アメリカには、日本の登記簿謄本のように所有者と権利を1枚にまとめた証明書はありません。売買の証書やローンの書類が、届け出た順に積み上がって公開される仕組みです。ニューヨーク市では、マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスの書類を、市財務局のACRISで1966年以降の分まで誰でも見られます。
過去の売買価格、今の名義人、残っている住宅ローンは、ACRISで調べられます。スタテンアイランドの書類は、リッチモンド郡の書記局が扱っています。
- ニューヨーク市の4区の不動産の書類は、ACRISで1966年以降の分を誰でも見られます
- 調べるときは、区・ブロック・ロットの3つの番号(BBL)で探すのが確実です
- 証書(DEED)の金額で過去の売買価格、抵当(MTGE)でローンの有無が分かります
- 国が所有者を保証する仕組みではないため、買うときはタイトル調査とタイトル保険で確かめます
本日はニューヨークの不動産の登記の記録を、ACRISで調べる方法から見ていきましょう。
1. 日本の登記簿との違い

記録はあるが、国が所有者を判定しない
| 項目 | 日本 | ニューヨーク市 |
|---|---|---|
| 記録する所 | 法務局 | 市財務局の登記所(スタテンアイランドは郡の書記局) |
| 記録の形 | 物件ごとの登記簿に今の権利がまとまる | 証書やローンの書類が届け出の順に積み上がる |
| 所有者の確定 | 登記簿で確認する | 書類の連なりを調べて判断する(タイトル調査) |
| 見る方法 | 登記事項証明書を取る | ACRISで書類の一覧と画像を見る |
ACRISの対象と期間は市財務局の説明による。
書類が積み上がるだけなので、途中の書類に誤りや漏れがあっても、記録の上では分かりません。そのため買主は、専門の会社に書類の連なりを調べてもらい、タイトル保険をかけます。仕組みはタイトル保険の記事で見ています。
2. ACRISで調べる手順

住所から3つの番号を出し、番号で書類を探す
- ACRISの物件の検索で、住所から区・ブロック・ロット(BBL)を調べます。区は1がマンハッタン、2がブロンクス、3がブルックリン、4がクイーンズです
- BBLで書類を検索します。コンドは住戸ごとに別のロットがあるので、建物ではなく住戸のロットで探します
- 一覧で書類の種類と日付と金額を見ます。売買なら証書(DEED)が、ローンなら抵当(MTGE)が並びます
- 書類の画像を開き、当事者の名前と金額を確かめます
番号のほかに、当事者の名前や書類の種類でも探せます。売主の法人名で検索すると、同じ法人が持つほかの物件や、建物全体にかかるローンの書類が見つかることがあります。新築のコンドでは、売主の開発会社の名前で探すと、同じ建物の分譲の証書がまとめて出てきます。
BBLは、市の物件情報のポータルでも住所から調べられます。コープは建物の株式の売買なので、住戸ごとの証書は登記されません。コープの住戸は、建物の管理会社と理事会の書類で確かめます。
3. 書類の種類と、分かること

よく出てくる6つの書類
| 表示 | 書類 | 分かること |
|---|---|---|
| DEED | 証書(所有権の移転) | 売主と買主、売買の金額、日付 |
| MTGE | 抵当(住宅ローン) | 貸した金融機関と借入額 |
| SAT | 抵当の抹消 | ローンを返し終えたこと |
| AGMT | 合意書 | 既存のローンをまとめ直した記録など |
| CDEC | コンドミニアムの宣言書 | 建物がコンドになった時期と住戸の構成 |
| RPTT | 譲渡税の申告書 | 売買にかかった市と州の譲渡税 |
表示はACRISの書類の種類の略号。
金額を読むときの3つの注意
- 証書の金額が0ドルのものは、対価のない名義の移転です。市財務局の用語集は、親から子への移転などを例に挙げています。信託や自分の法人へ移したときもこの形になります
- 複数の区画をまとめて売った取引では、1件の金額が全部の区画の合計になっていることがあります。駐車場や倉庫の区画と一緒に売られた住戸も同じです
- 書類には当事者の住所も載ります。名義人に連絡を取る手がかりになりますが、今住んでいる場所とは限りません
同じ建物の住戸の売買を並べると、その建物の値段の動きが見えます。売買の前後にローンの書類が付いているかで、買主が借入をしたかどうかも分かります。
売りに出ている住戸の前回の売買価格と、抹消されていないローンを見ておくと、売主がいくらで買い、いくら借りているかの見当が付きます。値段の交渉の材料になります。交渉の進め方は価格交渉の記事で見ています。
4. 登記のほかに見られる市の記録と、名義の公開

税、建物の違反、直近の売買
- 市財務局のローリングセールスは、5区の直近12か月の売買の一覧です
- 固定資産税の請求と評価額は、財務局の請求と支払いのページから見られます
- 住居の違反と貸主の登録はHPDの検索、工事の許可と違反は建築局の記録で確かめます
| 名義 | 登記に出る名前 |
|---|---|
| 個人名義(米国に住む方、日本に住む方とも) | 買主の個人名が証書に載り、誰でも見られる |
| LLCなどの法人名義 | 証書に載るのは原則として法人の名前。署名の欄などに個人の名前が出ることがある |
書類の書き方は取引ごとに違う。
名前が公開の記録に残ることも、名義を決めるときの判断材料の1つです。法人で買うかどうかは法人名義で買うかの記事で整理しています。
まとめ

登記簿はないが、ACRISで売買とローンの記録を見られる
アメリカに日本の登記簿謄本にあたる証明書はなく、ニューヨーク市では4区の書類をACRISで1966年以降の分まで見られます。区・ブロック・ロットの番号で探し、証書で売買価格を、抵当でローンの有無を確かめます。
記録は国が所有者を保証するものではないため、買うときはタイトル調査と保険で確かめます。一般論はここまでで、気になる物件の記録の読み方はご相談ください。
よくある質問
アメリカの不動産に登記簿謄本はありますか。
日本の登記簿謄本のように、所有者と権利を1枚にまとめた証明書はありません。売買の証書やローンの書類が届け出の順に記録され、ニューヨーク市ではマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスの書類を市財務局のACRISで1966年以降の分まで見られます。
ニューヨークの物件の過去の売買価格は調べられますか。
調べられます。ACRISで物件の区・ブロック・ロットの番号を検索すると、証書(DEED)の一覧に売買の日付と金額が出ます。コンドは住戸ごとに番号があるので、住戸の番号で探します。
コープの住戸もACRISで調べられますか。
コープは建物の株式の売買なので、住戸ごとの証書は登記されません。コープの住戸の権利は、建物の管理会社と理事会の書類で確かめます。
ニューヨークで不動産を買うと名前は公開されますか。
個人名義で買うと、買主の名前が証書に載り、ACRISで誰でも見られます。LLCなどの法人名義なら、証書に載るのは原則として法人の名前ですが、署名の欄などに個人の名前が出ることがあります。
PRACTICE取得・保有・出口の実務(143件)
買うとき
- 物件の探し方 — 情報の仕組みと在庫の実際
- 日本から買う — 内見から送金までの実務
- 米国のローン — LTVとレバレッジの考え方
- アメリカの住宅ローン — 駐在・非居住者でも借りられる条件と金利
- ニューヨークシティのコンドミニアム購入 — 価格相場と手順、費用と名義の決め方
- DSCRローン — 収入証明なしで組む条件
- 法人名義で買うか — 個人所有との損益分岐
- タイトル保険 — 日本の登記制度との違い
- 不動産会社の選び方 — 確認すべき5点
- 失敗は5つに集まる — 契約前に確認できる項目
- 海外不動産のデメリット4つ — 対処できるものとできないものを分ける
- 新築と中古 — 価格・交渉・維持費で比べる
- プレコンストラクション — 竣工前に買う判断
- タウンハウス一棟 — 管理組合のない所有
- 借りるか買うか — 高金利下の損益分岐
- オファーの条件をどこまで外すか — 手付金10%を賭ける判断
- 住みながら買う — 賃貸を続ける場合との比較
- 買付前に揃える資金証明 — 海外資産をどう示すか
- 購入資金を日本から動かす — 送金の手順と証跡の残し方
- 価格を交渉する — 売主が実際に見ている条件
- 新築か中古か — 費用構造から比べる
- ペントハウスとは何か — 名称の実態と価値の見極め方
- Airbnb前提で買わない — 30日ルールの実際
- アメリカ不動産の買い方 — 手続き・費用・注意点
- アメリカで家を買うときにつまずきやすい点 — 準備の順序で結果が変わる
- 利回りか、資産の置き場所か — ニューヨークを選ぶ理由の分かれ目
- コンドとコープの違い — 審査・費用・売りやすさ
- 賃貸と購入の総費用 — 税制とリスクまで含めて比べる
- オフマーケット物件 — 情報が回る経路と紹介を受ける準備
- バイヤーエージェント — 買主側につく担当の役割
- アトーニー(弁護士) — 契約と決済で担う役割
- 購入前のデューデリジェンス — 確認すべき書類と手順
- インスペクション — 何を見て、いくらかかるか
- 価格はどう決まるか — 鑑定と成約事例の読み方
- 買うのに何ヶ月かかるか — オファーから鍵の受け取りまで
- クロージング費用 — 内訳と節約できる項目
- マンションタックスと譲渡税 — 100万ドルを超えると変わること
- エスクロー — 仕組みと流れ、日本との違い
- タイトル保険の費用 — 必要な理由と保険料の決まり方
- 新築コンドのスポンサーユニット — 仕組みと交渉
- SSNなしで組むローン — 3つの方法を比べる
- 学区と価格の関係 — コンドミニアム相場の読み方
- 一軒家の値段 — 5区の成約価格の中央値
- 中古マンションの値段 — 築年数で見る成約価格
- 郊外の一軒家 — 値段と固定資産税を郡で比べる
- 億ションは年に何件売れるか — 1億円を超える成約の数
- 駐在中に家を買うか — 帰任までの年数で変わる税金と売り方
- 2世帯・3世帯住宅の値段 — 5区の成約価格と1戸あたり
- アパート一棟の値段 — 家賃の規制で1戸あたりが半分以下に
- 現金で買われる割合 — 登記で数えた住宅ローンの有無
持っているあいだ
- 管理費は月いくらか — 区別の実額と安い建物の落とし穴
- 不動産にかける保険 — 所有形式で必要な補償が変わる
- 買った後の管理 — 海外に住みながら所有を続ける
- 管理会社の選び方 — 費用と契約前の確認事項
- テナント管理 — 賃料回収と契約更新の実務
- 収益改善の手法 — プロパティマネジメントの実際
- アメリカの固定資産税は年いくらか — 州別の実効税率と物件価格別の年額
- 減価償却で税を前倒しする — 建物比率と、個人名義・法人名義の違い
- 4年償却は使えるのか — 2020年改正後の正しい姿
- 改正後に残った節税の道 — 個人の損益通算と法人名義の分かれ目
- 土地の権利とゾーニング — 何が建てられるかの規制
- 保証人と保証会社 — 収入40倍の壁を越える
- 賃貸収入の税務 — 非居住者の源泉徴収と純額課税の選択
- 非居住者の確定申告 — オーナーの年間カレンダー
- 価格の推移 — 10年・5年・直近1年を都市別に見る
- 駐在員の確定申告 — 日米どちらに出すか、FBARの1万ドルの線
- 賃料の日本での申告 — 円換算のレート、償却の制限、外国税額控除
- 国外財産調書と財産債務調書 — 5,000万円と3億円の線
- 法人名義と日本の合算課税 — LLCは日本では外国法人。20%と27%の線
- 日本にいながら賃貸を回す — 管理会社の選び方と契約で決めること
- 家賃を払わない入居者 — 貸主にできることと、できないこと
- 買った翌年に税額が変わる — 減免の残存年数で年2万ドルの差
- 固定資産税の不服申立 — 3月1日と3月15日という期限
- 州を固定資産税で選ぶ前に — 同じ州でも郡と学区で倍変わる
- マルチファミリー投資 — 収益構造と融資、見落としやすいリスク
- 賃料規制物件を買うと — レントスタビライゼーションの実際
- リノベーション — 管理組合の承認と工事の実際
- コストセグリゲーション — 償却を前倒しする調査の中身
- 不動産プロフェッショナル(REPS) — 給与所得の課税を下げる仕組み
- IRSの税務調査 — 備えておく書類
- 売らずに積み上げる — 担保に次を買い、課税を繰り延べる
- 商業不動産への投資 — 住宅との違いと市場の特徴
- 買った後に増える税と費用 — 減税の終了、評価額、排出規制
- W-8BENとW-8ECI — 家賃の30%源泉と純額での申告
- ニューヨーク州の所得税 — 非居住者の家賃と売却益
- Form 5472 — 外国人が持つLLCの報告書と2万5,000ドルの罰金
- 1042-S — 引かれた30%を米国と日本の申告で使う
- ピエダテール税 — 日本に住む所有者のコンドは対象か
- 家賃凍結 — 貸している物件に効くのはどの住戸か
- 国外送金等調書 — 100万円を超える送金と受け取り
- 日本の法人で持つと支店利益税 — 30%と条約の5%
出すときと税務
- 売るときの流れ — 海外にいながら決済まで
- 売却の手続きと税金 — 必要書類まで
- 売却の戦略 — 市場を見て出口を決める
- 非居住者のキャピタルゲイン税 — 1040NRの申告手順
- 1031エクスチェンジ — 譲渡益を繰り延べる仕組み
- 出口の使い分け — 源泉徴収・1031・セクション121
- QOF(適格機会基金) — 譲渡益の課税を繰り延べる
- オポチュニティゾーン — 繰延制度の中身
- FIRPTAの源泉徴収 — 売却代金の15%と還付の手続き
- 贈与税はいくらから — 非居住者は生涯控除ゼロ
- アメリカの相続税 — 連邦と州、非居住者の場合分け
- 非居住者の遺産税 — 基礎控除6万ドルの壁
- 不動産をトラスト名義にする — プロベートは避けられるが遺産税は消えない
- 日本の相続税評価 — 鑑定評価、TTB換算、小規模宅地の特例
- FIRPTAと外国税額控除 — 対象は確定税額。控除の年がずれる
- 売却の為替差益 — 取得日と売却日のTTMで譲渡所得が変わる
- ニューヨーク州の遺産税 — 控除を5%超えると全部消える
- 持分を毎年贈与するか — 取得費が引き継がれるか、時価に置き換わるか
- 信託(トラスト) — 種類・税務・債権者保護
- 複数人で持つ — 共有の形式で相続の結果が変わる
- 遺言書 — 手続きと費用、税務上の注意
- FBAR・FATCA — 海外金融口座の報告義務
- 駐在員の確定申告 — 日米の税金と控除
- 日米の税制の要点 — 法人設立の前に押さえる
- 日米租税条約 — 軽減されるもの、されないもの
- 富裕層の節税の型 — 実際に使われている7つ
- 資産をどこに置くか — 富裕層の配分と、不動産が選ばれる理由
- C-Corp と LLC — 形態ごとの課税の違い
- 1031と日本の課税 — 米国で繰り延べても日本では課税される
- 相続したときの名義の移り方 — 検認と納税証明の順番
- プロベートの費用と期間 — 回避する方法
- 資産の種類で変わる相続 — 米国株・米国債・預金・不動産
- 日本の遺言書は使えるか — 現地で別に作る場合の線引き
- 名義変更でかかる費用 — 買った後に器を変える代償
- 住んでから貸すか、貸してから住むか — 順番だけで7万1,400ドル変わる
- 所得税ゼロの州で買う — 効く人と効かない人の境界線
- ドル資産の持ち方と税金 — 預金・米国債・米国株・不動産を比べる
- 遺産税は日本の相続税から引けるか — 外国税額控除の上限
- 海外に住む家族と日本の相続税 — 10年の線と納税義務者の区分
- 死亡時移転証書(TODディード) — 裁判所の手続きを通さずに名義を渡す
- 相続した不動産を売る — アメリカは時価、日本は親の買値
- 売ったら日本で確定申告 — 20.315%と39.63%の分かれ目
市場を読む
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- 建物の坪単価 — 一軒家・一棟・オフィスビルを5区で
- マンションは値下がりするか — 転売の何割が買値を下回ったか
全体の流れ
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