日本に住みながらアメリカで物件を貸している方は、家賃から経費と減価償却を引いた純額で、アメリカの所得税を申告できます。ただしこの扱いには条件があり、申告書を本来の期限から16か月以内に出すことが求められます。
出し忘れが続くと経費が引けなくなり、家賃の総額に税がかかります。源泉で引かれた税の還付にも、原則3年という期限があります。
- 非居住者が経費と減価償却を引けるのは、正しい申告書を期限内に出した場合だけ(財務省規則1.874-1)
- ここでいう期限内は、延長前の申告期限から16か月以内。2025年分なら2027年10月15日まで
- 前の年の申告をしていないときは、16か月か、IRSから申告がないと通知された日の早いほう
- 源泉で引かれた税は申告期限の日に納めたとみなされ、還付は原則としてそこから3年で請求できなくなる
本日は非居住者のアメリカの申告期限と、出し忘れたときに失うものについて見ていきましょう。
1. 純額で課税される条件は、期限内の申告

何もしなければ、家賃の総額に30%
IRSのPublication 519によれば、アメリカの事業に結びつかない所得には、総額に30%(または条約の税率)がかかります。非居住者が受け取る家賃は、何も届け出なければこの扱いになり、管理会社などの支払者が源泉で引きます。
同じPublicationは、不動産からの所得をすべて事業に結びつく所得として扱う選択を認めています。選んだ年の申告書に、物件の一覧、持分、所在地、所有期間、所得などを書いた書面を付けて行い、取り消さない限り翌年以降も続きます。選ぶと、家賃から経費と減価償却を引いた純額に、累進の税率がかかります。
選んでいても、申告が遅れると経費が消える
財務省規則1.874-1は、非居住者が所得控除と税額控除を受けられるのは、正しい申告書を期限内に出した場合だけだと定めています。期限内に出さなければ、経費も減価償却も引けないまま、所得の総額に税がかかります。源泉で引かれた税を税額から差し引くことは、この制限を受けません。
年6万ドルの家賃に、管理費、固定資産税、保険、減価償却で5万ドルの経費があるとします。純額で申告すれば、税の対象は1万ドルで、そこに累進の税率がかかります。経費が引けなければ6万ドル全体が対象になり、選択をしていない場合の30%なら、税だけで1万8,000ドルです。経費が大きい物件ほど、失うものも大きくなります。
2. 16か月は、いつまでか

本来の申告期限は6月15日
Publication 519によれば、アメリカで源泉徴収のある給与を受け取っていない非居住者の申告期限は、翌年の6月15日です。給与を受け取っている場合は4月15日です。Form 4868を期限までに出すと、6月15日の方は12月15日まで、4月15日の方は10月15日まで延びます。延びるのは申告の期限で、納税の期限は延びません。
16か月は、延長前の期限から数える
16か月の起点は延長前の申告期限です。2025年分(期限は2026年6月15日)なら、経費を引くための期限は2027年10月15日です。前の年の申告をしていない場合は、16か月を過ぎる日と、IRSが申告がないことを通知した日の、早いほうになります。
| 2025年分の場合 | 日付 | 過ぎるとどうなるか |
|---|---|---|
| 本来の申告期限(給与なし) | 2026年6月15日 | 納めていない税に利息と納付の遅れの罰則がつく |
| 延長後の申告期限(Form 4868) | 2026年12月15日 | 申告の遅れの罰則がつく |
| 経費を引ける最後の日 | 2027年10月15日 | 経費と減価償却が引けなくなる |
| 源泉の還付を請求できる最後の日(延長なし) | 2029年6月15日 | 引かれた税が戻らなくなる |
※前の年に申告していない方は、IRSの通知が届いた日で経費の期限が早まることがあります。
申告が遅れると、期限までに納めていない税に対して、1か月ごとに5%、最大25%の罰則がかかります。期限から60日を過ぎると、最低でも525ドルか未納の税の全額の、少ないほうがかかります(Publication 519)。
3. 源泉の還付は、原則3年で請求できなくなる

引かれた税は、申告期限の日に納めたものとみなされる
内国歳入法6513条(b)(3)は、非居住者への支払いから源泉で引かれた税は、その年の申告期限(延長を考えない日)に納めたものとみなすと定めています。家賃から引かれた30%も、売却の代金から引かれたFIRPTAの15%も、この扱いです。
戻るのは、申告からさかのぼって3年以内に納めた分
同じ法律の6511条は、還付の額を、請求した日からさかのぼって3年(延長があればその期間を足す)の間に納めた税に限っています。遅れて出す申告書は、そのまま還付の請求になります。延長をしていない2025年分の源泉を取り戻すには、2029年6月15日までに申告書を出す必要があります。
売却した年は特に気をつけます。売却代金から引かれた15%は、1040-NRで税額を確定させて初めて戻ります。手続きはFIRPTAの源泉徴収と非居住者のキャピタルゲイン税と1040NRの申告にまとめています。申告には税務上の番号が要り、持っていない方はITINの取得から始めます。
4. 間に合わなかったとき、日本の申告との関係

誠実に動いていた場合の救済
規則1.874-1は、合理的に、かつ誠実に行動していたことを示せれば、16か月の期限を免除できるとしています。IRSは、IRSが見つける前に自分から申し出たか、保護的申告を知っていたか、以前に申告したことがあるか、申告の義務を知り得なかったか、などを見ます。知っていて出さなかった場合は認められません。
事業に結びつく所得があるか分からない年は、保護的申告として1040-NRを期限内に出しておく方法があります。Publication 519は、所得を書かず理由だけを書いて出せば、後で事業に結びつく所得とされた場合にも控除を受ける権利が守られるとしています。
日本で差し引けるのは、実際に納めたアメリカの税
日本の居住者は、アメリカの家賃も日本で申告し、アメリカで納めた税を外国税額控除で差し引きます(国税庁No.1240)。控除には国外の所得に対応する上限があるため、総額にかかった重いアメリカの税が、日本で全部引けるとは限りません。家賃の日本での申告はアメリカの賃料収入を日本でどう申告するかで扱っています。
まとめ

申告は毎年、期限から16か月の内側で
非居住者が家賃から経費と減価償却を引けるのは、正しい申告書を期限内に出した場合だけです。期限内とは延長前の申告期限から16か月以内で、2025年分なら2027年10月15日までです。前の年の申告をしていなければ、IRSの通知でさらに早まります。
源泉で引かれた税は申告期限の日に納めたものとみなされ、還付は原則3年で請求できなくなります。申告を何年か止めている方は、どの年の経費とどの年の還付がまだ間に合うかを、先に数えておくことをおすすめします。一般的な整理はここまでです。ご自身の状況に合わせた判断は、個別にご相談ください。
よくある質問
アメリカで純額で申告する選択をしていれば、申告が遅れても経費は引けますか。
引けません。選択をしていても、申告書を延長前の申告期限から16か月以内に出さなければ、経費と減価償却は引けないと財務省規則1.874-1が定めています。2025年分の期限は2027年10月15日です。前の年の申告をしていない場合は、IRSから申告がないと通知された日のほうが早ければ、その日までです。
申告期限を延長すると、16か月の期限も延びますか。
延びません。16か月は延長前の申告期限から数えます。源泉徴収のある給与を受け取っていない非居住者の2025年分は、延長前の期限が2026年6月15日なので、16か月の期限は2027年10月15日です。
何年か申告していない場合、源泉で引かれた税は戻りますか。
戻るのは、申告書を出した日からさかのぼって3年(延長した期間を足す)の間に納めたとみなされる税だけです。源泉で引かれた税はその年の申告期限の日に納めたものとみなされるため、延長をしていない2025年分は、2029年6月15日を過ぎて申告すると還付を受けられません。
16か月の期限に間に合わなかった場合、救済はありますか。
合理的に、かつ誠実に行動していたことを示せれば、期限が免除されることがあります。IRSが見つける前に自分から申し出たか、以前に申告していたか、申告の義務を知り得なかったかなどが判断されます。知っていて出さなかった場合は認められません。
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