2026年10月1日 Satoshi Onodera

アメリカの不動産を相続したとき、名義はどう移るか。検認と納税証明の順番

アメリカの不動産を持っている方が亡くなると、名義はすぐには動きません。日本のように、相続人の間で遺産分割協議書を作れば法務局で移せる、という形ではないためです。不動産のある州の裁判所を通します。この手続きがプロベイト(検認)です。

 

被相続人が日本にお住まいだった場合、ニューヨークでは付随検認(ancillary probate)という形になります。生活の本拠は日本にあり、州内には不動産だけがある、という前提で開かれる手続きです。

 

そして名義の前に、税の順番があります。連邦の遺産税の手続きが済むまで、売ることも移すこともできない場面があります。順に見ていきます。

 

 

1. 遺言があるかどうかで、入口が変わる

ニューヨークの集合住宅と空

 

 

 

遺言があるとき

物件のある郡の遺産裁判所(Surrogate’s Court)に遺言を提出し、遺言執行者を選任してもらいます。裁判所が出す選任状を持って、初めて名義を動かせます。日本語の遺言書は、翻訳と現地弁護士の確認が要ります。有効かどうかの判断自体に時間がかかります。

 

 

遺言がないとき

州法の定める順位で相続人が決まり、管理人が選任されます。日本の遺産分割協議の結果がそのまま通るわけではありません。日本では配偶者と子で分けると決めていても、州法の順位が優先されます。

 

 

2. 期間と費用の目安

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手続きの間も費用は出ていく

単純な案件でも数か月、相続人が海外にいる場合は1年を超えることがあります。弁護士費用、裁判所の手数料、戸籍や証明書の翻訳費用がかかります。

 

この間、物件は空いたまま費用だけが出ていきます。管理費、固定資産税、保険、ローンの返済は止まりません。誰がその資金を出すのかを、相続が起きる前に決めておく必要があります。

 

 

3. 税の手続きが先に来る

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4つの期限を並べる

非居住者が米国内に残した資産には、連邦の遺産税がかかります。基礎控除は6万ドルです。米国の居住者に認められる1,500万ドルとは桁が違います。州にも別の制度があり、ニューヨーク州は州内の不動産について非居住者も対象にしています。

 

手続き 書式 期限
連邦の遺産税申告(非居住者) Form 706-NA 死亡から9か月
申告期限の延長 Form 4768 延長は6か月。納税の延長ではない
ニューヨーク州の遺産税申告 ET-706 死亡から9か月
日本の相続税申告 相続税申告書 死亡を知った日の翌日から10か月

 

延長できるのは申告期限だけで、納税は9か月のままです。現金がなければ、物件を売る前に納税資金を用意する必要があります。日本の相続税は10か月で、米国より1か月遅いだけです。両方が同じ時期に重なります。

 

 

4. 名義を移す前に求められる証明

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移転証明書が出るまで決済できない

非居住者の遺産では、米国の金融機関や取引の相手方から内国歳入庁が発行する移転証明書(transfer certificate)の提示を求められることがあります。遺産税の申告が処理されたことを示す書類です。

 

発行までには時間がかかります。申告を出してから数か月単位です。相続が起きてすぐ売却を決めても、この証明が出るまで決済できない場合があります。検認、申告、証明、売却という順番で、それぞれに数か月を見込んでおいてください。

 

 

5. 生前に名義を設計しておく

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選び方は相続人の居所で変わる

プロベイトを避ける方法はあります。生前にトラストへ移す、共有の形式を選ぶ、法人の持分にして株式の形で承継する、といった形です。どれも遺産税がなくなるわけではありません。名義の移転を裁判所の外で済ませるための設計です。

 

どれを選ぶかは、相続人がどこに住んでいるか、物件が何戸あるか、日本側で相続税がいくら出るかで変わります。買ったあとに組み替えると譲渡として課税される場合があるため、名義は買う段階で決めるのがいちばん安く済みます。

 

 

まとめ

 

 

3つの時計が同時に動く

アメリカの不動産は、相続が起きた瞬間から、検認と申告と証明の3つの時計が動き出します。基礎控除6万ドル、9か月、10か月という数字を先に押さえ、誰の名義で持つかを買う前に決めておく。これが相続人の手間と費用をいちばん減らします。

 

よくある質問

アメリカの不動産は遺産分割協議書で名義変更できますか。

できません。物件のある州の裁判所を通します。被相続人が日本にお住まいだった場合、ニューヨークでは付随検認という形になり、遺言があれば遺言執行者、なければ管理人を裁判所が選任します。

どのくらい時間がかかりますか。

単純な案件でも数か月、相続人が海外にいる場合は1年を超えることがあります。その間も管理費、固定資産税、保険、ローンの返済は止まりません。資金を誰が出すかを決めておく必要があります。

非居住者の遺産税の基礎控除はいくらですか。

連邦の基礎控除は6万ドルです。米国の居住者に認められる1,500万ドルとは別枠で、州にも制度があります。ニューヨーク州は州内の不動産について非居住者も対象にしています。

検認を避ける方法はありますか。

生前にトラストへ移す、共有の形式を選ぶ、法人の持分にして承継する、といった設計があります。いずれも遺産税がなくなるわけではなく、名義の移転を裁判所の外で済ませるためのものです。買ったあとに組み替えると譲渡として課税される場合があります。

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