ソーホーの北、アスタープレイスの南。ハウストン通りとブロードウェイが交わるあたりの、わずか数ブロックの一角をノーホー(NoHo)と呼びます。
面積はマンハッタンでも最小級。それでいて、鋳鉄建築のロフト、石畳の小路、有名劇場と老舗が詰まった、密度の濃い一等地です。小ささそのものが市場の性格になっている街を、本日は見ていきましょう。
ノーホーは動画でもご紹介しています。あわせてご覧ください。
1. どのような街か。ソーホーの北の静かな兄弟

ノーホーの範囲は、おおよそハウストン通りから アスタープレイス、バワリーからマーサー通りまで。歩いて10分で一周できる広さです。
ソーホーとの違いを一言で言えば、人の流れです。ソーホーが買い物客の通りになったのに対し、ノーホーは劇場と大学と住民の街に留まりました。同じ鋳鉄建築でも、通りの使われ方が違えば、住まいとしての静けさが違います。
街並みの主役は、ソーホーと同じ19世紀の鋳鉄建築(キャストアイアン)です。大きな窓、高い天井、柱の少ない床。もとは商業と製造の建物で、これがロフト住宅に転換されてきました。歴史地区の指定により、外観と高さは保存され、新築の余地はほぼありません。
地下鉄は6系統のアスタープレイス、B・D・F・Mのブロードウェイ・ラファイエット、N・Rの8丁目。ダウンタウンの結節点として、移動の便は見かけの小ささ以上です。
2. ロフトという商品。広さの単位が違う

ノーホーの住戸は、ロフトが基準です。フロア一枚をそのまま使う住戸も珍しくなく、面積の単位が一般のコンドと一桁違うことがあります。
ロフト特有の確認点は、443グリニッチの記事で書いた枠組みと共通です。グロス表示と実際の床の差、遮音の改修履歴、エレベーターが住戸直結か共用か。住戸数の少ない建物が多いため、管理費の単価と一時金の負担は大型物件より重くなりがちです。財務諸表の読み方は管理組合の財務の読み方ガイドをご覧ください。
3. アーティスト認定という特殊規制

ノーホーとソーホーには、他の地区にない規制が残っています。一部の建物の居住が、市の認定を受けたアーティストに限られるという用途規制(Joint Live-Work Quarters for Artists)です。
1970年代、製造業の去った建物にアーティストの居住を認める制度として生まれ、その条件が今も登記上残る建物があります。運用の実態は建物ごとに幅がありますが、認定要件が付いたままの住戸は、買い手の範囲がその分狭くなります。
この規制はもともと、去っていく製造業の床と、家賃を払えない芸術家を同時に救う知恵でした。街の履歴として理解しておくと、建物ごとの条件の違い(いつ、どの制度の下で住宅化されたか)が読みやすくなります。
近年は規制の見直しが進み、条件の整理された建物も増えました。購入前に、対象建物かどうか、要件が現に適用されるのかを、弁護士を通じて必ず確認します。この確認を飛ばした購入は、出口で同じ確認を買い手から突き付けられます。
4. 価格と市場。出物の少なさが全て

ノーホーの市場の性格は、供給の少なさに尽きます。地区が小さく、建物が少なく、住戸が大きい。年間の取引件数そのものが少なく、出物が市場の全てです。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 供給 | 歴史地区で固定。年間取引は少数 |
| 価格の性質 | 個体差が大きく平均値に意味が薄い |
| 値付けの方法 | 要素分解と過去の同一住戸取引で組む |
| 買い方 | 「探す」より「待って掴む」。体制が先 |
※実際の価格は住戸ごとの成約記録でご確認ください。
賃貸に出す場合は、ロフトという商品の性質がそのまま出ます。天井高と広さに価値を感じる借り手には代替がなく、標準的な間取りを求める層には選ばれません。募集は長めに、賃料は強気に。個性の強い住戸の運用の型です。
比較対象の少ない住戸の値付けは、パックビルディングの記事で書いた唯一物の評価方法(要素の積み上げ・過去の同一住戸・賃料からの逆算)がそのまま使えます。なお、パックビルディング自体がノーホーの南端に立っています。
5. まとめ

ノーホーは、数ブロックに凝縮された供給固定の市場です。ロフトのスケールと立地の密度は代替が利かず、出物の少なさが価格の下支えであり、同時に取得の難しさでもあります。
買うための準備は3つ。名義と資金を先に固めること、アーティスト認定の確認を工程に入れること、そして唯一物の値付けを自分の数字で組めること。判断の材料は転換物件の見方ガイドと弁護士とタイトル保険ガイドにまとめています。
当社では、個人と法人、居住者と非居住者それぞれの場合分けを踏まえ、この小さな市場の出物の待ち方からご相談を承っております。
※本記事の内容は一般的な情報提供であり、法務・税務・投資に関する助言ではありません。個別の判断は、独立した専門家へのご確認を前提とします。
近隣エリアの記事もあわせてご覧ください。グリニッジビレッジ、ソーホー、ロウアーイーストサイド。
よくある質問
ノーホーはどの範囲を指しますか。
おおよそハウストン通りからアスタープレイス、バワリーからマーサー通りまでの数ブロックで、歩いて10分で一周できる広さです。19世紀の鋳鉄建築のロフトが主役で、歴史地区の指定により新築の余地はほぼありません。
アーティスト認定という規制は何ですか。
一部の建物の居住が市の認定を受けたアーティストに限られる用途規制(Joint Live-Work Quarters for Artists)です。認定要件が付いたままの住戸は買い手の範囲が狭くなるため、対象建物かどうかを弁護士を通じて必ず確認します。
ロフトの購入で確認する点は何ですか。
グロス表示と実際の床の差、遮音の改修履歴、エレベーターが住戸直結か共用かです。住戸数の少ない建物が多いため、管理費の単価と一時金の負担は大型物件より重くなりがちです。
価格はどう判断すればよいですか。
年間の取引件数そのものが少なく、個体差が大きいため平均値に意味が薄い市場です。要素の積み上げ、過去の同一住戸の取引、賃料からの逆算という唯一物の評価方法で値付けを組みます。
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