2026年4月30日 Satoshi Onodera

アメリカ相続税の仕組みと対策|日本人が知るべき税率・控除・節税方法を徹底解説

アメリカの相続税制度は、日本とは大きく異なる複雑な仕組みとなっています。2026年5月現在、アメリカでは連邦相続税と州の相続税が併存し、税率は最高40%に達する一方で、基礎控除額は1,361万ドル(約21億700万円、2026年5月現在、1ドル=155円換算)という高額な設定になっています。アメリカに資産を保有する日本人や、アメリカ在住の日本人にとって、相続税の理解は資産承継戦略において極めて重要な要素です。本日はアメリカ相続税の複雑な制度について詳しく見ていきましょう。

 

 

 

1. アメリカ相続税制度の基本構造

1. アメリカ相続税制度の基本構造

 

 

連邦相続税の概要

アメリカの相続税制度は、連邦政府レベルと州政府レベルの二層構造で運営されています。連邦相続税は、アメリカ国税庁(IRS)により管理され、全国一律の制度として適用されます。

 

2026年現在、連邦相続税の基礎控除額は1,361万ドル(約21億700万円)に設定されており、この金額を超える相続財産に対して18%から40%の累進税率が適用されます。この基礎控除額は、Tax Cuts and Jobs Act(減税・雇用法)により2018年から大幅に引き上げられましたが、2026年末に期限切れとなる予定でした。しかし、議会での延長措置により、2026年も同水準が維持されています。

 

 

州の相続税・遺産税制度

連邦相続税とは別に、一部の州では独自の相続税または遺産税を課しています。全米州税務管理者協会によると、2026年現在、12州と首都ワシントンD.C.が独自の遺産税を、6州が相続税を課しています。

 

州の相続税は連邦よりも低い控除額で設定されることが多く、例えばニューヨーク州では675万ドル(約10億4,600万円)、ニュージャージー州では200万ドル(約3億1,000万円)が控除額となっています。

 

税制区分 管轄 基礎控除額(2026年) 最高税率
連邦相続税 全米 1,361万ドル 40%
ニューヨーク州 州レベル 675万ドル 16%
カリフォルニア州 州レベル 相続税なし

 

※上記は主要州の相続税制度の比較です。

 

 

 

2. 税率構造と課税対象資産

2. 税率構造と課税対象資産

 

 

累進税率の仕組み

アメリカの連邦相続税は累進課税制度を採用しており、基礎控除額を超えた部分から段階的に税率が上がります。IRS Form 706の説明書によると、2026年の税率構造は以下のようになっています。

 

①基礎控除額超過分の1万ドルまで、税率18%
②1万ドル超2万ドルまで、税率20%
③2万ドル超4万ドルまで、税率22%
④4万ドル超6万ドルまで、税率24%
⑤6万ドル超8万ドルまで、税率26%
⑥8万ドル超10万ドルまで、税率28%
⑦10万ドル超15万ドルまで、税率30%
⑧15万ドル超25万ドルまで、税率32%
⑨25万ドル超50万ドルまで、税率34%
⑩50万ドル超75万ドルまで、税率37%
⑪75万ドル超100万ドルまで、税率39%
⑫100万ドル超、税率40%

 

 

課税対象となる財産の範囲

アメリカの相続税における課税対象財産は非常に幅広く定義されています。総遺産(Gross Estate)には、被相続人が死亡時に所有していたすべての財産が含まれます。

 

現金、銀行預金、有価証券はもちろん、不動産、事業資産、生命保険金、退職金制度の給付、さらには被相続人が設立した信託の受益権なども含まれます。特に注目すべきは、アメリカ国外の資産についても、アメリカ市民権者および永住権者の場合は全世界の財産が課税対象となることです。

 

一方で、非居住外国人の場合は、アメリカ国内に所在する財産のみが課税対象となりますが、基礎控除額は6万ドル(約930万円)と大幅に減額されます。

 

 

 

3. 日本人特有の課税問題と二重課税

3. 日本人特有の課税問題と二重課税

 

 

居住ステータスによる課税の違い

日本人のアメリカ相続税における取り扱いは、被相続人の居住ステータスにより大きく異なります。IRSの非居住外国人相続税ガイダンスによると、主に以下の3つのカテゴリーに分類されます。

 

アメリカ市民権者の場合は、居住地に関係なく全世界の財産が課税対象となり、基礎控除額は1,361万ドルが適用されます。永住権者(グリーンカード保持者)も同様の扱いを受けますが、永住権を放棄した場合の特例措置があります。

 

最も注意が必要なのは非居住外国人のケースです。この場合、アメリカ国内の資産のみが課税対象となりますが、基礎控除額は6万ドルと極めて低く設定されています。つまり、アメリカに100万ドル(約1億5,500万円)の不動産を所有している日本人が亡くなった場合、94万ドル(約1億4,570万円)に対して相続税が課税される可能性があります。

 

 

日米租税協定による救済措置

このような厳しい課税を緩和するため、日米租税協定では特別な規定が設けられています。比例的基礎控除という制度により、非居住外国人でも一定の条件下で基礎控除額の増額が認められます。

 

具体的には、被相続人の総財産に占めるアメリカ資産の割合に応じて、基礎控除額を按分計算します。例えば、総財産2,000万ドルのうちアメリカ資産が1,000万ドルの場合、アメリカ資産の割合は50%となり、基礎控除額は680.5万ドル(1,361万ドル×50%)となります。

 

また、日本とアメリカで二重に相続税が課税される場合には、外国税額控除により調整が行われます。ただし、控除額の計算は複雑で、両国の税制の違いにより完全な二重課税の排除は困難なケースも多くあります。

 

 

 

4. 効果的な相続税対策と節税戦略

4. 効果的な相続税対策と節税戦略

 

 

生前贈与による節税効果

アメリカの相続税対策として最も基本的かつ効果的な手法が生前贈与です。IRS贈与税ガイドによると、2026年の年間贈与税非課税枠は1人あたり18,000ドル(約279万円)に設定されています。

 

夫婦合算では年間36,000ドル(約558万円)まで非課税で贈与可能です。10年間継続すると360万ドル(約5億5,800万円)の財産移転が可能となり、相続税の大幅な軽減効果が期待できます。

 

さらに、教育費や医療費の直接支払いについては金額制限がなく、年間贈与税非課税枠とは別枠で利用できます。孫の学費を大学に直接支払う場合などは、この制度を活用することで効率的な財産移転が可能です。

 

 

信託を活用した高度な節税戦略

より高度な節税戦略として、各種信託制度の活用があります。アメリカ法曹協会の信託・遺産法部門では、以下のような信託が推奨されています。

 

生命保険信託(Irrevocable Life Insurance Trust, ILIT)、生命保険金を相続財産から除外し、相続税の軽減を図る
慈善信託(Charitable Remainder Trust, CRT)、慈善団体への寄付により相続税控除を受けながら、生前は収益を受け取る
世代スキップ信託(Generation-Skipping Trust, GST)、子の世代をスキップして孫世代に財産を移転し、一世代分の相続税を節約

 

これらの信託制度は複雑な法的要件があり、設定には専門的な知識が必要ですが、適切に活用すれば数百万ドル単位での節税効果も期待できます。

 

 

 

不動産投資における特別な配慮

日本人に人気の高いアメリカ不動産投資においては、相続税対策として特別な配慮が必要です。不動産相続税専門サイトNoloによると、不動産の相続税評価額は市場価格ベースで算定されるため、含み損のある物件でも簿価ではなく時価で評価されます。

 

対策としては、有限責任会社(LLC)を通じた不動産保有が有効です。LLC持分の評価において、流動性の低さや経営権の制約を理由とした評価減(通常10%から35%程度)が認められる場合があり、相続税の軽減につながります。

 

 

 

まとめ

まとめ

アメリカの相続税制度は、高額な基礎控除額と累進税率により、富裕層を対象とした税制として設計されています。2026年5月現在、連邦相続税の基礎控除額は1,361万ドル(約21億700万円)と高額ですが、この水準は政治情勢により変動する可能性があります。

 

日本人にとって特に重要な点は、居住ステータスにより課税の取り扱いが大きく異なることです。非居住外国人の場合は基礎控除額が6万ドルと極めて低く、アメリカ資産を保有する際は十分な対策が必要です。

 

効果的な節税戦略としては、年間18,000ドルの贈与税非課税枠を活用した生前贈与、各種信託制度の利用、LLCを通じた不動産保有などがあります。これらの対策は長期的な視点での実施が重要であり、早期の準備開始をご推奨いたします。

 

アメリカ相続税に関する具体的な対策については、個々の資産状況や家族構成により最適な手法が異なります。お問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。