2026年11月1日 Reinvent編集チーム

ニューヨークの死亡時移転証書(TODディード)。遺言も裁判所の手続きも通さずにコンドを渡す方法

ニューヨークの不動産を持つ方が亡くなると、名義を移すために裁判所の手続き(プロベート)を通るのが普通です。日本に住む方の場合は、日本の相続の手続きと並行して、ニューヨークでも手続きを進めることになります。

 

ニューヨーク州では2024年7月19日から、死亡時移転証書(Transfer on Death Deed、TODディード)が使えるようになりました。生前に登記しておけば、亡くなったときにその不動産は指定した人へ直接移ります。

 

この記事の要点

  • 亡くなったときに不動産を指定した人へ移す証書で、遺言を通らない
  • 有効にする条件は、本人の署名、同席した証人2名の署名、公証、亡くなる前の登記
  • 生きている間はいつでも取り消せ、売却も借入れも自由。受け取る人の同意も要らない
  • 遺産税と日本の相続税は消えない。省けるのは、その不動産の名義を移す裁判所の手続き

 

本日はニューヨークの死亡時移転証書について見ていきましょう。

 

 

1. TODディードとは

ニューヨークのコンドミニアムの建物と、名義を引き継ぐ家族の住まい

 

 

不動産法第424条

ニューヨーク州の不動産法第424条は、個人が、亡くなったときに不動産を1人以上の受取人へ移す証書を作れると定めています。この移転は遺言によるものではないとされ、遺言の手続きを通りません。日本の遺言書をアメリカでどう使うかはアメリカの資産に日本の遺言書は使えるかで扱っています。

 

2024年7月19日ニューヨーク州で使えるようになった日
2名署名に同席する証人
18か月遺産の債務の請求ができる期間(亡くなった日から)

 

 

生きている間は何も変わらない

証書は所有者の権利に影響しません。売ることも、借入れの担保に入れることも自由で、受取人に知らせる必要も、同意を得る必要もありません。受取人は生前には何の権利も持たず、受取人の債権者もその不動産に手を出せません。

 

 

2. 有効にするための条件と、取り消し

ニューヨークのコンドミニアムの建物と、名義を引き継ぐ家族の住まい

 

 

4つの条件

  1. 生前の譲渡証書と同じ記載(物件の表示、所有者、受取人)に加えて、亡くなったときに移る旨を書きます
  2. 本人が署名し、その場に一緒にいた証人2名が署名します
  3. 公証人の前で認証を受けます
  4. 亡くなる前に登記します。ニューヨーク市のマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスでは市財務局の登記所(シティ・レジスター)、スタテン島では郡の書記官事務所です

 

 

決まりごとの一覧

項目 内容
取り消し 証書に何と書いてあっても取り消せる。取り消しの書面、新しいTODディード、売却などの証書を、亡くなる前に公証して登記する
証書への書き込み 登記した証書に線を引くなどしても、取り消しにはならない
受取人が先に亡くなった その人の分は失われ、ほかの受取人がいれば持分に応じて移る
共有の場合 生存者が引き継ぐ形の共有では、最後に残った所有者が亡くなったときに効く
書式 法律に書式の例があり、使わなくてもよい

※不動産法第424条の条文から整理しました。共有の形式による違いはアメリカの不動産を複数人で持つにあります。

 

 

日本で署名する場合

ニューヨークの登記に使える形の認証が必要です。州の不動産法第301条は国外での認証の方法を定めており、日本にいるアメリカの大使館や領事館の領事による認証もその一つです。どの形で認証を受けるかは、登記を担当する弁護士と事前に決めておきます。

 

 

3. コンドとコープで違う

ニューヨークのコンドミニアムの建物と、名義を引き継ぐ家族の住まい

 

 

コンドは不動産、コープは株式

法律が対象とするのは、ニューヨーク州にある不動産の権利です。コンドミニアムの住戸は不動産として登記されるため対象になります。コープは、建物を持つ組合の株式と、住戸の専有の賃貸借契約を持つ形で、第424条にはコープについての定めがありません。コープは組合の規約に沿って、名義を移す手続きを確かめる必要があります。違いはコンドとコープの違いにまとめています。

 

 

ローンと債務は付いたまま移る

受取人は、亡くなった時点の抵当権などが付いたままで受け取ります。遺産で払いきれない債務や、配偶者と子への法定の手当てがあるとき、遺産の代表者はTODディードで移った不動産に請求できます。その手続きは亡くなってから18か月以内に始める必要があります。

 

 

4. 税は消えない。日本の相続とのつなぎ方

ニューヨークのコンドミニアムの建物と、名義を引き継ぐ家族の住まい

 

 

アメリカの遺産税とニューヨーク州の遺産税

TODディードで移る不動産も、亡くなった人の遺産に含まれます。アメリカの市民でも居住者でもない人は、アメリカにある財産が6万ドルを超えると遺産税の申告(Form 706-NA)が要ります。詳しくは非居住者の米国遺産税は基礎控除6万ドルをご覧ください。ニューヨーク州の遺産税はニューヨーク州の遺産税で扱っています。

 

IRSは、アメリカで任命された遺言執行者や管理人が扱う財産には、遺産税が済んだことを示す納税証明(transfer certificate)が要らないとしています。裁判所の手続きを通さないTODディードでは、遺産税の申告と、済んだことを示す書類を別に用意しておく必要があります。

 

 

日本の相続税

日本の相続税は、亡くなったことで財産を取得した場合にかかります。TODディードで受け取った不動産も、日本の相続税の計算に入れる前提で準備しておくのが安全です。評価の方法はアメリカ不動産の相続税評価にあります。

 

ポイント

信託は、複数の財産をまとめて管理でき、判断能力が落ちたときの備えにもなります。TODディードは、1つの不動産について登記だけで行き先を決める方法です。両者の比較はアメリカの不動産をトラスト名義にするにあります。

 

 

まとめ

ニューヨークのコンドミニアムの建物と、名義を引き継ぐ家族の住まい

 

 

登記だけで、亡くなった後の名義の行き先を決められる

ニューヨーク州では2024年7月19日から、亡くなったときに不動産を指定した人へ移すTODディードが使えます。署名と証人2名、公証、亡くなる前の登記が条件で、生きている間はいつでも取り消せます。

 

対象はコンドミニアムのような不動産で、コープは別の手続きになります。省けるのは名義を移す裁判所の手続きで、アメリカの遺産税と日本の相続税は残ります。

 

遺言、信託、TODディード、共有のどれを選ぶかで、相続のときの進み方が変わります。一般的な整理はここまでです。ご家族と物件に合わせた判断は、個別にご相談ください。

 

よくある質問

ニューヨークのTODディードはいつから使えますか。

ニューヨーク州の不動産法第424条により、2024年7月19日から使えます。亡くなる前に、物件のある郡の登記所で登記しておく必要があります。ニューヨーク市のマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスでは市財務局の登記所が窓口です。

TODディードを作った後でも、物件を売ることはできますか。

できます。TODディードは所有者の権利に影響せず、売ることも借入れの担保に入れることも自由です。売却の証書が登記されれば、その物件は受取人に移りません。

コープの住戸にもTODディードは使えますか。

不動産法第424条が対象とするのはニューヨーク州にある不動産の権利で、コープについての定めはありません。コープは組合の株式と住戸の専有の賃貸借契約を持つ形のため、組合の規約に沿った名義の手続きを確かめる必要があります。

TODディードを使えば、アメリカの遺産税はかかりませんか。

かかります。TODディードで省けるのは、その不動産の名義を移すための裁判所の手続きです。アメリカの市民でも居住者でもない人の場合、アメリカにある財産が6万ドルを超えると遺産税の申告が必要になります。

PRACTICE取得・保有・出口の実務(139件)

買うとき

持っているあいだ

出すときと税務

市場を読む

全体の流れ

CONTACT
まずはご相談ください

名義の残し方は、遺言、信託、TODディード、共有のどれを選ぶかで、相続のときの手続きと税の進み方が変わります。税務・名義の設計段階からご相談ください。

無料で相談する

本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。