2026年8月27日 Satoshi Onodera

ワンサットンプレイスサウスと借地の教訓。コープの下の土地は誰のものか

イーストリバー沿いの静かな一角、サットンプレイスの南端に、1927年に完成したワンサットンプレイスサウス(One Sutton Place South)が立っています。

設計はロザリオ・カンデラ。740パークと同じ、戦前の高級住宅を代表する建築家の仕事です。川に面した立地と大型の住戸で、完成以来この地区の頂点に立ってきました。

 

この建物が実務の教材として重要なのは、格式のためではありません。建物の下の土地が、コープ法人の所有ではなかったという事実のためです。

借地の上に立つコープ。この構造が何を引き起こすのかを、この建物は実例として示しました。本日はワンサットンプレイスサウスを題材に、土地の権利の確認について見ていきましょう。

 

1. ワンサットンプレイスサウスという建物

ワンサットンプレイスサウスと借地の教訓。コープの下の土地は誰のものか

 

ワンサットンプレイスサウスは13階建て、住戸数は約40戸のコープです。1927年の竣工で、川に正対する立地と、1フロアを広く使う大型住戸で知られてきました。

サットンプレイスは、ミッドタウンの東端にありながら通過交通のない、袋小路のような静かな地区です。国連本部にも近く、外交関係の住民が多い土地柄でもあります。

 

取締役会の審査は名門コープの水準で、個人名義の原則、融資比率の制限といった条件は、これまで扱ってきた建物と同じです。

そして、この建物には他の名門コープと違う点がひとつありました。建物の下の土地に、別の所有者がいたことです。

 

2. 借地の上のコープで何が起きたか

ワンサットンプレイスサウスと借地の教訓。コープの下の土地は誰のものか

 

コープ法人が土地を所有せず、地主から借りている場合、法人は借地料(グラウンドレント)を払い続けます。この費用は住民のメンテナンスに乗ります。

問題は、借地契約には改定の時期があるということです。改定時の借地料は、その時点の土地の評価に基づいて再計算されるのが一般的な契約です。

 

ワンサットンプレイスサウスでは、この改定をめぐって大きな騒動になったことが広く報じられました。土地の評価が数十年前の契約時から桁違いに上がっており、再計算後の借地料が住民の負担能力を脅かす水準に達したためです。

最終的にコープ側は土地の買い取りに動きましたが、その過程で各住戸に大きな負担が発生したとされています。

 

この事例が示す教訓は明確です。借地の上に立つ建物では、今の月額ではなく、次の改定後の月額を見なければならないということです。

 

3. 土地の権利をどう確認するか

ワンサットンプレイスサウスと借地の教訓。コープの下の土地は誰のものか

 

以下は、土地の権利に関して購入前に確認する項目です。コープでもコンドミニアムでも、考え方は共通します。

 

※確認は弁護士を通じて行います。内容は建物ごとに異なります。
確認項目 何を見るか
土地の所有 法人所有か、借地か。登記の記録で確認
借地契約の期間 満了年と、更新の条件
借地料の改定 次の改定年と、再計算の方式
買い取りの権利 法人が土地を買い取る選択権の有無
融資への影響 借地物件を扱う金融機関が限られないか

 

特に重要なのは改定の方式です。定額で決まっている契約と、改定時の土地評価で再計算される契約とでは、リスクの性質がまったく違います。後者の場合、地価が上がった分だけ住民の負担が跳ねます。

 

バッテリーパークシティの記事でも借地を扱いましたが、あちらは公的機関が地主で、条件が公開されているケースです。民間の地主との相対契約は、条件の透明性が低く、改定の交渉も読みにくくなります。同じ借地でも、地主が誰かで評価は変わります。

 

4. 借地物件を候補から外すべきか

ワンサットンプレイスサウスと借地の教訓。コープの下の土地は誰のものか

 

ここで、逆の見方も置いておきます。「借地と聞いた時点で、候補から外すべきではないか」というものです。

一律に外す必要はない、というのが実務の答えです。借地の物件は同条件の土地所有物件より価格が抑えられており、改定までの期間が長く条件が明確なら、その差額は合理的な対価になり得ます。

 

判断の条件は3つです。①改定までの残り年数が、想定する保有期間より十分に長い。②改定の方式が契約書で読める。③売却時に次の買い手が同じ条件を受け入れられる

③が最も見落とされます。自分が保有する期間は問題がなくても、売却する頃に改定が近づいていれば、買い手はその負担を価格に織り込みます。出口の時点での残存期間から逆算して考えます。

 

なお、この構造は住宅ローンにも影響します。借地物件への融資は扱う金融機関が限られ、非居住者向けとなるとさらに狭まります。資金計画は現金比率を高めに見ておくのが安全です。

名義の設計はニューヨークの不動産を法人名義で買うべきか。個人所有との違いと損益分岐を、コープの審査はニューヨーク不動産購入の最難関、コープのボード審査を通過する方法をご覧ください。

 

なお、借地の情報は隠されているわけではありません。登記の記録、オファリングプラン、財務諸表のいずれにも表れます。問題が起きるのは、確認の手順を省いたときだけです。書類を読む習慣さえあれば、この種のリスクは購入前に必ず見つかります。

相続まで視野に入れる場合は、借地契約の残存期間と承継の時期の重なりも見ておきます。詳細は非居住者の米国遺産税と、日本の相続税との二重構造で扱っています。

 

5. まとめ

ワンサットンプレイスサウスと借地の教訓。コープの下の土地は誰のものか

 

ワンサットンプレイスサウスは、カンデラ設計の川沿いの名門コープであると同時に、借地の上に立つ建物のリスクを実例で示した建物でもあります。

建物の下の土地が誰のものか。この一点は、登記の記録で必ず確認できます。借地であれば、契約の期間、改定の方式、買い取りの権利までを読み、次の改定後の月額で判断します。

 

借地は一律に避けるべきものではありませんが、価格の安さには理由があります。理由を読み切れる場合にだけ、その差額を取りに行く。この順序を守れば、借地物件も選択肢になります。

 

当社では、個人と法人、居住者と非居住者それぞれの場合分けを踏まえ、権利関係の確認からご相談を承っております。

 

※本記事の内容は一般的な情報提供であり、法務・税務・投資に関する助言ではありません。個別の判断は、独立した専門家へのご確認を前提とします。

 

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比較の全体像はビリオネアズロウ主要タワーの比較をご覧ください。

購入の実務ガイド

よくある質問

ワンサットンプレイスサウスはどのような建物の構造を持っていますか。

ワンサットンプレイスサウスは1927年に完成した13階建てのコープで、住戸数は約40戸です。この建物はイーストリバー沿いの静かな一角に位置し、川に面した立地と大型の住戸が特徴ですが、建物の下の土地をコープ法人が所有しておらず、地主から借りている借地上の構造を持っています。

借地契約の改定によって住民にはどのような影響が生じる可能性がありますか。

借地契約には改定の時期があり、その時点の土地評価に基づいて借地料が再計算されるため、地価が上がれば住民の負担が跳ね上がります。ワンサットンプレイスサウスでは再計算後の借地料が負担能力を脅かす水準になり、最終的に各住戸に大きな負担が発生した事例として知られています。

購入前に土地の権利を確認する際に特に重要な項目は何ですか。

土地の所有が法人所有か借地か、借地契約の期間や更新条件、そして改定の方式です。定額で決まっている契約と、改定時の土地評価で再計算される契約ではリスクの性質が異なり、後者の場合、地価が上がった分だけ住民の負担が増えるため、次の改定後の月額を見ることが重要です。

借地物件を候補から外すべきかどうかの判断基準は何ですか。

一律に外す必要はなく、改定までの残り年数が保有期間より十分に長く、改定の方式が契約書で読め、売却時に次の買い手が同じ条件を受け入れられるかが判断条件です。自分が保有する期間は問題なくても、売却時に改定が近づいていれば買い手は負担を価格に織り込むため、出口の時点から逆算して考えます。

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