2026年11月4日 Reinvent編集チーム

アメリカの不動産に登記簿はあるか。ニューヨークのACRISで所有者と過去の売買価格を調べる方法

アメリカには、日本の登記簿謄本のように所有者と権利を1枚にまとめた証明書はありません。売買の証書やローンの書類が、届け出た順に積み上がって公開される仕組みです。ニューヨーク市では、マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスの書類を、市財務局のACRISで1966年以降の分まで誰でも見られます。

 

過去の売買価格、今の名義人、残っている住宅ローンは、ACRISで調べられます。スタテンアイランドの書類は、リッチモンド郡の書記局が扱っています。

 

この記事の要点

  • ニューヨーク市の4区の不動産の書類は、ACRISで1966年以降の分を誰でも見られます
  • 調べるときは、区・ブロック・ロットの3つの番号(BBL)で探すのが確実です
  • 証書(DEED)の金額で過去の売買価格、抵当(MTGE)でローンの有無が分かります
  • 国が所有者を保証する仕組みではないため、買うときはタイトル調査とタイトル保険で確かめます

 

4区ACRISで書類を見られる区(スタテンアイランドは郡の書記局)
1966年ACRISで見られる書類の始まり
3つの番号区・ブロック・ロットで物件を特定する

 

本日はニューヨークの不動産の登記の記録を、ACRISで調べる方法から見ていきましょう。

 

 

1. 日本の登記簿との違い

ニューヨークの不動産の書類と鍵

 

 

記録はあるが、国が所有者を判定しない

項目 日本 ニューヨーク市
記録する所 法務局 市財務局の登記所(スタテンアイランドは郡の書記局)
記録の形 物件ごとの登記簿に今の権利がまとまる 証書やローンの書類が届け出の順に積み上がる
所有者の確定 登記簿で確認する 書類の連なりを調べて判断する(タイトル調査)
見る方法 登記事項証明書を取る ACRISで書類の一覧と画像を見る

ACRISの対象と期間は市財務局の説明による。

 

書類が積み上がるだけなので、途中の書類に誤りや漏れがあっても、記録の上では分かりません。そのため買主は、専門の会社に書類の連なりを調べてもらい、タイトル保険をかけます。仕組みはタイトル保険の記事で見ています。

 

 

2. ACRISで調べる手順

ニューヨークの不動産の書類と鍵

 

 

住所から3つの番号を出し、番号で書類を探す

  1. ACRISの物件の検索で、住所から区・ブロック・ロット(BBL)を調べます。区は1がマンハッタン、2がブロンクス、3がブルックリン、4がクイーンズです
  2. BBLで書類を検索します。コンドは住戸ごとに別のロットがあるので、建物ではなく住戸のロットで探します
  3. 一覧で書類の種類と日付と金額を見ます。売買なら証書(DEED)が、ローンなら抵当(MTGE)が並びます
  4. 書類の画像を開き、当事者の名前と金額を確かめます

 

番号のほかに、当事者の名前や書類の種類でも探せます。売主の法人名で検索すると、同じ法人が持つほかの物件や、建物全体にかかるローンの書類が見つかることがあります。新築のコンドでは、売主の開発会社の名前で探すと、同じ建物の分譲の証書がまとめて出てきます。

 

BBLは、市の物件情報のポータルでも住所から調べられます。コープは建物の株式の売買なので、住戸ごとの証書は登記されません。コープの住戸は、建物の管理会社と理事会の書類で確かめます。

 

 

3. 書類の種類と、分かること

ニューヨークの不動産の書類と鍵

 

 

よく出てくる6つの書類

表示 書類 分かること
DEED 証書(所有権の移転) 売主と買主、売買の金額、日付
MTGE 抵当(住宅ローン) 貸した金融機関と借入額
SAT 抵当の抹消 ローンを返し終えたこと
AGMT 合意書 既存のローンをまとめ直した記録など
CDEC コンドミニアムの宣言書 建物がコンドになった時期と住戸の構成
RPTT 譲渡税の申告書 売買にかかった市と州の譲渡税

表示はACRISの書類の種類の略号。

 

 

金額を読むときの3つの注意

  • 証書の金額が0ドルのものは、対価のない名義の移転です。市財務局の用語集は、親から子への移転などを例に挙げています。信託や自分の法人へ移したときもこの形になります
  • 複数の区画をまとめて売った取引では、1件の金額が全部の区画の合計になっていることがあります。駐車場や倉庫の区画と一緒に売られた住戸も同じです
  • 書類には当事者の住所も載ります。名義人に連絡を取る手がかりになりますが、今住んでいる場所とは限りません

 

同じ建物の住戸の売買を並べると、その建物の値段の動きが見えます。売買の前後にローンの書類が付いているかで、買主が借入をしたかどうかも分かります。

 

ポイント

売りに出ている住戸の前回の売買価格と、抹消されていないローンを見ておくと、売主がいくらで買い、いくら借りているかの見当が付きます。値段の交渉の材料になります。交渉の進め方は価格交渉の記事で見ています。

 

 

4. 登記のほかに見られる市の記録と、名義の公開

ニューヨークの不動産の書類と鍵

 

 

税、建物の違反、直近の売買

 

名義 登記に出る名前
個人名義(米国に住む方、日本に住む方とも) 買主の個人名が証書に載り、誰でも見られる
LLCなどの法人名義 証書に載るのは原則として法人の名前。署名の欄などに個人の名前が出ることがある

書類の書き方は取引ごとに違う。

 

名前が公開の記録に残ることも、名義を決めるときの判断材料の1つです。法人で買うかどうかは法人名義で買うかの記事で整理しています。

 

 

まとめ

ニューヨークの不動産の書類と鍵

 

 

登記簿はないが、ACRISで売買とローンの記録を見られる

アメリカに日本の登記簿謄本にあたる証明書はなく、ニューヨーク市では4区の書類をACRISで1966年以降の分まで見られます。区・ブロック・ロットの番号で探し、証書で売買価格を、抵当でローンの有無を確かめます。

 

記録は国が所有者を保証するものではないため、買うときはタイトル調査と保険で確かめます。一般論はここまでで、気になる物件の記録の読み方はご相談ください。

 

よくある質問

アメリカの不動産に登記簿謄本はありますか。

日本の登記簿謄本のように、所有者と権利を1枚にまとめた証明書はありません。売買の証書やローンの書類が届け出の順に記録され、ニューヨーク市ではマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクスの書類を市財務局のACRISで1966年以降の分まで見られます。

ニューヨークの物件の過去の売買価格は調べられますか。

調べられます。ACRISで物件の区・ブロック・ロットの番号を検索すると、証書(DEED)の一覧に売買の日付と金額が出ます。コンドは住戸ごとに番号があるので、住戸の番号で探します。

コープの住戸もACRISで調べられますか。

コープは建物の株式の売買なので、住戸ごとの証書は登記されません。コープの住戸の権利は、建物の管理会社と理事会の書類で確かめます。

ニューヨークで不動産を買うと名前は公開されますか。

個人名義で買うと、買主の名前が証書に載り、ACRISで誰でも見られます。LLCなどの法人名義なら、証書に載るのは原則として法人の名前ですが、署名の欄などに個人の名前が出ることがあります。

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