格変動で売却を迫られる層の比率が低くなっています。③世界中の買い手。実需と投資家の双方が世界各国から参加しており、ハワイの日本人比率のような偏りがありません。
加えて、ニューヨークにはハワイにない性質があります。賃貸市場が厚いという点です。ハワイの別荘は稼働させにくい一方、マンハッタンは通年で借り手がおり、6.0パーセントの表面利回りはそこから出ています。滞在しない期間を収益に変えられるかどうかが、保有コストの差になります。
なお、ハワイは州法により短期賃貸への規制が厳しく、オアフ島では30日未満の貸出が地域を限って禁止されています。ニューヨーク市も2023年の条例で住人が同居しない30日未満の貸出を原則禁止しました。どちらの市場も短期賃貸を前提にした収支は成り立ちません。この点は共通の注意点です。
4. 名義の設計はどちらでも同じだけ重い

ハワイでもニューヨークでも、非居住者が個人名義で保有した場合の課税構造は変わりません。ここを分けて考える必要はありません。
①売却時、非居住者はFIRPTAにより売買代金の15パーセントが源泉徴収されます。②相続では、非居住者の米国内財産に対する遺産税の基礎控除が6万ドルにとどまり、超過分に最高40パーセントの連邦遺産税が課されます。③日本側でも相続税が課され、外国税額控除で調整するとしても手続きは長期化します。
ハワイのコンドミニアムを1億円で個人名義のまま保有されている方は珍しくありませんが、この構造をご存じないケースが多くあります。名義を後から移すと移転自体が課税対象となるため、判断は購入前にしかできません。すでにお持ちの場合でも、次の一件をどう組むかで全体の設計は変えられます。
実務面でも、遠隔で保有する以上は管理体制の差が効いてきます。それでは、両市場で確認すべき点を挙げます。
①管理組合の財務。修繕積立が不足していれば、将来の特別徴収金という形で請求が来ます。②保険。ハワイは台風とハリケーンの補償が別建てになることがあり、近年は保険料の上昇が続いています。③空室期間の管理者。日本にいながら鍵の受け渡しから修繕の手配までを誰が担うのかを、購入前に決めておく必要があります。
以上で見て来たように、遠隔保有の負担は物件価格には表れません。年間の実質的な手取りを左右するのはこちら側であり、表面利回りだけを比べても答えは出ないというのが実務の感覚です。
まとめ

ハワイは投資として弱いという話ではありません。ハワイを買う方は投資として買っていないのであり、その前提であれば十分に合理的な選択です。日本からの距離、言葉の通じやすさ、滞在のしやすさは数字に表れない価値であり、それを買っているのだと理解すれば筋が通ります。
そのうえで、公開データを見る限り、10年の価格上昇率でも表面利回りでもニューヨークがハワイを上回っています。持ちたい場所として買うという同じ動機で選ぶのであれば、ニューヨークは検討の土俵に載るはずの選択肢です。賃貸市場が厚く、滞在しない期間を収益に変えられる点も、保有の負担を軽くします。
両方をお持ちになるという判断も現実的です。実際、ハワイをすでにお持ちの方から、次の一件としてニューヨークをご相談いただくことが増えております。詳しくは利回りで選ぶか置き場所で選ぶかを整理した記事や、ニューヨーク不動産購入ガイドもあわせてご覧ください。
名義と税務の設計は購入前にしか決められません。一般論はここまでとし、個別のご事情に応じた組み方についてはお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、税務・法務・投資に関する助言ではありません。掲載した数値は公開データに基づく目安であり、将来の価格や利回りを保証するものではありません。具体的な判断は税理士、弁護士その他の独立した専門家にご確認ください。不動産サービスはR New Yorkとしてのサービス提供となります。
本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。


















