70ベストリー(70 Vestry Street)は、トライベッカの西端、ハドソン川に面して立つ14階建て・46戸のコンドミニアムです。2018年に完成し、フランス産の石灰岩で覆われた低層の建物として、ガラスの塔とは別の価値の作り方を示しました。
この建物を題材にするのは、ニューヨークで数億円を置く先として、高層タワーではなく少数戸の低層を選ぶ理由が、ここに集まっているからです。売り物が出ない希少性、戸数が少ないゆえに重い維持費、そして相続まで見た名義の設計。46戸という規模がもたらす良さと負担を、順に見ていきます。
1. 建物の概要。14階建て・46戸

70ベストリーは、ハドソンヤーズを手がけたリレイテッド・カンパニーズが開発し、設計はロバート・A・M・スターン・アーキテクツです。同じ設計者による15セントラルパークウエストや220セントラルパークサウスと同じく、石で覆った外壁と戦前建築の比例を持ち込んでいます。
外壁はフランスのボーマニエール産の石灰岩です。住戸は2ベッドルームから5ベッドルームまでで、川に面した住戸は幅いっぱいの窓からハドソン川と自由の女神を望みます。共用施設は、25メートルのプール、スカッシュコート、スパ、ジム、子ども向けの部屋、住民用のラウンジと、規模のわりに手厚い構成です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 70 Vestry Street, New York(トライベッカ) |
| 竣工 | 2018年 |
| 階数・戸数 | 14階建て・46戸 |
| 設計・開発 | ロバート・A・M・スターン・アーキテクツ/リレイテッド・カンパニーズ |
| 形態 | コンドミニアム |
| 主な施設 | 25メートルプール、スカッシュコート、スパ、ジム、ラウンジ |
トライベッカは、倉庫街を住宅に変えてきた地区で、マンハッタンでも住戸の面積が広い地区です。地区の成り立ちと物件の傾向はトライベッカのエリア記事にまとめています。
2. 売り物が出ない建物の価格

46戸の建物では、1年に売りに出る住戸が数戸、年によっては1戸もないことがあります。70ベストリーは分譲時に2ベッドルームが400万ドル台から、川に面した大型住戸が2,000万ドル台から4,000万ドル台で売られ、最上階は6,000万ドル前後で契約されてトライベッカの当時の記録になりました。
転売では、川側の住戸が分譲時を上回る価格で成約した例があります。56レナードや443グリニッジと並んで、トライベッカで価格の上限を作っている建物のひとつです。
ここで注意したいのは、売り物が出ないことは、価格が安定していることとは違うという点です。成約が少ないと相場の目安が立たず、売る側も買う側も、直近の1件に引きずられます。同じ型の直近の成約を並べて値付けを確かめる方法は、この建物では使えません。代わりに、トライベッカの川沿いという同じ条件を持つ他の建物の成約と、その建物との差を見ていきます。
この希少性は、資産を置く目的にははっきり効きます。競争相手が建物の中にいないため、売るときに他の住戸と値下げ競争にならず、買い手は建物そのものを待っています。売却の時期を自分で選べることが、少数戸の建物の最大の利点です。
3. 46戸で分担する維持費の重さ

共用施設が手厚く戸数が少ない建物では、コモンチャージが重くなります。70ベストリーでは、住戸の広さによりますが、コモンチャージが月5,000ドルから1万ドルを超える住戸が普通で、これに固定資産税が同じくらい乗ります。年間で10万ドルから20万ドル以上が、住むかどうかにかかわらず出ていきます。
この維持費を賃料で賄えるかというと、難しい場合が多いです。大型住戸の賃貸需要は薄く、貸せたとしても維持費と管理の費用を引くと手取りはわずかか、赤字になります。この型の建物は、貸して回す資産ではなく、使いながら持つ資産、あるいはドル建ての置き場所として持つ資産です。
確認すべき点は3つあります。ひとつ目は積立金の残高で、石の外壁と川に面した立地は、将来の修繕費が高くつきます。ふたつ目は直近5年の予算の推移で、コモンチャージが毎年どれだけ上がってきたかを見ます。みっつ目は、46戸のうち何戸が賃貸中かで、居住者の少ない建物は管理の質が落ちやすいためです。コモンチャージの中身と適正水準で見方を詳しく書いています。
4. 購入の実務と名義の設計
70ベストリーはコンドミニアムのため、外国籍・非居住のまま購入できます。コープのような理事会審査はなく、法人名義やトラスト名義での保有も規約の範囲で可能です。
この価格帯では、名義の設計が税額を大きく動かします。米国の遺産税は非居住者の控除が6万ドルしかなく、個人名義で持つと、住戸の価格のほぼ全額が課税の対象になります。相続を見通すなら、買う前に法人やトラストを通す設計を決めておきます。LLC名義での保有と税務に整理したとおり、LLCと上位の法人の組み合わせで遺産税の対象から外す方法があり、その代わり売却時の課税や日本側の申告が変わります。
売却時にはFIRPTAの源泉徴収が売却価格に対してかかり、還付は翌年の申告後になります。売却価格が大きいほど源泉される額も大きいため、資金の戻りの時期を売却の計画に織り込みます。
取引の際には、対象住戸の直近の売買履歴、建物の積立残高と修繕計画、賃貸中の戸数、そして管理規約の賃貸に関する制限を書面で確認してください。少数戸の建物は規約で賃貸を厳しく制限していることがあります。
5. まとめ
70ベストリーは、売り物が出ない希少性と、46戸で分担する重い維持費を、同時に持つ建物です。賃料で回す資産ではなく、使いながら持つ資産、ドル建ての置き場所として持つ資産です。この型を選ぶなら、遺産税と売却時の源泉を見た名義の設計を、買う前に終えておきます。
購入手順の全体像はニューヨーク不動産の購入ガイドに、日本からの進め方は日本からの遠隔購入にまとめています。
売り出し状況と、非公開で動いている住戸のご案内も承っております。
よくある質問
70ベストリーはどこにありますか。
マンハッタンのトライベッカ、ハドソン川に面した70 Vestry Streetです。ハドソンリバーパークに隣接し、川に面した住戸からはハドソン川と自由の女神を望みます。
70ベストリーは何戸ありますか。
14階建てで46戸です。2ベッドルームから5ベッドルームまでの大型住戸で構成され、1年に売りに出る住戸は数戸にとどまるため、同じ型の直近の成約を並べて価格を確かめる方法は使えません。
維持費はどのくらいかかりますか。
住戸の広さによりますが、コモンチャージが月5,000ドルから1万ドルを超える住戸が普通で、これに固定資産税が同じくらい乗ります。年間で10万ドルから20万ドル以上を、住むかどうかにかかわらず見込みます。
外国籍でも購入できますか。
コンドミニアムのため、外国籍・非居住のまま購入でき、法人名義やトラスト名義での保有も規約の範囲で可能です。この価格帯では、遺産税の非居住者控除が6万ドルしかないため、買う前に名義の設計を決めておきます。
所在地
70 Vestry Street, New York。位置はGoogleマップでご確認いただけます。
BUILDINGS
ニューヨークの主な建物。名義と税務の観点から
ビリオネアズロウと57丁目
- セントラルパークタワー — 世界一高い住宅ビル
- One57 — ビリオネアズロウの先駆け
- 432 Park Avenue — 正方形窓の超高層
- 220 Central Park South — 全米住宅最高額の記録
- 111 West 57th — 世界で最も細い超高層
- 53 West 53rd — 近代美術館の上に住む
- Mandarin Oriental Fifth — ホテルブランドの住まい
- エセックスハウス — 公園南のアールデコ
- オズボーン — 1885年の石積み
セントラルパーク西の戦前建築
- ダコタハウス — 1884年、市内最初期の高級住宅
- サンレモ — エメリー・ロスのツインタワー
- ベレスフォード — 三本の塔と博物館の眺め
- エルドラド — 公園西の最北、貯水池の眺望
- センチュリー — 公園西で最も中心に近い
- マジェスティック — ダコタの向かい、急行駅前
- One Central Park West — コロンバスサークルの角
- 15 Central Park West — 新築で戦前の風格
パークアベニューとイーストサイド
- 740 Park Avenue — 世界で最も入りにくい住宅
- 520 Park Avenue — 戦前の格を新築で
- オリンピックタワー — 五番街の複合の先駆け
- リッツ・カールトン・レジデンス — ホテルブランドの実際
- シェリーネザーランド — ホテル機能を持つコープ
- リバーハウス — 川に正対する名門コープ
- One Sutton Place South — 借地の上に立つ建物
- サットンタワー — イーストリバー沿いの新築120戸
- 252イースト57丁目 — 分譲と賃貸が同じ塔、値下げの履歴
- ワンビーコンコート — オフィスの上に住む複合ビル
- 200イースト59 — 全戸テラス67戸、屋外面積の評価
- マンハッタンハウス — 戦後モダニズムの代表作
- ウォルドーフ・アストリア — 歴史的ホテルの住宅転用
- プラザ・レジデンス — 1907年の名門ホテル
- アマン・ニューヨーク — クラウンビルの最上位ブランド
- 400 Fifth Avenue — 商業地区に住むという選択
アッパーウエストとグラマシー
- アンソニア — ホテルから賃貸、コンドへ
- アプソープ — 1908年の中庭型、名義の自由
- ベルノード — 賃貸から分譲への転換
- 200 Amsterdam — 建築許可をめぐる訴訟
- 50 Gramercy Park North — 公園の鍵という権利
- マディソンハウス — ノマドの新築タワーと管理費
- 30イースト31 — 42戸の細身タワーの価格帯
- ワンマディソン — 築10年超の53戸と転売
- 277フィフスアベニュー — 5番街の住所は価格に乗るか
ダウンタウンとトライベッカ
- ウールワースタワー — 1913年の超高層に住む
- ワンウォールストリート — オフィス転用と減税
- ザ・グリニッジ — 125グリニッジの88階建て273戸
- 25パークロウ — シティホール公園向きの価格差
- 77グリニッジ — 小学校を抱えた90戸の価格交渉
- ワン・ビークマン — シティホール・パーク前のフロア1戸31戸
- 56 Leonard Street — 新築分譲の取得コスト
- 111 Murray Street — 大型間取りの市場
- 130 William — 固定資産税の読み方
- 30 Park Place — ホテル併設レジデンス
- 45パークプレイス — SOM設計50戸と値引き後の価格
- 100バークレー — 1927年電話局を改装した157戸
- 101ウォーレン — フルブロック227戸の価格帯
- 200チェンバーズ — プール付き258戸の維持費
- ビークマン・レジデンス — 賃貸運用向けの間取り
- 443 Greenwich — 倉庫転用と面積表示
- 565ブルームソーホー — レンゾ・ピアノ設計の112戸
- 42クロスビー — 10戸と100万ドルの駐車場の評価
- 10サリバン — ソーホー西端の22戸と小規模コンドの注意
- 108レナード — ランドマーク改装の167戸
- グリニッチレーン — 5棟とタウンハウスの構成
- 130ウエスト12丁目 — 病院跡コンバージョンの評価
- パックビルディング — 6戸だけのペントハウス
- ザ・シューマッハ — 印刷所転用20戸の維持費
- 70ベストリー(この記事)
- 160レロイ — ウエストビレッジ川沿い57戸の値付け
- 150チャールズ — 低層91戸と中庭の維持費
- One Manhattan Square — 大型タワーの出口
- ワンハイライン(旧XI) — 開発会社の破綻と再生
ハイライン・ハドソンヤーズ
- 520 West 28th — ザハ・ハディド唯一のNY住宅
- ランタンハウス — デベロッパーの実績の見方
- 100 Eleventh Avenue — ガラス外壁の維持費
- 15 Hudson Yards — 新開発地区の評価
- 35 Hudson Yards — 似た2棟をどう比べるか
- ハドソンヤーズの住宅 — 竣工前契約の実務
- ザ・コートランド — レンガ外装と資産価値
- ウォーカータワー — 電話局のコンバージョン
- 25 Columbus Circle — 建物の改名と資産価値
ブルックリンとクイーンズ
- ブルックリンタワー — 区で初めての超高層
- ブルックリンポイント — 屋上プールの高層
- クワイタワー — 公園に守られた眺望
- ワン・ブルックリンブリッジパーク — 倉庫転用の449戸と公園への支払い
- イレブン・ホイト — 481戸の価格帯と減税の残存年数
- スカイラインタワー — クイーンズ最高層
- オリンピア・ダンボ — ブルックリン最高額の物差し
比較の全体像はビリオネアズロウ主要タワーの比較をご覧ください。
購入の実務ガイド
NEIGHBOURHOODSニューヨークの街と、他都市との比較(37件)
マンハッタンの街
- アッパーウエストサイド — 戦前の名建築と子育て環境
- カーネギーヒル — 美術館の並びに住む
- ヨークビル — 地下鉄新線が変えた買い場
- タートルベイ — 国連の街の静かな買い場
- グラマシー — 鍵のある公園に面した街
- フラットアイアン — ロフトの広さと価格
- ノマド — マンハッタン中央部の相場
- チェルシー — ハイライン沿いのレジデンス
- ウエストヴィレッジ — 石畳の歴史地区
- グリニッチビレッジ — 低層の街と戦前コープ
- ノーホー — 数ブロックのロフト一等地
- ソーホー — ロフト市場の実態
- ロウアーイーストサイド — 変わり続ける街の値段
- 金融地区 — ウォール街に暮らす
- ハーレム — ブラウンストーン1棟と賃料規制
ブルックリンの街
- ブルックリンハイツ — 全米初の歴史保存地区
- コブルヒル — ランドマーク地区のブラウンストーン
- キャロルガーデンズ — 住みながら貸す二戸建て
- ボーラムヒル — 学区の境界は住所ごとに違う
- フォートグリーン — コープが多い地区で海外から買う
- プロスペクトハイツ — 固定資産税の減税が切れる日
- ダウンタウンブルックリン — 供給が集中した地区の出口
- ダンボ — 倉庫街から高級住宅地へ
- グリーンポイント — 水辺エリアの家賃相場
ニューヨークを他の都市と比べる
- 東京 — 価格・価値観・法規制の違い
- ロサンゼルス — 戸建ての街と縦の街
- マイアミ — 税金ゼロの魅力と流動性
- ハワイ — 持ちたい場所として比べる
- トロント・バンクーバー — 外国人購入禁止の国と開かれた市場
- パリ — 石の街の資産と縦の街の資産
- 香港 — アジアの富の置き場所
- シドニー — 外国人規制の壁
- ロンドン — 英米の不動産投資の違い
- 世界の主要都市 — ドバイ・シンガポール・ロンドン・東京
- 全米の主要都市 — 価格・家賃・利回り・値上がり率
- 米国内の他都市 — ニューヨークだけが違う7点
- 日米の投資比較 — 利回り・税制・リスク
エリアの全体像と購入の実務
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