北米で不動産を持つなら、カナダはどうか。トロントとバンクーバーは、移民の流入と住宅価格の上昇で世界的に知られた市場であり、日本からのご相談でも名前が挙がります。
ただし現在のカナダには、比較の前提を変える制度があります。非居住の外国人による住宅購入を原則として禁止する連邦法です。
本日はカナダの二大都市とニューヨークを、海外から買う人の立場で比べていきましょう。
1. 外国人購入禁止法。そもそも買えるのか

カナダは2023年に、非カナダ人による住宅購入を原則禁止する連邦法を施行し、その後期限を延長しました。例外(就労・就学の一定条件、一部の物件類型や地域)はあるものの、日本に住む個人が投資や別宅としてトロントのコンドを買う、という取引は原則として対象外です。
この禁止の前から、カナダには外国人買主への追加課税の層がありました。オンタリオ州・ブリティッシュコロンビア州の非居住者投機税、バンクーバーの空き家税、連邦の未活用住宅税。外国人の保有そのものに毎年の税を重ねる設計が政策として続いています。
この禁止は商業用不動産や一部の開発用途には及ばず、また州・市によって細部の運用も異なります。例外に当たるかどうかは、現地の弁護士による個別確認が前提です。本稿では、日本に住む個人の住宅取得という典型ケースを対象に整理しています。
制度は今後も動き得ますが、方向として「海外の資金に住宅市場を開かない」という意思が明確な市場です。
2. 市場の性格。移民流入と金利感応度

市場そのものは、強い実需に支えられています。カナダは人口比で世界最大級の移民受け入れ国で、トロント・バンクーバーへの流入が住宅需要の土台です。賃貸の空室率は恒常的に低く、賃料の上昇も続いてきました。
一方で、ローンは短期固定(5年など)で更新する構造が主流のため、金利上昇が数年遅れで家計を直撃します。金利局面の変わり目では、更新時の返済増を吸収できない売りが出やすく、市場の振れはニューヨークより大きく出ます。
需給の面では、建設コストの上昇と開発の停滞で新築供給が細り、実需に対して住宅が足りない状態が続いています。この不足が価格の下支えである一方、政策が需要側(移民数や外国人購入)の調整に向かいやすい理由でもあります。
30年固定が主流の米国市場との構造差は、シドニーとの比較で述べたものと同じです。下げ局面の底堅さは、ローンの構造から生まれます。
3. 税と通貨。置き場所としての条件

仮に例外条件で取得できる場合でも、置き場所としての条件は確認が要ります。
カナダには連邦の相続税はありませんが、死亡時にみなし売却として含み益に課税される制度があり、承継の場面で税負担が生じます。非居住者の売却には源泉と申告の枠組みがあり、この点は米国のFIRPTAと似た構造です。
通貨はカナダドルで、資源価格への連動が豪ドルと似た性格を持ちます。ドル資産としての保全が目的なら、米ドルの実物であるニューヨークとは通貨の役割が異なります。
| 項目 | トロント・バンクーバー | ニューヨーク |
|---|---|---|
| 外国人の住宅購入 | 連邦法で原則禁止(延長中) | 制限なし |
| 外国人への課税 | 投機税・空き家税・未活用住宅税の層 | 属性による追加課税なし |
| ローン構造 | 短期固定の更新型 | 30年固定が主流 |
| 承継時の課税 | みなし売却で含み益課税 | 遺産税(設計で対応) |
| 通貨 | カナダドル(資源連動) | 米ドル |
※制度は変更されることがあります。最新の条件は取引時にご確認ください。
4. 規制の意思を読む。市場選びの本質

カナダとオーストラリアの規制、香港の政策変動、そしてニューヨークの無規制。並べて見えてくるのは、その市場が海外の資金をどう扱う意思を持っているかという一点です。
住宅を国内の実需のために守る政策は、その国にとって正当です。ただ、海外から資産を置く側にとっては、歓迎されていない市場に長期の資金を置くこと自体がリスクになります。規制は強化の方向に動きやすく、出口の買い手からも海外の資金が除かれていきます。
ニューヨークが外国人に開かれ続けているのは偶然ではなく、世界の資金を受け入れることがこの街の設計だからです。制度の方向性は、価格のどの数字よりも長く効きます。
5. まとめ。買える市場と、買い続けられる市場

トロント・バンクーバーは、移住や就労でカナダに渡る計画がある方にとっては、例外条件の確認から検討する価値があります。実需の強さは本物です。
日本にお住まいのまま持つなら、現行制度では選択肢そのものがほぼ閉じています。そして仮に開いても、属性への課税が層をなす市場と、属性で条件が変わらない市場という構造差は残ります。買える市場ではなく、買い続けられ、売り続けられる市場を選ぶ。これが置き場所の設計です。
世界の都市の一覧は世界主要都市の不動産比較を、ニューヨークでの実務は日本からの遠隔購入ガイドと相続と遺産税の設計ガイドをご覧ください。
当社では、個人と法人、居住者と非居住者それぞれの場合分けを踏まえ、都市の選定からご相談を承っております。
※本記事の内容は一般的な情報提供であり、法務・税務・投資に関する助言ではありません。個別の判断は、独立した専門家へのご確認を前提とします。
よくある質問
日本に住んだままトロントのコンドミニアムを買えますか。
原則買えません。カナダは2023年に非カナダ人による住宅購入を原則禁止する連邦法を施行し、期限を延長しています。就労・就学など例外条件に当たるかどうかは現地の弁護士による個別確認が前提です。
禁止法の前から外国人への課税はあったのですか。
ありました。オンタリオ州・ブリティッシュコロンビア州の非居住者投機税、バンクーバーの空き家税、連邦の未活用住宅税と、外国人の保有そのものに毎年の税を重ねる設計が政策として続いています。
カナダに相続税はありますか。
連邦の相続税はありませんが、死亡時にみなし売却として含み益に課税される制度があり、承継の場面で税負担が生じます。非居住者の売却には源泉と申告の枠組みがあり、米国のFIRPTAと似た構造です。
カナダのローンはなぜ市場の振れを大きくするのですか。
5年などの短期固定で更新する構造が主流のため、金利上昇が数年遅れで家計を直撃するからです。更新時の返済増を吸収できない売りが出やすく、30年固定が主流の米国より振れが大きく出ます。
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