日本の会社の名義でアメリカの不動産を持つと、アメリカの税は個人とは別の仕組みで決まります。家賃を純額で申告すると法人税21%がかかり、さらに利益を日本に戻したとみなされる部分に支店利益税が上乗せされます。
支店利益税は、アメリカに子会社を置いて配当を受け取る場合と、税の重さをそろえるための税です。税率は30%ですが、日米租税条約で5%までに下がります。個人で持つ場合にはかかりません。
- 日本の法人が直接持つと、純額の利益に法人税21%、日本に戻した分に支店利益税がかかる
- 支店利益税は30%。日米租税条約で5%まで。上場会社など条約の条件を満たせば課されない
- 社員1人のLLCで持っても、アメリカの税務では日本の法人が直接持つのと同じ扱い
- 物件を全部売ってアメリカの事業をやめる年は、条件を満たせば支店利益税がかからない
本日は日本の法人でアメリカの不動産を持つときの支店利益税について見ていきましょう。
1. 日本の法人が直接持つと、税は2段になる

家賃は純額の申告を選ぶ
外国の法人がアメリカで受け取る家賃は、何も選ばなければ総額に30%が源泉徴収されます。内国歳入庁(IRS)のForm 1120-Fの記入要領は、外国の法人が、その年のアメリカの不動産の所得をすべて事業の所得として扱う選択ができるとしています。最初の年の1120-Fに書面を付けて選び、経費と減価償却を引いた純額に法人税がかかります。
日本に戻した分に、支店利益税
同じ記入要領によれば、内国歳入法典第884条は、外国の法人のアメリカの事業の税引後の利益のうち、アメリカの事業に再投資されなかった部分に30%の支店利益税を課します。再投資されたかどうかは、アメリカの事業の純資産の増減で測ります。課税の対象になる額を「配当相当額」と呼びます。
2. 日米租税条約で5%まで下がる

条約第10条第9項と第10項
日米租税条約の第10条第9項は、相手国に恒久的施設を持つ法人や、不動産の所得(第6条)や不動産の譲渡益(第13条第1項)について純額で課税される法人に、配当相当額への追加の税を認めています。第10項は、その税率を5%までとしています。2013年に署名された改正議定書で第9項の文言は一部変わりましたが、5%の上限は同じです。
同じ第9項は、条約の特典の条件(第22条)のうち、上場会社やその子会社に当たる条件などを満たす会社には、この税を課さないとしています。IRSも、条約の特典を受けるには特典の制限の条件を満たす必要があるとしています。
家賃の純利益10万ドルの例
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 家賃の純額の所得 | 10万ドル |
| 法人税21% | 2万1,000ドル |
| 税引後の利益(全部を日本に戻した場合) | 7万9,000ドル |
| 支店利益税30%(条約なし) | 2万3,700ドル |
| 支店利益税5%(条約) | 3,950ドル |
| 連邦の税の合計(条約あり) | 2万4,950ドル |
※税引後の利益をそのまま配当相当額とした単純な例です。実際の計算は利益の調整と純資産の増減で行います。ニューヨーク州と市の法人の税は別にかかります。
3. 子会社を置く場合、LLCで持つ場合

3つの持ち方を並べる
| 持ち方 | アメリカの法人の税 | 日本に戻すとき | 申告書 |
|---|---|---|---|
| 日本の法人が直接持つ | 21%(純額を選んだ場合) | 支店利益税(条約で5%まで) | 1120-F |
| 日本の法人が社員1人のLLCで持つ | 直接持つのと同じ | 支店利益税(同じ) | 1120-F(LLCの報告書Form 5472も要る) |
| アメリカに子会社(C-Corp)を置く | 21% | 配当に源泉。条約で10%、5%、0% | 1120 |
※配当の0%は、配当を払う会社の議決権の50%以上を6か月以上持ち、条約の特典の条件を満たす会社の場合です(条約第10条第3項。2013年の議定書で改正)。
日本側の扱い
日本の法人は、アメリカの利益も含めて日本で法人税を申告し、アメリカで納めた法人税は外国税額控除の対象になります(法人税法第69条)。アメリカのLLCは日本の税務では外国の法人として扱われ、合算課税の判定が別に要ります。詳しくはアメリカ不動産を法人名義で持つと日本の合算課税にかかるかをご覧ください。
4. 売るとき、撤退するとき

売却益は事業の所得として課税される
IRSの記入要領によれば、外国の法人がアメリカの不動産を売った利益は、アメリカで事業をしていなくても事業の所得として扱われます(内国歳入法典第897条)。買主は売却代金から源泉徴収をします。仕組みはFIRPTAの源泉徴収で扱っています。
全部やめる年は、支店利益税がかからない
IRSは、その年にアメリカの事業を完全にやめた場合、支店利益税をゼロとして扱うとしています。目安は、借入れの返済に使う分を除いてアメリカの資産を持たなくなったことです。条件として、売却代金などを3年間アメリカの事業に使わないこと、課税できる期間を延ばすForm 8848を申告書に付けることが求められます。
売った代金で次のアメリカの物件を買う予定なら、完全な撤退にはなりません。売却と次の購入の順番が、支店利益税の結果を変えます。申告の期限は、アメリカに事務所のない外国の法人で事業年度の終わりから6か月目の15日です。期限から18か月を過ぎると、経費を差し引けなくなります。
支店利益税は法人の税で、個人にはかかりません。個人で持つか法人で持つかの比べ方はニューヨークの不動産を法人名義で買うべきかにまとめています。
まとめ

法人で持つなら、戻すときの税まで数える
日本の法人がアメリカの不動産を直接持つと、純額の利益に法人税21%がかかり、日本に戻した分に支店利益税がかかります。支店利益税は30%で、日米租税条約により5%まで下がります。
社員1人のLLCを挟んでもアメリカの税務では同じ扱いで、子会社を置くと配当の源泉に置き換わります。全部売って撤退する年は、条件を満たせば支店利益税はかかりません。
どの持ち方がよいかは、毎年の税と出口の税、日本側の合算課税まで並べて決まります。一般的な整理はここまでです。会社と物件に合わせた判断は、個別にご相談ください。
よくある質問
支店利益税とは何ですか。
外国の法人がアメリカで得た税引後の利益のうち、アメリカの事業に再投資せず日本に戻したとみなされる部分にかかる税です。税率は30%で、日米租税条約により5%まで下がります。アメリカに子会社を置いて配当を受け取る場合と負担をそろえるための税です。
個人でアメリカの不動産を持つ場合も支店利益税はかかりますか。
かかりません。支店利益税は外国の法人に対する税です。個人が家賃を純額で申告する場合は、1040-NRで個人の税率により課税されます。
日本の法人が社員1人のアメリカのLLCで持つとどうなりますか。
アメリカの税務では、社員1人のLLCはないものとして扱われるため、日本の法人が直接持つのと同じ扱いになり、支店利益税の対象になります。日本の税務ではLLCは外国の法人として扱われるため、日本側の合算課税の判定が別に必要です。
物件を売ってアメリカから撤退するとき、支店利益税はかかりますか。
その年にアメリカの事業を完全にやめた場合は、条件を満たせば支店利益税はかかりません。売却代金などを3年間アメリカの事業に使わないこと、Form 8848を申告書に付けることなどが条件です。売却益そのものには法人税がかかります。
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