2026年10月28日 Reinvent編集チーム

アメリカの遺産税は日本の相続税から引けるか。外国税額控除の上限と、配偶者が相続するときの落とし穴

アメリカで納めた遺産税は、日本の相続税から差し引けます。相続税法第20条の2の「在外財産に対する相続税額の控除」で、いわゆる相続税の外国税額控除です。ただし控除できるのは、日本の相続税のうちアメリカの財産に対応する部分までで、超えた分は戻りません。

 

もう一つの注意点は順番です。日本の税額控除の中で、この控除は最後に当てられます。配偶者の税額軽減などで日本の税がゼロになると、アメリカで払った遺産税は日本で使えません。

 

この記事の要点

  • 控除の上限は「日本の相続税額×アメリカの財産の価額÷課税価格」です
  • アメリカの税額は、納付すべき日の電信売相場(TTS)で円に換算します
  • 日本の税額控除の中で最後に当てられるため、配偶者の軽減で税がゼロなら使えません
  • アメリカは9か月、日本は10か月。期限が近いため、両国の手続きを並べて進めます

 

本日はアメリカの遺産税を日本の相続税から差し引く仕組みと、その上限について見ていきましょう。

 

 

1. 何を、どこまで差し引けるのか

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条文の中身

相続税法第20条の2は、日本の外にある財産を相続し、その国の法令で相続税に相当する税が課されたとき、その税額を日本の相続税から差し引くと定めています。上限は、その人の相続税額に「国外の財産の価額÷課税価格に入った財産の価額」をかけた額です。

 

国税庁の相続税法基本通達は、分子の「国外の財産の価額」を、その財産にかかる債務を引いた後の額としています。分母も債務控除をした後の金額です。

 

第20条の2相続税の外国税額控除の根拠条文
TTSアメリカの税額を円にするときの相場
6番目税額控除の中で当てる順番(最後)

 

 

仮の数字で計算する

項目 例A 例B
相続人の課税価格(債務控除後) 5億円 5億円
うちアメリカの物件(ローン控除後) 2億円 2億円
相続人の相続税額(先の控除の後) 1億円 1億円
控除の上限(1億円×2億円÷5億円) 4,000万円 4,000万円
アメリカで納めた遺産税(円換算) 3,000万円 5,000万円
日本で差し引ける額 3,000万円 4,000万円(1,000万円は戻らない)

※仕組みを示すための仮の数字です。実際の税額は財産の評価と相続人の構成で変わります。

 

例Bのように、アメリカの税が上限を超えて一部が戻らないのは、相続人の日本の相続税額が小さい場合や、相続する財産のうちアメリカの物件の割合が大きい場合に起きやすくなります。誰がアメリカの物件を受け継ぐかで、控除の使い切り方が変わります。

 

 

2. 円への換算と、控除の順番

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納付すべき日の電信売相場

同じ通達は、アメリカの税額を、アメリカの法令で納付すべき日の対顧客直物電信売相場(TTS)で円に換算するとしています。送金が大きく遅れる場合を除き、日本から送金する日のTTSも使えます。財産そのものの評価は電信買相場(TTB)が原則なので、同じドルでも使う相場が違います。財産の評価の考え方はアメリカ不動産の相続税評価にまとめています。

 

 

税額控除の中で最後に当てる

通達は、相続税の税額控除を当てる順番を、贈与税額控除、配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、在外財産の控除の順としています。先の控除で税額がゼロになれば、後の控除は使われません。

 

注意

配偶者がアメリカの物件を相続し、日本では配偶者の税額軽減で相続税がゼロになると、アメリカで払った遺産税は日本で差し引けません。一方、IRSの706-NAの記入要領では、アメリカの遺産税の配偶者控除は、配偶者がアメリカ市民であるか、適格国内信託(QDOT)を使う場合に限られます。日本では軽く、アメリカでは重い組み合わせになりえます。

 

 

3. 期限が近い2つの申告

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アメリカ9か月、日本10か月

  1. アメリカでは、亡くなった日から9か月以内に706-NAを出します。Form 4768で6か月の延長を申請できます
  2. 日本では、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告をします(相続税法第27条)
  3. アメリカの税額が日本の期限までに決まらないときの扱いは、事前に税務署と確かめておきます
  4. 相続税の更正の請求は、法定申告期限から原則5年以内です(国税庁の手続案内)

 

アメリカの遺産税の基礎控除にあたる額は、非居住者では6万ドル相当です。100万ドルの物件でいくらかかるかは非居住者の米国遺産税で計算しています。名義の移し方はアメリカの不動産を相続したとき、名義はどう移るかをご覧ください。

 

 

4. 名義と住む場所で前提が変わる

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個人で持つか、法人で持つか

706-NAの記入要領は、アメリカの法律で設立された会社の株式をアメリカにある財産とし、それ以外の会社の株式はアメリカの外にある財産としています。日本の法人が物件を持ち、相続人がその株式を受け継ぐ形なら、アメリカの遺産税の対象から外れる一方、日本では株式の評価として相続税がかかります。アメリカのLLCの持分の扱いは、LLCの形と課税の選択で変わるため、個別の確認が必要です。

 

 

相続人がアメリカに住んでいる場合

相続人や亡くなった方がアメリカに住んでいると、日本の相続税がかかる財産の範囲そのものが変わります。この控除の計算に入る前に、誰がどちらの国の課税を受けるかを確かめます。

 

 

まとめ

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上限と順番を先に見る

アメリカで納めた遺産税は、相続税法第20条の2で日本の相続税から差し引けます。上限は、日本の相続税のうちアメリカの財産に対応する部分までです。

 

税額は納付すべき日のTTSで円に換算し、税額控除の中では最後に当てます。配偶者の軽減で日本の税がゼロになると、アメリカの税は使えません。

 

誰に、どの名義で、どの国の手続きで渡すかで、残る額が変わります。一般的な整理はここまでです。相続の設計は、個別にご相談ください。

 

よくある質問

アメリカで払った遺産税は日本の相続税から差し引けますか。

差し引けます。相続税法第20条の2の在外財産に対する相続税額の控除です。上限は、その人の相続税額に、アメリカの財産の価額(その財産の債務を引いた後)が課税価格に占める割合をかけた額で、超えた分は戻りません。

アメリカの税額はどの為替相場で円にしますか。

国税庁の通達では、アメリカの法令で納付すべき日の対顧客直物電信売相場(TTS)で換算します。送金が大きく遅れる場合を除き、日本から送金する日のTTSも使えます。財産そのものの評価は電信買相場(TTB)が原則です。

配偶者がアメリカの物件を相続すると何が起きますか。

日本では、税額控除の中でこの控除は最後に当てられるため、配偶者の税額軽減で相続税がゼロになると、アメリカの遺産税は差し引けません。アメリカでは、配偶者控除は配偶者がアメリカ市民か、適格国内信託(QDOT)を使う場合に限られます。

アメリカと日本の申告期限はいつですか。

アメリカの706-NAは亡くなった日から9か月以内で、Form 4768で6か月の延長を申請できます。日本の相続税の申告は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。相続税の更正の請求は、法定申告期限から原則5年以内です。

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