ニューヨーク市で、主たる住居ではない高額の住宅に毎年かかる追加の税が始まりました。正式な名前は Non-Primary Residence Surcharge(非主たる住居への追加税)、いわゆるピエダテール税(別荘税)です。州の法律が2026年5月28日に施行され、2026/27年度から課税されます。
日本にお住まいで、マンハッタンのコンドミニアムを滞在用に持っている方は、この税の対象に入り得ます。コンドミニアムとコープは、市の財務局が見た市場価値が100万ドル以上なら対象で、税率は市場価値の4.0%からです。免除の申請期限は、延長を重ねて2026年10月13日とされました(通知書に別の期限が書かれている場合は、通知書の期限に従います)。期限を過ぎても、2027年3月までは税務委員会に申し立てる道が残っています。
本日は、日本に住む所有者の立場から、ピエダテール税の対象と期限、名義による違いを見ていきましょう。
1. 対象と税率。売買価格ではなく、市の評価上の市場価値で決まる

基準は財務局の市場価値
課税の対象は2種類です。1〜3世帯の戸建て住宅は市場価値500万ドル以上、コンドミニアムとコープの住戸は市場価値100万ドル以上。ここでいう市場価値は、実際の売買価格ではなく、ニューヨーク市財務局(DOF)が固定資産税の評価に使っている市場価値です。
コンドミニアムとコープの市場価値は、賃貸用の建物に見立てた収益から計算されるため、売買価格より低く出ます。財務局の案内も、コンドとコープの100万ドルは戸建ての500万ドルに相当すると説明しています。以下は財務局が示している税率をまとめた表です。
| 種類 | 財務局の市場価値 | 税率(年) |
|---|---|---|
| コンド・コープの住戸 | 100万ドル以上300万ドル未満 | 4.0% |
| コンド・コープの住戸 | 300万ドル以上500万ドル未満 | 5.25% |
| コンド・コープの住戸 | 500万ドル以上 | 6.5% |
| 1〜3世帯の戸建て | 500万ドル以上1,500万ドル未満 | 0.8% |
| 1〜3世帯の戸建て | 1,500万ドル以上2,500万ドル未満 | 1.05% |
| 1〜3世帯の戸建て | 2,500万ドル以上 | 1.3% |
※上記は、財務局の案内(2026年10月時点)による税率で、いずれも市場価値に対する年率です。
基準を超えると全額にかかる
注意したいのは、税率が基準を超えた部分だけでなく、市場価値の全額にかかることです。財務局の規則は、基準額を超えた場合は物件の価値の全体が課税の対象になると定めています。たとえば財務局の市場価値が120万ドルのコンドミニアムなら、4.0%で年4万8,000ドルです。これが通常のニューヨークの固定資産税に上乗せされます。
自分の住戸の市場価値は、毎年1月中旬に届く評価通知(Notice of Property Value)か、財務局の評価のページで確認できます。
2. 日本に住む所有者は対象になるか。免除される5つの場合

免除の基準は「誰が住んでいるか」
財務局の案内では、その住戸が次のいずれかの人の主たる住居であれば、追加税はかかりません。
①所有者本人
②賃借人または転借人
③所有する法人(LLC、株式会社、パートナーシップ)の持分の過半を合わせて持つ個人
④所有者または過半持分者の近親者(範囲は法律で限定されています)
⑤信託の唯一の受益者
このため、日本に住み、年に数週間だけ滞在する使い方は、どれにも当たりません。空けておく滞在用の住戸は、原則として課税の側に入ります。一方、ニューヨークで暮らすご家族が主たる住居として住んでいる場合や、賃借人が実際に住んでいる場合は、免除の対象になります。
主たる住居の証明に使う書類
主たる住居の証明は、直近の連邦または州の所得税申告書、あるいは州の車両局(DMV)が発行した運転免許証などの身分証が基本です。賃借人の場合はこれに加えて、賃貸借契約書と、公共料金の請求書や家賃の支払記録といった書類を出します。
3. 名義を法人や信託にすると変わるか

法人名義と信託
結論から申し上げると、名義を変えても、住んでいる人が変わらなければ課税は変わりません。法人が所有している場合は、持分の過半を持つ個人がそこを主たる住居にしていれば免除、そうでなければ課税です。
財務局の規則は、何層にも重ねた法人を通して主たる住居を主張することはできないとしています。日本の法人の下に米国のLLCを置き、そのLLCが住戸を持つような形では、この免除は使えません。信託の場合は、そこを主たる住居にしている人が信託の唯一の受益者であることが条件です。
貸している場合の確認点
貸している場合にも確認点があります。規則は、賃借人として主たる住居を主張できるのは個人であって、LLCのような事業体ではないとしています。駐在員の社宅として法人が借主になっている契約は、この点を個別に確認する必要があります。また、追加税を避けることを主な目的にした賃貸借契約は認められず、事実と異なる書類を出した場合には、追加税の50%に当たる罰金が定められています。
4. 期限と訴訟の行方、そして現地からの見立て

申請の期限と請求の時期
財務局は2026年7月24日に、対象になり得る物件を載せた追加の評価リストを公表し、所有者に通知を郵送しました。報道では約1万7,000件です。免除の申請は財務局のサイトから、通知に書かれたセキュリティコードを使ってオンラインで行います。期限は8月21日から3回延長され、2026年10月13日とされました。報道では、10月6日までに約9,300件の申請があり、5,200件を超える物件が主たる住居と認められています(Brownstoner、2026年10月6日)。
追加税は、2027年1月1日が期限の固定資産税の請求書に載ります。最初の請求は11月15日に送られる予定と報じられています。期限を過ぎた場合や免除が認められなかった場合は、税務委員会(Tax Commission)に申し立てる道が残っています。居住の判定を争うには市場価値の不服とあわせて出す必要があり、期限はコンドとコープが2027年3月1日、戸建てが3月15日です。
手続きをめぐっては、所有者側が市を訴え、2026年9月29日にスタテン島の裁判所が通知のやり直しを命じました。市は控訴し、控訴裁判所は審理の間も市が手続きを進めることを認め、11月10日までに判断を示すとしています(CRE Daily、2026年10月7日)。税そのものが州外の所有者を差別していると争う訴訟も別に起こされており、いずれも続いています。訴訟が続いていても、課税の手続きは止まっていません。
現地からの見立て
現地で取引に関わる立場からの見立てです。この税で変わったのは、高額の住戸を「空けておく」ことのコストです。選択肢は、追加税を受け入れて持ち続ける、主たる住居として住む方に貸す、売却して組み替える、の3つです。
貸す場合も、建物の規約と、ニューヨーク市の30日未満の貸し出しの禁止は変わりません。これから滞在用に買う方にとっては、候補の住戸の財務局の市場価値を、価格や管理費と同じ重さで確認することが新しい手順になりました。
まとめ

名義ではなく、住む人で決まる税
ピエダテール税は、主たる住居ではない高額の住宅に、財務局の市場価値を基準にかかる追加の税です。コンドとコープは100万ドル以上で4.0%から、しかも市場価値の全額にかかります。日本に住み、滞在用に空けている住戸は、原則として対象です。
免除の基準は名義ではなく「誰が住んでいるか」で、法人や信託を重ねても変わりません。通知が届いている方は、申請の結果と通知書の記載を確認し、免除が認められなかった場合は税務委員会への申立ての期限を押さえたうえで、貸すか、持ち続けるか、組み替えるかを、固定資産税と合わせた総額で比べることをおすすめします。持ち方の全体像はニューヨークの二拠点住宅ガイドにまとめています。
よくある質問
ピエダテール税はいくらかかりますか。
財務局の市場価値に税率を掛けます。コンドミニアムとコープの住戸は、100万ドル以上300万ドル未満で4.0%、300万ドル以上500万ドル未満で5.25%、500万ドル以上で6.5%です。1〜3世帯の戸建ては500万ドル以上で0.8%からです。基準を超えると、市場価値の全額にかかります。
日本に住んでいて、ニューヨークのコンドミニアムを年に数週間使っています。対象になりますか。
財務局の市場価値が100万ドル以上であれば、原則として対象です。免除されるのは、所有者本人、賃借人、法律で定める範囲の近親者などが、その住戸を主たる住居にしている場合です。
LLC名義で持っていれば対象外になりますか。
なりません。法人名義の場合も、持分の過半を持つ個人がそこを主たる住居にしていなければ課税されます。何層にも重ねた法人を通して主たる住居を主張することはできないと、財務局の規則は定めています。
免除の申請期限を過ぎたらどうなりますか。
追加税は2027年1月1日が期限の固定資産税の請求書に載ります。その後も、税務委員会に市場価値の不服とあわせて居住の判定を争うことができます。期限はコンドミニアムとコープが2027年3月1日、戸建てが3月15日です。
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