ワン・ビークマン(One Beekman)は、ファイナンシャル・ディストリクトの北端、ビークマン・ストリートとパーク・ロウの角に立つ25階建て、31戸のコンドミニアムです。開発はアーバン・ミューズ、設計はロジャース・スターク・ハーバー・アンド・パートナーズで、同事務所がニューヨークで初めて手がけた住宅として2019年に竣工しました。正面はシティホール・パークで、公園越しに市庁舎とウールワース・ビルを見ます。
この建物を題材にするのは、戸数が30戸前後の建物を買うときの見方を考えるためです。フロアに1戸か2戸という構成は、共用廊下を持たない戸建てに近い暮らし方を生む一方、維持費の1戸あたりの負担が最も重くなる構造でもあります。その価値と負担をどう釣り合わせ、どの名義で持つかを、この建物で具体的にたどります。
1. 建物の概要。25階建て・31戸

ワン・ビークマンは、公園に向いた面を全面ガラスにした細身の塔です。外壁の柱と梁を外に見せる構成は、同事務所がロンドンやパリで用いてきた手法で、周囲の石造りの旧市街の中でひときわ目立ちます。住戸は2ベッドルームから4ベッドルームで、低層階はフロアに2戸、中層階から上はフロアに1戸、最上部は2層のペントハウスです。天井高は約3メートル、公園側の窓は床から天井まで届きます。
共用施設は、24時間のドアマン、ジム、図書室を兼ねたラウンジ、屋上テラスで、規模は控えめです。地下鉄はブルックリン・ブリッジ・シティホール駅とフルトン・ストリート駅が徒歩数分で、複数路線を使えます。ウールワース・ビルと市庁舎、ブルックリン橋の入口がすべて徒歩圏という立地です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 1 Beekman Street, New York(ファイナンシャル・ディストリクト北端) |
| 竣工 | 2019年 |
| 階数・戸数 | 25階建て・31戸 |
| 設計・開発 | ロジャース・スターク・ハーバー・アンド・パートナーズ(設計)、アーバン・ミューズ(開発) |
| 形態 | コンドミニアム |
| 主な施設 | 24時間ドアマン、ジム、ラウンジ、屋上テラス |
ファイナンシャル・ディストリクトの北端は、市庁舎と裁判所が集まる官庁街に接し、公園に面した住戸が数えるほどしかない地区です。地区の成り立ちと物件の傾向はファイナンシャル・ディストリクトのエリア記事にまとめています。
2. 価格の位置づけ。フロア1戸の価値をどう見るか

分譲は2016年に始まり、2ベッドルームが200万ドル台、3ベッドルームが400万〜600万ドル、ペントハウスが1,000万ドルを超える水準でした。1平方フィートあたり2,000〜2,300ドルで、同じ地区の転用型の建物より2〜3割高く、公園に面した眺望とフロア1戸の構成がその差の中身です。
フロア1戸の価値は、二つに分けて見ます。一つは暮らし方の価値で、エレベーターが住戸に直接開き、隣戸と壁を接しないため、戸建てに近い静けさがあります。もう一つは希少性の価値で、市内で公園に正面から向いた住戸は多くなく、同じ条件の住戸が売りに出る頻度が低いため、価格が崩れにくい傾向があります。比較対象は、同じ公園に面した25パークロウ、転用型のウールワース・ビルと130ウィリアム、そして同じ通りに立つビークマン・レジデンスです。
ただし、31戸という規模は成約の数が少なく、建物の中に価格の根拠を求めにくい面もあります。売るときに比較対象がすぐ見つからないことは、買うときの指値にも、出口の価格にも影響します。
3. 賃料と維持費の釣り合い。31戸で分ける管理費

賃料は、2ベッドルームで月9,000〜12,000ドル、3ベッドルームで月15,000〜20,000ドルが目安です。公園向きの住戸は賃借人がつきやすく、空室期間は短めです。
維持費で確認するのは、31戸で分ける管理費の構造です。24時間のドアマンとエレベーターの保守は、戸数にかかわらず一定の人件費がかかるため、1戸あたりの負担は数百戸のタワーの2〜3倍になります。コモンチャージの中身と適正水準に整理したとおり、予算書で人件費の比率と積立残高を確認し、1平方フィートあたりの月額を地区の相場と並べます。
もう一つ確認するのは、外壁の修繕計画です。柱と梁を外に見せる設計は、外壁の点検と補修が通常のガラス張りより手間がかかる可能性があり、市の外壁点検の周期ごとに費用が生じます。31戸で割ると1戸あたりの臨時徴収が大きくなるため、積立の水準と過去の臨時徴収の有無を見ます。手取りの利回りは2%前後で、賃料の高さを維持費が相殺する構造です。
4. 購入の実務と名義の設計
ワン・ビークマンはコンドミニアムのため、外国籍・非居住のまま購入でき、理事会の承認面接はありません。法人名義やトラスト名義での保有も規約の範囲で可能です。フロア1戸の住戸はエレベーターの鍵の設定や搬入の取り決めが細かく、管理規約で改装と搬入の条件を確認しておきます。
非居住者が個人名義で貸すと賃料に対する源泉徴収が30%かかり、申告で経費を引く選択をしなければ手取りが大きく削られます。LLC名義にすると、賃料の受け取りと経費の計上を法人の側に置けます。仕組みはLLC名義での保有と税務にまとめています。売却時にはFIRPTAの源泉徴収が売却価格に対してかかり、申告で精算するまで資金が戻りません。
相続を見通すなら、米国の遺産税の非居住者控除が6万ドルしかない点を、買う前に織り込みます。400万ドルの住戸を個人名義で持ったまま相続が起きると、控除を超える部分に最高40%の税率がかかります。名義の設計は、購入後に変えると譲渡税がかかるため、契約前に決めます。
取引の際には、予算書と積立残高、外壁の修繕計画と臨時徴収の履歴、改装と搬入の規約、地区の似た条件の成約を書面で確認してください。
5. まとめ
ワン・ビークマンは、公園に正面から向いたフロア1戸の構成が価格を支える建物で、その分の維持費を31戸で分ける負担の重さが裏側にあります。賃料の高さと管理費の重さが打ち消し合う構造を数字で確かめ、名義を先に決めることが、この建物での設計の要点です。
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よくある質問
ワン・ビークマンはどこにありますか。
ファイナンシャル・ディストリクト北端の1 Beekman Streetで、正面はシティホール・パークです。地下鉄のブルックリン・ブリッジ・シティホール駅とフルトン・ストリート駅が徒歩数分です。
ワン・ビークマンは何戸ありますか。
25階建てで31戸です。低層階はフロアに2戸、中層階から上はフロアに1戸で、最上部は2層のペントハウスです。2019年竣工、設計はロジャース・スターク・ハーバー・アンド・パートナーズ、開発はアーバン・ミューズです。
戸数が少ない建物は管理費が高くなりますか。
ドアマンとエレベーターの保守は戸数にかかわらず一定の費用がかかるため、31戸で分けると1戸あたりの負担は数百戸のタワーの2〜3倍になります。予算書で人件費の比率と積立残高を確認します。
外国籍でも購入できますか。
コンドミニアムのため、外国籍・非居住のまま購入でき、法人名義やトラスト名義での保有も規約の範囲で可能です。非居住者が個人名義で貸すと賃料に30%の源泉徴収がかかるため、名義は契約前に決めます。
所在地
1 Beekman Street, New York。位置はGoogleマップでご確認いただけます。
BUILDINGS
ニューヨークの主な建物。名義と税務の観点から
ビリオネアズロウと57丁目
- セントラルパークタワー — 世界一高い住宅ビル
- One57 — ビリオネアズロウの先駆け
- 432 Park Avenue — 正方形窓の超高層
- 220 Central Park South — 全米住宅最高額の記録
- 111 West 57th — 世界で最も細い超高層
- 53 West 53rd — 近代美術館の上に住む
- Mandarin Oriental Fifth — ホテルブランドの住まい
- エセックスハウス — 公園南のアールデコ
- オズボーン — 1885年の石積み
セントラルパーク西の戦前建築
- ダコタハウス — 1884年、市内最初期の高級住宅
- サンレモ — エメリー・ロスのツインタワー
- ベレスフォード — 三本の塔と博物館の眺め
- エルドラド — 公園西の最北、貯水池の眺望
- センチュリー — 公園西で最も中心に近い
- マジェスティック — ダコタの向かい、急行駅前
- One Central Park West — コロンバスサークルの角
- 15 Central Park West — 新築で戦前の風格
パークアベニューとイーストサイド
- 740 Park Avenue — 世界で最も入りにくい住宅
- 520 Park Avenue — 戦前の格を新築で
- オリンピックタワー — 五番街の複合の先駆け
- リッツ・カールトン・レジデンス — ホテルブランドの実際
- シェリーネザーランド — ホテル機能を持つコープ
- リバーハウス — 川に正対する名門コープ
- One Sutton Place South — 借地の上に立つ建物
- サットンタワー — イーストリバー沿いの新築120戸
- 252イースト57丁目 — 分譲と賃貸が同じ塔、値下げの履歴
- ワンビーコンコート — オフィスの上に住む複合ビル
- 200イースト59 — 全戸テラス67戸、屋外面積の評価
- マンハッタンハウス — 戦後モダニズムの代表作
- ウォルドーフ・アストリア — 歴史的ホテルの住宅転用
- プラザ・レジデンス — 1907年の名門ホテル
- アマン・ニューヨーク — クラウンビルの最上位ブランド
- 400 Fifth Avenue — 商業地区に住むという選択
アッパーウエストとグラマシー
- アンソニア — ホテルから賃貸、コンドへ
- アプソープ — 1908年の中庭型、名義の自由
- ベルノード — 賃貸から分譲への転換
- 200 Amsterdam — 建築許可をめぐる訴訟
- 50 Gramercy Park North — 公園の鍵という権利
- マディソンハウス — ノマドの新築タワーと管理費
- 30イースト31 — 42戸の細身タワーの価格帯
- ワンマディソン — 築10年超の53戸と転売
- 277フィフスアベニュー — 5番街の住所は価格に乗るか
ダウンタウンとトライベッカ
- ウールワースタワー — 1913年の超高層に住む
- ワンウォールストリート — オフィス転用と減税
- ザ・グリニッジ — 125グリニッジの88階建て273戸
- 25パークロウ — シティホール公園向きの価格差
- 77グリニッジ — 小学校を抱えた90戸の価格交渉
- ワン・ビークマン(この記事)
- 56 Leonard Street — 新築分譲の取得コスト
- 111 Murray Street — 大型間取りの市場
- 130 William — 固定資産税の読み方
- 30 Park Place — ホテル併設レジデンス
- 45パークプレイス — SOM設計50戸と値引き後の価格
- 100バークレー — 1927年電話局を改装した157戸
- 101ウォーレン — フルブロック227戸の価格帯
- 200チェンバーズ — プール付き258戸の維持費
- ビークマン・レジデンス — 賃貸運用向けの間取り
- 443 Greenwich — 倉庫転用と面積表示
- 565ブルームソーホー — レンゾ・ピアノ設計の112戸
- 42クロスビー — 10戸と100万ドルの駐車場の評価
- 10サリバン — ソーホー西端の22戸と小規模コンドの注意
- 108レナード — ランドマーク改装の167戸
- グリニッチレーン — 5棟とタウンハウスの構成
- 130ウエスト12丁目 — 病院跡コンバージョンの評価
- パックビルディング — 6戸だけのペントハウス
- ザ・シューマッハ — 印刷所転用20戸の維持費
- 70ベストリー — 川沿い46戸、少数戸を持つ意味
- 160レロイ — ウエストビレッジ川沿い57戸の値付け
- 150チャールズ — 低層91戸と中庭の維持費
- One Manhattan Square — 大型タワーの出口
- ワンハイライン(旧XI) — 開発会社の破綻と再生
ハイライン・ハドソンヤーズ
- 520 West 28th — ザハ・ハディド唯一のNY住宅
- ランタンハウス — デベロッパーの実績の見方
- 100 Eleventh Avenue — ガラス外壁の維持費
- 15 Hudson Yards — 新開発地区の評価
- 35 Hudson Yards — 似た2棟をどう比べるか
- ハドソンヤーズの住宅 — 竣工前契約の実務
- ザ・コートランド — レンガ外装と資産価値
- ウォーカータワー — 電話局のコンバージョン
- 25 Columbus Circle — 建物の改名と資産価値
ブルックリンとクイーンズ
- ブルックリンタワー — 区で初めての超高層
- ブルックリンポイント — 屋上プールの高層
- クワイタワー — 公園に守られた眺望
- ワン・ブルックリンブリッジパーク — 倉庫転用の449戸と公園への支払い
- イレブン・ホイト — 481戸の価格帯と減税の残存年数
- スカイラインタワー — クイーンズ最高層
- オリンピア・ダンボ — ブルックリン最高額の物差し
比較の全体像はビリオネアズロウ主要タワーの比較をご覧ください。
購入の実務ガイド
NEIGHBOURHOODSニューヨークの街と、他都市との比較(37件)
マンハッタンの街
- アッパーウエストサイド — 戦前の名建築と子育て環境
- カーネギーヒル — 美術館の並びに住む
- ヨークビル — 地下鉄新線が変えた買い場
- タートルベイ — 国連の街の静かな買い場
- グラマシー — 鍵のある公園に面した街
- フラットアイアン — ロフトの広さと価格
- ノマド — マンハッタン中央部の相場
- チェルシー — ハイライン沿いのレジデンス
- ウエストヴィレッジ — 石畳の歴史地区
- グリニッチビレッジ — 低層の街と戦前コープ
- ノーホー — 数ブロックのロフト一等地
- ソーホー — ロフト市場の実態
- ロウアーイーストサイド — 変わり続ける街の値段
- 金融地区 — ウォール街に暮らす
- ハーレム — ブラウンストーン1棟と賃料規制
ブルックリンの街
- ブルックリンハイツ — 全米初の歴史保存地区
- コブルヒル — ランドマーク地区のブラウンストーン
- キャロルガーデンズ — 住みながら貸す二戸建て
- ボーラムヒル — 学区の境界は住所ごとに違う
- フォートグリーン — コープが多い地区で海外から買う
- プロスペクトハイツ — 固定資産税の減税が切れる日
- ダウンタウンブルックリン — 供給が集中した地区の出口
- ダンボ — 倉庫街から高級住宅地へ
- グリーンポイント — 水辺エリアの家賃相場
ニューヨークを他の都市と比べる
- 東京 — 価格・価値観・法規制の違い
- ロサンゼルス — 戸建ての街と縦の街
- マイアミ — 税金ゼロの魅力と流動性
- ハワイ — 持ちたい場所として比べる
- トロント・バンクーバー — 外国人購入禁止の国と開かれた市場
- パリ — 石の街の資産と縦の街の資産
- 香港 — アジアの富の置き場所
- シドニー — 外国人規制の壁
- ロンドン — 英米の不動産投資の違い
- 世界の主要都市 — ドバイ・シンガポール・ロンドン・東京
- 全米の主要都市 — 価格・家賃・利回り・値上がり率
- 米国内の他都市 — ニューヨークだけが違う7点
- 日米の投資比較 — 利回り・税制・リスク
エリアの全体像と購入の実務
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