
アメリカの自宅を売るとき、住んでから貸すのか、貸してから住むのかで税額が7万1,400ドル変わります。順番が違うだけで、物件も保有年数も譲渡益も同じです。理由は、賃貸に出した期間が非課税枠から除かれるかどうかが、居住より前か後かで決まるためです。
セクション121の非課税枠はいくらか
自宅を売った利益は、一定の条件を満たすと課税されません。連邦税法セクション121の規定で、非課税枠は単身で25万ドル、夫婦合算で50万ドルです。条件は、売却前の5年間のうち2年以上をその物件に住んでいたこと。連続している必要はなく、合計で2年を満たせば足ります。
この枠は2年に1回まで使えます。ただし減価償却で経費に落とした分は枠の対象外で、必ず課税されます。賃貸に出していた期間がある物件では、非課税枠と償却の戻しを分けて計算します。
順番で7万1,400ドル変わるのはなぜか
非課税枠から除かれるのは非適格使用と呼ばれる期間です。主たる住居として使っていなかった期間を指します。ここに例外があり、最後に住んだ日より後の期間は非適格使用に含まれません。この一文が金額を分けます。
数字で見ます。譲渡益50万ドル、夫婦、保有5年、うち居住2年・賃貸3年という同じ条件で、順番だけを入れ替えます。
| 順番 | 非適格使用 | 課税される譲渡益 | 税額(23.8%で計算) |
|---|---|---|---|
| 先に2年住み、後で3年貸す | なし(最後の居住日より後のため) | 0ドル | 0ドル |
| 先に3年貸し、後で2年住む | 5年のうち3年=60% | 30万ドル | 7万1,400ドル |
先に住んだ場合、賃貸の3年は最後の居住日より後にあたるため非適格使用になりません。譲渡益50万ドルは全額が非課税枠に収まります。
先に貸した場合、賃貸の3年は居住より前なので非適格使用として数えられます。保有5年のうち3年、つまり60%が非課税枠の対象外になります。譲渡益50万ドルのうち30万ドルが課税対象となり、長期譲渡所得20%と純投資所得税3.8%を合わせた23.8%で計算すると7万1,400ドルです。
いずれの場合も、減価償却で落とした分は別に最高25%で課税されます。上の金額には含まれていません。
実務ではどう順番を選ぶのか
結論は単純です。売却時に非課税枠を使うつもりなら、賃貸は居住の後に置きます。転勤や帰国で家を空ける場合、売らずに貸してから売るという順番は税務上有利に働きます。
逆に、投資として買った物件に後から住んで非課税枠を狙う進め方は、期待したほど効きません。賃貸期間が非適格使用として按分されるためです。投資用に買った物件を自宅に転用する場合、節税の効果は限定的だと見ておいてください。
気をつける点
非適格使用として数えるのは2009年1月1日以降の期間です。それ以前の賃貸期間は按分の対象になりません。長く保有している物件では、この日付が結果を変えます。
また賃貸に出した期間は、非課税枠の話とは別に、毎年の家賃収入への課税と減価償却の管理が発生します。貸すこと自体の手間と税務コストを含めて判断してください。
個人と法人、居住者と非居住者で何が変わるのか
セクション121の非課税枠は個人にしか適用されません。法人名義(LLCを含む)で保有する物件を売っても、この枠は使えません。自宅として使う予定がある物件を法人名義にすると、出口で50万ドルの非課税枠を失うことになります。
非居住者の場合、居住期間の要件を満たすこと自体が難しくなります。5年のうち2年をその物件に住む必要があるためです。要件を満たせば非居住者でも枠は使えますが、売却時にはFIRPTAによる源泉徴収が別に走ります。非課税枠が使えることと、源泉徴収されないことは別の話です。
一般論はここまでです。いつ貸し、いつ住み、いつ売るかの順番は、購入前に決めておくほど選択肢が残ります。個別のご事情に応じた設計はお問い合わせフォームよりご相談ください。実際にお手伝いした取引は取引実績に掲載しています。
相続と贈与で渡す場合の税額はアメリカ相続税の記事とアメリカの贈与税の記事に、減価償却の戻しは減価償却の記事に、法人名義の損益分岐は法人名義で買うべきかの記事にまとめています。
自宅を法人名義に移すと非課税枠を失います。移す場合の費用と判断は名義変更の記事をご覧ください。
よくある質問
自宅を売った利益はいくらまで非課税ですか。
単身で25万ドル、夫婦合算で50万ドルです。売却前の5年間のうち2年以上その物件に住んでいたことが条件で、連続している必要はありません。
賃貸に出していた期間があると非課税枠は減りますか。
居住より前に貸していた場合は減ります。保有期間に占める賃貸期間の割合だけ非課税枠の対象外になります。居住した後に貸した期間は対象外になりません。
なぜ順番で税額が変わるのですか。
最後に住んだ日より後の期間は非適格使用に含まれないという規定があるためです。先に住んでから貸せば賃貸期間は按分されず、先に貸してから住むと按分されます。
法人名義でも非課税枠は使えますか。
使えません。セクション121の非課税枠は個人にのみ適用されます。自宅として使う予定がある物件を法人名義にすると、出口で最大50万ドルの非課税枠を失います。
非居住者でも使えますか。
居住要件を満たせば使えます。ただし5年のうち2年をその物件に住む必要があり、売却時にはFIRPTAの源泉徴収が別に走ります。非課税枠が使えることと源泉徴収されないことは別です。
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