2026年11月3日 Reinvent編集チーム

アメリカの不動産を売ったら日本で確定申告。譲渡所得の計算と、20.315%と39.63%の分かれ目

アメリカで売却の決済を終えても、日本に住む方の手続きはそこで終わりません。日本の居住者は世界中の所得に日本の税がかかるため、アメリカの不動産の売却益も、翌年2月16日から3月15日の確定申告で譲渡所得として申告します。

 

税率を決めるのは、売った年の1月1日時点の所有期間です。5年を超えていれば20.315%、5年以下なら39.63%で、アメリカの長期と短期の線とは違います。

 

この記事の要点

  • 売却益は「売った額−(取得費+譲渡費用)」を円で計算する
  • 取得費は買値から建物の減価償却の累計を引いた額。貸していなかった期間も建物は目減りさせる
  • 1月1日で所有期間が5年を超えれば20.315%、5年以下なら39.63%
  • 損失は給与などと相殺できない。アメリカの税は外国税額控除で差し引く

 

本日はアメリカの不動産を売ったときの日本の確定申告について見ていきましょう。

 

 

1. 計算の式と、円への換算

売却を終えたニューヨークのコンドミニアムが並ぶ街並み

 

 

譲渡所得の式

国税庁の長期譲渡所得の税額の計算によれば、課税される譲渡所得は、譲渡価額から取得費と譲渡費用を引き、特別控除がある場合はそれを引いた額です。取得費は購入代金に購入時の費用と後の改良費を足した額で、建物は減価償却の分を引きます。譲渡費用は、仲介の手数料など売るために直接かかった費用です。

 

 

円換算は取引の日のレート

売った額は売った日の、取得費は買った日の為替レートで円に直します。ドルのまま持っていた期間の為替の動きも、譲渡所得に入ります。考え方はアメリカ不動産の売却で為替差益はどう課税されるかをご覧ください。

 

20.315%長期(所得税と復興特別所得税15.315%、住民税5%)
39.63%短期(所得税と復興特別所得税30.63%、住民税9%)
1月1日所有期間を判定する日(売った年)

 

 

2. 取得費は、買値から減価償却を引いた額

売却を終えたニューヨークのコンドミニアムが並ぶ街並み

 

 

貸していた建物と、貸していなかった建物

国税庁の建物の取得費の計算によれば、貸していた建物は、買ってから売るまでの毎年の減価償却費の累計を引きます。経費にしていなかった年の分も引きます。貸していなかった建物は、耐用年数の1.5倍の年数の旧定額法の率を使い、建物の取得価額の90%に率と所有年数を掛けた額を引きます。上限は取得価額の95%です。

 

例 計算 建物の取得費
鉄筋コンクリートのコンド、建物1億円、貸さずに10年 1億円×0.9×0.015×10年=1,350万円を引く 8,650万円

※貸していなかった鉄筋コンクリートの建物の率は0.015です。土地の部分は減価償却をしません。建物の割合の決め方はニューヨーク不動産の減価償却で扱っています。

 

 

国外の中古建物の特例を受けていた場合

2021年以後、国外の中古建物の減価償却で生じた不動産所得の損失のうち一定の部分は、なかったものとされます(租税特別措置法第41条の4の3)。この建物を売るときは、なかったものとされた額を、取得費から引く減価償却の累計から除きます。制度の中身はアメリカ不動産の減価償却は4年で全額計上できるのかをご覧ください。

 

 

3. 所有期間で税率が倍になる

売却を終えたニューヨークのコンドミニアムが並ぶ街並み

 

 

買った年に6を足した年から長期

国税庁の土地や建物を売ったときの説明によれば、売った年の1月1日に所有期間が5年を超えるものが長期です。買った日にかかわらず、買った年に6を足した年の売却から長期になります。

買った年 長期になる売却の年
2020年 2026年以後
2021年 2027年以後
2022年 2028年以後

 

売却益が3,000万円なら、長期で609万4,500円、短期で1,188万9,000円です。同じ物件でも、売る年が1年違うだけで579万4,500円の差になります。

 

注意

アメリカの長期は1年超、日本の長期は1月1日で5年超です。アメリカで長期の扱いでも、日本では短期の39.63%になる売却があります。決済を12月から翌年1月にずらすだけで、日本の税率が変わることがあります。

 

 

4. 損失、外国税額控除、法人の場合

売却を終えたニューヨークのコンドミニアムが並ぶ街並み

 

 

損失は他の所得と相殺できない

国税庁の案内のとおり、土地や建物の譲渡損失は、一定の居住用財産の特例を除き、給与や不動産所得など他の所得と相殺できません。同じ年の土地や建物の譲渡益とは相殺できます。

 

 

アメリカの税と、源泉の15%

アメリカで納めた売却益の税は、日本の所得税から外国税額控除で差し引けます。売却時に引かれる源泉は前払いで、控除の対象は1040-NRで確定した税額です。控除の年がずれる点はFIRPTAで引かれた15%は日本で取り戻せるかで扱っています。

 

 

法人と、日本に住んでいない方

法人の売却益は、他の利益と合わせて法人税を計算し、所有期間による税率の区分はありません。日本に住所がない方には、アメリカの不動産の売却益に日本の所得税はかかりません。どちらの国に申告するかはアメリカ駐在員の確定申告はどちらの国に出すかにまとめています。

 

 

まとめ

売却を終えたニューヨークのコンドミニアムが並ぶ街並み

 

 

日本の申告は、1月1日と円の取得費で決まる

日本に住む方がアメリカの不動産を売ると、翌年の確定申告で譲渡所得を申告します。売った額と取得費をそれぞれの日のレートで円に直し、建物は減価償却の分を引きます。

 

税率は売った年の1月1日に5年を超えるかで20.315%と39.63%に分かれ、損失は他の所得と相殺できません。アメリカで納めた税は外国税額控除で差し引きます。

 

売る時期を年の前後でずらすだけで、税が倍近く変わることがあります。一般的な整理はここまでです。物件と売却の時期に合わせた判断は、個別にご相談ください。

 

よくある質問

アメリカの不動産を売った売却益は、日本でも申告が必要ですか。

日本の居住者は、アメリカの不動産の売却益も日本で譲渡所得として申告します。申告は売った年の翌年2月16日から3月15日までです。アメリカで納めた税は外国税額控除で差し引けます。

長期と短期の判定はアメリカと同じですか。

違います。アメリカは1年超で長期ですが、日本は売った年の1月1日に所有期間が5年を超えると長期で、税率は20.315%です。5年以下なら短期で39.63%になります。

アメリカの不動産を売って損が出たら、給与と相殺できますか。

できません。土地や建物の譲渡損失は、一定の居住用財産の特例を除き、給与や不動産所得など他の所得と相殺できません。同じ年の土地や建物の譲渡益とは相殺できます。

貸していなかったコンドを売るとき、取得費はどう計算しますか。

建物は、貸していなくても年数に応じて価値を減らして計算します。耐用年数の1.5倍の年数の旧定額法の率を使い、建物の取得価額の90%に率と所有年数を掛けた額を引きます。鉄筋コンクリートの率は0.015です。

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