108レナード(108 Leonard Street)は、トライベッカの東端、ブロードウェイに面した1898年竣工の時計塔ビルを改装した13階建て・167戸のコンドミニアムです。設計はマッキム・ミード・アンド・ホワイトで、もとはニューヨーク生命保険の本社でした。
この建物を題材にするのは、市のランドマークに指定された建物を買うときの見方を考えるためです。歴史的な外観と天井高は新築では手に入りませんが、指定は改修の自由を縛り、維持費にも影響します。日本から法人名義で持ち、貸して、いずれ売るという流れの中で、指定の重みをどう扱うかをたどります。
1. 建物の概要。13階建て・167戸

108レナードは、エラド・グループが市から取得した旧庁舎を住宅に改装したもので、内装はジェフリー・ビアーズが手がけました。2019年から入居が始まり、大理石の階段と時計塔の機械室は市の内部ランドマークとして保存されています。
特徴は天井高と窓の大きさで、住戸の多くが3.5メートル前後の天井を持ちます。共用施設は屋内プール、ジム、ラウンジ、ワインルーム、屋上テラス、車寄せで、1ベッドルームから4ベッドルームまで住戸の型は幅広く、改装物件としては規模が大きい建物です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 108 Leonard Street, New York(トライベッカ) |
| 竣工 | 1898年(改装は2019年) |
| 階数・戸数 | 13階建て・167戸 |
| 設計・開発 | マッキム・ミード・アンド・ホワイト(原設計)/エラド・グループ(改装) |
| 形態 | コンドミニアム |
| 主な施設 | 屋内プール、ジム、ラウンジ、ワインルーム、屋上テラス |
トライベッカは、倉庫街を改装したロフトと新築が混じる地区です。地区の成り立ちと物件の傾向はトライベッカのエリア記事にまとめています。
2. ランドマーク指定は価格にどう効くか

ランドマーク指定は、二つの向きに働きます。一つは希少性で、同じ外観の建物は二度と建たないため、価格の下支えになります。もう一つは制約で、窓や外壁に手を入れるには市の許可が要り、住戸の中でも保存対象の部位は動かせません。
分譲時の価格は、1ベッドルームが100万ドル台後半から、2ベッドルームが200万ドル台後半から400万ドル台、3〜4ベッドルームが500万ドルを超える水準でした。転売では、時計塔に近い上層と角の住戸が分譲時を上回る例があり、内側の低層は分譲時と同じかやや下の単価で動きます。
比べる先は、同じトライベッカの新築56レナードと、改装の443グリニッジです。新築は眺望、改装は天井高と外観で価格を作り、108レナードは後者の型で、しかも指定の重みが加わります。買い手が新築の設備を求める人か、建物の来歴を求める人かで、転売の相手が変わります。
3. 賃料と維持費の釣り合い

トライベッカは、金融街に近く、学校の評価が高いことから家族層の賃貸需要が厚い地区です。108レナードの1ベッドルームは月額の賃料が7,000ドル台から、2ベッドルームが1万2,000ドル前後で貸し出されています。
維持費はコモンチャージと固定資産税の合計で見ます。167戸で分担するため戸あたりは抑えられますが、指定建物の外壁と屋根の修繕は通常より費用がかかり、積立金の水準に表れます。1ベッドルームでコモンチャージが月1,800ドル前後、固定資産税が同じくらいの額を見込んでおきます。
賃料から維持費と管理の費用を引いた残りを価格で割ると、手取りの利回りが出ます。この建物も2〜3%台に収まります。コモンチャージの中身と適正水準にまとめたとおり、指定建物では外装の修繕計画が積立金の額を決めるため、直近の予算書に外壁と屋根の項目があるかを確認します。
利回りだけを求めるなら、この建物は選ばれません。二度と建たない建物をドル建ての資産として持ち、賃料で維持費を賄いながら置いておく、という目的で数字を組みます。
4. 購入の実務と名義の設計
108レナードはコンドミニアムのため、外国籍・非居住のまま購入できます。コープのような理事会審査はなく、法人名義やトラスト名義での保有も規約の範囲で可能です。賃貸に出す場合、最低の契約期間など建物の規約を確認します。
貸すことが前提なら、名義は個人ではなく法人を先に検討します。非居住者が個人名義で貸すと、賃料に対する源泉徴収が30%かかり、申告で経費を引く選択をしないと手取りが大きく減ります。LLC名義での保有と税務に整理したとおり、LLCを通すことで賃料の受け取り、経費の計上、将来の売却や相続の扱いを一本の設計に収められます。
相続を見通すなら、米国の遺産税の非居住者控除が6万ドルしかない点を、買う前に織り込みます。売却時にはFIRPTAの源泉徴収が売却価格に対してかかり、還付は翌年の申告後になります。
取引の際には、対象住戸と同じ型の直近の成約、住戸の中で保存対象になっている部位、外装の修繕計画と積立残高、税の減免が残っているかどうかを書面で確認してください。保存対象の部位は、改装の見積もりを大きく変えます。
5. まとめ
108レナードは、ランドマーク指定が希少性と制約の両方をもたらす建物です。時計塔に近い上層は分譲時を上回る転売があり、内側の低層は指定の重みが価格に出ます。日本から法人名義で持ち、二度と建たない建物をドル資産として置いておく、という目的に合う型です。
購入手順の全体像はニューヨーク不動産の購入ガイドに、日本からの進め方は日本からの遠隔購入にまとめています。
売り出し状況と、非公開で動いている住戸のご案内も承っております。
よくある質問
108レナードはどこにありますか。
マンハッタンのトライベッカ地区の東端、108 Leonard Streetです。ブロードウェイに面し、地下鉄はカナルストリート駅とフランクリンストリート駅が徒歩圏です。
108レナードは何戸ありますか。
13階建てで167戸です。1898年竣工のニューヨーク生命保険の旧本社を2019年に住宅へ改装したもので、1ベッドルームから4ベッドルームまで住戸の型が幅広く用意されています。
賃貸に出せますか。
コンドミニアムのため賃貸に出せます。最低の契約期間など建物の規約を確認したうえで、非居住者が個人名義で貸すと賃料に30%の源泉徴収がかかるため、法人名義での保有を先に検討します。
外国籍でも購入できますか。
コンドミニアムのため、外国籍・非居住のまま購入でき、法人名義やトラスト名義での保有も規約の範囲で可能です。コープのような理事会審査はありません。
所在地
108 Leonard Street, New York。位置はGoogleマップでご確認いただけます。
BUILDINGS
ニューヨークの主な建物。名義と税務の観点から
ビリオネアズロウと57丁目
- セントラルパークタワー — 世界一高い住宅ビル
- One57 — ビリオネアズロウの先駆け
- 432 Park Avenue — 正方形窓の超高層
- 220 Central Park South — 全米住宅最高額の記録
- 111 West 57th — 世界で最も細い超高層
- 53 West 53rd — 近代美術館の上に住む
- Mandarin Oriental Fifth — ホテルブランドの住まい
- エセックスハウス — 公園南のアールデコ
- オズボーン — 1885年の石積み
セントラルパーク西の戦前建築
- ダコタハウス — 1884年、市内最初期の高級住宅
- サンレモ — エメリー・ロスのツインタワー
- ベレスフォード — 三本の塔と博物館の眺め
- エルドラド — 公園西の最北、貯水池の眺望
- センチュリー — 公園西で最も中心に近い
- マジェスティック — ダコタの向かい、急行駅前
- One Central Park West — コロンバスサークルの角
- 15 Central Park West — 新築で戦前の風格
パークアベニューとイーストサイド
- 740 Park Avenue — 世界で最も入りにくい住宅
- 520 Park Avenue — 戦前の格を新築で
- オリンピックタワー — 五番街の複合の先駆け
- リッツ・カールトン・レジデンス — ホテルブランドの実際
- シェリーネザーランド — ホテル機能を持つコープ
- リバーハウス — 川に正対する名門コープ
- One Sutton Place South — 借地の上に立つ建物
- サットンタワー — イーストリバー沿いの新築120戸
- 252イースト57丁目 — 分譲と賃貸が同じ塔、値下げの履歴
- ワンビーコンコート — オフィスの上に住む複合ビル
- 200イースト59 — 全戸テラス67戸、屋外面積の評価
- マンハッタンハウス — 戦後モダニズムの代表作
- ウォルドーフ・アストリア — 歴史的ホテルの住宅転用
- プラザ・レジデンス — 1907年の名門ホテル
- アマン・ニューヨーク — クラウンビルの最上位ブランド
- 400 Fifth Avenue — 商業地区に住むという選択
アッパーウエストとグラマシー
- アンソニア — ホテルから賃貸、コンドへ
- アプソープ — 1908年の中庭型、名義の自由
- ベルノード — 賃貸から分譲への転換
- 200 Amsterdam — 建築許可をめぐる訴訟
- 50 Gramercy Park North — 公園の鍵という権利
- マディソンハウス — ノマドの新築タワーと管理費
- 30イースト31 — 42戸の細身タワーの価格帯
- ワンマディソン — 築10年超の53戸と転売
- 277フィフスアベニュー — 5番街の住所は価格に乗るか
ダウンタウンとトライベッカ
- ウールワースタワー — 1913年の超高層に住む
- ワンウォールストリート — オフィス転用と減税
- ザ・グリニッジ — 125グリニッジの88階建て273戸
- 25パークロウ — シティホール公園向きの価格差
- 77グリニッジ — 小学校を抱えた90戸の価格交渉
- ワン・ビークマン — シティホール・パーク前のフロア1戸31戸
- 56 Leonard Street — 新築分譲の取得コスト
- 111 Murray Street — 大型間取りの市場
- 130 William — 固定資産税の読み方
- 30 Park Place — ホテル併設レジデンス
- 45パークプレイス — SOM設計50戸と値引き後の価格
- 100バークレー — 1927年電話局を改装した157戸
- 101ウォーレン — フルブロック227戸の価格帯
- 200チェンバーズ — プール付き258戸の維持費
- ビークマン・レジデンス — 賃貸運用向けの間取り
- 443 Greenwich — 倉庫転用と面積表示
- 565ブルームソーホー — レンゾ・ピアノ設計の112戸
- 42クロスビー — 10戸と100万ドルの駐車場の評価
- 10サリバン — ソーホー西端の22戸と小規模コンドの注意
- 108レナード(この記事)
- グリニッチレーン — 5棟とタウンハウスの構成
- 130ウエスト12丁目 — 病院跡コンバージョンの評価
- パックビルディング — 6戸だけのペントハウス
- ザ・シューマッハ — 印刷所転用20戸の維持費
- 70ベストリー — 川沿い46戸、少数戸を持つ意味
- 160レロイ — ウエストビレッジ川沿い57戸の値付け
- 150チャールズ — 低層91戸と中庭の維持費
- One Manhattan Square — 大型タワーの出口
- ワンハイライン(旧XI) — 開発会社の破綻と再生
ハイライン・ハドソンヤーズ
- 520 West 28th — ザハ・ハディド唯一のNY住宅
- ランタンハウス — デベロッパーの実績の見方
- 100 Eleventh Avenue — ガラス外壁の維持費
- 15 Hudson Yards — 新開発地区の評価
- 35 Hudson Yards — 似た2棟をどう比べるか
- ハドソンヤーズの住宅 — 竣工前契約の実務
- ザ・コートランド — レンガ外装と資産価値
- ウォーカータワー — 電話局のコンバージョン
- 25 Columbus Circle — 建物の改名と資産価値
ブルックリンとクイーンズ
- ブルックリンタワー — 区で初めての超高層
- ブルックリンポイント — 屋上プールの高層
- クワイタワー — 公園に守られた眺望
- ワン・ブルックリンブリッジパーク — 倉庫転用の449戸と公園への支払い
- イレブン・ホイト — 481戸の価格帯と減税の残存年数
- スカイラインタワー — クイーンズ最高層
- オリンピア・ダンボ — ブルックリン最高額の物差し
比較の全体像はビリオネアズロウ主要タワーの比較をご覧ください。
購入の実務ガイド
NEIGHBOURHOODSニューヨークの街と、他都市との比較(37件)
マンハッタンの街
- アッパーウエストサイド — 戦前の名建築と子育て環境
- カーネギーヒル — 美術館の並びに住む
- ヨークビル — 地下鉄新線が変えた買い場
- タートルベイ — 国連の街の静かな買い場
- グラマシー — 鍵のある公園に面した街
- フラットアイアン — ロフトの広さと価格
- ノマド — マンハッタン中央部の相場
- チェルシー — ハイライン沿いのレジデンス
- ウエストヴィレッジ — 石畳の歴史地区
- グリニッチビレッジ — 低層の街と戦前コープ
- ノーホー — 数ブロックのロフト一等地
- ソーホー — ロフト市場の実態
- ロウアーイーストサイド — 変わり続ける街の値段
- 金融地区 — ウォール街に暮らす
- ハーレム — ブラウンストーン1棟と賃料規制
ブルックリンの街
- ブルックリンハイツ — 全米初の歴史保存地区
- コブルヒル — ランドマーク地区のブラウンストーン
- キャロルガーデンズ — 住みながら貸す二戸建て
- ボーラムヒル — 学区の境界は住所ごとに違う
- フォートグリーン — コープが多い地区で海外から買う
- プロスペクトハイツ — 固定資産税の減税が切れる日
- ダウンタウンブルックリン — 供給が集中した地区の出口
- ダンボ — 倉庫街から高級住宅地へ
- グリーンポイント — 水辺エリアの家賃相場
ニューヨークを他の都市と比べる
- 東京 — 価格・価値観・法規制の違い
- ロサンゼルス — 戸建ての街と縦の街
- マイアミ — 税金ゼロの魅力と流動性
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- トロント・バンクーバー — 外国人購入禁止の国と開かれた市場
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- 世界の主要都市 — ドバイ・シンガポール・ロンドン・東京
- 全米の主要都市 — 価格・家賃・利回り・値上がり率
- 米国内の他都市 — ニューヨークだけが違う7点
- 日米の投資比較 — 利回り・税制・リスク
エリアの全体像と購入の実務
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