ニューヨーク市の家賃ガイドライン委員会(Rent Guidelines Board)は2026年6月25日、家賃安定化住戸の家賃を1年契約、2年契約とも0%に据え置くことを決めました。対象は2026年10月1日から2027年9月30日までに始まる契約で、すでに適用が始まっています。マムダニ市長の声明によれば、2年契約の家賃が凍結されるのは初めてです。
家賃凍結は市長が選挙で掲げた公約で、日本でも大きく報じられました。ただ、この決定が効くのは市内のすべての賃貸ではありません。コンドミニアムを買って市場賃料で貸している方の多くは、直接の対象ではありません。一方、規制住戸を含む建物を持つ方、これから買う方には、収入の前提が変わる決定です。
本日は、家賃凍結が誰の物件に効き、誰の物件に効かないのかを、所有者の側から見ていきましょう。
1. 決まった内容。1年契約も2年契約も0%

前年の決定との比較
委員会は毎年、家賃安定化住戸の契約更新で上げてよい幅を決めます。2026年の決定はOrder 58として公表されています。以下は前年の決定と並べた表です。
| 項目 | 2025/26年度(Order 57) | 2026/27年度(Order 58) |
|---|---|---|
| 1年契約 | 3% | 0% |
| 2年契約 | 4.5% | 0% |
| 対象となる契約 | 2025/10/1〜2026/9/30の間に開始 | 2026/10/1〜2027/9/30の間に開始 |
※上記は、家賃ガイドライン委員会のOrder 57とOrder 58による上げ幅です。
2年契約を通じて2029年まで続く
見落とされやすいのは、2年契約も0%になったことで、凍結の効果が2029年まで続く住戸があることです。2027年9月に始まる2年契約なら、家賃は2029年9月まで変わりません。なお、決定は「法律で認められたその他の調整」を別枠としており、改修費を家賃に転嫁する仕組みなどはこの決定とは別に扱われます。
報道では、対象は約100万戸とされています。
2. 対象になる住戸、ならない住戸

家賃安定化の対象
家賃安定化の対象は、主に1974年より前に建った6戸以上の賃貸建物の住戸と、421-aやJ-51といった固定資産税の減税を受けた賃貸建物の住戸です。減税を受けた建物は、減税期間中は規制の対象になります。委員会のサイトには、家賃安定化住戸を含む建物の一覧が公開されています。
市場賃料の住戸と、混在する建物
反対に、市場賃料で貸している住戸は今回の決定の対象外です。減税を受けていないコンドミニアムの住戸を個人が買い、市場賃料で貸している場合は、通常はここに入ります。ただし規制の有無は建物単位ではなく住戸単位で決まり、同じ建物に規制住戸と市場賃料の住戸が混在していることがあります。賃貸から転換した建物で、以前からの入居者が規制のまま住み続けている例もあります。
確かめる方法は、州の住宅・地域再生局(DHCR)に家賃の登録があるかどうかです。買う前であれば、売主に登録の記録を出してもらうのが確実です。
3. 規制住戸を含む建物を持つ、買う人への影響

収入は止まり、費用は止まらない
規制住戸の収入は、2027年9月までに始まる契約では据え置かれ、2年契約なら2029年まで動きません。一方で、保険料、人件費、固定資産税は凍結されません。家主側はこの点を理由に、建物の維持が難しくなると反対してきました。
2019年の法改正で、空室時の上乗せや高額賃料での規制解除はすでに廃止されています。入居者が入れ替わっても、家賃を市場の水準に戻すことはできません。詳しくはニューヨークの賃料規制物件を買うとどうなるかで整理しています。
名義では変わらない
名義の観点では、家賃規制は住戸に付くもので、所有者が個人か法人か、日本に住んでいるかどうかでは変わりません。法人で買っても、非居住者が買っても、同じ制限を引き継ぎます。買う前に、規制住戸の数、登録家賃、契約の更新時期を一覧にし、収入が伸びない年数を織り込んだ価格で判断する必要があります。
決定をめぐっては、家主のグループが2026年7月に無効を求めて提訴しました。担当の判事は、年内に判断する見込みを示しています(Brownstoner、2026年9月25日)。判断が出るまで、凍結は有効なまま適用されています。
4. コンドミニアムを貸している所有者は、何を見ておくか

更新で見るのは市場の家賃
市場賃料で貸している住戸の家賃は、これまでどおり契約と市場で決まります。更新のときに確認するのは、委員会の決定ではなく、周辺の同じ広さの住戸の募集家賃と、賃貸の更新通知の期限です。
念のため確認しておきたいのは、ご自身の住戸が本当に規制の外にあるかです。建物が421-aなどの減税を受けている場合は、管理会社に住戸の扱いを書面で確認しておくと安心です。
現地からの見立て
現地で取引に関わる立場からの見立てです。家賃凍結は規制住戸の家賃を抑える決定であって、市場賃料の住戸の供給を増やすものではありません。市場賃料の住戸の家賃がこの決定で下がると考える根拠は、今のところ見当たりません。
影響がはっきり出るのは、規制住戸を多く含む建物の価格だと見ています。収入が固定され、費用が上がる建物は、買い手が価格を見直します。買う側には交渉の余地が広がる一方で、収入が伸びない前提で何年持てるかの判断が要ります。資産の置き場所としてニューヨークを選ぶ方には、コンドミニアムと規制住戸を含む建物は、別の資産として比べることをおすすめします。
まとめ

住戸ごとに確かめる
2026年の家賃凍結は、2026年10月1日から2027年9月30日までに始まる家賃安定化住戸の契約で、1年契約、2年契約とも0%とする決定です。2年契約を通じて、効果は2029年まで残ります。
コンドミニアムを市場賃料で貸している所有者の多くは直接の対象ではありませんが、規制の有無は住戸ごとに決まります。規制住戸を含む建物を持つ方、買う方は、名義にかかわらず同じ制限を引き継ぐため、収入が据え置かれる年数を前提に判断してください。
よくある質問
家賃凍結はいつからいつまでですか。
2026年10月1日から2027年9月30日までに始まる家賃安定化住戸の契約が対象です。1年契約と2年契約のどちらも0%で、2年契約ならその契約期間中は家賃が変わりません。
自分のコンドミニアムを貸しています。家賃を上げられなくなりますか。
家賃安定化の対象ではない市場賃料の住戸であれば、今回の決定の直接の対象ではありません。対象かどうかは住戸ごとに決まるため、建物が家賃ガイドライン委員会の一覧に載っているか、州の住宅・地域再生局に家賃の登録があるかを確認してください。
訴訟で凍結が取り消される可能性はありますか。
家主のグループが2026年7月に提訴しており、裁判所は年内に判断する見込みを示しています。判断が出るまで、決定は有効なまま適用されています。
所有者が法人や非居住者だと扱いは変わりますか。
変わりません。家賃規制は住戸に付くもので、所有者が個人か法人か、日本に住んでいるかどうかでは変わりません。
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