ザ・グリニッジ(The Greenwich by Rafael Viñoly)は、フィナンシャルディストリクトの125グリニッジ・ストリートに建つ88階建て273戸のコンドミニアムです。設計は432パーク・アベニューと同じラファエル・ヴィニオリで、高さは約278メートル、ワールドトレードセンターのすぐ南に立つダウンタウン最高層の住宅棟です。
この建物を題材にするのは、工事の中断と融資の差し押さえを経て2023年に別の名前で再出発した経緯が、新築コンドの価格がどう決まり直すのかを示す例になるためです。物件の紹介だけでなく、外国籍・非居住のまま買う場合の名義と税務の設計まで書きます。
目次
1. 建物の概要。88階建て・273戸

ザ・グリニッジは、もともと「125グリニッジ・ストリート」の名で2016年に着工し、2019年に工事が止まりました。融資の差し押さえの後、投資会社が引き取って工事を再開し、2023年にラファエル・ヴィニオリの名を冠した現在の名前で販売を再開しています。細身のガラスの塔で、角の丸い四角形の平面は432パーク・アベニューと同じ設計者の手つきが分かる形です。
住戸はスタジオから3ベッドルームまで273戸で、ダウンタウンの超高層としては小さめの住戸が多い構成です。共用部は最上部の86階から88階に集められ、屋内プール、フィットネス、ラウンジ、ダイニングルームが街を見下ろす位置にあります。この「アメニティを最上階に置く」構成は、住戸の眺望を売りにする超高層では珍しく、この建物の特徴になっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 125 Greenwich Street, New York, NY 10006(フィナンシャルディストリクト) |
| 竣工 | 2023年(2016年着工、2019年中断、2021年再開) |
| 階数・戸数 | 88階建て・273戸 |
| 設計・開発 | ラファエル・ヴィニオリ(設計)、Fortress Investment Group ほか(再出発後の事業主) |
| 形態 | コンドミニアム |
| 主な施設 | 最上部3層の屋内プール、フィットネス、ラウンジ、ダイニング、24時間ドアマン |
周辺の再開発と住宅化の流れは、フィナンシャルディストリクトのエリア記事にまとめています。
2. 価格の位置づけ。再出発で組み直された値付け

再出発後の価格は、スタジオが110万ドル前後から、ワンベッドルームが150万ドルから220万ドル、2ベッドルームが260万ドルから420万ドル、3ベッドルームが450万ドルから750万ドルが目安です。平方フィートあたりでは1,800ドルから2,300ドルで、最初の分譲計画で想定されていた水準より1割から2割低く組み直されています。
比較すると、同じフィナンシャルディストリクトのワン・ウォールストリートが平方フィートあたり1,800ドルから2,400ドル、130ウィリアムが1,600ドルから2,000ドルです。ザ・グリニッジはこの2棟と同じ帯にありながら、高さと眺望では上回ります。同じ設計者の432パーク・アベニューが平方フィートあたり4,000ドル台であることを考えると、設計の系譜を半分以下の単価で持てる建物と言えます。
単価が抑えられている理由は、工事の中断という履歴と、フィナンシャルディストリクトが夜間と週末に人の流れが減るオフィス街であることです。逆に言えば、この2点を受け入れられる買い手にとっては、ダウンタウン最高層の新築を相場の帯で買える条件がそろっています。
3. 賃料と維持費の釣り合い。戸数の多さが効く建物

賃貸に出す場合、スタジオで月4,500ドルから5,500ドル、ワンベッドルームで月5,500ドルから7,500ドル、2ベッドルームで月9,000ドルから13,000ドルが目安です。金融街に通う借り手が多く、小さめの住戸は空室期間が短い傾向があります。大型住戸より小さい住戸のほうが貸しやすいのは、この建物の構成と合っています。
維持費は、コモンチャージが月1平方フィートあたり1.4ドルから1.8ドル、固定資産税が同じく1.3ドルから1.7ドル前後で、ワンベッドルームであれば合わせて月2,500ドルから3,500ドルです。273戸で最上階のプールとスタッフを分担するため、1戸あたりの負担は50戸前後の小規模コンドより軽くなります。コモンチャージの構造はコモンチャージの中身と適正水準で解説しています。
表面利回りは3%台後半から4%、維持費と空室を差し引いた手取りの利回りは2%前後です。ダウンタウンの超高層の中では賃料と維持費の釣り合いが取れているほうで、ワンベッドルームを複数戸持って貸す使い方も成り立ちます。
4. 購入の実務と名義の設計
ザ・グリニッジはコンドミニアムなので、外国籍・非居住のまま購入でき、理事会の承認面接はありません。LLCや信託の名義で買うこともできます。個人名義で賃貸に出す場合、非居住者の賃料には30%の源泉徴収がかかり、これを避けるには確定申告で純所得課税を選ぶ届出が必要です。LLC名義の考え方はLLC名義での保有と税務にまとめています。
売却時には、非居住者の売主に対して売却額の15%が源泉徴収されます(FIRPTAの源泉徴収)。また、非居住者が個人名義で米国不動産を持ったまま亡くなると、遺産税の基礎控除は6万ドルしかなく、最高40%の税率がかかります。複数戸を持つ場合は合計額で考えるため、名義の設計の重みはさらに増します。
名義の設計は、購入後に変えると譲渡税がかかるため、契約前に決めます。工事の中断を経た建物では、分譲時の申告書(オファリングプラン)の改訂履歴と、事業主の保証の範囲を確認することも欠かせません。取引の際には、住戸ごとの状況と最新の税務を、契約書と書面で確認してください。
5. まとめ
ザ・グリニッジは、432パーク・アベニューと同じ設計者による超高層を、フィナンシャルディストリクトの相場の帯で持てる建物です。小さめの住戸が多く、戸数で維持費を分担できるため、貸して持つ使い方とも相性があります。購入の全体の流れはニューヨーク不動産の購入ガイドに、日本にいながら進める手順は日本からの遠隔購入にまとめています。
売り出し状況と、非公開で動いている住戸のご案内も承っております。
よくある質問
ザ・グリニッジと125グリニッジ・ストリートは同じ建物ですか。
同じ建物です。125グリニッジ・ストリートの名で着工し、工事の中断と差し押さえを経て、2023年に「The Greenwich by Rafael Viñoly」の名で販売を再開しました。住所は変わっていません。
ザ・グリニッジの価格はどれくらいですか。
スタジオが110万ドル前後から、ワンベッドルームが150万ドルから220万ドル、2ベッドルームが260万ドルから420万ドルが目安です。平方フィートあたりでは1,800ドルから2,300ドルです。
ザ・グリニッジを外国籍のまま買えますか。
コンドミニアムなので、外国籍・非居住のまま購入でき、理事会の承認面接はありません。LLCや信託の名義でも買えます。賃料の源泉徴収や遺産税の扱いは名義で変わるため、契約前に設計します。
工事が止まった建物を買っても問題ありませんか。
再開後に完成し、入居も始まっています。ただし分譲時の申告書の改訂履歴と、事業主の保証の範囲は住戸ごとに確認が必要です。契約前に弁護士を通して書面で確認します。
所在地
125 Greenwich Street, New York, NY 10006。位置はGoogleマップでご確認いただけます。
BUILDINGS
ニューヨークの主な建物。名義と税務の観点から
ビリオネアズロウと57丁目
- セントラルパークタワー — 世界一高い住宅ビル
- One57 — ビリオネアズロウの先駆け
- 432 Park Avenue — 正方形窓の超高層
- 220 Central Park South — 全米住宅最高額の記録
- 111 West 57th — 世界で最も細い超高層
- 53 West 53rd — 近代美術館の上に住む
- Mandarin Oriental Fifth — ホテルブランドの住まい
- エセックスハウス — 公園南のアールデコ
- オズボーン — 1885年の石積み
セントラルパーク西の戦前建築
- ダコタハウス — 1884年、市内最初期の高級住宅
- サンレモ — エメリー・ロスのツインタワー
- ベレスフォード — 三本の塔と博物館の眺め
- エルドラド — 公園西の最北、貯水池の眺望
- センチュリー — 公園西で最も中心に近い
- マジェスティック — ダコタの向かい、急行駅前
- One Central Park West — コロンバスサークルの角
- 15 Central Park West — 新築で戦前の風格
パークアベニューとイーストサイド
- 740 Park Avenue — 世界で最も入りにくい住宅
- 520 Park Avenue — 戦前の格を新築で
- オリンピックタワー — 五番街の複合の先駆け
- リッツ・カールトン・レジデンス — ホテルブランドの実際
- シェリーネザーランド — ホテル機能を持つコープ
- リバーハウス — 川に正対する名門コープ
- One Sutton Place South — 借地の上に立つ建物
- サットンタワー — イーストリバー沿いの新築120戸
- 252イースト57丁目 — 分譲と賃貸が同じ塔、値下げの履歴
- ワンビーコンコート — オフィスの上に住む複合ビル
- 200イースト59 — 全戸テラス67戸、屋外面積の評価
- マンハッタンハウス — 戦後モダニズムの代表作
- ウォルドーフ・アストリア — 歴史的ホテルの住宅転用
- プラザ・レジデンス — 1907年の名門ホテル
- アマン・ニューヨーク — クラウンビルの最上位ブランド
- 400 Fifth Avenue — 商業地区に住むという選択
アッパーウエストとグラマシー
- アンソニア — ホテルから賃貸、コンドへ
- アプソープ — 1908年の中庭型、名義の自由
- ベルノード — 賃貸から分譲への転換
- 200 Amsterdam — 建築許可をめぐる訴訟
- 50 Gramercy Park North — 公園の鍵という権利
- マディソンハウス — ノマドの新築タワーと管理費
- 30イースト31 — 42戸の細身タワーの価格帯
- ワンマディソン — 築10年超の53戸と転売
- 277フィフスアベニュー — 5番街の住所は価格に乗るか
ダウンタウンとトライベッカ
- ウールワースタワー — 1913年の超高層に住む
- ワンウォールストリート — オフィス転用と減税
- ザ・グリニッジ(この記事)
- 25パークロウ — シティホール公園向きの価格差
- 77グリニッジ — 小学校を抱えた90戸の価格交渉
- ワン・ビークマン — シティホール・パーク前のフロア1戸31戸
- 56 Leonard Street — 新築分譲の取得コスト
- 111 Murray Street — 大型間取りの市場
- 130 William — 固定資産税の読み方
- 30 Park Place — ホテル併設レジデンス
- 45パークプレイス — SOM設計50戸と値引き後の価格
- 100バークレー — 1927年電話局を改装した157戸
- 101ウォーレン — フルブロック227戸の価格帯
- 200チェンバーズ — プール付き258戸の維持費
- ビークマン・レジデンス — 賃貸運用向けの間取り
- 443 Greenwich — 倉庫転用と面積表示
- 565ブルームソーホー — レンゾ・ピアノ設計の112戸
- 42クロスビー — 10戸と100万ドルの駐車場の評価
- 10サリバン — ソーホー西端の22戸と小規模コンドの注意
- 108レナード — ランドマーク改装の167戸
- グリニッチレーン — 5棟とタウンハウスの構成
- 130ウエスト12丁目 — 病院跡コンバージョンの評価
- パックビルディング — 6戸だけのペントハウス
- ザ・シューマッハ — 印刷所転用20戸の維持費
- 70ベストリー — 川沿い46戸、少数戸を持つ意味
- 160レロイ — ウエストビレッジ川沿い57戸の値付け
- 150チャールズ — 低層91戸と中庭の維持費
- One Manhattan Square — 大型タワーの出口
- ワンハイライン(旧XI) — 開発会社の破綻と再生
ハイライン・ハドソンヤーズ
- 520 West 28th — ザハ・ハディド唯一のNY住宅
- ランタンハウス — デベロッパーの実績の見方
- 100 Eleventh Avenue — ガラス外壁の維持費
- 15 Hudson Yards — 新開発地区の評価
- 35 Hudson Yards — 似た2棟をどう比べるか
- ハドソンヤーズの住宅 — 竣工前契約の実務
- ザ・コートランド — レンガ外装と資産価値
- ウォーカータワー — 電話局のコンバージョン
- 25 Columbus Circle — 建物の改名と資産価値
ブルックリンとクイーンズ
- ブルックリンタワー — 区で初めての超高層
- ブルックリンポイント — 屋上プールの高層
- クワイタワー — 公園に守られた眺望
- ワン・ブルックリンブリッジパーク — 倉庫転用の449戸と公園への支払い
- イレブン・ホイト — 481戸の価格帯と減税の残存年数
- スカイラインタワー — クイーンズ最高層
- オリンピア・ダンボ — ブルックリン最高額の物差し
比較の全体像はビリオネアズロウ主要タワーの比較をご覧ください。
購入の実務ガイド
NEIGHBOURHOODSニューヨークの街と、他都市との比較(37件)
マンハッタンの街
- アッパーウエストサイド — 戦前の名建築と子育て環境
- カーネギーヒル — 美術館の並びに住む
- ヨークビル — 地下鉄新線が変えた買い場
- タートルベイ — 国連の街の静かな買い場
- グラマシー — 鍵のある公園に面した街
- フラットアイアン — ロフトの広さと価格
- ノマド — マンハッタン中央部の相場
- チェルシー — ハイライン沿いのレジデンス
- ウエストヴィレッジ — 石畳の歴史地区
- グリニッチビレッジ — 低層の街と戦前コープ
- ノーホー — 数ブロックのロフト一等地
- ソーホー — ロフト市場の実態
- ロウアーイーストサイド — 変わり続ける街の値段
- 金融地区 — ウォール街に暮らす
- ハーレム — ブラウンストーン1棟と賃料規制
ブルックリンの街
- ブルックリンハイツ — 全米初の歴史保存地区
- コブルヒル — ランドマーク地区のブラウンストーン
- キャロルガーデンズ — 住みながら貸す二戸建て
- ボーラムヒル — 学区の境界は住所ごとに違う
- フォートグリーン — コープが多い地区で海外から買う
- プロスペクトハイツ — 固定資産税の減税が切れる日
- ダウンタウンブルックリン — 供給が集中した地区の出口
- ダンボ — 倉庫街から高級住宅地へ
- グリーンポイント — 水辺エリアの家賃相場
ニューヨークを他の都市と比べる
- 東京 — 価格・価値観・法規制の違い
- ロサンゼルス — 戸建ての街と縦の街
- マイアミ — 税金ゼロの魅力と流動性
- ハワイ — 持ちたい場所として比べる
- トロント・バンクーバー — 外国人購入禁止の国と開かれた市場
- パリ — 石の街の資産と縦の街の資産
- 香港 — アジアの富の置き場所
- シドニー — 外国人規制の壁
- ロンドン — 英米の不動産投資の違い
- 世界の主要都市 — ドバイ・シンガポール・ロンドン・東京
- 全米の主要都市 — 価格・家賃・利回り・値上がり率
- 米国内の他都市 — ニューヨークだけが違う7点
- 日米の投資比較 — 利回り・税制・リスク
エリアの全体像と購入の実務
本ページの相場、利回り、所要時間などの数値は、一般に公開されているデータや当社の取引経験にもとづく目安です。物件、時期、条件によって実際とは異なる場合があり、当社が正確性および最新性を保証するものではありません。犯罪発生状況はニューヨーク市警などの公的機関が地区ごとの統計を公開しているため、そちらの数字をご確認ください。当社は入居者や購入者の国籍、人種、出身、宗教、家族構成によって物件やエリアをお勧めすることはいたしません。本ページの内容は情報提供のみを目的としており、投資勧誘や税務助言には当たりません。

















