2026年8月28日 Satoshi Onodera

XIビルの破綻と再生。デベロッパーが倒れたとき、買主はどうなるのか

ハイラインの西、ハドソン川を望む位置に、ねじれながら立ち上がる2本の塔があります。XI(イレブン)として販売が始まり、現在はワンハイライン(One High Line)と呼ばれる建物です。

設計はデンマークの建築家ビャルケ・インゲルスの事務所。2本の塔が互いにひねりながら向き合う構成は、ハイラインを歩く誰もが見上げる存在です。

 

この建物の履歴には、意匠より重要な教材が含まれています。当初の開発会社が資金難に陥り、工事が止まり、物件が別の事業者の手に渡って完成したという経緯です。名前が変わったのはそのためです。

竣工前に契約していた買主たちは、この過程で何を経験したのか。手付金はどうなったのか。本日はこの建物を題材に、デベロッパー破綻のリスクと買主の守られ方について見ていきましょう。

 

1. XIからワンハイラインへ

XIビルの破綻と再生。デベロッパーが倒れたとき、買主はどうなるのか

 

この物件は2本の塔で構成され、住戸数は合計200戸を超えます。低層部にはホテルも入る複合開発として計画されました。

当初の開発会社は販売を進めながら工事を続けていましたが、資金繰りが行き詰まり、プロジェクトは貸し手側の手続きを経て別の事業者に引き継がれました。工事は再開され、名前を変えて完成し、現在は引き渡しも進んでいます。

 

結果として建物は完成し、現在の所有者にとって過去の経緯は履歴のひとつです。ただし、竣工前に契約していた買主にとっては、数年にわたる不確実な期間がありました。この経験こそが、これから竣工前物件を検討する方への教材になります。

 

2. 竣工前契約で、手付金はどう守られているか

XIビルの破綻と再生。デベロッパーが倒れたとき、買主はどうなるのか

 

ニューヨークの新築分譲では、竣工前の契約時に価格の一部を手付金として支払います。この資金の扱いには、州の規制があります。

手付金は分譲主の運転資金ではなく、エスクロー口座で分別管理するのが原則です。オファリングプランには、誰がエスクロー代理人を務め、どの口座で管理されるかが記載されています。

 

この仕組みが機能していれば、開発が頓挫しても手付金そのものは保全されます。実際、この物件の経緯でも、契約者の手付金の扱いが焦点のひとつになりました。

 

ただし、保全されることと、すぐ戻ることは別の問題です。手続きには時間がかかり、資金が拘束されている間の機会損失は買主の負担になります。また、契約の解除条件は契約書の文言次第であり、工事遅延がどこまで進めば解除権が生じるかは案件ごとに異なります。

 

3. 竣工前物件で確認する条項

XIビルの破綻と再生。デベロッパーが倒れたとき、買主はどうなるのか

 

以下は、竣工前の物件を契約する際に弁護士と確認する項目です。

 

※確認は弁護士を通じて行います。条項の内容は契約ごとに異なります。
確認項目 何を見るか
エスクローの体制 代理人は誰か、分別管理の口座はどこか
引き渡しの期限 遅延が何年に及んだら解除できるか
解除時の返金 利息の有無、返金までの手続き
分譲主の財務 建設資金の調達が確定しているか
工事の進捗 現地で実際に動いているか。定期的に確認

 

4つ目の分譲主の財務は、ランタンハウスの記事で書いた「作り手の実績」の確認と重なります。建設資金の融資が組成済みか、それとも販売の進捗頼みか。オファリングプランと公開情報からある程度読めます。

 

5つ目は単純ですが有効です。契約後も工事現場を定期的に見る。工事の止まった現場は、報道より先に現地が教えてくれます。海外にお住まいの場合は、現地の代理人がこの確認を担います。

 

4. 破綻を経た建物を、今買うことをどう考えるか

XIビルの破綻と再生。デベロッパーが倒れたとき、買主はどうなるのか

 

完成した現在のワンハイラインを買う場合、開発時の破綻リスクはすでに消えています。建物は完成し、引き渡しの実績があり、運営も始まっています。

確認すべきは、むしろ引き継ぎの痕跡です。①施工が中断を挟んでいるため、工事の連続性に関する記録。②保証の主体。当初の開発会社が消えた場合、施工保証を誰が引き継いだか。③管理組合の立ち上がり。スポンサーの交代が組合運営に影を残していないか。

 

この3点が整理されていれば、履歴は価格の交渉材料にこそなれ、避ける理由にはなりません。200アムステルダムの記事で書いたとおり、報道された過去と現在の法的状態は分けて評価します

 

名義の設計はコンドミニアムの通常どおりです。個人名義、法人名義、トラスト名義のいずれも規約の範囲で選べます。判断材料はニューヨークの不動産を法人名義で買うべきか。個人所有との違いと損益分岐を、売却時の源泉徴収は米国内国歳入庁(IRS)のFIRPTA解説をご覧ください。

 

ここで、逆の見方も置いておきます。「破綻の履歴がある物件は、いくら安くても避けるべきではないか」というものです。

感覚としては理解できます。ただ、破綻したのは事業者であって、建物ではありません。完成後の建物の価値は、立地と設計と管理で決まります。履歴を理由に価格が抑えられているなら、リスクの消えた割引はむしろ機会です。区別すべきは「破綻した事業者の未完成物件」と「破綻を経て完成した物件」であり、この2つはまったく別のリスクです。

 

ハイライン沿いという立地の評価は、520ウエスト28丁目やランタンハウスの記事で書いた内容と共通します。遊歩道との距離、視線の条件、時間帯による人の流れ。内見は平日と週末の両方で行うことを推奨いたします。

ホテルが入る複合である点は、30パークプレイスの記事で書いた確認点がそのまま使えます。区分の線、共用費の按分、ブランド契約の期間。書類はオファリングプランに揃っています。

 

5. まとめ

XIビルの破綻と再生。デベロッパーが倒れたとき、買主はどうなるのか

 

ワンハイライン(旧XI)は、開発会社の破綻と事業者の交代を経て完成した建物です。この履歴は、竣工前契約のリスクを具体的に教えてくれます。

竣工前物件では、エスクローの体制、引き渡し期限と解除条件、分譲主の資金調達を契約前に確認します。手付金の保全は制度としてありますが、拘束される時間は買主の負担です。

 

完成済みの物件を買う場合、開発時のリスクは消えています。保証の引き継ぎと管理組合の状態を確認すれば、履歴は交渉材料に変わります。

 

当社では、個人と法人、居住者と非居住者それぞれの場合分けを踏まえ、契約条項の確認からご相談を承っております。

 

※本記事の内容は一般的な情報提供であり、法務・税務・投資に関する助言ではありません。個別の判断は、独立した専門家へのご確認を前提とします。

 

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比較の全体像はビリオネアズロウ主要タワーの比較をご覧ください。

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よくある質問

竣工前契約において手付金はどのように管理される仕組みになっていますか。

ニューヨークの新築分譲では、手付金は分譲主の運転資金ではなく、エスクロー口座で分別管理するのが原則です。オファリングプランには誰が代理人を務めどの口座で管理されるかが記載されており、この仕組みが機能すれば開発が頓挫しても手付金そのものは保全されます。

竣工前の物件を契約する際に弁護士と確認すべき項目は何ですか。

確認すべき項目はエスクローの体制、引き渡しの期限、解除時の返金条件、分譲主の財務状況、そして工事の進捗です。特に建設資金の調達が確定しているかや、現地で実際に工事が動いているかを定期的に確認することが有効な対策となります。

開発破綻の履歴がある完成済み物件を購入する際のメリットは何ですか。

完成済みの物件では開発時のリスクはすでに消えており、保証の引き継ぎや管理組合の状態を確認すれば履歴は価格交渉材料になります。破綻したのは事業者であって建物ではないため、立地と設計で決まる価値が履歴を理由に抑えられている場合は機会です。

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