ブルックリンブリッジパークの南端、川に沿って歩いた先に、青銅色の外装のタワーが立っています。クワイタワー(Quay Tower)です。
目の前は公園と港。対岸にはロウアーマンハッタンの高層群が正面に見えます。マンハッタンの中からは決して見られない、マンハッタンの全景が、この立地の持ち物です。
眺望を理由に住戸を買うとき、必ず確認すべきことがあります。その眺望は、何によって守られているのかという点です。
ハドソンヤーズの記事で書いたとおり、開発が続く地区では眺望は保証されません。では、公園の隣ならどうか。本日はクワイタワーを題材に、守られる眺望の見分け方について見ていきましょう。
1. クワイタワーという建物

クワイタワーは約30階建て、住戸数は約120戸のコンドミニアムです。2019年頃に引き渡しが始まりました。ブルックリンハイツの崖下、公園の敷地内に位置しています。
外装は青銅色の金属パネルで、時間とともに落ち着いた色へ変わっていく素材です。住戸は2〜4ベッドルームの家族向けが中心で、間取り構成はビークマンのような運用向けとは対照的です。
周辺のブルックリンハイツは、全米初の歴史保存地区に指定された低層の街並みです。公園と歴史地区に挟まれたこの一角は、高い建物が新たに建つ余地がほとんどないという環境にあります。
2. 眺望は何によって守られるのか

眺望の持続性は、期待ではなく仕組みで判断します。守られ方には、強い順に段階があります。
①目の前が水面。川や港の上に建物は建ちません。最も強い保証です。②目の前が公園。公有地であり、住宅開発の対象になりません。③目の前が歴史保存地区。高さの規制が事実上働きます。④目の前が低層の商業地。現在の規制では建たなくても、規制の変更で変わり得ます。⑤目の前が空き地や駐車場。いずれ建つと考えるのが前提です。
クワイタワーの西側は、②と①の組み合わせです。公園越しに港、その先にマンハッタン。この方向の視界を遮る建物は、制度の上で建てられません。
一方、他の方角は同じではありません。眺望を価格に織り込むなら、方角ごとに守られ方の段階を確認するのが実務です。同じ建物でも、守られた眺望の住戸と、変わり得る眺望の住戸では、価格の耐久性が違います。
3. 公園の中に建つことの構造

この建物には、もうひとつ確認すべき構造があります。ブルックリンブリッジパークは、公園の維持費を園内の不動産開発からの収入でまかなうという仕組みで運営されています。
クワイタワーを含む園内の住宅は、この枠組みの中で建てられました。住戸の所有者は、公園の運営体に対する支払いを負担します。
買う側から見た確認点を整理します。
| 確認項目 | 何を見るか |
|---|---|
| 土地の権利 | 所有か借地か。借地なら期間と改定条件 |
| 公園への支払い | 月額に含まれる公園維持の負担分と改定の仕組み |
| 通常の税との関係 | 固定資産税に相当する支払いの構造 |
| 水辺の保険 | 洪水地図上の区分と、建物保険の範囲 |
ワンサットンプレイスサウスの記事で書いたとおり、土地の権利は登記で確認できます。公的な運営体が関わる借地は、民間の相対契約より条件の透明性が高いのが通常ですが、読む手順は同じです。期間、改定、買い取りの権利。
水辺の立地では保険も確認します。連邦の洪水地図でどの区分に入っているか、建物の保険が水害をどこまで担保しているか。ワンマンハッタンスクエアの記事でも触れた論点です。管理組合から証券を取り寄せて確認します。
4. ブルックリンの水辺という選択

クワイタワーはコンドミニアムですので、名義を選べます。個人名義、法人名義、トラスト名義のいずれも規約の範囲で可能です。判断材料はニューヨークの不動産を法人名義で買うべきか。個人所有との違いと損益分岐にまとめています。
価格の水準は、同等の眺望と広さをマンハッタンで求めた場合より抑えられます。スカイラインタワーの記事で書いた「川を渡る判断」のブルックリン版ですが、性格は異なります。ロングアイランドシティが賃貸需要と価格を軸にした選択なら、こちらは家族の実需と眺望を軸にした選択です。
売却時には非居住者に対する源泉徴収が入ります。制度の概要は米国内国歳入庁(IRS)のFIRPTA解説をご覧ください。
ここで、逆の見方も置いておきます。「資産で選ぶならやはりマンハッタンで、ブルックリンは二番手ではないか」というものです。
取引の厚みでは、マンハッタンに分があります。ただ、守られた眺望と家族向けの広さという組み合わせは、マンハッタンでは極端に高くつきます。同じ予算でこの条件を実現できる場所として見ると、ここは二番手ではなく、別の最適解です。比較の軸を「街の格」から「条件の実現可能性」へ移すと、評価は変わります。
賃貸に出す場合は、家族向けの間取りが中心である点を踏まえます。借り手は長期の家族が中心で、回転は遅く、入居は安定します。非居住者の課税方式の選択と管理体制の準備は、他の記事で書いた手順と同じです。売却まで時間をかけられるなら、賃貸で保有しながら市況を待つ設計が取れます。
5. まとめ

クワイタワーは、公園と港とマンハッタンの全景を正面に持つ、眺望の守られ方が明確な建物です。
眺望は期待ではなく仕組みで評価します。水面、公園、歴史地区、低層商業地、空き地。方角ごとに守られ方の段階を確認し、価格に織り込む眺望と割り引く眺望を分けます。
公園の中に建つ構造には、土地の権利と公園への支払いという固有の確認点があります。書類はすべて取り寄せられますので、読む手順を踏めば判断できます。
当社では、個人と法人、居住者と非居住者それぞれの場合分けを踏まえ、立地の構造の読み解きからご相談を承っております。
※本記事の内容は一般的な情報提供であり、法務・税務・投資に関する助言ではありません。個別の判断は、独立した専門家へのご確認を前提とします。
BUILDINGSニューヨークの主な建物。名義と税務の観点から(93件)
ビリオネアズロウと57丁目
- セントラルパークタワー — 世界一高い住宅ビル
- One57 — ビリオネアズロウの先駆け
- 432 Park Avenue — 正方形窓の超高層
- 220 Central Park South — 全米住宅最高額の記録
- 111 West 57th — 世界で最も細い超高層
- 53 West 53rd — 近代美術館の上に住む
- Mandarin Oriental Fifth — ホテルブランドの住まい
- エセックスハウス — 公園南のアールデコ
- オズボーン — 1885年の石積み
セントラルパーク西の戦前建築
- ダコタハウス — 1884年、市内最初期の高級住宅
- サンレモ — エメリー・ロスのツインタワー
- ベレスフォード — 三本の塔と博物館の眺め
- エルドラド — 公園西の最北、貯水池の眺望
- センチュリー — 公園西で最も中心に近い
- マジェスティック — ダコタの向かい、急行駅前
- One Central Park West — コロンバスサークルの角
- 15 Central Park West — 新築で戦前の風格
パークアベニューとイーストサイド
- 740 Park Avenue — 世界で最も入りにくい住宅
- 520 Park Avenue — 戦前の格を新築で
- オリンピックタワー — 五番街の複合の先駆け
- リッツ・カールトン・レジデンス — ホテルブランドの実際
- シェリーネザーランド — ホテル機能を持つコープ
- リバーハウス — 川に正対する名門コープ
- One Sutton Place South — 借地の上に立つ建物
- サットンタワー — イーストリバー沿いの新築120戸
- 252イースト57丁目 — 分譲と賃貸が同じ塔、値下げの履歴
- ワンビーコンコート — オフィスの上に住む複合ビル
- 200イースト59 — 全戸テラス67戸、屋外面積の評価
- マンハッタンハウス — 戦後モダニズムの代表作
- ウォルドーフ・アストリア — 歴史的ホテルの住宅転用
- プラザ・レジデンス — 1907年の名門ホテル
- アマン・ニューヨーク — クラウンビルの最上位ブランド
- 400 Fifth Avenue — 商業地区に住むという選択
アッパーウエストとグラマシー
- アンソニア — ホテルから賃貸、コンドへ
- アプソープ — 1908年の中庭型、名義の自由
- ベルノード — 賃貸から分譲への転換
- 200 Amsterdam — 建築許可をめぐる訴訟
- 50 Gramercy Park North — 公園の鍵という権利
- マディソンハウス — ノマドの新築タワーと管理費
- 30イースト31 — 42戸の細身タワーの価格帯
- ワンマディソン — 築10年超の53戸と転売
- 277フィフスアベニュー — 5番街の住所は価格に乗るか
ダウンタウンとトライベッカ
- ウールワースタワー — 1913年の超高層に住む
- ワンウォールストリート — オフィス転用と減税
- ザ・グリニッジ — 125グリニッジの88階建て273戸
- 25パークロウ — シティホール公園向きの価格差
- 77グリニッジ — 小学校を抱えた90戸の価格交渉
- ワン・ビークマン — シティホール・パーク前のフロア1戸31戸
- 56 Leonard Street — 新築分譲の取得コスト
- 111 Murray Street — 大型間取りの市場
- 130 William — 固定資産税の読み方
- 30 Park Place — ホテル併設レジデンス
- 45パークプレイス — SOM設計50戸と値引き後の価格
- 100バークレー — 1927年電話局を改装した157戸
- 101ウォーレン — フルブロック227戸の価格帯
- 200チェンバーズ — プール付き258戸の維持費
- ビークマン・レジデンス — 賃貸運用向けの間取り
- 443 Greenwich — 倉庫転用と面積表示
- 565ブルームソーホー — レンゾ・ピアノ設計の112戸
- 42クロスビー — 10戸と100万ドルの駐車場の評価
- 10サリバン — ソーホー西端の22戸と小規模コンドの注意
- 108レナード — ランドマーク改装の167戸
- グリニッチレーン — 5棟とタウンハウスの構成
- 130ウエスト12丁目 — 病院跡コンバージョンの評価
- パックビルディング — 6戸だけのペントハウス
- ザ・シューマッハ — 印刷所転用20戸の維持費
- 70ベストリー — 川沿い46戸、少数戸を持つ意味
- 160レロイ — ウエストビレッジ川沿い57戸の値付け
- 150チャールズ — 低層91戸と中庭の維持費
- One Manhattan Square — 大型タワーの出口
- ワンハイライン(旧XI) — 開発会社の破綻と再生
ハイライン・ハドソンヤーズ
- 520 West 28th — ザハ・ハディド唯一のNY住宅
- ランタンハウス — デベロッパーの実績の見方
- 100 Eleventh Avenue — ガラス外壁の維持費
- 15 Hudson Yards — 新開発地区の評価
- 35 Hudson Yards — 似た2棟をどう比べるか
- ハドソンヤーズの住宅 — 竣工前契約の実務
- ザ・コートランド — レンガ外装と資産価値
- ウォーカータワー — 電話局のコンバージョン
- 25 Columbus Circle — 建物の改名と資産価値
ブルックリンとクイーンズ
- ブルックリンタワー — 区で初めての超高層
- ブルックリンポイント — 屋上プールの高層
- クワイタワー(この記事)
- ワン・ブルックリンブリッジパーク — 倉庫転用の449戸と公園への支払い
- イレブン・ホイト — 481戸の価格帯と減税の残存年数
- スカイラインタワー — クイーンズ最高層
- オリンピア・ダンボ — ブルックリン最高額の物差し
比較の全体像はビリオネアズロウ主要タワーの比較をご覧ください。
購入の実務ガイド
よくある質問
クワイタワーはどのような建物の構造を持っていますか。
クワイタワーは約30階建てで住戸数が約120戸のコンドミニアムであり、2019年頃に引き渡しが始まりました。外装は青銅色の金属パネルを使用し、時間とともに落ち着いた色へ変わっていきます。住戸構成は2〜4ベッドルームの家族向けが中心で、運用向けのビークマンとは対照的な間取りとなっています。
クワイタワーの眺望は何によって守られていますか。
西側は公園越しに港があり、その先にマンハッタンが見えます。この方向の視界を遮る建物は制度の上で建てられません。公園は公有地であり住宅開発の対象にならず、川や港の上に建物は建ちません。これにより最も強い保証が得られ、守られた眺望と変わり得る眺望を方角ごとに確認する必要があります。
公園の中に建つ構造にはどのような確認点がありますか。
ブルックリンブリッジパークは園内の不動産開発からの収入で維持費をまかなう仕組みです。住戸所有者は公園運営体への支払いを負担します。確認すべき点は土地の権利が所有か借地か、月額に含まれる公園維持の負担分と改定、固定資産税に相当する支払い構造、洪水地図上の区分と建物保険の範囲です。
ブルックリンの水辺を選ぶ際の価格や名義の特徴は何か。
同等の眺望と広さをマンハッタンで求めた場合より価格が抑えられます。家族の実需と眺望を軸にした選択であり、コンドミニアムなので個人、法人、トラストの名義を選べます。売却時には非居住者に対する源泉徴収が入り、賃貸に出す場合は長期の家族が中心で入居は安定します。
English guides on reinventny.com
NEIGHBOURHOODSニューヨークの街と、他都市との比較(37件)
マンハッタンの街
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- グラマシー — 鍵のある公園に面した街
- フラットアイアン — ロフトの広さと価格
- ノマド — マンハッタン中央部の相場
- チェルシー — ハイライン沿いのレジデンス
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- グリニッチビレッジ — 低層の街と戦前コープ
- ノーホー — 数ブロックのロフト一等地
- ソーホー — ロフト市場の実態
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